【SOON】Super Adoption Stackを実現するために設計された高性能SVMロールアップ / Ethereum上のSVM利用したL2、SVM基盤のRaaS、相互運用性担保の3つを提供 / @soon_svm
SVMを広げる起爆剤となるか。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「SOON」についてリサーチしました。
🟩SOONとは?
⚙️技術的な特徴
🚩変遷と展望
💬SVMは広がるか
🧵TL;DR
SOON(Solana Optimistic Network)は、Solana VM(SVM)を活用したOptimistic Rollup基盤で、「Super Adoption Stack」を実現するため、Ethereum上のSOON Mainnet、任意L1にチェーン展開できるSOON Stack、クロスチェーン通信のInterSOONの3製品から構成される。
SOON MainnetはEthereum決済層+SVM並列処理エンジンで高速処理を実現し、Optimistic RollupとEigenDAによる信頼性とスケーラビリティを両立。
SOON Stackは「Rollup as a Service」として、Ethereum・BNB・Baseなど任意のLayer1上にSolana互換L2チェーンをワンクリック展開可能にするインフラ群。
InterSOONはHyperlaneベースのメッセージングプロトコルで、ラップ不要のネイティブ相互運用性を提供し、異チェーン間の資産やスマートコントラクト呼び出しをシームレスに連携。
🟩SOONとは?
SOON(Solana Optimistic Network)は、Super Adoption Stackを実現するために設計された高性能SVMロールアップです。
ブロックチェーンのマスアダプションを実現するというビジョンを掲げ、以下の3つの主要製品で構成されています。
SOON Mainnet:Ethereum上に構築された汎用レイヤー2ネットワーク
SOON Stack:任意のL1上に独自のSVMチェーンをワンクリックで展開できるインフラ群
InterSOON:クロスチェーン通信プロトコル
これらを統合することで、異なるチェーン間の流動性の分断や相互運用性の欠如といった課題を解決し、全ネットワークを一つのインターフェイスで繋ぐ統一的なブロックチェーン環境を実現しようとしています。
多くの固有名詞が出てきたかと思いますので、1つずつ順番に解説していきます。
◼️SOON Mainnet
Ethereumを決済層として利用する汎用レイヤー2チェーンで、高速な並列処理が可能なSolana VM(SVM)を実行環境に採用しています。また、L2の形式はOP Rollupを、DAレイヤーにはEigenDAを採用しています。
通常のロールアップと同じく、SOON SVMがシーケンサーのように動作し、Ethereumにロールアップして提出する仕組みです。動作環境がSVMなので並列処理を可能にします。
技術スタックには「Decoupled SVM」「Merkle化」「Horizontal Scaling」などが存在しますが、このあたりは全ての技術コアに当たるので後ほど解説します。
◼️SOON Stack
開発者やプロジェクト向けの「Rollup as a Service(RaaS)」基盤であり、あらゆるLayer1上にSolana互換の高速L2チェーン(SVMチェーン)を簡単にデプロイ可能にします。
現在、決済レイヤーとしてEthereum、DAレイヤーとしてAvailをサポートし、CalderaやAltLayerといったモジュラー基盤とも連携しています。
また、SOON Stackを活用してBNBを決済レイヤーとしたsvmBNBとBaseを決済レイヤーとしたsoonBaseを発表しています。

このように、既存チェーンにSVMの実行環境を利用したチェーン構築を続々と行なっています。また、SVMを活用したアップチェーンの構築も簡単にします。
◼️InterSOON
SOON Mainnetや複数のSOONチェーン、他のL1間でのメッセージングを担うプロトコルであり、Hyperlaneの技術を活用したクロスチェーン通信によりネイティブな相互運用性を提供します。
この仕組みにより、ブリッジでラップした資産を介さずに異なるチェーン上のスマートコントラクトや資産を直接やり取りでき、流動性を各チェーンに閉じ込めないメリットがあります。
例えるなら、以下のようなイメージです。
SOON Mainnet→OP Mainnet
SOON Stack→OP Stack
InterSOON→Optimism Superchain
フラッグシップとなるメインチェーンがあり、その技術を使える開発スタックがあり、その全ての相互運用性を実現するクロスチェーンプロトコルが存在します。
この縦軸はSVMであり、SVMを利用したチェーン構築群となっています。
⚙️技術的な特徴
では、より詳しい技術的な特徴を解説します。
なるべくわかりやすく前提知識も含めながら解説していきますが、それでも難しい部分もあるので、飛ばしていただいても構いません。
SOONには大きく3つの技術的な特徴があります。
Decoupled SVM(分離SVM)
Merklization
Horizontal Scaling(水平スケーリング)
1つずつ説明します。
◼️Decoupled SVM
まず、前提知識となる「VM」について少しだけ解説します。
ブロックチェーンにおける仮想マシン(Virtual Machine, VM)とは、スマートコントラクトを実行するためのソフトウェア環境です。
たとえばEthereumではEVM(Ethereum Virtual Machine)が使われており、Solidityという言語で記述された契約を順番に(シングルスレッドで)実行します。一方、SolanaではSVM(Solana Virtual Machine)が用いられ、Rustなどの言語で書かれたプログラムを並列に実行する仕組みを備えています。つまりEVMは一度に1つの取引しか処理できないのに対し、SVMは同時に複数の取引を処理することで高いスループットを実現します。
では、Decoupled SVMの説明に入ります。
Decoupled SVMとは、Solanaのバリデータ(コンセンサス)層からSVM(実行エンジン)を切り離し、SVMを単独の実行レイヤーとして利用できるようにしたアーキテクチャを指します。
もともとSolanaではコンセンサスと実行環境が一体となったモノリシックな設計でしたが、2024年にSolana Labsから提供された新しいSVM API(Agave)によりこの分離が可能になりました
↓この辺の議論は以下の記事に書いてますので、ご覧ください。
SOONはこの技術を最初に活用したプロジェクトであり、Solana本来のコンセンサスメカニズムを外してSVMのみを抽出し、他のL1上で動作させています。
従来のSolanaチェーンでは、トランザクションの最終的な合意形成もSolana自身が行っていました。しかしSOONではコンセンサスを担うのは他のL1です。
Decoupled SVM設計のポイントは、SolanaのTPU(Transaction Processing Unit)をSolanaのBFTコンセンサスから切り離し、代わりにロールアップのシーケンサーがTPUを制御することにあります。
Solana独自のブロック生成ルールや投票プロトコルは使わず、L1(例: Ethereum)のブロックチェーンに取引データと状態ルートを載せることで決着をつける仕組みです。そのためSOON Stack上で起動したSVMチェーン(SOON Chain)は、Solanaの高速実行能力を保ちながらEthereumのOP Stackのコンポーネントなど、既存チェーンと互換性を持っています。
Decoupled SVMの利点は大きく3つあります。
第一に性能向上です。コンセンサスの重い処理から解放されたSVMは、L2内部でブロックを連続生成できます。特にOptimistic RollupではL1からの逐一の応答を待たずに処理を進められるため、SVMの並列処理能力を最大限に活用できます。
第二にセキュリティ強化です。実行と合意を分離したことで、誰もがSVMの計算結果を検証可能になりました。独立した検証者がL1に投稿された取引情報からL2の状態を再計算し、不正時にはフォールトプルーフを行えるため、悪意あるブロック生成者を抑止できます。
第三に柔軟性です。Decoupled SVMはSolana以外の環境にも接続可能な中立的実行エンジンとなったため、任意のデータ可用性レイヤー(Celestia等)やL1(Ethereum、Bitcoin、TONなど)上に展開できます。
このようにSVMをモジュール化・抽象化したことで、SOON Stack上では「自分だけのSolanaチェーン」をワンクリックで立ち上げることも可能になりました。
◼️Merklization
あまり聞き馴染みのない単語かもしれませんが、ブロックチェーンの状態管理に関して理解すべき概念にMerkleツリーがあります。(この辺も難しいのでサッと読む程度でもOKです)
Ethereumでは口座残高やコントラクトのストレージなど全体の状態をMerkle Patricia Trie(MPT)と呼ばれるツリー構造で保持し、そのルートハッシュ(ステートルート)を各ブロックに記録しています。これにより、任意のアカウント状態がツリー経路によって暗号学的に証明可能です。
一方SolanaはもともとこのようなMerkleツリーを状態管理に使っていませんでした。しかし他チェーンと接続したり状態を検証可能にしたりするにはMerkle化(状態をMerkleツリー構造にすること)が必要です。
このためSOONではSolanaのアカウントモデルにMerkle Patricia Trieを導入し、状態のハッシュ(スナップショット)を定期的に計算・記録する仕組みを取り入れています。
具体的には、Solanaのアカウントモデル(各アカウントがデータを持ちプログラムから参照されるモデル)に合わせてカスタマイズしたMerkle Patricia Trieを実装し、一定間隔で状態ルートを計算しています。
このMerklizationと状態ルート検証はブロックチェーン上のスナップショットのように機能し、L2とL1間の信頼レスな資産移動(例:資産引き出しの証明)を可能にする重要な技術です。
つまり、チェーン間のトラストレスな資産ブリッジを可能にしているということですね。
加えて、Merkle化によりSOONでは過去データの永続性も確保しています。他のSVM系プロジェクトでは状態履歴の保存期間に制限(Solana本体では最新150スロットのみ保持など)があるケースもありますが、SOONではEthereum上に定期的なスナップショットを残すことで恒久的な履歴検証を実現しています。
このようなデザインは監査性と透明性を高め、L2単独では不可能な高度な検証(過去に遡った照合など)を可能にします。
◼️Horizontal Scaling
これは単一ノードの性能向上(垂直スケーリング)ではなく、ネットワーク全体にノードを追加することで処理能力を拡大する手法です。SOONはこの水平スケーリング戦略を取り入れ、高負荷時にも性能を維持できる設計を志向しています。
具体的には、SOONネットワークでは複数のバリデータノード(またはシーケンサーノード)が協調して処理を分担することで、一つのノードに過度な負荷をかけずに済むようにします。ノードを追加することで事実上無制限に処理能力を拡張でき、ユーザー数や取引量の増加に対してリニアに対応可能なアーキテクチャとなります。
◼️将来展望
この3つの技術によって、SVMを実行エンジンとしたL2(他のL1上にSVM実行エンジンチェーンの構築)やSVMチェーン間の相互運用性の実現を可能にしています。
そもそもSOON自体もこれから本格的に展開されていく予定ですが、技術的な観点で今後予定されている技術拡張について触れます。大きな柱はZKロールアップ技術の導入とSolana用新クライアント「Firedancer」の統合です。
SOONチームは将来的にゼロ知識証明 (ZK Proof)を取り入れる計画を表明しています。具体的には、Optimistic Rollupで必要となる1週間程度のチャレンジ期間を短縮すべく、暗号学的証明による即時検証を採用しようというものです。公開情報によれば、SOONはRISC ZeroやSP1といったZK技術の採用を検討しており、メインネット立ち上げ後にこれらを組み込んで引き出し待ち時間の大幅短縮を図る予定です。
もう一つの注目はSolanaの新クライアントであるFiredancerの活用です。FiredancerはJump Crypto社が開発中のSolana用バリデータクライアントで、C++で書かれ高効率な並行処理により理論上100万TPSもの性能を叩き出したことで話題になりました。
現在Solanaメインネットへの導入が進められており、2025年頃に本格稼働すると言われています。SOONはこのFiredancerが安定稼働した段階で、SOON Stackに統合する計画です。
具体的には、SOONで用いるSVM実行エンジンをFiredancer由来の技術で置き換えたり最適化したりすることで、SOONチェーン全体のスループット向上を狙っています。実際にSOONの開発ネットワークでは既にFiredancer統合により毎秒8万TPSを達成したとの報告もあり、将来的にFiredancer+SVMによって現行EVMロールアップを数百倍上回る処理速度を実現できる可能性があります。
🚩変遷と展望
SOONは2024年にJoanna Zeng氏によって創業されました。Joanna氏はCoinbaseやOptimism、Aleoといった著名プロジェクトで事業開発やパートナーシップ戦略をリードしていた実績があります。
もう一人の共同創業者でCTOのAndrew Zhou氏は、Rustで5年、Golangで6年の開発経験を有するエンジニアで、スマートコントラクト開発やレイヤー1ソリューション構築の専門知識で知られています。
SOONはリリース前から業界内で注目を集め、著名なエンジェル投資家たちから資金提供と支援を受けています。
2024年8月には一回目の資金調達ラウンドの完了が発表され、出資者としてSolana Labs共同創業者のAnatoly Yakovenko氏(Toly)、Solana財団会長のLily Liu氏、Coinbase Ventures責任者のJonathan King氏、Celestia Labs共同創業者のMustafa Al-Bassam氏、AltLayer共同創業者のAmrit Kumar氏、Avail共同創業者のPrabal Banerjee氏など錚々たるメンバーの名前が挙がりました。それ以降も複数回の調達を重ねています。
これまでの変遷としては、2024年末〜2025年初頭にかけて「Decoupled SVM」実装版のAlpha版メインネットをEthereum上で立ち上げ、2025年1月3日にはSOON Alpha Mainnetの正式ローンチとトークンエコノミクス概要の公開を行いました。
この時点で「コミュニティへの51%割当」「VC特権なし」といったポリシーが発表され、コミュニティ重視の姿勢が明確に示されています。
2025年春にはSOON Stackを活用したマルチチェーン展開が本格化しました。
4月にはEthereumに加えてCoinbaseのBaseチェーン上に「soonBase」テストネットを稼働開始し、同月末にはsoonBaseのメインネット稼働を発表。またBNBチェーン上でもSVM Rollup(svmBNB)を展開し、これら複数のL2チェーンがSOONのクロスチェーン機能で接続される形で運用されています。
2025年5月には一般ユーザー向けプロダクトのSimpfor.fun V2を公開し、LiveTradeのコンセプト実証とコミュニティ拡大を開始しました。
Simpfor.fun V2はSOON ネットワーク上で提供されるオンチェーンコピー取引プラットフォームのメジャーアップデート版で、2025年5月23日に正式リリースされました。
ユーザーは「スマートマネー」と呼ばれる大口アドレスの取引戦略をワンクリックでコピーでき、BTCや主要ステーブルコインだけでなく、将来的には金などのRWAトークンも同様に扱えるよう設計されています。
プラットフォーム内には損益(PNL)やROI、ポジション評価額をリアルタイムで確認できるデータ分析ダッシュボードが組み込まれており、自分の資産状況やコピー先トレーダーのパフォーマンスを直感的に把握できます。
また、ライブストリーミング連携機能「LiveTrade」により、Twitch や SOOP といった配信プラグイン上からワンクリックでコピー取引を誘導できるのも大きな特徴です。
配信者は視聴者が自身の戦略をコピーするたびに最大80%の紹介手数料を獲得でき、これまでトレーディング知識に乏しかった Web2 ユーザーにも自然にオンチェーン取引体験を提供します。
さらに、V2 の公開に合わせてトークンエコノミクスも最新化され、Ethereum、Binance、Base のマルチチェーン対応を正式にサポートすることで、Simpfor.fun が SOON エコシステム全体の活性化における重要なドライバーとなることを目指しています。
また、このタイミングで$SOONトークンのTGEが近づいていることも発表され、2025年6月には初回流通と上場が予定されています。
◼️トークンエコノミクス
$SOONは初期発行総量は10億枚、以降毎年3%のインフレ率で増加します。アロケーションは以下の通りです。また、$SOONトークンはSolana、BNBチェーン、Baseチェーンといった複数のブロックチェーン上に同時展開される予定です。
以下のユーティリティが想定されています。
ガバナンス
ガス代
ステーキングとバリデーター報酬
エコシステム報酬
SOONエコシステムの新プロダクトへのアクセスや優遇
また、前述した通り、初期発行の51%という過半数がコミュニティ向けに割り当てられており、事前マイニングや初期VCへの特権的配布は一切行わないという方針が明言されています。
💬SVMは広がるか
最後は総括と考察です。
幾つか技術的な説明がありますが、要はSVMを広げるためのプロジェクトですね。
SVMはSolanaの成長に牽引されたこともあり、開発者が非常に増えています。
ここ1年で上位勢で唯一フルスタックエンジニアの数が伸びていますね。
SVM Stackで見てもその数は右肩あがりです。とはいえ、まだまだフルタイム開発者の数は少ないです。
こう見ると、SVM市場は大きくなっていく可能性はありそうです。SolanaコンセンサスとSVMが分離できたのが去年でそれがプロダクトになったのがSOONで本格稼働が今年からなので、新チェーンが続々とSVMになっていく未来も考えられそうです。
面白いと思ったのは、SOONにSolanaがかなり協力していることです。
SolanaにL2が必要なのかという記事でも言及しましたが、Solana本体はL2に関しては不要でL1をモノシリックで最高のスケーラビリティにすることを目指しています。
そのSolanaがSVM自体を広げることに関しては積極的です。これは既存のEVMや他のL1からSolanaに資産がブリッジされていく世界ができることで結果的にSolanaの優位性が構築されることを目指しているのだと思います。
実際、Ethereumが強いのはEVMが多く利用される言語であることは外せません。これがSVMになると間違いなくSolanaの優位性は高まります。
この辺りのシェア争いも今後気になりますね。また、SOON自体も本格稼働していきそうなので、今後注目プロジェクトの1つになっていくかもしれません。
以上、「SOON」の解説でした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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