【Solana完全レビュー(前編)】誕生の歴史 / 基本概要とPoH等の技術的特徴 / 抱える課題 / 期待される技術Firedancerの概要と課題 / @solana
2024年上半期時点のSolanaについて徹底解説します。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
本日はくりぷとくりぷとさんによる寄稿記事です。「Solana完全レビュー」と題して、Solanaの歴史から技術的な特徴、エコシステムについて徹底解説いただきました。
ぜひ最後までご覧ください!
1. Solana誕生の歴史
2. Solana基本概要
3. Proof of History
4. その他のSolanaの革新的な技術
5. Solanaが抱える課題
6. Firedancer
7. Firedancerは本当にSolanaの課題を解決できるのか?
Solanaのユニークさはどこにあるでしょう?
多くのブロックチェーンプロジェクトが存在する中、様々なアプローチでSolanaはブロックチェーンの基本的な要素にフォーカスしていますが、そのアプローチは非常に独特です。特にSolanaが焦点を当てているのは時間です。結局のところ、ブロックチェーンに分散型クロックを導入すると、誰も想像できなかったほど効率的になるということSolanaは証明しました。
1. Solana誕生の歴史
アナトリー・ヤコヴェンコは、Solanaブロックチェーンの創設者であり、技術者としての経歴がそのSolanaの立ち上げにも大きく寄与しています。
ウクライナ出身のヤコヴェンコは、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でコンピュータサイエンスの学位を取得した後、Qualcommをはじめとする複数のテクノロジー企業で働きました。Qualcommでは、12年間にわたりスマートフォンの基本技術開発に携わり、その後、分散システムを扱うメソスフィアやクラウドストレージのDropboxで技術革新に貢献しました。これらの経験は、後にブロックチェーン技術への転身を促す重要な基盤となっています。
ヤコヴェンコのブロックチェーンに対する関心は、当初はそれほどありませんでしたが、ディープラーニング技術の研究と並行してBitcoinのマイニングを経験する中で、ブロックチェーンの潜在能力に気づき始めました。特に2017年、彼はビットコインのハッシュ関数SHA256を用いて、暗号通貨ブロックチェーン上で分散型の時計、つまり「Proof of History」というSolanaの核となる概念を思いつき、これがセキュリティや分散性を犠牲にすることなく実現できると確信しました。
2017年末にヤコヴェンコはQualcommの当時の同僚だったグレッグ・フィッツジェラルド、スティーブン・アクリッジ、ラージ・ゴカルと共に、正式にプロジェクトを立ち上げました。カリフォルニアのソラナビーチにちなんで名付けられたそのブロックチェーンのホワイトペーパーは2017年11月にひっそりと公開されたのです。
2. Solana基本概要
Solanaは、スマートコントラクトを実装する分散型アプリケーション開発向けに設計された高性能ブロックチェーンです。Ethereumの弱点とも言われるスケーラビリティ問題を解決しようとしていることから「Ethereumキラー」とも称されることがあります。
Solanaは、開発当初から長期的なビジョンを持ってブロックチェーンを設計しました。これは、ヤコヴェンコが Qualcomm 在籍中に通信技術の能力が毎年ほぼ 2 倍に成長するのを見てきた経験から生まれたものです。そのため進化の早いブロックチェーンの中において現在も超高速な取引処理能力と低コストのトランザクション手数料で知られています。
その基盤となる技術は、前述した「Proof of History(PoH)」という技術です。後ほど詳しく解説しますが、これはブロックチェーン上の各トランザクションにタイムスタンプを付け、ネットワーク全体の同期効率を大幅に改善します。この方式は従来のブロックチェーンと比べて、高速でエネルギー効率が良いという利点があります。
これによりSolanaは、秒間最大65,000トランザクション(TPS)を処理することができます。また、後述するFiredancerの実装により、さらに速度が向上する予定です。このようにSolanaは高い処理性能を備えて低料金と400ミリ秒のブロックタイムを提供することで、ユーザーフレンドリーなアプリケーション開発を促進します。
ちなみに、Proof of Historyは、コンセンサスプロセスの一部ではあるものの、核となるブロック生成権利者を決める仕組みはProof of Stake(PoS)を採用しています。
様々な情報源で「コンセンサスメカニズムにはProof of Historyを採用している」と書かれているため勘違いしやすいポイントですが、Proof of Historyはあくまでもコンセンサスを効率化するためのコア機能と考えると、より正確でしょう。基本的なProof of Stakeの枠組みを使用しつつも、Proof of Historyとの組み合わせによって、より強化された処理性能を提供しているということです。
このようなSolanaのアーキテクチャはGoogleやMicrosoftが使用するデータベース技術に触発されたものとしており、分散型データストレージプロジェクトであるFilecoinからの影響も受けています。
これらのユニークなアイディアにより、SolanaはEthereumやCardanoなどの競合チェーンと比較して、はるかに高速なトランザクション速度を実現しています。
特に、Proof of HistoryとProof of Stakeの組み合わせは、ブロックチェーン上のバリデーターがチェーン内の異なるブロックのタイムスタンプに対して投票することを可能にし、チェーンをある程度分散化した状態で、より高速で、よりセキュアな処理を実現しています。
3. Proof of History
SolanaのProof of History(PoH)は、分散型システムにおける時間の同期問題を解決するための技術です。通常、ブロックチェーン技術では、異なるノード間で正確な時間を同期することが困難です。
たとえばビットコインの場合、新しいブロックの承認には時間を要するマイニングが必要ですが、これはネットワーク全体での時間の合意を間接的に行う方法です。一方、Proof of Historyはこの問題に対して直接的なアプローチを提供します。トランザクションが発生した正確な時刻を記録し、その情報を用いてトランザクションの順序を確定しています。
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