【Noice】ファウンダーがトークンを用いて段階的な資金調達を可能にするプラットフォーム / FarcasterミニアプリからX上でトークン売買のできるOracleもリリース / 株式トークン規格のERC-Sも開発中 / @noicedotso
次世代のファウンダーにとっての資金調達の選択肢になり得ます。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Noice」についてリサーチしました。
Noiceとは?
v2.起業家向けのトークン発行と資金調達ハブ
変遷と展望
グローストークンの時代になる
TL;DR
Noiceはソーシャル×資金調達プラットフォームで、Farcaster上のマイクロチップ送金アプリ(v1)からスタートし、ユーザーのSNS活動を暗号資産収益化につなげた。
v2では起業家向けのトークン発行・資金調達ハブへ進化し、FDV25万ドルでTGE、SSLPによる段階的資金調達、エコシステムファンドやシンジケート投資を通じて成長連動型モデルを構築。
最新機能としてOracleとERC-Sを展開し、X上で「いいね」でトークン購入できるAI拡散エージェントと、株式価値をトークン化する新規格を組み合わせ、オンチェーンIPO構想を推進している。
Noiceとは?
「Noice」はソーシャルメディア上の活動と資金調達を融合させたプラットフォームです。
主に提供しているサービスは2種類存在しますが、時系列で説明した方がわかりやすいと思うので、順番に説明します。
◼️v1.Farcaster上のチップアプリ
2025年5月にFarcasterのミニアプリをリリースしました。これはユーザーのいいねやコメントといった操作に連動し、自動的にクリエイターへ暗号通貨のマイクロチップ(ごく少額の投げ銭)が送られるチッピングサービスです。
以下のように自身であらゆる行動に対してチップする金額を設定しておくことで、後は自動的に操作が実行されます。
このアイデアはFarcaster共同創設者のDan氏もアプリ内でNoice経由の多数のマイクロ送金通知を受け取ったスクリーンショットを共有するなど、Farcasterコミュニティ内で急速に支持され、サービス開始当初から利用が拡大しました。
リリースからおよそ半年が経ちますが、累計で9,279人が利用し、$1.6M程度のチッピングが実施されています。
また、「Noice」はサービス開始と同時にClankerを利用し独自トークン$NOICEをBase上でローンチしました。トークン総供給の20%をエアドロップ枠、10%をコアチーム保有とし、30%を1ヶ月ロック後する設計でした。
リリース後から注目を集めましたが、より大きな注目を集めたのはCoinbaseが上場ロードマップに追加した2025年9月です。このタイミングで価格も急騰しています。
また、2025年9月までの間にBaseとの距離を深めており、Base Appのイベントでのプレゼンテーション、Base Batchesのハッカソンで優勝するなど、Baseエコシステム内での存在感も増していました。
そして、2025年10月には実は6月の時点でCoinbase Ventures(Baseエコシステムファンド)およびNetwork School(Balajis)からSAFE+トークン・ワラントで資金を調達していたことも公表しました。
このタイミングでプロダクトの「v2ドキュメント」が公開され、Noiceの目指す新ビジョンが明確化されました。そのキーワードは「IPO from your desk(あなたの机上でIPOを)」で、次世代の起業家は日常的なSNSエンゲージメントを通じて資金調達を行うというコンセプトです。
では、現在注力しているv2プロダクトについて見ていきます。
v2.起業家向けのトークン発行と資金調達ハブ
端的に言えば、ICOプラットフォームですが、一般的なICOプラットフォームとは異なり、FDVに合わせたトークン販売など、実際に起業家がトークンを活用して事業を展開していくことを念頭にした設計になっています。
利用フローとして、まず創業者はNoiceに応募し、厳選な審査を通過するとプラットフォーム上でTGEを行います。
発行時のFDVは25万ドルに設定され、$NOICEとペアで流動性が作られリリースされます。
トークンアロケーションは以下のようになっています。
50%:創業チーム
5%:即時アンロック
25%:12ヶ月でベスティング
20%:資金調達用にプール(SSLPに追加)
5%:Noice Ecosystem Fundが$10,000ドルで購入(FDV20万ドル)
0.5%:即時アンロック
2.5%:12ヶ月でベスティング
2%:資金調達用にプール(SSLPに追加)
5%:Noice Syndicateが$10,000ドルで購入(FDV25万ドルでTGEと同じ)
12ヶ月でベスティング
40%:流動性
尚、発行したトークンには2%の取引手数料が発生しますが、1.9%が創業者に0.1%がDopplerプロトコル(配布のためのプロトコル)に渡され、Noice側は一切徴収しません。
少し聞きなれない用語も出てきたと思うので、1つずつ説明していきます。
◼️Noice Ecosystem Fund & Noice Syndicate
Noiceチームは$NOICEの10%を利用してNoiceエコシステムファンドを運営しています。まずTGE時に5%を10,000ドルで購入します。この5%はファウンダーと全く同じ仕組みでアンロックされていきます。
それ以外にもNoiceエコシステムファンドは、25,000ドルから100,000ドルのOTC / SAFTで支援するブリッジファイナンス、デモデーの開催、投資家の詳細、公開市場から1万ドルから5万ドル相当のトークンを購入など、ファウンダーを支援する活動を行います。
一方のシンジケートは投資家の集合体です。各メンバーは1万ドルを出資し、10社の企業に対して優先的に投資する権利を得ます。各企業に対し、時価総額25万ドルの段階で1トークンあたり1000ドルを投資します。
◼️SSLP
Noiceの画期的な点は、「Raise as you rise(成長に合わせた資金調達)」モデルです。
上述したトークンアロケーションにあった「資金調達用にプール(SSLPに追加)」がここに該当します。
SSLPに確保されたトークンは、価格(時価総額)の上昇に応じて自動的かつ段階的に市場で売却されます。マルチカーブ方式と呼ばれ、あらかじめ設定された時価総額のレンジ(価格帯)ごとに一定割合のトークンが売りに出されます。
例えば、時価総額が$1M~$3Mの間で総供給量の約3%が売却され、このレンジで約5万ドルの資金調達が想定されています。以降も時価総額に応じて自動的にトークンが売却されていきます。
尚、時価総額$20Mまでは明確に定められていますが、それ以降の時価総額での販売はオプションとなっています。追加で最大5%を売却(累計約20%に到達)できますが、創業者の判断でSSLPポジションをクローズでき、以降のトークンは売りに出さずプロジェクトのトレジャリーに戻すことも可能です。
以上のように、SSLPの売却は段階的に行われ、各レンジの上限(価格トリガー)に達するごとにあらかじめ設定された割合のトークンが市場で売却されます。この仕組みにより、プロジェクトのトークン価格が上がり時価総額が成長するに連れて、創業チームは徐々に資金調達ができるようになっています。
この辺の技術的な詳細はGitHubをご覧ください。
変遷と展望
Noiceの創業者はHeet Tike氏です。Heet氏はインド出身の起業家で、@tkというハンドルネームでコミュニティとの対話やフィードバック収集を積極的に行っています。
上述した通り、2025年5月のにまずはFarcaster上のチップアプリから始まり、10月にv2となるトークンローンチパッドの構想を発表しました。
Noiceは本気のファウンダーがトークンを発行し、資金調達しながらグロースさせていく世界を夢見ています。
私たちの夢はただ一つです。次の100万人のファウンダーはベンチャーキャピタルから資金を調達するのではなく、会社設立初日にプロジェクトの資産を立ち上げ、5万ドルから500万ドルを調達し、何百万もの注目を集めることです。
そしてこれは彼らの経験に根ざした価値観でもあります。以下、ドキュメントの内容をわかりやすいように少し編集したものになります。原文はこちら。
私たちのチームは過去10年間の大部分を一緒に働いてきた数人の友人によって形成されています。VCからの資金調達もなく、注目もされていませんでした。
ある日、すべてが変わりました。2025年5月21日にNoice v1をリリースし、トークンを同じ日にローンチしました。初期時価総額は35,000ドルで、3ヶ月で50万ドルを調達しました。これは、Farcasterでの話題性、Coinbase上場、インドとグローバルでBaseバッチ#001を獲得したことによる期待値から、$NOICEが取引された結果で、私たちのランウェイ(活動資金)となりました。Coinbase VenturesとBalaji Srinivasanからの資金調達も果たしました。
バンガロールに住む無名の集団が、突然1,000万ドルの資金とインターネット上の 2,000万回の視聴回数を獲得しました。これが私たちの4番目の会社です。
何が変わったのでしょうか?私たちはトークンをローンチしました。
そしてそれはうまくいきました。右肩上がりで、ユーザー数も増加し、ランウェイも上昇しました。ストレスも増加しましたが、それは可能な限り最良の方法で増加しました。
そしてその混乱の中で、私たちは自分たちのような次のダークホースを見つけることに夢中になっていることに気付きました。
彼らはスタンフォード大学やYCのような場所にはいません。彼らには十分な資金があり、周りの人も皆同じことをしています。シード段階で何百万ドルも調達し、3 年目まで死を遅らせます(資金があるからです)。
私たちはその逆を考えます。死期を6ヶ月に早めるべきです。もしあなたのアイデアがダメなら、早く死んで先に進みましょう。時間は有限です。
非常に面白い仮説ですね。Noice v2はまさにこれを実現するために作られており、上述したような段階的な資金調達の仕組みを持ったローンチパッドが近日中にリリースされる予定です。
ファウンダーは随時SNSから受け付けていますが、Baseチェーン上ですでに存在し自力でトークンを発行し活動しているプロジェクトにも注目しています。
既存トークンもNoice上での取り扱いも可能で、$50,000分のトークンを用意すれば、Noiceチームが$50,000分の$NOICEを用意し、ペアで流動性が作られます。これによって発生する2%の取引手数料がチームに配分されるようになります(正確には1.9%が創業者に0.1%がDopplerプロトコルへ)。
ただし、他の条件としてトークン供給量の1%をNoiceエコシステムファンドに寄付することが必須です。このトークンは12 か月間にわたって毎月ベスティングされます。
また、ローンチパッド公開に先立ちそれらを盛り上がる面白いプロダクトがリリースされました。
◼️Oracle
2025年11月にNoiceはOracleと呼ばれるプロダクトをリリースしました。
これはNoiceを利用するプロジェクトの情報を拡散するたために構築されたAIエージェントです。
トークンページ(例: Noice )に追加するすべての更新、リリース、マイルストーン、物語、発表は、XのOracleによって拡散されます。
そしてさらに、Oracleではトレーダーがポストに「いいね!」するだけでトークンを購入できるようになっており、単なる情報の拡散以上の効果をもたらします。
これらはまさにFarcasterで実施していた機能をローンチパッドと組み合わせ、X上にも展開したものです。
トレーダー側は事前にOracleサイトで設定をする必要があります。
Xに接続する
BaseまたはSOLでウォレットに資金を入金する
以前のNoice v1と同じように、デフォルトの購入金額を設定
トークンを購入するには、Oracle のツイートに「いいね!」
また、購入にはポストに「いいね!」することで発生する通常購入と、 「aligned」とコメントすることで発生するスーパーバイの 2 種類があります。それぞれの金額を自身で設定できます。
例えば、以下のようなイメージです。あらかじめ設定しておけばこのコメントで自動的に購入されます。
また、Oracleにも独自トークンの$ORACLEがあり、これは$NOICEとペアになっています。Oracleはトークン購入に1%の手数料が発生しますが、これらはすべて$ORACLEの買い戻しとバーンに充てられます。
つまり、上述した段階的なトークン販売のローンチパッドがこれから公開され、その情報&トークン拡散機能としてのOracleという位置付けです。
OracleはBase開発者のjesseが取り上げたこともあり、リリース直後から話題となりました。
◼️ERC-S
また、ドキュメントを見ているとかなり面白い取り組みについても言及されていました。それがERC-Sと呼ばれる規格です。
ERC-Sは、スタートアップ企業のエクイティ(株式価値)をオンチェーンのトークンに反映させる新しいトークン標準です。Street Foundationが提唱し、Noiceがそのローンチパートナーとなっています。
ERC-Sトークンを発行する企業は、自社株式の一部を財団やSPV(特別目的事業体)に預託し、そのSPVをDAOによってガバナンスします。ERC-Sトークン保有者は、将来その企業が配当やエグジット(売却・上場)で得る利益の一部を、DAOの裁量による分配という形で受け取ることが可能になります。
トークン自体は形式上エクイティ(証券)ではありませんが、企業の成長に伴う“疑似的なエクイティ露出(pseudo-equity exposure)”を提供する仕組みになっています。
ここは非常に面白い取り組みなので、どこかで「ERC-S」だけで1本の記事にまとめたいと思います。先んじて気になる方はここにまとまってます。
NoiceはこのERC-Sの取り扱いも始めることが示唆されており、単純なトークンだけに留まらずオフチェーンの株式とも連動させたトークンローンチパッドの構想を実現させようとしています。
グローストークンの時代になる
最後は総括と考察です。
非常に面白いプロジェクトですね。最近のトレンドである「トークンローンチパッド」のど真ん中であり、そこにこれまで培っていたソーシャル上でのトークンバイラルの仕組みを合体させようとしています。
結局、どのトークンローンチパッドを使うかは「どれだけの資金が集まるか」に尽きます。そこにOracleという情報拡散とトークンをバイラルで購入できる仕組みを使うことによって、確固たるポジショニングを築こうとしています。
また、個人的には全てのトークンをNOICEとペアにさせている点、Noice Ecosystem Fundで各プロジェクトのトークンを保有し続ける点が単なるトークンローンチパッドではなく、どちらかと言えばYCやAlliance DAOといったエコシステムを構築しようとしていると感じ、とても印象的でした。
トークンの取引手数料を徴収するプロトコルも多いですが、そこは全額ファウンダーに還元、とにかくプロジェクトを大きくしてもらうことにコミットしてもらい、Noice側は投資したトークンアロケーションで儲けるという形です。
プロジェクトが大きくなればファンド金額が増加することに加えて、$NOICE価格も上がるので$NOICEの取引手数料も収益に繋がります。また、$NOICE価格が上がればペアになってる他のトークン価格も引きづられて上がるので新しい形のファンドエコシステムになります。この仕組みはかなり画期的だと思います。
最後に、僕は以前の考察記事で今後は「ガバナンスでもユーティリティでもなくグローストークンの時代になる」と書きましたが、これは確信を持っています。
今回リサーチしたNoice、以前リサーチしたBelieveなど普通のスタートアップがトークンを絡めて大きくしていく体制が整ってきています。また、既存の巨大プロトコルも独自トークンのユーティリティ設計で価値を上げることはできず、バイバックによって価値が裏付けられている場合が増えてきました。Uniswap、Pump.fun、Hyperliquid、dYdX、Lido、Aave等、収益の多くをトークンのバイバックに当てるようになってきています。
つまり、クリプトのプロジェクトであれ全く関係ないプロジェクトであれ、トークンを発行することで、資金調達とグロースを実現し、プロダクトが成長し収益が生まれたら徐々にトークンをバイバック(時にはバーン)することで価値を維持していく形です。
これが進むとERC-Sのようにトークン自体が株式と紐づくパターンもあるかもしれませんし、企業収益の一部をDAT的にクリプトの購入にあて、その資金でトークンバイバックが永続的に行われ続けるようにしても良いかもしれません。
いずれにせよ、スタートアップのグロースのためにトークンが利用される時代は必ず来ると確信していますし、それはここ数年で続々と出てくると思っています。
その基盤プロトコルの1つになるかもしれないNoiceは今後も追いかけていきます。
以上、「Noice」のリサーチでした!
参考リンク:HP / DOC / X
«関連 / おすすめリサーチ»
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
About us:「web3 for everyone」をコンセプトに、web3の注目トレンドやプロジェクトの解説、最新ニュース紹介などのリサーチ記事を毎日配信しています。
Author:mitsui @web3リサーチャー
「web3 Research」を運営し、web3リサーチャーとして活動。
Contact:法人向けのリサーチコンテンツの納品や共同制作、リサーチ力を武器にしたweb3コンサルティングや勉強会なども受付中です。詳しくは以下の窓口よりお気軽にお問い合わせください。(📩 X / HP)
→お問い合わせ先はこちら





















