おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日の記事では「トケノミクス」について深堀します。
トークンはブロックチェーンにおける大きなパラダイムシフトである一方で、昨今は単なる資金調達手段に終始し、価格が低迷する事例が多々あります。その中で、本質的なトケノミクスの価値はどこにあり、どのように設計していくべきか、自分なりの考えを整理してみました。
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↓先週の記事はこちら
それでは始めます。
📗トケノミクスとは?
👀ガバナンス、ユーティリティ、トケノミクスの変遷
✨理想的なトケノミクスを一旦整理
🚩トケノミクス3.0「グローストークン」とは?
📗トケノミクスとは?
まずは前提となる「トケノミクス(トークンエコノミクス)」の定義について整理します。ここも色々な表現や意見があるかと思いますが、一旦定義しないと議論を前に進めないので言語化します。
◼️トケノミクスの定義
トケノミクスとは、ブロックチェーン上で発行される「トークン」に関して、その供給量や配布方法、利用価値(ユーティリティ)、インセンティブ設計、流動性管理など、経済的・設計的側面を総合的に設計・運用する枠組みのことを指す。
小難しいですので単純化するとその名の通りトークン経済の設計であり、具体的には以下の2つの設計によると考えています。
需給設計
利用価値
発行量や増減調整
流通設計
流動性
没収&配布設計
トークンが何に利用できるのかはトークンの需要に直結しますが、その需要を予測した上でどれだけの発行量にするべきで、その発行量自体の増減の調整をどのように設計するべきか、これが需給の調整です。この需給調整によって価格を安定化します。
もう一方の流通設計は上記の需給調整による設計が正しく機能するための基礎設計です。いかに需要があったとしても流動性が低く購入手数料が高い(スリッページが高い)となると需要は減少します。また、必要に応じてトークンの再分配も必要だと考えており、大口ホルダーだけでなく小口も増やすなど、トークンが市場に流通し自由に簡単に売買できる状態を作ることが必須です。
この記事ではこれら全ての設計を”トケノミクス”と定義します。
◼️トークン発行の目的
もう一点、議論を始める前に整理しておきたい点は「そもそもなぜトークンを発行するのか」という点です。
最初に言及した通り、最近のトークン発行は単なる資金調達の手段に成り下がっていることが多いです。本来的には「実現したい何か」があり、その手段として「トークンを発行」し、それをワークさせるために「トケノミクス」があるべきです。
トケノミクスの起源の全てを解き明かすことは非常に難解ですが、やはり初期のトケノミクス誕生、トークン発行が生まれたのはブロックチェーンプロジェクト(Ethereum)の存在が大きいと言えます。
なぜEthereumはトークンを発行する必要があったのか。
それはシンプルで「ブロックチェーンの思想である分散型台帳(サーバー)を実現するため」です。
分散型サーバーを実現するためには
世界中から匿名で自由に参加できる
それぞれの参加者の善意に頼らずにインセンティブでワークする必要がある
プロジェクトの方向性も中央集権的ではなく分散型で決定する必要がある
これらを実現する必要があり、だからこそトークン(ETH)を発行しました。
バリデーターという仕組みを作り、インセンティブとしてETHを配布し、それだけでは供給過多になるので、ガス代をETHで固定することで供給量の減少とETH購入需要を創出しました(Ethereum上のアプリケーションを利用するには必ずETHが必要になるため、ユーザーはETHを購入する)。
さらに、ETHホルダーによるガバナンス投票でプロジェクトの方向性も決定するという仕組みを実現しました。
多少の差はあれど、ほとんどのブロックチェーンプロジェクトは同じような構造でトケノミクスを設計しているはずです。
ここでのポイントは以下の2点です。
明確に実現したいことが存在し、その手段としてのトークン発行であった
プロジェクトの経済とトークンの需給が完全に連動している
後者はブロックチェーンの経済(ビジネスモデル)は利用が増えてガス代収入が増えると、ETH需要が高まりバリデーター収入も向上するフローを指しています。ここが完全に連動していることが重要です。というか、本来はこうである必要があります。
👀ガバナンス、ユーティリティ、トケノミクスの変遷
ここまで述べてきた通り、Ethereum等のブロックチェーンにおいてはトークン発行の目的が明確であることがわかりました。また、トケノミクスもプロジェクト自体の経済と完全に連動していました。
しかし、ブロックチェーン誕生以降、その上で誰もが簡単にトークンを発行できる時代になると、”トークン発行”だけを採用する時代となり、裏付けとなるプロジェクトの経済とトークンの需給の連動がないトークンが乱立するようになりました。
ここも時系列で整理してみます。
◼️トケノミクス1.0:ガバナンストークン
まず、先行していたブロックチェーンプロジェクトを見習って、完全にプロトコル化(DAO化して分散型で運営)するためのガバナンストークンという位置付けでトークンを発行するプロジェクトが乱立しました。今でもガバナンストークンという表記は当たり前のように見かけます。
この問題点は幾つかあります。
①そもそも分散化した運営に無理がある
ブロックチェーンのような大枠がある程度決まっているプロジェクトに対して、例えばDeFi、GameFi、SocialFi等の具体的なプロダクトがある場合、分散化した運営では責任の所在が曖昧になりプロジェクトが推進されません。
ただ、ここはまだDAO化の途中であり、将来的にそのような未来が実現される可能性もありますが、個人的にはやはり具体的なプロジェクトを全て分散型で意思決定して進めていくことには無理があると考えています。
正直なことを言えば、ブロックチェーンでさえ運営会社があり、そこがグイグイと進めています。
②ガバナンスに参加したい人は多くない
また、ここも大きな課題です。人々のニーズとして、プロジェクトのガバナンスに参画して議論を交わす、意思決定に関与するニーズがあまりないことが明らかになりました。
単純にインセンティブがないですよね。議論自体が楽しい人はいると思いますが、それはごく一部で残りの大多数の人々はインセンティブがなければ議論に参加しません。便利なプロジェクトの体験をユーザーとして享受できればOKで、運営に深く関与したいと考える人は少ないです。
③需給バランスが成立しない
ガバナンスに参加できることを裏付け価値として採用しているトークンがガバナンストークンですが、そもそもガバナンスへ参加するニーズが薄いとしたら、需要はかなり限定的になります。
そうなると需要は増えず、また供給を調整する仕組みも存在していないとなると、トークン価格は下落します。トークン価格が下落したままガバナンスの仕組みだけ残っているとガバナンスの乗っ取りリスクが顕在化し、さらに危ういプロジェクトとして認知され、トークンを手放す人が増えます。
これらの問題を踏まえ、このままでは価格を維持できないと考え、よりトークン自体に価値を持たせる動きへと変わっていきました。
◼️トケノミクス2.0:ユーティリティトークン
ユーティリティとは実用性を意味する言葉ですので、ユーティリティトークンとは実用的な用途を持つトークンとなります。