【Llama】拡張可能なオンチェーンガバナンスを実現 / Polygon共同創設者やAave創設者等からシードラウンドで600万ドルを調達
「え、誰か1人が銀行口座管理してたの?それ不正し放題じゃん、危なくない!?」と言われる時代はすぐそこかもしれません。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Llama」についてリサーチしました。
«目次»
1、Llama とは?
- 仕組み
- オンチェーンガバナンスとは?
2、変遷と展望:600万ドルを調達、スムーズで拡張可能なオンチェーンガバナンスを実現する
- 創業背景
- 資金調達を実施
3、考察:オンチェーンガバナンスの未来
Llama とは?
「Llama」は、オンチェーンのアクセス制御とガバナンスのためのフルスタックプラットフォームです。細かく権限を付与し、プロトコルやDAO等での資金管理や開発管理をオンチェーンでスムーズに実施することができます。
◼️仕組み
「Llama」は「Action」と呼ばれるトランザクションを実行するための詳細な役割と権限を定義する完全に独立したインスタンスをデプロイできます。「Action」には、プロトコルのアップグレード、資金の転送、プロトコル パラメータの変更、または緊急一時停止のアクティブ化が含まれます。
そして、その「Action」のルールを定義する「Strategy」やアクション作成権限を管理する「Policy」という仕組みがあります。
簡単に言葉を整理すると以下になります。
Strategy:Action作成のルールを管理
Policy:Actionを実行できる権限を管理
Action:指定のスマートコントラクトを実行
尚、PolicyはERC721で発行される譲渡不可能なNFT(SBT)であり、そのSBTにRoleと権限IDを付与することで、Action権限を管理します。例えば、コア開発者にはプロトコルアップグレードの権限を与えるなど、細かい権限管理が可能です。イメージはDiscordの権限管理に近いですが、これらを全てオンチェーンで行うことができます。
また、こちらは少し複雑なので特に理解する必要はありませんが、Llamaの全体像についても紹介します。「Llama Factory」で「Llama Instance」と呼ばれるスマートコントラクトをデプロイします。このインスタンスにはStrategyやPolicyのルールが設定されていて、それに基づくActionを適宜実行できます。
中にLlama PolicyやLlama Coreという文言等もありますが、ざっくりの理解は上で説明したものと変わらないので、詳細が気になる方はドキュメントをご覧ください。
現在は全てのEVM系チェーンで稼働しており、気になる方はお問い合わせから連絡すると対応してもらえるようです。
◼️オンチェーンガバナンスとは?
オンチェーンガバナンスは、ブロックチェーンネットワークや関連するプロトコルの管理・運営に関する決定を、ブロックチェーン自体の技術を使って行うシステムです。このガバナンスモデルでは、通常、ネットワークの変更やアップデートに関する提案がブロックチェーン上で直接行われ、トークンホルダーやネットワーク参加者の投票によって決定されます。
○特徴
透明性: すべての提案と投票はブロックチェーン上で公開され、追跡可能です。
自動化: 投票結果はスマートコントラクトによって自動的に実行されるため、人間による介入が最小限に抑えられます。
分散化: ガバナンスはネットワークの参加者全体によって行われ、中央集権的な管理者がいない状態を目指します。
即時性: 提案と投票のプロセスがブロックチェーン上で行われるため、決定が迅速に行われることがあります。
○メリット
透明性と信頼性: すべての決定プロセスが公開され、ブロックチェーンの不変性により改ざんが困難です。
コミュニティ主導の意思決定: トークンホルダーが直接ガバナンスに参加できるため、コミュニティの意向が反映されやすくなります。
効率性: 自動化されたプロセスにより、決定が迅速に行われ、実行されます。
○課題
投票参加率の問題: 投票に十分な数の参加者がいない場合、少数の参加者による決定が行われる可能性があります。
短期的視点のリスク: 投票者が短期的な利益を優先する可能性があり、長期的な健全性が犠牲になることがあります。
複雑性: ガバナンスのプロセスが複雑であると、一般のトークンホルダーが参加しにくくなる可能性があります。
オンチェーンガバナンスは、DeFiやDAOなどの分野で注目されています。Llamaはこのオンチェーンガバナンスを実現するプラットフォームです。
変遷と展望:600万ドルを調達、スムーズで拡張可能なオンチェーンガバナンスを実現する
◼️創業背景
LlamaはAustin Green と Shreyas Hariharanによって設立されました。

彼らはこれまでに、Aave、Nouns、Lido、dYdX、ApeCoinなど、暗号資産業界における最大のプロトコルとコミュニティに貢献してきました。その中で感じた課題感を元にLlamaを立ち上げました。
従来のガバナンスシステムは運用コストが高くなるか集中化する傾向にあります。Llamaは、プロトコルが最初はシンプルで、徐々に意思決定を分散化できるように設計されています。分散化はきめ細かいアクセス制御によって実現され、各ガバナンス参加者にはその機能を実行するために必要な最小限の権限が与えられます。この精度は、強力なユーザー保証を維持しながら、インスタンスが運用の複雑さを管理できるようにすることを目的としています。
Llamaはモジュラー式で次々とアクションを追加していけるため、プロトコルの成長と仮説検証に合わせてオンチェーンガバナンスを低コストでアップデートしていくことができます。
◼️資金調達を実施
2023年11月6日、シードラウンドで600 万ドルを調達したことを発表しました。
ベンチャーキャピタル企業のFounders FundとElectric Capitalがこのラウンドを主導し、Aave創設者Stani Kulechov氏、Polygon共同創設者Sandeep Nailwal氏、Twitter元企業戦略担当副社長Elad Gil氏、Stripe製品・ビジネス担当社長Will Gaybrick氏、Coinbaseプロトコルも参加しました。
これらの資金でより多くのエンジニアを雇用し、プロダクトの開発に務めるとのことです。
考察:オンチェーンガバナンスの未来
最後は考察です。
オンチェーンガバナンスは非常に理想的ですが、まだそれを完全に運用できているプロジェクトは多くありません。それには”そもそもの運用ノウハウがない”という課題もありましたが、”全てをオンチェーンにするコストが高すぎる”という課題もありました。
例えばイーサリアムを基盤にしたコミュニティで全てをオンチェーンでガバナンスしようとすると、ガス代が高すぎてとても回りません。ですが、ここ最近のL2の発展やガス代の安いL1の登場によって、オンチェーンガバナンスが実現できるハードが揃ってきました。
個人的にもオンチェーンガバナンスには非常に興味が強いです。これは必ずしも分散型の運営にしなかったとしても、全ての意思決定に誰もが参加できる余白があり、そのプロセスと決定内容が透明性高く公開され続けるようになります。
DAOで利用できることはもちろんのこと、例えばシェアハウスやコワーキングスペース等の共同スペースの管理、会社組織、NPO法人、政治、ファンドなど、あらゆるプロジェクトに応用できます。
もちろん透明化させたくない人は多く存在すると思うので、その辺りまで浸透するには時間がかかると思いますが、いずれはあらゆるプロジェクトの一部にブロックチェーンが採用されて、オンチェーンガバナンスで稼働する時代は到来しそうです。
「え、誰か1人が銀行口座管理してたの?それ不正し放題じゃん、危なくない!?」と言われる時代はすぐそこかもしれません。
個人的にもプレイヤーとしてオンチェーンガバナンスの運営方法の塩梅を学んでいきたいと思います!
以上、「Llama」のリサーチでした。
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