【NounsDAOフォーク続報】結果の整理と本家DAOの方針を確認 / NounsDAOシーズン3開幕!? / DAOは死んだのか?その未来を考察する
472 Nounsがフォークに参加することが決定し、全体の約56%がフォークしました。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は以前も取り上げたNounsDAOフォーク問題の続報です。
«目次»
1、NounsDAOのフォークって何?
2、NounsDAOフォークの結果は?
3、本家NounsDAOはこれからどうなる?
4、DAOは死んだ?DAOの未来はどうなる?
NounsDAOのフォークって何?
こちら細かくは以前取り上げた記事に書かれているので、そちらをご覧いただきたいのですが、簡単にだけおさらいします。
1日1体のアートが自動生成されオークションにかけられ、その収益が100%DAOにプールされ、ホルダーの投票でその資金の使い道を決めるというDAOの究極系とも呼ばれるプロジェクトがNounsDAO
市場の冷え込みやプールされた資金の減少から購入価格よりNounsの価格が下落していることを懸念したメンバーがDAOから離脱することを提案
新しく実装されたプロトコルで20%以上の賛成があれば、サブDAOとしてフォークされた新しいDAOを作ることが可能になった
フォークされるDAOには”Vanilla ragequit”と呼ばれる機能が実装され、NFTをETHに変換しDAOから抜けることができる
価格低下が続く中でもうDAOから抜けて、利確や損切りをしたい人が増えたのでは?と予想されていました
以上、簡単に言えばこんな感じです。フォークが可決され、1週間ほどかけて賛成するメンバーが募集され、1週間ほど前にフォークが実行されました。
NounsDAOフォークの結果は?
結果は472 Nounsがフォークに参加することが決定しました。Nounsは1日1つ新規発行されるので、フォーク時点で発行されていたのは合計846Nounsなので約56%がフォークに賛同したことになります。結果、約16,757 ETH(現在2,730万ドル相当)を新しいDAOに持ち出すことになりました。
残った本家DAOには13,503ETHが残っており、これは変わらずにNFTホルダーが投票によって利用できます。
また、フォーク先のDAOへの以降は元々存在していたNounsのNFTは本家DAOのトレジャリーに戻し、保有していたNFTと対応する新規発行されたNFTが発行される形となっています。フォーク先のDAOではすでに300近いNounsがバーンされ35ETHと交換されていました。
一応、フォークの目的は全て多数決で議論するとマイノリティが蔑ろにされ続けるので、フォーク機能を実装しようという名目でしたが、裏の目的は35ETHを獲得してDAOから抜けることではないかと言われていました。
そして、この結果を見るとその通りだったのではないかと思います。
個人単位で見ればNFTを売却することで利確や損切りはできますが、大口のホルダーであるほど、NFTを一度に大量に売却すると値崩れを起こすので、安全に固定された価格で一気にETHへ変換したいという気持ちもあったのかもしれません。
本家NounsDAOはこれからどうなる?
では本家NounsDAOはこれからどうなるのでしょうか。
フォークしたからと言って本家DAOは変わらずに運営されていきます。1日1体が新規発行され、その収益がDAOにプールされ、プールされた資金はDAOメンバーによって利用されます。
フロア価格も見てみましたが、多少落ちたくらいでそこまで大きな値崩れはしていません。
ただ、揺れていることは間違いなく、ファウンダーの1人のリーダーシップが足りていないことや振る舞いに対して批判が集まり、ファウンダー報酬を放棄するような議論も出ているようです。
また、別のファウンダーのsenecaという人物は今回のフォークを受けて今後のNounsDAOの方向性に言及していました。
画像を翻訳した内容を抜粋して掲載します。
フォークからの教訓の1つは「Nounsのゲームではトレジャリーを利用しなければ、それが回収されるということである。そしてそれは健全な力学に応じて起こるものであり、Nounsはそういうゲームである」
オークションの需要が評価額を超える、もしくは同等にしていくべきである
Nounsをサステナブルに運営していくには次の2つの方法で健全な状態に戻す必要がある
支出を増やす
フォークしたNounsの配布
支出に関してはトレジャリーから積極的な投資をしていくべきだが、無駄な実験や無制限にお金を出すべきではない。一流のクリエイターが集まるようなDAOにして、ブランド価値を高めることに投資していく
フォークしたNounsはトレジャリーに保管されており、これを配布することでNounsに参加したい人を増やし、決定権を分散し、一時的に評価額が下がることになる
解釈が違えば申し訳ないのですが、僕は以下のように解釈しました。(元画像も貼ってあるので念のためそちらもご覧ください)尚、例えで出す数字はわかりやすいようにしていますので、実態とは異なります。
“帳簿価格”がトレジャリー資金/現在のNouns数とすると、例えば100ETHがトレジャリーにありNFTが100個だと帳簿価格は100ETH/100個=1ETHとなる
この時に毎日のオークションで例えば0.8ETHで落札されているとすると、オークション価格 < 帳簿価格となり、フォークが発生する(健全なDAOではない)
フォークの理由は、オークションで落札した金額より帳簿価格の方が高いので、すぐに転売することで利鞘が生まれると同時に、今後の価格下落の懸念が生まれるので、すぐに利確したくなる
よって、常に帳簿価格 < オークション価格にする必要がある
そのためには、①帳簿価格を下げる、②オークション価格を上げる、2つの取り組みが必要
①に関しては、現在はフォークされたNounsの元NFTがトレジャリーにあるのでこれを再配布することで帳簿価格は下がります
ex.)100ETHで100体だったところから、60体が60ETHを持ってフォーク、元のDAOは40体で40ETHが残る。そして60体のNFTがトレジャリーに残る。
この60体を配布しなければ帳簿価格は変わらず1ETHのままですが、この状態で60体を再配布すると、40ETHで100体となり、帳簿価格は1ETHから0.4ETHへ下落します(他の影響を考えず簡易計算です)
②に関しては、一流のクリエイターに資金を提供するようにして、ブランド価値を高めることに注力する
無駄な実験やあまり実績のない人への資金提供はやめて、NounsDAOが一流のクリエイターに好かれるような組織にしていく
そうすれば一流のクリエイティブが生まれ、ブランド価値が高まり、オークション価格も上がっていくはず
確かに理に適った考えです。ただ帳簿価格を下げる提案は既存のNounsの価値を毀損する可能性もあるのでコミュニティからは反発されそうです。あるとすれば、既存NounsホルダーにNFTを配布することで一体あたりの価格は下がるが、複数体所有することで総量は変わらなくするやり方でしょうか。
もちろんこれはファウンダーの1人の意見ですので、Nounsは提案と投票によって決定します。これからも注目です。
DAOは死んだ?DAOの未来はどうなる?
さて、ここからは個人の考察となります。
このNounsDAOのフォークを受けて、SNS上では多くの議論がされています。そのプロセス自体がDAOっぽくて素敵だなと思いますし、未来は誰にもわからなので僕個人も色々な方の意見を見て勉強させてもらっています。
その上で、僕自身の意見としては「DAOは全くもって死んでいないし、NounsDAOは変わらずDAOの最前線であり続ける」です。
ふわっとした言葉で恐縮ですが、僕は今回のNounsDAOの一連のフォークを見て正直非常に感動しました。「すごい!DAOすぎる!!」という感想を持ち、改めてweb3の凄さを噛み締めていました。
僕が思うweb3の凄さは「人の手を介さない状態で仕組みを作れる」点で、カッコよく言えば「分散型プロトコルの構築」です。
要するに「予め設定したインセンティブ調整に基づいて稼働し続ける仕組み」を作り上げることで、自動成長していくプロジェクトを生み出せるんです。
例えば、ビットコインをはじめとしたブロックチェーンはマイニングを攻撃すれば自分たちが意図した不正履歴を作ることができます。51%アタックとも言われますが、すごく頑張れば不正できちゃうんです。ただ、その不正の履歴もチェーンに刻まれて、不正がわかった瞬間に不正前に戻り、不正後のトークンは全て価値を失います。(ざっくり説明です)
何が言いたいのかというと、「不正するより不正せずに協力した方が経済合理性が合う(頑張って不正しても1円にもならない)」ということです。
僕は人は経済合理性が合う行動をする生き物だと思っているので、インセンティブ調整こそが全てだと思っており、だからこそweb3の凄さに惹かれました。
そう考えると、NounsDAOの今回のフォーク問題はまさにDAOの進化の過程にあった出来事と言えますし、DAOであったが故に起こった出来事であると言えます。ファウンダーが明確にリーダーシップを発揮するコミュニティであれば起こりませんでした。
完全に分散化されたDAOはインセンティブ調整がおかしい部分があればそこに問題が発生します。そして、そこを修復・改善し改めてスタートを切ります。その螺旋階段を登る中で徐々に洗練されたインセンティブモデルとなっていきます。
そして、これが分散型で行われて自動成長していくところがマジでDAOのすごいところで、NounsDAOが最強と言われている所以だと思います。
ここまで抽象的な書き方なので伝わっているのか不安ですが、僕個人はそのように考えています。
DAOが死んだとか、DAOはやっぱり無理だったとかではなく、むしろDAOであったが故に起こったことです。
唯一、今回の出来事でDAOが死ぬ(NounsDAOが終わる)とすれば、NFTの価格が暴落することです。そうすると経済的なインセンティブが弱くなるので、経済合理的にNounsDAOに参加する必要性がなくなるので、終わっていきます。
しかし、フロア価格も見てもあまり下がっていないところを見ると、まだ続くと思います。その上で、これだけの大きな出来事があっても価格が下がらないという事実を証明した出来事にもなったので、むしろこれから価格上がっていくのではないかとすら思います。
ビットコインは過去から今まで様々な出来事がありましたが、結局稼働し続けているので、その稼働の歴史が信頼になっています。
個人的にNounsDAOのフォーク問題は一定の信頼を獲得する機会となったと感じます。なので、DAOの信頼がなくなったというよりも、これだけあってまだ維持され続けているDAOってやっぱりすごいと思っています。
あくまで個人の感想ですが、今回の問題を見てそう感じました。これからもNounsDAOを追いかけていきたいですし、DAOはやっぱりいいなと感じて自分でもそういうものを作ってみたいなとより一層感じました。
以上、NounsDAOフォーク問題の続報とそれを受けての考察でした。面白いと思った方は記事へのいいねやコメント、SNSでのシェアにご協力いただけると幸いです!
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