【GAIB】GPUを担保とした利回り付きステーブルコイン「AID」を発行するAIインフラ経済レイヤー / GPU投資契約をオンチェーン化し、その収益をDeFiユーザーに還元 / @gaib_ai
RWAFiを推進します。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「GAIB」についてリサーチしました。
🤖GAIBとは?
⚙️詳しい仕組み
💬RWAFiの市場拡大
🧵TL;DR
GAIBは、AI時代の基盤資産であるGPUを担保とした利回り付きステーブルコイン「AID」を発行するプロジェクト。
クラウド事業者へのGPU投資契約をオンチェーン化し、その収益をDeFiユーザーに還元する「AIインフラ経済レイヤー」を構築。
投資契約は債務型・収益分配型があり、過剰担保・保険・SPCスキームなど多層的なリスク管理で安全性を担保。
2023年設立、2024年に$5Mプレシード調達、2025年にAmber Group主導で$10M調達し、AID Alphaで2,800万ドルの預託を達成。
🤖GAIBとは?
「GAIB」は、AI時代における新しいインフラである高性能GPUを裏付け資産とした新たな利回り資産を創出するプロジェクトです。
GPUを使ったAI計算需要は急増していますが、従来の金融では対応が遅く資金調達が困難でした。GAIBはこのギャップを埋め、誰もがAIインフラ市場の成長に参加できる仕組みを提供しています。
具体的には、クラウド事業者やデータセンターへのGPU調達資金を提供し、その契約(債権や収益分配権)をオンチェーン上でトークン化します。これによって、GPU保有者(提供側)と投資家(資金側)を結び付け、GPU計算需要から生まれる収益を投資家の利回りとする「AIインフラの経済レイヤー」を構築しています。
以下、プロトコルの全体像です。
◼️中央:GAIBの役割
GAIBはクラウド/データセンターへ資金を提供し、その見返りとしてGPUリソースを取得。
GPUの収益をもとにオンチェーン上でAID(AI合成ドル)を発行し、DeFiで運用できる形に変換。
◼️オフチェーン側(上部)
Cloud/Data Center群:AI需要に応じてGPUを運用する実事業者。GAIBがこれらに資金を提供し、見返りとしてGPUのリースや収益分配契約を得る。
Treasury Bills(米国債など):AID発行時の担保資産の一部。
Third-Party(監査、信用保証、カストディ):オフチェーン契約の信頼性を支える外部機関。
◼️オンチェーン側(下部)
All Users / KYC済ユーザー:誰でもAIDを取得・ステーキングできるが、一部は本人確認(KYC)が必要。
Mint(発行)・Redeem(償還):ステーブルコインとAIDを相互交換可能。
Liquidity Pools:AIDの流動性を供給し、DeFiでの活用を可能に。
ステーキング:AIDを預けることでsAIDを得て利回りを受け取れる。
ポイントは「GPU投資契約のオンチェーン化」とその資金提供元になり、また収益分配の対象となる「AID(AI合成ドル)」の2つです。
すごく簡単に言えば、GAIBは担保資金でGPU投資を行いその収益をホルダーに分配するステーブルコインプロジェクトです。そのステーブルコインをAID(AI合成ドル)と呼びます。
⚙️詳しい仕組み
では、より詳しく見ていきます。
◼️GPU投資契約のオンチェーン化
まずは投資側です。
GAIB経由で組成されるGPUファイナンス契約にはいくつかの形態があります。
クラウド事業者等への資金融資(債務モデル)では年率10~20%程度の利息収入、収益シェア型の出資(エクイティモデル)では60~80%以上の高いリターンが見込まれています。
契約は物理的なGPU資産で裏付けされており(NVIDIA H100/H200等の最新GPUが中心)、万一相手が債務不履行の場合にはGPUを押収・売却して投資家への返済に充てるか、GAIB提携のデータセンターでGPUを運用継続して収益化する措置も取られます。
また、契約ごとに過剰担保を設定し(例: 購入額の約133%相当の債権を用意)、また一部の資金は準備金(キャッシュリザーブ)として積み立てて利息支払いに備える仕組みです。さらに必要に応じて債務保険を付与し、万一のデフォルト時に保険金でカバーする体制も構築しています。
このように多層的なリスク管理で投資家保護を図りつつ、AI需要に裏付けられた実質利回りを創出している点がGAIBのビジネスモデルの特徴です。
オンチェーン化のスキームでは、まずGAIBは各GPUファイナンス案件ごとにSPC(セグリゲーテッド・ポートフォリオ・カンパニー)という倒産隔離型の特別目的事業体を活用し、投資家との契約や担保管理を行います。
GAIBの「トークナイゼーション・エンジン」を通じてSPCの持つ債権・収益権がトークン(GPU担保トークン)としてオンチェーン化され、投資家はステーブルコインをGAIBのスマートコントラクトに送ってこれらのトークンを受け取ります。
この一連の流れがAIDの発行プロセスに相当し、投資家は取得したAIDトークンを通じてSPCポートフォリオの将来収益に対する経済権益を保有することになります。
オンチェーン上では、GAIBのDeFi VaultにSPCからのキャッシュフローが送金され、これがAIDステーキング者(sAID保有者)の利回り源となります。
◼️AIDの仕組み
先ほどから名前が出てきていますが、GAIBの中心プロダクトはAIDと呼ばれるAI合成ドルです。
AIDは1トークン=1米ドル相当の価値を持つステーブルコインであり、その裏付けとしてGAIBが組成した複数のGPUファイナンス契約ポートフォリオおよび米国財務省短期国債などの流動資産で100%超の担保保有を行います。
投資家がGAIBプロトコルにUSDCやUSDTなどのステーブルコインを預け入れると、その額と同数のAIDトークンが新規発行(ミント)されます。一方、ポートフォリオから収益が上がり利払いする際には、対応する額のAIDがバーンされる仕組みで、これによりAIDの発行残高は常に裏付け資産の価値と連動するよう設計されています。
AIDトークン自体は保有しているだけでは利息を生みませんが、AIDをステーキングすることで「sAID」トークンを受け取ることができ、これによって実質的な利回りを享受できます。
sAIDはステーキングポジションの権利を表すリキッドトークンであり、1 sAIDあたり対応するAIDの持分と未払利息分が蓄積されていきます。GAIBのポートフォリオが生む収益はプロトコル内のDeFiボールトに集積され、sAID保有者はアンステーク(引き出し)時に預けたAID+発生利息を受け取ります。
また、AIDおよびsAIDはDeFiエコシステムとの連携も視野に入っており、それ自体を他のレンディングプロトコルに預け入れたり、流動性提供に利用したりと、運用戦略に入れることが可能です。
🚩変遷と展望
GAIBは、AIインフラ需要の爆発的増加に対応するために2023年に設立された、GPU投資契約のオンチェーン化を実現するブロックチェーンプロジェクトです。
特に、生成AIの急速な普及により、NVIDIAのH100など高性能GPUへの需要が急騰する一方、それを活用するクラウド事業者側では資金調達や供給の制約が大きな課題となっていました。GAIBはその課題に対し、リアルなGPU資産を裏付けとするDeFi資産を設計することで、AIインフラとブロックチェーン金融を結びつけることを目指しました。
創業者の一人である Kony Kwong(コニー・クォン) 氏は、かつてHuobiやVCファームでRWA分野に関わっていた経歴を持ち、暗号資産の枠を超えた金融商品設計に長けています。彼は「GPUは次の石油であり、それを経済的に流動化するレイヤー(Economic Layer)が必要」と語り、これをGAIBのコンセプトと位置づけました。
もう一人の共同創業者 Alex Yeh(アレックス・イェ) 氏は、AIクラウドインフラの実業経験者であり、半導体業界に深いネットワークを持つ人物です。彼の産業知見が、GAIBがリアルなクラウドGPU案件に接続できる下地を作っています。
さらに、CTOとして Jun Liu(ジュン・リウ) 氏が参画し、プロトコルのコアアーキテクチャ設計やスマートコントラクト開発を担当。Cornell大学PhDで、DeFi技術の経験も豊富です。マーケティング・事業戦略面では、Binance LabsやMask Networkを経てきた Mathilda Sun 氏が広報・エコシステム展開をリードしています。
GAIBのプロジェクトとしての最初の大きな転機は、2024年12月に完了したプレシード資金調達($5M)です。
リード投資家にはHack VC、Faction、Hashedが名を連ね、他にもAnimoca Brands、Spartan Group、NEAR Foundation、Aethirなど、web3・AI・クラウド領域の著名ファンドが出資しています。この段階でプロトコル設計と実証実験が完了し、複数のGPUクラウド事業者との提携も進んでいました。
2025年3月には、GAIBのコアプロダクトであるAID(AI Synthetic Dollar)を正式発表しました。
この発表を受け、2025年5月には「AID Alpha」と呼ばれる先行提供プログラムをローンチします。ユーザーはUSDC/USDTを預けて「AIDa」トークンを受け取り、日次でポイント「Spice」を獲得することが可能になりました。
Spiceは将来的なガバナンストークンや限定NFT(Fremenシリーズ)との交換が予定されています。AID Alphaは3ヶ月間で累計2,800万ドル超の預金を集める成果をあげ、プロトコルの初期流動性と実需検証に成功しました。
その直後の2025年7月末、GAIBはAmber Group主導の戦略ラウンドで1,000万ドルの資金を追加調達を発表します。
Amber Groupはナスダック上場企業を持つ大手金融プレイヤーであり、今回の出資はその子会社経由で実施されました。これによりGAIBはアジア・北米におけるAIクラウド企業へのGPUファイナンス展開を加速するとともに、プロトコルのガバナンス強化やDeFiとの統合を進めていく体制を整えました。
GAIBは現在、Ethereum、Arbitrum、Base、BNB Chain、Seiなどのマルチチェーンで展開され、DeFiとの接続性も向上しています。今後はAIDの正式ローンチ、流動性プールの拡大、DeFiレンディングやデリバティブへの統合、さらにはSpiceポイントからのガバナンストークン展開が予定されています。
💬RWAFiの市場拡大
最後は総括を考察です。
とても面白いプロジェクトですね。個人的にこのようなRWAFi系のプロジェクトは増えていくと考えています。特に、ステーブルコインとセットで担保資金をRWAに投資してその利回りをユーザーに分配する形は増えていきそうです。
ただ、その場合当然ながら安定運用でき、継続的に利回りを創出し、デフォルトリスクが少ない必要があります。
その点で、その商材選定こそが肝で、技術的または法的整理はすでに多くのユースケースが出てきているのでそこまで難しくありません。GAIBも近いスキームでしたが、大体の場合は契約または所有毎に特別会社を設立し、その会社の所有権をオンチェーン化、そこからの収益をVaultに入れてユーザーに分配するという形を取っています。
この会社設立や所有権なのか別権利なのかは法務処理なので異なりますが、RWAFiをやる上での基本スキームとしてすでに成立しています。
少し話が派生しますが、ブロックチェーンを活用した新しいプロジェクト立ち上げの相談を受ける際、その多くは既存で盛り上がっているユースケースからそのスキームを学び、自社産業に横展開しようとします。
それは間違いではないと思いますが、商材が違うとスキームが成立しないことが多々ありますし、本当に盛り上がっているのか(その盛り上がりは持続可能なのか、収益は出ているのか)の検証が足りない場合もあります。
個人的には面白いユースケースはそれだけで好きなのでとりあえず色々なプロジェクトをやってみる事には賛成だったりもしますが、収益が出ないと続けられなかったり、NFTであっても新規トークンを出す以上は一定の責任が生じるので何らかの仮説や検討を踏まえた上でスタートするべきだと思っています。
クリプト領域はあらゆる知識が必要で難しいので事業検討がおざなりになりがちですが、RWAFi等の現実世界の収益を回すプロジェクトは特にその設計が重要になると感じました。
RWAに関していえは既存のWeb2事業者の方が知見が豊富でアセットもあるので、十分勝ち目があると思うので、今後も色々なユースケースが出てくることが楽しみです。
以上、「GAIB」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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