【Twyne】DeFiレンディング市場の信用枠デリゲーションレイヤー / 未使用の借入余力を他人に貸し出し / DeFiの追加レイヤーの存在感が増す / @twynexyz
DeFiレンディングで更なる利回りを期待できます。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Twyne」についてリサーチしました。
☁️Twyneとは?
⚙️詳しい仕組み
🚩変遷と展望
💬DeFiの追加レイヤーの存在感が増す
🧵TL;DR
Twyneは、AaveやEulerなどのDeFiレンディング市場の上に構築された「信用枠の委譲レイヤー」です。
貸し手は未使用の借入余力を他人に貸し出し、借り手はより多く借りることで資本効率を高められます。
リスクに対しては、継承型清算や損失配分、安全バッファなど多層的な安全設計が導入されています。
既存プロトコルとの連携を前提に成長を目指すTwyneは、DeFiの第二段階を象徴する追加レイヤー型プロジェクトです。
☁️Twyneとは?
「Twyne」は、イーサリアム上のDeFiレンディング市場において「クレジットの委譲(デリゲーション)」を実現するユニバーサルなレイヤーです。
具体的には、既存のプロトコル(Eulerなど)の上に非カストディアルな追加レイヤーとして動作し、貸し手の未使用の借入枠(信用余力)を他のユーザー(借り手)に委譲して活用できるマーケットプレイスを提供します。
これにより、貸し手は本来使われずに眠っている信用余力から追加の利回りを得ることができ、借り手は通常のプラットフォームより多くの資金を借り入れるか、または清算リスクを低減するためのクレジットバッファを得ることができます。
では、その具体的な仕組みについて、既存のレンディング市場の背景(課題)から解説していきます。
◼️遊休資本の存在
DeFiレンディング市場では全体の約60%以上の借入余力が未利用のまま放置され、資産利用率が低下し利回り(APY)低迷の一因となっています。
この結果、以下のような状況になっています。
借りたい人は「もっと借りたいのに借りられない」
貸している人は「資産を預けても利回りが少ない」
プロトコル全体の資本効率が悪くなっている
この背景にはDeFiレンディングの構造が存在します。AaveやEulerなどの既存レンディングでは、担保に対して借りられる金額(LTV)が制限されており、多くのユーザーは実際には借りていない=「遊休資本」が多いです。
例えば、担保に100 USDC入れても、実際の借入は70 USDCなどにとどまり、残りの30 USDC相当の「借入余力」は誰にも使われず存在しています。
ただし、これはボラティリティが激しく、匿名性も高い暗号資産市場において安全性を担保するために必要な機能です。より多くの資金を貸し出し、悪用されてしまっては安全にDeFiレンディングが機能することはできません。
よって、「Twyne」は既存のDeFiレンディングの安全性を毀損しない形で、より資金効率が高まるような仕組みを構築しています。
◼️借入余力(信用枠)を委譲
Twyneは未活用の信用枠を借り手に委譲することで遊休資本に新たな利回り(Delegation APY)を生み出し、貸し手の総合利回りを向上させます。貸し手はベースのレンディング利息に加えてTwyne経由の委譲手数料収入を得られるため、「プロトコル本来の利息+Twyne利息」の二重の収益源が実現します。
借り手側はTwyneを介して追加の信用供給を受けることで、担保に対する借入可能額(LTV)を通常より引き上げることができます。
これからその仕組みを詳しく解説していきますが、イメージはリステーキングですね。リステーキングはステーキングしている証明をプロトコルに預け入れることで追加利回りを受けますが、Twyneでもレンディングの預け入れ証明トークンを預け入れることで信用枠のデリゲーションを可能にし、追加利回りを実現します。
⚙️詳しい仕組み
では、その仕組みを詳しく見ていきます。
主に信用枠の委譲方法の仕組みと、安全性への配慮の2つの側面から見ていきます。
◼️信用枠の委譲方法
プロトコルのフローから説明します。
貸し手(Credit LP):
AaveやEulerにUSDCなどをサプライ(→ aUSDC, eUSDCを取得)
TwyneのCredit VaultにaUSDCをステーク
Credit Vaultが借入枠だけを借り手に貸し出せる状態に(資産そのものは預けっぱなし)
借り手:
自分用のCollateral Vaultを作成し、担保(例:eWETH)を預け入れる
対応するCredit Vaultから「信用の予約」を行う(≒信用枠の借入)
AaveやEulerから、通常以上の金額を借り入れられるようになる(LTV引き上げ)
Credit Vaultは貸し手が受領証(aTokenやeToken)をステークし、借入枠を貸すプールで、Collateral Vaultは借り手が担保を預け、Credit Vault から信用を「予約」して借入上限を上げます。
ここでのポイントは、TwyneはAaveやEulerのような基盤レンディングプロトコルに対して、“あるユーザーの担保が実質的に増えたように見せる”ことで、より多くの借入を可能にしている点です。
AaveやEulerのスマートコントラクトの“担保判定ルール”をうまく利用して、委譲された信用を“見せかけの担保”として一時的に追加することで、LTVを上げています。これによって、レンディングプロトコル側には特別な通知や改変は不要になります。
この仕組みであることで、Twyneが借入して再貸し出しするわけでもなく、あくまで信用のデリゲーションレイヤーとしてだけ存在しています。
◼️安全性の確保
ただし、過剰な借入には当然ながらリスクが伴います。では、Twyneはそのリスクにどのように対処しているのでしょうか。
まず前提として、TwyneはAave側に特別な改修を加えるものではありません。そのため、Aaveなどの基盤プロトコルにただ資産を預けている通常の貸し手にとっては、Twyneの動きは一切影響を及ぼしません。Twyneに参加する貸し手のみが、追加利回りとリスクを引き受ける構造になっています。
このような設計のもと、Twyneは独自の清算方式「Liquidation by Inheritance(継承型清算)」を構築しています。これは、一般的なDeFiプロトコルで行われる強制売却型の清算とは大きく異なり、市場への影響を最小限に抑えることを目的とした、安全性を重視した仕組みです。
① 通常のDeFiの清算(例:Aave、Compoundなど)
たとえば、あなたが担保として100 USDCを預け、95 USDCを借りていたとします(LTV 95%)。このとき、ETHなどの価格が下落し、LTVが清算ライン(たとえば90%)を超えると、清算人があなたの担保を強制的に売却して借金を回収します。
その結果、あなたは担保を失い、市場には売却圧力がかかり、清算人は差額(清算ボーナス)を得るという仕組みです。
② Twyneの清算:Liquidation by Inheritance(継承型清算)
これに対してTwyneでは、「担保を売る」のではなく、「ポジション(借入と担保のセット)を他のユーザーにそのまま引き継いでもらう」というアプローチを取ります。
例えば、借り手であるAliceのポジションが、担保100 USDC/借入95 USDCという危険な水準(LTV 95%)に達したとします。このとき、清算人であるBobが「このポジションを継承すれば得になる」と判断すれば、Aliceのポジションをまるごと引き継ぎます。
Bobは、自身の担保20 USDCを加えてポジションを再構成し、結果的に「担保120 USDC/借入95 USDC(LTV 約79%)」という安全な状態を得ることができます。
このように、担保を市場で売ることなく、借入ポジションごと別のユーザーに移転させることで、安全性を確保しつつ、市場への影響も抑えることが可能になります。
③ 外部清算(Fallback Liquidation)
しかし、もしこの継承型清算が成立せず、誰もポジションを引き継がなかった場合には、Twyneの借り手ポジションは、通常のレンディングプロトコル(AaveやEuler)の清算対象になります。
この際には、担保が市場で売却され、借り手の自己担保だけでなく、貸し手から委譲されていた担保の一部も清算に巻き込まれる可能性があります。これはTwyneにおける「最悪のケース」と位置づけられます。
④ 清算後の損失配分ロジック(貸し手の保護)
こうした外部清算が起きた場合でも、Twyneは損失を最小限に抑えるための再構成ロジックを備えています。
清算後に回収された資産をもとに、Twyneは借り手のVaultを「最大許容LTVギリギリの状態」に自動的に再構成します。その際、まずは借り手自身の担保から優先的に減らし、委譲されていた貸し手の担保は可能な限り保護されるように再配分が行われます。
この仕組みにより、借り手は新たな借入ができない「封じられた状態」に置かれ、貸し手は不公平な損失を被るリスクを大幅に軽減できます。
⑤ 安全バッファ(β係数)
さらにTwyneでは、借り手のポジションが清算される前に対処するための「安全バッファ(β係数)」を導入しています。これは、Twyneで設定される最大LTVを、基盤プロトコルの清算閾値よりもあえて低く設定することで実現されます。
たとえば、AaveやEulerではLTVが90%を超えると清算される場合、Twyneでは85〜88%を上限に制限します。これにより、清算ラインに達する前にTwyne内部で継承清算やリバランス処理を行う余地(猶予)を確保できるのです。
このような安全バッファの存在によって、Twyneはより柔軟でスムーズなリスク管理を実現し、急激な価格変動などによる予期せぬ連鎖清算から貸し手を守る仕組みを強化しています。
まとめ
Twyneは、信用委譲という革新的な仕組みを提供する一方で、貸し手・借り手双方の安全性を高めるために、以下の4段階のセーフティ設計を取り入れています:
継承型清算(Liquidation by Inheritance):担保を売却せず、ポジションを他者に引き継がせる
外部清算(Fallback):継承が失敗した場合でも通常清算で回収可能
損失配分と再構成:清算後も貸し手の担保が優先的に守られる
安全バッファ(β):清算発動前の余裕を確保し、内部処理の時間を確保
これによりTwyneは、従来のDeFiにはなかった柔軟かつ防御的なリスク管理構造を持ち、安心して信用の流通を実現できる仕組みを構築しています。
🚩変遷と展望
Twyneの開発主体は「Twyne Labs」というスタートアップ企業です。正式な設立時期は明示されていませんが、開発チームは長年DeFi領域でのコンサルティングや研究に携わってきたメンバーによって構成されています。
Twyneの開発が始まったのが2023年頃で、2024年のETHDenverにおいて「Arbitrumチェーン上のBest DeFiプロジェクト」に選出されました。(その後、テスト版のリリースはBaseで行われています)
現在はまだ招待制で運営されていますが、既に専門家やコミュニティから高い関心と支持を集めています。開発段階からEuler Labs(レンディングプロトコルEulerの開発元)によるインキュベーション支援を受けており、Euler Labsは「Twyneがクレジットデリゲーションの可能性を押し広げ、遊休資本を活用して市場の潜在力を引き出している」と評価して支援を表明しています。
実際に、2025年6月にはEuler Labs主導でTwyneはプレシード資金調達を行い、総額45万ドルを調達しました
また、ステーキングプロトコル最大手のLidoもTwyneに注目しており、2025年4月にはLido Alliance(Lidoエコシステムの戦略提携枠組み)への参加提案がTwyneから出されました。この提案では、stETHの使用拡大に繋がるとし、Lidoとのプロトコル連携やプロモーションへの協力を依頼しています。報酬として、Twyneは将来発行するトークン総供給量の10%を提携インセンティブとして提供し、1年のクリフ+2年ベスティングでロックすることを提示しています。
今後のロードマップとしては、2025年中のメインネット公開が目標となっています。その後6ヶ月程度でTVL 500万ドル規模の達成やMorpho統合完了といったマイルストーンが設定されています。中長期的には他チェーンへの対応や、信用仲介を高度化した新プロダクトラインの開発なども視野に入れているとのことです。
💬DeFiの追加レイヤーの存在感が増す
最後は総括と考察です。
とても面白い発想のプロジェクトでした。当然と言えば当然ですが、ここ最近の新興DeFiを見ていると、既存のDeFiプレイヤーが存在し機能することが前提の上で、その課題を解決するプレイヤーが多いです。
おそらく、すでに第一段階のDeFi戦争はある程度終わり、DEX、Lending等の主要機能はある程度できたのだと思います。もちろん、今後の発展は続きますし、シェアが変わらないとは思いませんが、ある程度の正解は見えてきました。
DeFiは次の第二段階に進んでいます。それら既存DeFiがプロトコルとして存在している中で、問題点を解消する追加レイヤーが出てきています。EthereumでいうL2みたいな。
Twyneはまさにそういうプロジェクトで、既存レンディング市場の追加レイヤーとして機能します。そして、Aave、Euler、Morph、Lidoなど大手DeFiと最初から連携することを前提に戦略を推し進めています。
個人的にこの辺がブロックチェーンの面白い点だとも思っており、コンポーザビリティのある世界は常にプロダクトが積み上がっていき、後発プロジェクトは先行している巨人の肩の上に乗って、自身のポジショニングを築き上げていきます。
そして、ユーザーは自身でアセットを管理して、自身でリスクを判断し、好きなプロダクトを好きなように利用します。ユーザー登録やデータ管理のような囲い込みがないので、ユーザーファーストでプロダクトの積み上げが進みます。
DeFiが連携し始めると波及して精算されていくリスクも増えるかもしれませんが、Twyne然り最近のプロジェクトを見ていると、精算リスクについて何らか技術的な対策をしているプロジェクトじゃないと評価されない風潮があります。少なくとも既存市場に影響を与えず、何かあっても新興プロトコルの参加者だけがリスクを被る設計になっています。リステーキングも割とそうでしたね。
Twyneの構想がワークすると、レンディングの利回りがさらに上がることになり、DeFiの安定運用先に有益な1つとなりそうで楽しみです。まずはメインネットが公開されるまで待ちたいと思います。
以上、「Twyne」のリサーチでした!
🔗参考:HP / DOC / BLOG / X
«関連 / おすすめリサーチ»
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
🗓️イベント情報
0から学ぶweb3基礎勉強会 #1 ~DePIN~
7月15日(火)@オンライン(東京回をオンライン配信)
OrbsCafe #12 『Ethereum徹底解説』(登壇)
About us:「web3 for everyone」をコンセプトに、web3の注目トレンドやプロジェクトの解説、最新ニュース紹介などのリサーチ記事を毎日配信しています。
Author:mitsui @web3リサーチャー
「web3 Research」を運営し、web3リサーチャーとして活動。
Contact:法人向けのリサーチコンテンツの納品や共同制作、リサーチ力を武器にしたweb3コンサルティングや勉強会なども受付中です。詳しくは以下の窓口よりお気軽にお問い合わせください。(📩 X / HP)
→お問い合わせ先はこちら