おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Cork Protocol」についてリサーチしました。
Cork Protocolとは?
詳しい仕組み
変遷と展望
オンチェーン保険商品の種類が広がる
TL;DR
Cork Protocolは、ペッグ資産のデペグリスクをオンチェーンで価格化・ヘッジできる「リスク保険市場」を提供するDeFiプロトコルで、CDSに似たDepeg Swapを中核に、リスクを取引可能な形に分解する。
仕組みは、担保資産(Collateral Asset)を預けることでcPT(保険引受側)とcST(保険利用側)を発行し、cST+ペッグ資産で担保資産を引き出せる構造により、デペグ時の保険と平時のプレミアム収益を両立する。
2024年創業・a16z CSX採択後にベータ版を展開し、ハッキングを経てPhoenix版で再構築、現在はLidoやEthenaなどと連携しつつオンチェーン保険インフラとしての本格稼働を目指している。
Cork Protocolとは?
「Cork Protocol」は、DeFi分野におけるリスクの価格付けとヘッジ取引を実現するプラットフォームです。
特に、ステーブルコインやステーキングトークンといったペッグ資産の「デペグ(価値乖離)リスク」を対象に、伝統金融のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に似たオンチェーンの金融商品「Depeg Swap」を提供しています。
これにより、従来は価格変動リスクを適切に評価・ヘッジできなかった領域に競争的なマーケット機能を導入し、安定した流動性と効率的なリスク管理を実現することがCorkの目指すところです。
詳細の仕組みは後ほど解説しますが、Corkは以下のようなソリューションを提供しています。
①ペッグ安定化(Peg Resilience)
ステーブルコイン発行体やリキッドステーキングプロバイダ向けのソリューションで、価格ペッグの維持を支援します。ブラックスワンなどで一時的にペッグが外れても、Corkのプログラム可能なリスクレイヤーにより防衛できます。
②オンデマンド流動性(On-Demand Liquidity)
Yearnのボールトやクロスチェーンブリッジなど高利回りボールト運用者向けに、急な大量引き出し(償還)需要へ即応する流動性バッファを提供します。Corkがカスタムなスワップ市場(Corkプール)を構築し、流動性提供者(LP)はETHやUSDC等の流動資産を預け、ボールト運営者はCorkのスワップトークンを購入することで、ボールトに即時換金可能な補助的流動性レールを敷く仕組みです。
これにより利用率の高いボールトでもユーザーの出金要求を滞らせず、ブリッジも安全に利用率を上げられるなど、収益追求と信頼性確保を両立します。
③複合イールド(Composite Yield)
リスク引受側の流動性提供者向けに、「元資産の利回り+リスクプレミアム+Corkインセンティブ」という複数の収益源を組み合わせた新たな利回り獲得手段を提供します。
例えばユーザーがステーキング済み資産(stETHなど)をCorkに担保預入すると、元のステーキング報酬(ネイティブ利回り)を得続けながら、さらにペッグリスク等を引き受ける対価のプレミアム収入と、プロトコルからの追加インセンティブを得ることができます。
この「元本利回り+保険料収入」の複利的な収益構造により、LPはリスクを取る代わりに通常より高い複合利回りを享受します。
④プロテクト・ループ(Protected Loops)
RWAや清算性の低い長期資産の発行体・運用者向けに、安全なループ戦略(レバレッジ運用)の実現を支援します。通常、市場流動性が低い資産を担保にループさせると清算が困難ですが、Corkでは「ループ用ボールト」と「Corkプールによる常設の退出オプション(スワップトークンによる即時換金)」を組み合わせ、必要に応じてポジションを即座に解消・再担保 or 清算できる仕組みを提供します。
これにより本来ループ運用が難しかった不動産担保などの長期資産でも、流動性リスクをヘッジしつつ複数回のレバレッジ運用(ループ)を可能にします。
以上のように、Corkは「オンチェーン版のリスク保険市場」とも言えるプラットフォームであり、ペッグ資産のデペグ保険から流動性バックストップまで複数のユースケースに応用可能な汎用リスク管理インフラとなっています。
これらの機能によって、安定資産発行体は標準化されたリスク価格指標を得て積極的なリスク管理が可能となり、また投資家側もリスクを引き受ける見返りにプレミアム収入を得る市場が生まれるなど、DeFiエコシステム全体の安定性と効率性向上が期待されています。
詳しい仕組み
ではより詳細の仕組みについて解説します。上記で①~④の紹介をしましたが、Corkのメインは主に①と③のデペグリスクに対する「Depeg Swap」の提供だと思いますので、その詳細解説になります。
◼️概要
Depeg Swapは、対象資産のペグ崩壊(デペグ)リスクに対する保護を売買できるようにしたトークン化保険です。
伝統金融のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と同様に、ある資産の信用(ここでは価格ペグ)の崩壊リスクを他者に転嫁する仕組みであり、Depeg Swap購入者は一定のプレミアムを支払ってデペグ時の補償を得て、引受側(保険売り手)はプレミアムを受け取る代わりにデペグ時の損失を被る立場になります。
この点でCDSに機能的に類似していますが、対象とするリスクが債務不履行ではなくペッグ価格の崩れであること、そしてスマートコントラクト上で自動実行・清算される点が異なります。
特にCorkのDepeg Swapは常に担保資産によって全額が裏付けされており、伝統的なCDSのように相手方の信用リスクを心配する必要がないという利点があります。
◼️仕組み
Cork ProtocolのコアにはCorkプールと呼ばれるスマートコントラクトがあり、ここでデペグ保険の発行と清算が行われます。
まずは流動性提供者(LP)がCollateral Assetと呼ばれる担保資金をCork Poolに預け入れます。Collateral AssetはETHやUSDC等のデペグ保険のベースとなる資産です。
Collateral Assetを預け入れると「Cork Principal Token(cPT)」と「Cork Swap Token(cST)」がそれぞれミントされます。cPTはプールの保険引受人向けトークンで、利回りの代わりにリスクを持ちます。cSTは保険・デペグ時交換権を持つトークンです。
これとは別に「Reference Asset」と呼ばれるデペグ可能性のある資産が存在します。例えば、stETHなどのLSTやUSDC等のステーブルコインも該当するかもしれません。
そもそもCorkはデペグに対する保険なので、順番としてはまず「Reference Asset(RA)」が決定され、そのRAに対するプールが作られ、Collateral AssetとcPT及びcST発行が実施されていくというわけです。なのでRA毎にcPTとcSTが存在します。
少し整理します。
Reference Asset(RA):stSTH等デペグ対象のトークン。
Collateral Asset(CA):RAデペグ保険用の担保トークン。
Cork Principal Token(cPT):CA預け入れ時に発行され、プールの保険引受人向けトークン。デペグ時のリスク享受者。
Cork Swap Token(cST):CA預け入れ時に発行され、プール保険利用人向けトークン。
それぞれのトークンの関係はどうなっているのかというと、
CA=cPT+cSTであり、cPTとcSTをプールに入れるとCAが返ってきます。
RA+cST=CAであり、デペグ時(またはそれ以外でも)RAとcSTを預け入れると必ず対応するCAが返ってきます。
伝わったでしょうか。デペグが起こった際、RAの市場価格は暴落しますが、このプールがあるとRAとcSTを持っていけば通常時の価格と対応するCAと交換してくれるわけです。だからこそ、デペグ時の保険になるというわけです。
その際、cSTと価値を失ったRAが預けられCAが出ていくわけなので、当然プール内の資産価値は失われていきます。cPT保有者がその際にリスクを負うことになり、預け入れた元本が失われます。
逆に、デペグが起こらない際は「担保資金の運用益」「cSTの売却益」「スワップ手数料」「パートナーまたはCorkからのインセンティブ報酬」「再担保運用益」などの収益が得られます。
なので、Corkの仕組みは金融オプションとして見ることもできます。
cSTは「ペッグ資産をあらかじめ定められたレートで売る権利」を表し、プットオプションに類似しています。一方、cSTのカウンターパーティとなるcPTは保険引受側のポジションであり、デペグが起きなければ定額のプレミアム収入(利回り)を得ますが、デペグ発生時には価値が損なわれる点でプット売り(ショートプット)に相当します。
このように、CorkではデペグリスクがcSTとcPTという2つのトークンに切り分けられ、市場参加者はこれらを売買することでリスクへのエクスポージャーを調整できます。
また、細かい点ですが各デペグ保険市場にはあらかじめ満期(カバレッジ期間の終了日)が設定されており、cSTには有効期限があります。満期を迎えるとそのcSTは無効化され、対応するcPT保有者がプールから残余の資産を引き出す権利を得ます。
このためCorkでは期間ごとに区切られた「エポック」でリスクを取引する形となります。期間終了ごとに新たなシリーズのcST・cPTが発行され、流動性提供者は必要に応じて資金をロールオーバー(再投入)します。
加えて、担保資産(CA)とペッグ資産(RA)の「エクスチェンジレート(交換比率)」は市場ごとに定義されており、時間経過や金利差に応じて動的に調整できます。
例えば、CAをETH、RAをLidoのstETHとする市場では、stETHはリワードにより時間とともに価値が増すため、初期では「1stETH + 1cST = 1ETH」であっても、日々stETH側がわずかに増価するのに合わせて必要なstETH量を減らす(交換レートを下げる)必要があります。
Corkでは専用のExchange Rate Providerを設定することで、こうした価格比や利率差をリアルタイムに反映できます。
結果として、担保資産とペッグ資産の利回り差(例ではETHステーキング報酬とstETHリワード差)が自動で交換比率に織り込まれ、保険引受側(cPT保有者)の利益が不当に裁定されてしまわないようになっています。
変遷と展望
Cork Protocolを運営する企業はCork Protocol Inc.で、2024年に創業された新興スタートアップです。本社所在地はアメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市であり、チームはNYを拠点にグローバルに活動しています。
共同創業者として主要メンバーが4名公表されています。Phil Fogel氏とRob Schmitt氏が共同創業者兼共同CEOを務めており、プロジェクトのビジョンと戦略をリードしています。
資金調達状況に関しては、これまでに二度のラウンドで合計約7.65百万ドルの資金調達を行いました。
まず2024年9月にa16zの主催する暗号資産アクセラレーター「Crypto Startup School(CSX)」秋コホートに採択され、それに伴い約215万ドルのシード資金を調達しています。このラウンドにはa16z Cryptoのほか、OrangeDAOやIDEO Ventures、Outliers Fund、Unbounded Capital、Steakhouse Financialなど複数のweb3投資家が参加しました。
続いて2026年1月には550万ドルのシード資金を追加調達しており、こちらはRoad Capitalと前述のa16z CSXファンドがリード投資家を務めています。他にも432 Ventures、BitGo Ventures、Cooley、Hyperithm、WAGMI Ventures、Stake Capital、Funfair Venturesなど複数のグローバルVCが出資に参加しました。
現在プロトコルの状況はホワイトリスト制になっており、限られたユーザーでテストを実施しています。ですが、すでに複数の有力プロジェクトとの提携・実証を進めており、実際のユースケースとして具体的なリスク市場を立ち上げています。
例えば、Lido FinanceやEtherfi等のLST系に加えて、EthenaやResolv等のステーブルコイン系のプロジェクトとも連携しています。
ただし、実は過去のプロトコルを運用していた際の2025年5月、Cork Protocolは約1,200万ドル相当のwstETHを不正流出させられるハッキング被害に遭いました。
攻撃者は悪意あるコントラクトを用いて約3,762枚のwstETHを引き出すことに成功し、一部をETHにスワップしました。これを受けて共同創業者フィル・フォーゲル氏は即座に「潜在的なエクスプロイトを調査中につき、全コントラクトを一時停止した」とX上で発表し、利用者資金の追加流出を防ぎました。
そして、同年末には大幅なセキュリティ強化版となる「Cork Phoenix」を立ち上げ、プロトコルを復旧させています。こうした危機対応を経て、現在では投資家・ユーザーの信頼も徐々に回復しつつあります。
具体的なプロトコルの公開日程は未定ですが、2026年の資金調達時にはプロダクトの本格稼働とエコシステム拡大に注力すると表明しているため、近いうちに公開されることが期待されています。
オンチェーン保険商品の種類が広がる
最後は総括と考察です。
Corkの設立背景の中に以下の図がよく利用されています。これは伝統金融(TradFi)におけるコストの大部分はバックエンド(裏側)の仕組みに集中しており、そこはブロックチェーンで構造的に下げられる余地が大きい」という主張をデータで示したものです。
具体的には実は金融サービスのコストは“取引そのもの”よりも、規制対応、リスク管理、システム・インフラ統合といった裏側の運用コストが圧倒的であることがわかります。
2025年から伝統的な金融機関や機関投資家が続々とクリプト市場にしてきています。規制対応はチェーンレベルでもプロトコルレベルでも対応が進んでおり、システム・インフラ統合はブロックチェーン自体の性能向上で一定カバーできているように思います。
ただし、リスク管理に関してはまだ不足しています。Corkはまさにここを大きな可能性として見ています。
確かに先物市場もそうですし、あらゆる金融商品の起源を辿ると保険的な意味から生まれていることも多いです。将来のリスクを金融商品化することで、トレーダー側もリスクヘッジしたい側も双方メリットがある形をあらゆる業種で作り出しています。
クリプト市場でも万が一主要トークンがデペグした際のリスクは甚大です。例えば、取引所やETFがETHの運用をする際にstETHに変え2重運用したとします。プロトコルハッキングのリスクは当然ありますが、それ以外にもstETH自体のデペグリスクも存在します。なので、そのリスクを減らすためにも保険トークンを購入するというシナリオは存在しそうです。
なので、今後あらゆるものがトークン化してオンチェーン上でのトレーディングが多くなると、そのリスクヘッジとなるオンチェーン保険商品の可能性も広がっていきそうだと思いました。オンチェーンの保険領域は昔から存在はしていますが、その種類が増えていくイメージですね。
まずはCorkのメインネット公開を楽しみに待ちたいと思います。
以上、「Cork Protocol」のリサーチでした!
参考リンク:HP / DOC / X
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