おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Aster」についてリサーチしました。
🏦Asterとは?
🚩変遷と展望
💬Hyperliquidキラーとなるか
🧵TL;DR
AsterはAstherusとAPX Financeの統合から誕生した次世代Peps DEXで、BNBチェーンを中心にマルチチェーン展開し、最大1001倍レバレッジや株式Peps・スポット取引・利回り資産(asBNB, USDF)を担保に使える点が特徴。
2021年のApolloXローンチから始まり、Astherusの利回りプロダクト、2024年末の統合、2025年の取引マイニングや株式Peps導入、9月のTGE・急成長とCZの支援で注目を集めてきた。
Hyperliquidがプロ特化の独自L1チェーンDEXであるのに対し、Asterは大衆向けUX・利回り担保・将来の独自チェーン計画を武器にBNBチェーン発の対抗馬として存在感を高めている。
🏦Asterとは?
「Aster」はHyperliquidに対抗するとして注目を集めている次世代パーペチュアルDEXです。
2024年末にマルチ資産運用プロトコル「Astherus」とパーペチュアルDEX「APX Finance」が統合・リブランドして誕生し、両プロジェクトの強みを活かして「誰もが使えるパーペチュアル取引プラットフォーム」を提供しています。
Asterはマルチチェーン対応を掲げており、現在BNBチェーンを中心にEthereum・Arbitrum・Solanaなど複数チェーン上でサービスを利用可能です。(ただし、現時点の取引高のほとんどはBNBですので、実質的にはBNBチェーン上のパーペチュアルDEXとも言われます)
主な機能・特徴は以下のとおりです。
◼️パーペチュアル(無期限先物)取引
Asterのコア機能であり、最大1001倍という非常に高いレバレッジの暗号資産および株式指数の永久先物を提供します。
ユーザーの取引スタイルに応じて2種類のモードを選択できます。
Pro Mode:CEXのようなオーダーブック形式のインターフェースを特徴とし、高度な取引機能を提供します 。メイカー手数料は0.01%、テイカー手数料は0.035%という、競争力のある手数料体系が設定されており 、グリッド取引や隠し注文といった専門的なツールも利用可能です 。このシステムは、CEXに匹敵する効率性をオンチェーン環境で実現することを目指しています 。
Simple Mode (1001x Mode):ワンクリックで実行できるMEV耐性を持つオンチェーン永久先物取引を提供します 。最大1001倍という極めて高いレバレッジを提供することで、DeFi初心者が複雑なインターフェースに圧倒されることなく、容易に取引に参加できるように設計されています 。
現在、BTCやETHをはじめ約25種類のマーケットが上場され、これまでに$532Bの取引高を記録しています。
また、パーペチュアルだけでなく、一部のトークンについては現物(スポット)取引もサポートされています。例えば、2025年9月のASTERトークンTGE後にはAST/USDTのスポット市場も開設されました。
◼️ステーキング・流動性提供(Earn機能)
Asterは単なる取引所に留まらず、独自のイールド生成プロダクトを統合している点が特徴です。
代表例として、BNBを預けて発行されるLSTである「asBNB」や、USDTと1:1で交換可能な利回り付与型ステーブルコイン「USDF」があります。
asBNBはステーキングしたBNBからのバリデータ報酬に加え、Aster内の追加インセンティブが得られるトークンで、USDFは裏付け資産のUSDTをデルタ中立戦略で運用することで利息を生み出す仕組みです。ユーザーはこれらをミントして保有することで受動的収益を得られ、さらにAster上の取引手数料割引やエアドロップポイント優遇といった特典も享受できます。
ユーザーはこれらのasBNBやUSDFといったイールド資産を取引の担保として使用することができます。この仕組みによって、ユーザーが取引による利益と同時に、担保資産からの受動的なインカムも得られるようにすることで、資本効率を向上させます。これは、ユーザーがアイドル状態の資産を効率的に活用できるだけでなく、プラットフォームに流動性を長期間保持するインセンティブを生み出します。
◼️流動性プールとマーケットメイク
先ほど説明した2つのモードの中でDeFi初心者向けである1001xモードの基盤には、Asterが提供するALP(Aster Liquidity Pool)というプール型流動性機構があります。
ユーザーは様々な資産(BTC, ETH, BNB, USDTなど)をプールに預け入れることでALPトークンをミントでき、これがマーケットの流動性源となります。プールに提供された資産はトレーダーの取引相手(AMMのような役割)として機能し、LP(流動性提供者)はスプレッドや手数料収入から利益を得ます。
🚩変遷と展望
Asterは2025年9月にTGEを果たしましたが、その前後で急成長を果たしています。
執筆時点では24時間の永久先物の取引高はHyperliquidに次ぐ第2位です。
簡単に変遷を振り返っていきます。
2021年11月: ApolloX(APX)プラットフォームがローンチ。CEXとDEXのハイブリッド型の先物取引所として開始し、後にBNBチェーン上最大のパーペチュアルDEXへ発展。
2023年4月: APX Exchange v2リリース。UI・流動性が強化され、APXはBNBチェーン内で取引高トップのパーペチュアルDEXに躍進。
2024年: AstherusがBNBチェーンでマルチアセット利回りプラットフォームとして台頭。Binance Launchpoolやメガドロップ等の利回り源を統合するasBNBや、デルタニュートラル戦略で運用され利息が付くUSDFステーブルコインを提供し高い評価を獲得。11月にはBinanceの投資部門から出資を受けるなど、Binanceエコシステムとの結びつきを強めました。
2024年末: AstherusとAPX Financeの合併を正式発表。両者の技術・リソース統合により新たなプロジェクト「Aster」を立ち上げ、BNBチェーンのデリバティブ市場にコミットする計画を提示。この時点で両プロジェクトは既にBNBチェーンの代表的存在であり、Binance/YZi Labsの深い支援を受けていました。
2025年3月31日: Asterリブランディング/ローンチ。合併完了後、新ブランド「Aster」として本格始動。合併に伴い、APXトークンは後述の通りASTERトークンへ統合される計画が進行。
2025年4月–6月: Stage 1 Spectraと称する取引ポイントプログラムを実施。4月10日に開始されたこのキャンペーンでは、ユーザーがAster上での取引量に応じて「Rhポイント」を獲得し、将来のトークンエアドロップをアンロックできる仕組みを提供しました。20週間にわたるプログラムは6月22日に終了し、期間中に延べ527,224のユニークウォレットが参加、累計取引高は377億ドルを超えました。この爆発的な利用拡大により、Asterは数ヶ月でパーペチュアルDEX市場の月間取引量シェアの約20%を獲得し、一躍トップクラスのプロトコルに躍進しました。
2025年7月: Asterは株式指数先物(ストック・パーペチュアル)の提供を開始。米国株のアップル(AAPL)を裏付け資産とする先物ペアをローンチし、暗号資産以外の従来型資産のオンチェーン取引に参入しました。これにより、暗号トレーダーがAppleやTesla、NVIDIAといった大型株式の先物をUSDT担保で最大50倍レバレッジで取引可能となり、新たなユーザ層を引き込む戦略を示しました。
2025年8月: Asterはマルチチェーン展開を進め、BNBチェーン以外にもEthereumやArbitrum、Solana上の資産を統合的に取引できる流動性アグリゲータ機能を強化しました(UI上はシームレスですが、裏側で各チェーンのブリッジを自動処理)。これによりユーザーは手動ブリッジ不要で様々なチェーンの資産を1つのインタフェースで扱えるようになり、クロスチェーン取引を容易にしています。
また同月、プロ向けインタフェースにHidden Orders(隠れ注文)機能を追加しました。これは発注時にオーダーブック上で公開されず、約定成立まで数量・価格が秘匿されるダークプール的注文方式で、大口トレーダーが前もって板を読まれて仕掛けられるリスクを低減するものです。このHidden Order機能は、かねてよりCZ氏が提唱していた「DEXのダークプール化による大口注文のフロントラン防止」コンセプトを実装したものです。
2025年9月7日: Aster上に現物取引(スポット市場)が正式ローンチ。BNBチェーン上の有力インキュベータであるFour.memeとのパートナーシップにより、新興プロジェクトのトークンをAsterのCEX並みUIで直接取引できる仕組みを追加しました。第一弾としてFour.memeが支援するCreditlink(CDL)が上場され、Four.memeの「BNB Guardians」プログラムによるコミュニティ資金がAsterの取引エコシステムに流入する形となりました。これによりパーペチュアル以外に現物市場もカバーする総合DEXへと進化しました。
2025年9月17日: TGEを実施。待望のガバナンストークン$ASTERが生成され、Stage1で予告されていたエアドロップ配布が行われました。TGEでは8.8%がエアドロップされ、当日はAsterプラットフォーム上でのみASTの取引が可能な状態で、アクセスが殺到しプラットフォームTVLは一日で6億6000万ドルから10億ドル超へ急増、日次取引高も15億ドル近くに達しました。
2025年9月20日〜21日: ASTERトークン価格が初値$0.02相当から4日で約$2.0の史上最高値に到達(約9900%上昇)しました。ASTER価格は高値から調整局面に入り、ピークの$1.96から約33%下落して$1.30前後まで一旦沈みました。しかしその後は$1.0〜1.5レンジで推移し、引き続き高いボラティリティを見せています。
現在、AsterはGenesis Stage 2のトレード報酬プログラムを継続中で、総供給の4%に当たるトークンをインセンティブとして配布しており(〜2025年10月5日予定)、これを目当てにした取引参加が価格を下支えする動きも見られます。Stage 2終了後はStage 3がただちに開始され、スポット取引にもスコア計上を拡大した新ルールで報酬配分が刷新される予定です。
盛り上がりの要因は純粋にプロダクト的な要因もありますが、最も大きいのはやはりBinanceファウンダーのCZ氏がかなりの数を呟いて支援している期待感があります。
また、最近のインタビューでは中央集権的な取引所からAsterのような分散型取引所に注力していきたいという発言もしており、より大きなコミットの噂もあります。
これらの期待値から、主にBNBチェーン上の次世代Perp DEXとして注目を集め、大きな存在感を発揮するに至りました。
◼️Hyperliquidとの違い
No.1のPerp DEXといえばHyperliquidですが、Asterとの違いを簡単にまとめます。
印象としては、Hyperliquidがプロトレーダー向けに始めた永久先物をもうマスにも広げようとするポジションでAsterがいます。(とはいえ、最近はHyperliquidもPhantom連携されるなど、マスのクリプトユーザーにも広がっていますし、そもそも永久先物市場自体が割とトレーダー向け市場でもありますが。)
また、大きな違いは証拠金(担保金)設計で、担保に利回り付き資産を利用できるAsterに対してHyperliquidはできません。ただ、Hyperliquidは最近独自ステーブルコインの$USDHを発行することを決めたので、実はAsterに対しての危機感から生まれたのかもしれません。
そして、現時点における大きな違いは独自L1を持っているか否かですが、Asterは今後Aster Chainと呼ばれる独自チェーンを構築しようとしています。Aster ChainではZK技術を組み込んだ設計を予定しており、プライバシー保護とスケーラビリティを両立させる方針です。
例えば注文内容やポジションを暗号学的証明で秘匿しつつ、マッチング性能はCEX並みに引き上げるといったイメージです。ロードマップ上では2025年末〜2026年にかけてテストネット稼働、2026年中のメインネット立ち上げが目標とされています。
また、2026年に予想される独自チェーン移行に合わせ、オンチェーン投票システムやガバナンストークンとしてのASTER活用が本格化すると見られます。
具体的には、取引手数料の配分やプロトコルパラメータ(清算閾値や手数料率など)の変更、エコシステム基金の使途決定などをトークンホルダー投票で行うことが想定されています。また、veTokenモデルやリキッドガバナンストークンの導入も検討されており、過去にAPXで導入していたveNFTの仕組み(ロックアップして報酬を得る)を発展させる可能性があります。
この辺りはまだ不明ですが、現在のユーザー数やTVLをそのまま独自チェーンに移行することができれば、Hyperliquidに次ぐ大きなエコシステムが誕生する可能性があります。
💬Hyperliquidキラーとなるか
最後は総括と考察です。
ここ数週間のクリプト業界のトレンドは間違いなくAsterでしたね。TGE直後の急騰や盛り上がりでタイムラインが埋まっていました。ここでの考察では、細かいトレーディング戦略や機能よりも今後の未来予測をしてみます。
Asterの競合はHyperliquidだと思いますが、Hyperliquidが出てきたときはBinanceキラーとして注目を集めていました。CEX並みの流動性と取引速度でPerpができることで、Binanceからユーザーと取引がHyperliquidに移行しました。
その後にBinance及びCZがAsterを支援していることにはつながりがありそうです。
個人的に面白いのはAsterが現物の取り扱いも始めたことです。Perpだけでなく現物の取り扱いも始めると、いよいよCEXと全く同じような存在になります。また、直近Asterの盛り上がりもありBNBトークン自体も高騰していましたが、独自チェーンに移行するとなるとBNBの盛り上がりも止まる可能性があります。
これらも踏まえて、BinanceやBNBの戦略や狙いも気になります。
まず、これまでのCEXの優位性が失われ始めているので負けないために自分たちもPerpに張るしかないという側面はあると思います。おそらく今後、Binance本体やBinance WalletからAsterに接続できるようになると思いますし、Binance上場と同時にAster Perp及び現物上場がセットになることも増えると思います。
Coinbaseのビジネス戦略でも言及しましたが、CEXは今後インターフェースとして機能してCEX内から直接DEXにコネクトできるようになっていくと思います。そのために自分たちのエコシステムを拡張させていかないと、利益が他エコシステムに流れてしまいます。
なので、Asterの今後の動きはBinanceエコシステム戦略を予測する良い機会となるかもしれませんので、引き続き注目していきたいと思います。
以上、「Aster」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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