【Alpaca】ブローカーインフラとして、取引・口座・清算・データをAPIで提供 / 株式・ETF・オプション・暗号資産を低コストで扱え、個人のアルゴトレーダーからフィンテック企業・金融機関まで幅広く利用 / @AlpacaHQ
金融インフラとなるAPIサービス
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Alpaca」についてリサーチしました。
Alpacaとは?
変遷と展望
金融インフラとなるAPIサービス
TL;DR
AlpacaはAPIファーストのブローカーインフラとして、取引・口座・清算・データをAPIで提供し、埋め込み金融(Embedded Finance)を前提に設計されたフィンテック企業。
株式・ETF・オプション・暗号資産を低コストで扱え、個人のアルゴトレーダーからフィンテック企業・金融機関まで幅広く利用されている。
Stripeの証券版のような存在として、組み込み側はUXと集客に集中し、手数料上乗せなどで収益化できる金融インフラを実現している。
Alpacaとは?
「Alpaca」は、2015年に創業された米国シリコンバレー発のフィンテック企業です。
提供サービスや利用シーン等、1つずつ説明していきます。
◼️提供サービス
現在AlpacaはAPIファーストのブローカーインフラストラクチャを提供しており、主に以下のサービス群があります。
Trading API:個人やアルゴリズムトレーダー向けの取引APIです。REST形式のエンドポイントとWebSocket/SSEを通じて、株式・ETF・暗号資産などの注文発注、ポートフォリオ管理、口座情報取得等が可能です。
Broker API:フィンテック企業や他社が自社サービス内に証券取引機能を組み込むための包括的APIです。エンドユーザーの証券口座開設(KYC)、入出金処理、注文執行、ポートフォリオ表示まで、ブローカー業務をエンドツーエンドで提供します。いわば「ブローカー版AWS」のようなサービスで、他社はAlpacaのインフラに乗ることでバックエンドの規制対応や清算を任せ、自社はフロントエンド開発に専念できます。
Market Data API:米国株式・暗号資産・オプション等のマーケットデータ配信サービスです。過去7年以上のヒストリカルデータやリアルタイムの株価・板情報、ニュース配信をRESTおよびWebSocket経由で提供します。
Connect API(OAuth連携):サードパーティ製アプリやサービスが、ユーザーのAlpaca取引口座への接続・認証(OAuth2)を行うためのAPIです。たとえばTradingViewなど外部プラットフォームからユーザーがAlpaca口座でログインし、そのアプリ上で売買を実行する、といった連携を可能にします。
その他のサービス:上記の他、プロトコルレベルでFIX API(金融機関向けの高速取引接続用)も提供しています。また、Alpaca SecuritiesによるWeb上のダッシュボードやモバイルアプリもあり、API利用に不慣れなユーザーでも自分の口座状況を確認・基本的な取引が行えるようになっています。
◼️取扱アセット
Alpacaが現在取り扱っている金融商品は以下の通りです。
米国株式(現物株):米国主要取引所(NYSE、NASDAQ、Cboeなど)に上場する株式およびETFに対応しています。ナショナル・マーケット・システム(NMS)に属する銘柄が中心で、約8,000銘柄以上を売買可能です。
米国上場ETF:上記株式同様、NYSE Arca等に上場する主要ETFに投資できます。VOOやQQQといった代表的なETFはもちろん、テーマ型ETFやレバレッジETFも証券口座から直接売買できます。
株式オプション:2023年より米国株のオプション取引サービスが開始されました。米国のOptions Clearing Corporation (OCC)に清算参加しており、単純なコール・プットだけでなくスプレッド戦略など複合ポジションにも対応しています。
暗号資産:Alpaca Cryptoを通じて、主要な暗号資産(BitcoinやEthereum他)現物の売買が可能です。Crypto APIは2021年10月に開始され、以降も対象銘柄を拡充しています。注文方式は株式と類似で、APIひとつで株・クリプト両方の取引を統合管理できます。暗号資産のカストディはAlpaca Crypto LLCが担い、米国FinCEN登録のMSB(マネーサービス事業)として規制遵守しています。
その他の資産:今後の対応予定資産として、先物、FX(外国為替証拠金)、債券(国債など固定収入資産)、未公開株式、国際株式などがロードマップに挙げられています。実際、2025年には固定利付証券や24時間株式取引(平日5日間常時取引)を開始するなど、順次ラインナップを拡充しています。
◼️利用対象ユーザー
Alpacaのサービスは大きく個人投資家向けと法人・開発者向けに分かれます。
アルゴリズム志向の個人トレーダー:プログラミングによって取引を自動化したい個人投資家にとって、Alpacaは最適なプラットフォームです。Trading API経由で直接市場にアクセスでき、裁量取引ではなくシステムトレードで運用したい人々(いわゆるアルゴトレーダーやクオンツ志望の個人)に広く利用されています。
フィンテック企業・スタートアップ:AlpacaのBroker APIはB2B2Cモデルで、多数のフィンテック企業の裏側で採用されています。たとえばデジタルバンクや決済アプリがユーザー向けに「米国株に投資する」機能を追加したい場合、ゼロから証券システムを構築する代わりにAlpacaのインフラを利用できます。
既存金融機関・証券ブローカー:Alpacaは自社が米国の清算・カストディ機能まで持つことから、他の証券会社や銀行とのホワイトレーベル提携も可能です。
その他のユーザー層:上記以外にも、プロップ・トレーディング企業やヘッジファンド、大学の金融工学研究者など、APIを介して直接市場にアクセスしたいあらゆる層に門戸を開いています。Alpacaのミッションは「地球上すべての人にマーケットへのアクセスを提供する」ことであり、先進国だけでなく新興国のユーザーや小規模投資クラブなども取り込みつつあります。
◼️料金体系と手数料
Alpacaは手数料の透明性を重視しており、基本的な取引手数料は無料です。しかし、サービスや資産クラスによって細かなフィー体系が存在するため、以下に整理します。
株式・ETFの売買手数料
コミッション(取引手数料)は0円です。Alpaca Securitiesによるセルフディレクテッド型(自己判断取引型)の個人口座であれば、米国上場株式・ETFの売買にブローカー手数料は一切かかりません。
これはRobinhoodなどと同様の手数料無料モデルで、代わりにアルパカは注文執行時のオーダーフロー販売収入(PFOF)や貸株料などで収益を得ています。
なお、売買に際してはSEC・FINRA規定の小額の規制当局手数料が課されます。例えば、取引活動費(TAF)として約$0.00013/株(上限$6.49)や、SEC処理料として約0.0008%($1万あたり$0.80程度)の料金が売却時に発生します。
これらはAlpacaが徴収しそのまま規制当局へ納付するもので、ユーザーには実費転嫁されます。また、口座開設や口座維持料、口座最低残高要件もありません。
オプション取引手数料
オプション取引も基本コミッション無料です。ただし、オプション特有の決済機関・取引所手数料が発生します。
具体的には、FINRAのTAF(1契約あたり$0.00279、売りのみ)や各取引所のORF(1契約あたり$0.02685)、OCC清算料(1契約あたり$0.02、取引数量が2,750超の場合は一律$55)などです。
例えば1契約を売買すると合計数セント程度の費用がかかりますが、証券会社としてのコミッションは請求されません。これら料金体系は他社(通常$0.65/契約など)と比べても極めて低コストです。
暗号資産取引手数料
わずかな取引手数料(スプレッド)が課金されます。
具体的には流動性提供者(メーカー)と流動性利用者(テイカー)で料率が異なり、30日間の取引額に応じて段階的に下がります。
最も低い取引量帯(直近30日で10万ドル以下)の場合、メーカー手数料0.15%、テイカー手数料0.25%から開始し、取引高が増えると最終的にはメーカー0%、テイカー0.10%まで逓減します。
API利用料・データ費用
個人開発者がAlpacaのAPIを利用すること自体に料金はかかりません(口座を作成すれば無料でAPIキーが発行されます)。
より大量のAPI呼び出しや高速データが必要な場合、有料サブスクリプション「Algo Trader Plus」(月額99ドル)に加入するとREST APIコール無制限・全市場リアルタイムデータ・WebSocket同時接続銘柄数無制限などの拡張が得られます。
金利・付随サービス
マージン取引(金額を借りての信用取引)を利用する場合、借入金額に対して金利が発生します。
また、未投資資金の現金残高についてはFDIC加盟銀行へのスイープ預金により最大250,000ドルまでFDIC保護され、かつ利息が付与されます。
2023年には高金利の現金スイーププログラム(High-Yield Cash Program)が導入され、預り現金に対して競争力のある利率が提供されています。この利息収入の一部がAlpacaの収益源にもなっています。
総じて、Alpacaは「ゼロコミッション」を前面に打ち出しつつ、透明なフィー体系でプラットフォームを提供しています。他社にありがちな口座維持料や不透明なスプレッド上乗せは無く、利用者は低コストで取引APIを活用できる環境が整っています。
変遷と展望
Alpacaの創業者は横川毅(Yoshi Yokokawa)氏(CEO)と原田等(Hitoshi Harada)氏(CPO)で、共に日本出身の起業家です。
創業当初は金融機関向けに大量の市場データ処理や機械学習ソリューションを提供し、金融時系列データに特化したオープンソースのデータベース「MarketStore」を開発するなど、データ技術志向の企業でした。2018年に株式トレーディングAPIプラットフォームをローンチし、2019年にはY Combinator(W19バッチ)にも採択されています。
高い成長率で事業を拡大しており、2021年にはシリーズBラウンドで約5,000万ドルの資金調達を行いました。その後、2023年10月にはSBIホールディングスからの戦略的出資(1,500万ドルの転換社債)を受け入れ、累計調達額は1億2千万ドル以上に達しました。2024年には中国Tencent主導でシリーズCラウンドを実施し、5,000万ドルを調達しています。
また、2026年1月にはシリーズDラウンドで1.5億ドルを調達し企業評価額11.5億ドルのユニコーン企業となったと報道されています。
以下、主要な変遷です。
2015年:創業。機械学習・高速データベース技術を金融領域に適用。
2018年:API主体の証券ブローカーサービスをベータ版開始。
2019年:Y Combinator参加。シリーズA資金調達(Spark Capital等から)600万ドル。
2020-21年:シリーズBラウンド実施(合計1億ドル規模の増資)。個人投資家向けに手数料無料の株式API取引サービス本格展開開始。
2021年10月:暗号資産取引APIをリリース。
2022-23年:日本の中小証券会社を買収し日本金融庁のブローカーライセンス取得。暗号資産サービス会社Alpaca Crypto LLC設立(FinCEN登録)等により、規制遵守体制を強化。
2023年:オプション取引機能や即時入金、ローカル通貨取引API等を次々と導入。10月にSBIグループと提携・資本参加。
2024年:シリーズC調達。自己清算(セルフクリアリング)体制の確立とパートナー企業200社・ユーザー数500万口座超を達成。
2025年:固定収入資産やマルチレグオプションへの対応、24時間5日体制の株式取引(24/5)提供開始などサービスを拡充。1.5億ドルのシリーズD調達。
◼️実際の導入事例
急成長の中でAlpacaのインフラは世界中の様々な企業やプロジェクトで採用されています。
Kraken:大手暗号資産取引所Krakenは、Alpacaと戦略提携し、自社ユーザー向けに米国株・ETFの取引サービスを開始しました。Kraken上での名称は「Kraken Stocks」や「xStocks」と呼ばれ、数千銘柄の米国株式をKrakenのUIから売買できます。その裏側でAlpacaのBroker APIが用いられており、Kraken利用者はシームレスに仮想通貨と株式を一つのウォレットで管理できます。
SBI証券・Woodstock(日本市場):日本では、SBIグループがAlpacaに出資し提携しているほか、スタートアップのWoodstock社がAlpacaのインフラを活用したサービスを展開しています。Alpacaは2022年に日本の証券会社(OI証券)を買収し金融庁のライセンスを取得したため、WoodstockはAlpacaを通じて円建てでの米株取引を実現しました。Woodstock利用者は1,000円からテスラやApple株など500銘柄超に投資でき、そのすべての注文処理・資産保管をAlpacaが裏側で担っています。
Syfe:Syfeはシンガポール発の資産運用フィンテックで、ETFポートフォリオや積立投資を提供しています。SyfeはAlpacaと統合することで、ユーザーに米国株の単独銘柄投資も開放しました。
Dime:タイのデジタル銀行アプリDimeもAlpacaを利用しています。Dimeは主に預金・送金サービスを提供していましたが、Alpacaとの連携によりアプリ内から米国株・ETFの売買ができるようになりました。
Sarwa:アラブ首長国連邦を拠点とするSarwaは、ロボアドバイザー型の投資サービスですが、2021年からAlpacaのAPIを採用しサービス拡充を図っています。Sarwaは中東の投資家に米国株・ETF・暗号資産・債券・オプションなど多様な資産へのアクセスを提供しており、その裏にAlpacaのインフラがあります。
INDmoney・Vested:インドでは規制上、直接海外証券会社に口座を作ることが難しいため、現地スタートアップが米国株投資プラットフォームを提供しています。代表例がINDmoneyやVestedで、これらはDriveWealthやAlpaca等のインフラを利用してインド在住者に米国株取引を提供します。
Greenlight:米国の子供・ティーン向け金融教育アプリGreenlightは、2023年に株式取引機能をDriveWealthからAlpacaへ移行しました。Greenlightのユーザー(親と子供)が株式を購入すると、その注文はAlpaca経由で執行されます。
上記の他にも、QuantConnectやHFT企業などヘッジファンド系のプラットフォームでも、プロトタイピングにAlpacaが用いられるケースがあります。
Alpaca自身もAlpaca Forecast(株価予測AI)やAlpaca Radar(急変動検知)といったツールを提供しており、これらはAPIユーザーが取引判断に活用できるプロダクトです。
今後も調達した資金をもとに更なるサービス拡充と顧客開拓に挑んでいきます。
金融インフラとなるAPIサービス
最後は総括と考察です。
Alpacaは全てがクリプトというわけではありませんが、非常にユニークなサービスです。BaaSやEmbeded Financeのようなトレンドのど真ん中にあり、あらゆる事業者が気軽に金融機能を自社サービスに組み込める世界を実現しています。
クリプトの世界でも、例えばウォレット事業者は自社でDeFiを作ることはせずに既存DeFiと接続して利用します。フロントエンドだけを自社ウォレットにして、裏側はUniswapやJupiterのような既存DeFiであり、フロントエンド手数料を若干載せることで収益化します。
これは自社で金融機能を作ることの難しさを示しており、フロントエンド提供者とバックエンド提供者が異なっていても1つのアプリケーションとして完成度の高いものが提供することも示唆しています。
Alpacaの思想はまさにこれと同じで、クリプトに限らずあらゆる金融取引の基盤をAPIで提供します。フィンテック企業が金融機能を構築するのは非常にハードルが高いですが、それを簡易化し、取引手数料を上乗せすることで収益化も可能にします。
これによって組み込み企業側はUXの作り込みとユーザー集客に集中することができます。
個人的にAlpacaが特徴的だったのは、最初から埋め込み前提で構築していた点です。自社で金融プラットフォームを構築し、その機能をAPIやSDKで埋め込みができるという企業はありますが、Alpacaは自社プラットフォームを持たず全て埋め込み前提であるので、フロントエンド提供者と利害関係がぶつからず、また機能改善にも集中することができました。
まさにこの埋め込み前提のインフラで最も有名なのはStripeだと思います。Stripe自身はプラットフォームを持たず、あらゆる事業者がインターネット上で決済を行うことができるようなインフラ機能を提供し、圧倒的なシェアを築いています。
Alpacaはその金融トレーディング版です。
現時点でも大きな評価を集めていますが、今後よりあらゆるアプリで金融トレーディングができるようになっていくと考えているので、さらに注目が集まりそうだと思いました。
以上、「Alpaca」のリサーチでした!
参考リンク:HP
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