おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Zora新展開」と題して、Zoraが発表した新しいトークンエコノミクスモデルについて解説します。
📝Zoraとは
💧$POST、$CREATORトークンの発行
💬流動性とエコノミクスが全て
🧵TL;DR
Zoraはweb3時代の創作活動に経済的価値を与えるオンチェーン・カルチャープロトコルです。
独自L2のZora Networkを持ちながら、現在はBaseチェーンを主戦場に展開しています。
2025年には投稿・クリエイター・プラットフォームを結ぶ三層構造の新トークンエコノミーを導入しました。
$ZORAは報酬通貨として循環し、Zora全体の価値基軸として機能しています。
📝Zoraとは
まずは前提となる「Zora」について簡単に解説します。
Zoraは、web3時代のクリエイターエコノミーを再構築することを目指して設計された、オンチェーン・カルチャープロトコルです。
Zoraが掲げるビジョンは、インターネット上のあらゆる創作活動に対し、それがどれほど小さなものであっても経済的な価値と所有性を与えることです。テキスト、画像、動画、ミームなど、ユーザーの投稿ひとつひとつをオンチェーン化し、それに対応するトークンを発行する仕組みによって、Zoraは「カルチャーの流動性」を可能にするインフラとして進化を続けています。
2020年にNFTマーケットプレイスとして始動し、誰でも簡単にアート作品やミームを発行・販売できるツールとして支持を集めてきました。その後、より本質的な「コンテンツの所有と価値流通」に着目し、2023年にはOptimismのOP Stackを活用した独自レイヤー2チェーン「Zora Network」を立ち上げました。
2025年4月には、Zora独自のエコシステム・トークンである$ZORAがBaseチェーン上でローンチされ、ミーム的な側面を持ちつつも、ユーザーやクリエイターへの報酬配布、プロトコル内手数料の流通など、実用的な経済の循環にも対応する構造が整えられました。さらに2025年6月に投稿コンテンツ自体をトークン化する新たな試みを開始しました。
少しややこしいのが、Zoraの独自L2とBaseの関係性です。$ZORAトークンの発行も今回の新たな取り組みもBase上で行っていますが、通常であれば独自L2と競合関係にあるはずです。
Zoraは、自身の独自L2「Zora Network」を運用しつつも、現在はBase上を主な展開先として選択しています。この背景には、Zoraがより多くのユーザーと流動性にアクセスできる土壌を求めたこと、そしてBase側が「オンチェーンカルチャーとソーシャル体験」をエコシステムの重要な柱と位置付けていることがあります。
また、Coinbase VenturesがZoraに出資しているという関係性、そしてどちらもOptimism Superchainに参画していることでチェーン間の相互運用性が確保されている点も背景として外せません。
Zora Networkは引き続きNFTの発行や保存、開発者向けツールのテスト環境などに活用されており、Zoraにとっての“自社プロトコルの実験場”としての役割を果たしています。一方で、投稿コンテンツのトークン化や、$ZORAトークンの発行・取引といった経済活動の中心はBaseに移行しています。
つまりZoraは、独自のL2を持ちながらも、戦略的にはBase上にエコシステムの実動部隊を配置しています。
整理すると、
Zoraは、web3時代の創作活動に経済的価値と所有性を与えることを目指すオンチェーン・カルチャープロトコルです。
独自のL2「Zora Network」を保有しつつも、より多くのユーザーや流動性を求めて、現在はBaseチェーン上を主要な展開先としています。
投稿のトークン化や$ZORAトークンの発行など、主要な経済活動はBaseで行われ、Zora Networkは実験や開発の場として併用されています。
上記でも少し触れてきましたが、そんなZoraが2025年6月に新たなトークンエコノミクスの仕組みを発表しましたので、ここからはその仕組みを解説していきます。
💧$POST、$CREATORトークンの発行
発表されたのは「$POST」トークンと「$CREATOR」トークン、そして独自トークン「$ZORA」も連携した新しいトークンエコノミクスです。
このシステムでは、投稿ごとに「$POST」トークンと呼ばれる独自のERC-20トークンが発行され、さらにクリエイターごとに「$CREATOR」トークンが存在します。
つまり、Zora上のあらゆるコンテンツ(テキスト、画像、動画、ミームなど)がオンチェーン上でコイン化され、売買可能な資産になる仕組みです。このモデルの目的は、コンテンツそのものに経済的価値と取引性を持たせることでクリエイターを直接支援し、コミュニティにも新たな参加インセンティブを生み出すことにあります。
◼️$POST
コンテンツをZora上に投稿すると、自動的にその投稿に紐づくERC-20トークン($POST)が新規発行されます。各$POSTはデフォルトで10億枚という発行上限(固定供給量)が設定されます。
発行時に投稿したクリエイターのアドレスには、そのコイン総供給の約1%(=1,000万枚)が自動的に割り当てられます。残りのトークンは市場で取引されるため、クリエイターは自分の投稿コインの初期流通量を一部保有すると同時に、必要に応じて一般公開前に追加購入するオプションも与えられています。
◼️$CREATOR
その名の通り、クリエイター毎に割り当てられたトークンです。各クリエイタープロフィール作成時に自動で発行され、総供給量は1億枚です。
◼️トケノミクス
$POST・$CREATOR・$ZORAが三層構造で連動するよう設計されています。
各投稿コイン($POST)は対応するクリエイターコイン($CREATOR)との間で取引ペアを形成し、さらに各$CREATORは$ZORAとの取引ペアを持ちます。
例えば、あるクリエイターAの投稿Xに対して発行された$POST(X)コインは、クリエイターAの$CREATOR(A)コインとのプールが作られます。一方、$CREATOR(A)コインは$ZORAとのプールが存在します。結果として、投稿Xのコイン価値は$ZORA換算で評価でき、クリエイターA全体の価値も$ZORAで評価されることになります。
この3層構造によって、投稿単位、クリエイター単位、プラットフォーム単位の全てのレイヤーに自由に投資することが可能になります。
また、取引手数料の一部がクリエイター報酬として分配される報酬システムがあります。
各$POST/$CREATORコインの取引が行われる度に、定められた割合の手数料が発生し、それが自動で回収・分配されます。
最新バージョン(V4)の報酬設計では、取引手数料の50%がそのコンテンツのクリエイターに、15%がコイン発行元を紹介したプラットフォーム(例:Zora上でコイン発行を促した外部サイトなど)に、別の15%が個々のトレードを誘発した紹介者に、15%がZoraプロトコルのトレジャリー(運営基金)に、そして残り5%が「Doppler」という技術提供プロトコルへの報酬に割り当てられる仕組みです。
この合計100%の内訳はスマートコントラクトのフックにより各スワップ時に即座に計算・実行され、クリエイター報酬等はすべて自動的に$ZORAトークンにスワップされて配布されます。
例えば誰かがクリエイターAの$POSTコインを取引すると、その手数料の50%相当額がUniswapプール経由で自動的に$ZORAに変換され、クリエイターAに送られます。
クリエイターは自分の報酬を都度請求する必要すらなく、各トレード毎にリアルタイムで$ZORAによる収益を受け取れます(旧バージョンではエスクローに蓄積し後で引き出す方式でしたが、V4では即時分配に改善されています)。
よって、$ZORAは取引される度に買い戻され、報酬トークンとして利用されるため、エコシステム全体の価値を示すトークンとしてのユーティリティを持つことになります。
💬流動性とエコノミクスが全て
最後は総括と考察です。
率直に言って、Zoraは既存チェーンとは別の戦略を取っているので、投機的な方向で話題になることは少ないです。ただ、以前から一貫した信念とブランドの元で進化を続けてきました。
以前もNFTをFTに変換できる新規格を発表しており、NFTというオンチェーンカルチャーに流動性を加える取り組みを続けていました。
おそらく、単にNFTをFTに変換しても全く盛り上がらなかったのだと思います。
NFTは流動性が少なく、流動性が少ないと取引が盛り上がらず、取引が盛り上がらないと投機勢にとって魅力的にならず、参加者と資金が減ります。必ずしも投機的な側面が全てではありませんが、ある程度の投機性は経済を循環させるために必要です。
そこで、今回の取り組みはプラットフォーム自体の$ZORAトークンと、各クリエイタートークン、各ポストトークンを全て一気通貫して連携させるトケノミクスを発表しました。
取引ペア、報酬通貨、という独自トークンの使い方はおそらくVirtual Protocolが採用したことで一気に主流の手段として定着しました。エコシステムとして継続的に需要を生み続けるためにこのユーティリティは非常に理にかなっています。
懸念はやはり投機が加速しすぎてバブルになりすぎてしまうことでしょうか。前述したようにZoraはオンチェーンカルチャーのプラットフォームとして育ててきていたので、加熱したバブルになり、SocialFiのように投機勢だけが入るようになるとブランドが毀損されるように感じます。
ここさえ調整ができれば、今回のようにプラットフォーム全てが連携したトケノミクスは必要だと思いますし、とても良い動きだと感じます。
今後、どれくらいの動きがあるのか、新しい実験を追いかけていきたいと思います!
以上、「Zora新展開」のリサーチでした!
🔗参考:HP / X
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