【Yupp】複数のAIモデルを一つのプラットフォーム上で比較・評価できるサービス / 人間のフィードバックを収集しランキング / ユーザーメリットもあるDePIN2.0 / @yupp_ai
a16z cryptoも出資するAI比較サービス
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Yupp」についてリサーチしました。
🤖Yuppとは?
🚩創業から約1年間のステルス期間を経てリリース
💬ユーザーメリットもあるDePIN2.0
🧵TL;DR
Yuppは複数のAIモデルを比較しながら使える無料のプラットフォームで、フィードバックに応じてクレジットが付与されます。
このクレジットは現金や暗号資産に換金可能で、費用はYuppが調達したベンチャー資金が原資です。
集めた人間評価データをAI企業に提供することで収益化を目指す、データ収集型のDePINモデルです。
ユーザーは最新のLLMを無料で試せる実利があり、使って得して貢献できる次世代型の仕組みとなっています。
🤖Yuppとは?
「Yupp」は、複数のAIモデルを一つのプラットフォーム上で比較・評価できるサービスです。
ユーザーはチャットボットのようなインターフェースで質問や指示を入力すると、2つの異なるAIモデルによる回答が並列表示されます。
このとき表示されるモデルは、OpenAIやGoogle、Anthropicといった米国大手の最新LLMから、AlibabaやMistralなど各国・新興企業のモデルまで500以上のモデルのプールから選択されます。ユーザーは2つの回答を見比べて好みの回答を選択し、その理由をフィードバックすることで、独自ポイント「Yuppクレジット」を獲得できます。
Yuppはこのようにして集められた人間の評価データを用いて、AIモデルの性能を評価・ランキング化(Yupp VIBEスコア)する仕組みを提供しています。
改めてYuppが提供する主な機能をまとめると以下の通りです。
マルチモデル比較: 単一の質問に対し複数(現在は2つ)のAIモデルから回答を提示し、性能や傾向を比較できる。これによりモデルごとの回答の違いを可視化。
ユーザーフィードバック収集: ユーザーが好みの回答を選び、理由をコメントするフィードバック機能。フィードバック内容はテキスト評価だけでなく、「面白い」「曖昧」「文体の問題」「誤情報の有無」等、回答に対する詳細な評価も行えるよう設計されています。
報酬付きクレジット制度: フィードバック提供者にはYuppクレジットが与えられ、貯まったクレジットは後述する通り金銭等と交換可能。これによりユーザー参加を促進し、大規模な評価データ収集を実現。
AIモデルの発見と探索: ユーザーはYuppをAIモデルのポータルとして利用でき、最新の大規模言語モデルだけでなく各種生成AI(画像生成含む)を追加のインストールや課金なしで試用可能です。モデルごとの回答傾向を知ったり、自分のニーズに合うAIを探す用途にも役立ちます。
チャットボットUIと会話履歴: ChatGPTのようなチャット形式のUIを採用し、過去の対話履歴も保存・参照可能。
以上のように、Yuppは「Every AI for everyone」というスローガンのもと、最新AIモデルの体験と評価を一体化した独自サービスを展開しています。
利用ができたので自分でも使ってみています。いくつか画面を貼っていきます。
先ほども書きましたが、クレジットを消費しながらAIを利用する形ですが、このクレジットは初回登録で5,000クレジット、AIへのフィードバックで追加クレジットを獲得できます。
そして、Yuppで貯まったクレジットは現金もしくは暗号資産に換金することが可能です。ユーザーはプロフィール画面から「Cash Out」オプションを選び、引き出したい金額相当のクレジット数と受取方法を指定することで、いつでも報酬を現実の通貨に交換できます。
換金レートは「1,000クレジット=1米ドル」で、これを基準に各通貨や暗号資産への交換レートが計算されます。
Stripe、PayPal、Coinbaseといった決済プラットフォームと提携しており、米ドルやユーロなど20以上の法定通貨での支払いに対応しています。また、BaseやSolana上のステーブルコインでも引き出しが可能です。
なお、公平性と持続性の観点から一人当たりの出金上限も設定されています。現在、1日に最大$10相当、月あたり$50相当までというキャッシュアウト上限が設けられており、ユーザーが短期間で過度に大きな金額を引き出すことは制限されています。
このキャッシュアウト原資は「Yupp」側が負担しており、ユーザーが課金する場面は一切ありません。Yuppは大量のユーザーフィードバックデータを集約し、それを元にAIモデルの評価指標(VIBEスコア)や知見を蓄えるプラットフォームとなることを目指しており、この膨大な評価データこそが将来の主たる収益源になると想定されています。
チームは「人間によるフィードバックのクラウドソーシングこそ我々の事業」であり、「AI企業はモデル改良のためにそうしたデータを切実に求めている」と述べています。つまりYuppは、集めた匿名化フィードバックデータを必要とするAI開発企業に提供・販売することで収益を上げるビジネスモデルを計画しています。
🚩創業から約1年間のステルス期間を経てリリース
Yuppは2024年6月に米国で創業されました。創業から約1年間はステルスモードで開発を進め、2025年6月にサービスを正式公開しています。
創業時の2024年にa16z Cryptoが主導する3,300万ドルのシードラウンドの調達を果たしています。出資者にはa16z以外にもTwitter共同創業者のBiz Stone氏やGoogleのAI責任者であるJeff Dean氏をはじめ著名エンジェル投資家が名を連ね、創業メンバーのビジョンに賛同しています。
創業メンバーは、Pankaj Gupta(パンカジ・グプタ)氏とGilad Mishne(ギラッド・ミシュネ)氏の2名です。
Pankaj Gupta氏は、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの博士号を取得したエンジニアで、複数のスタートアップを創業したシリアルアントレプレナーでもあります。Twitter社では創業初期に入社し第27番目の社員となってユーザー発見チームを率いるなど重要な役割を果たし、その後Googleではモバイル決済サービス「Google Pay」のグローバル消費者向けエンジニアリング部門を統括し、Coinbase社では副社長(VP of Engineering)として消費者向け製品開発を指揮するなど、大手テック企業で要職を歴任しています。
加えて、2010年代には自身の創業したスタートアップ2社をシリコンバレーで成長させた経験もあります。
Gilad Mishne氏は機械学習分野の専門家で、Googleの先端研究部門Google X(現X)にて機械学習リードを務めた経歴があります。Mishne氏はTwitter社においても初期にGupta氏と共に大規模な機械学習プロダクトの開発に携わっており、検索・データ分析の分野で高い専門性を発揮してきました。
2人がYuppを創業した背景には、AIモデルの評価手法に関する課題意識がありました。LLMの性能向上には人間からのフィードバックが極めて重要ですが、従来このフィードバックを集めるプロセスは不透明で限られたものでした。
特に近年盛んになっているAIモデルの評価ランキング(リーダーボード)は、透明性・公平性・中立性に欠けるという根本的な問題を抱えているといいます。Gupta氏はこうした現状に対し、「堅牢で信頼できるAIモデル評価」という難題を全人類の協力によって解決できないかと考えました。
この発想からデータの保存やインセンティブ設計にブロックチェーンを活用し「誰もが参加できるAI評価市場」を構築するアイデアが生まれ、Yuppが誕生しました。
創業から1年ほど経ち、一般ユーザーも利用できるプラットフォームが解放されました。気になる方はぜひ使ってみてください。
6月20日深夜(太平洋標準時)までに特別サインアップリンクを利用すると、アカウント登録の5,000クレジットに加えて、追加で2,500クレジットのプレゼントがあるようです。(案件ではないです、こちらのリリースブログに書かれていました)
💬ユーザーメリットもあるDePIN2.0
最後は総括と考察です。
ファウンダーの経歴、投資家の面々を見ても非常に期待されているプロジェクトであることがわかります。プロダクトを見てもとても使いやすかったです。
このプロダクトの構想はいわゆるDePINで、トークンインセンティブによってユーザーからのフィードバックを集め、そのビックデータを販売することで収益化するモデルです。
特徴的な点は「ステーブルコイン(や法定通貨)のキャッシュバックを実装している点」と「ユーザーにもメリットがある点」です。
まず前者に関しては、まだ独自トークンの存在は明かされていません。ポイントプログラムのようなものもないので、将来的にどうなるのかは不明です。ただし、現時点でもすでにクレジットのキャッシュアウト機能があり、実質的にインセンティブが存在します。
このようにブロックチェーンでプライバシーに配慮した状態でデータを収集し、ステーブルコインで報酬を返すモデルは独自トークンでなくても機能するかもしれませんね。
また、さらに特徴的だと思った点は後者の「ユーザーにもメリットがある点」です。
大体のDePINはユーザーメリットがありません。厳密に言えば金銭的な報酬以外にメリットがありません。空き時間や空きリソースを提供することで報酬を貰うというモデルで、シェアリングエコノミーのようなものです。
ただし、このYuppはユーザー側にもプロダクト利用メリットがあります。それは最新のAIモデルを無料で比較しながら利用できるという点です。普段使いでも良いですし、どのモデルを使えば良いか迷っている時に全てに課金せずとも無料で全てを比較検討できます。LLMが乱立し次々とアップデートされていく中で、この機能は価値ある体験になります。
この無料で利用できて、さらにキャッシュバックもあるモデルなので、ユーザーからすれば非常にお得です。
DePINでユーザー側にもプロダクトとしての提供価値を果たしているものはあまりないのではないでしょうか。個人的にはこのようなモデルが理想的で、純粋にユーザーが便利で使っているのに、さらに追加でお小遣いも貰えるという形がDePIN2.0という形で広がると一般ユーザーも利用する人が増えるかもしれませんね。
単純に自分でもリサーチの時にYupp使って比較してみたいと思います!
以上、「Yupp」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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