【Level】担保資金をレンディング運用するフルオンチェーン利回り付きステーブルコイン / slvlUSD保有者に100%運用益を還元 / @levelusd
フルオンチェーンの利回り付きステーブルコインです。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Level」についてリサーチしました!
🟦Levelとは?
⚙️具体的な仕組み
👤運営会社と規制配慮
💬トークンの2層構造は1層目のユーティリティが全て
🧵TL;DR
フルオンチェーン利回り付きステーブルコイン:USDC/USDTを担保にミントするlvlUSDをAaveなどの安全なDeFiプロトコルで運用し、その利息をステーキングしたslvlUSD保有者に100%還元。
2層トークン構造:常に$1を保つlvlUSDと、ERC-4626準拠のステーキングトークンslvlUSDを発行し、slvlUSDの価値が時間経過で増加する仕組み。
透明・分散的ガバナンス:全スマートコントラクトと担保運用は公開・自動化され、マルチシグ管理や緊急停止機能で安全性を担保。
規制配慮と拡張性:ニューヨーク拠点のPeregrine Exploration運営で米国ユーザ除外、XPポイントやLayerZero連携によるマルチチェーン展開計画を推進。
🟦Levelとは?
「Level」は、DeFiのコア原則(パーミッションレス、透明性、コンポーザビリティ)に忠実なステーブルコインを目指すプロトコルです。
ユーザーはUSDCまたはUSDTを預け入れることでLevel USD(lvlUSD)と呼ばれるステーブルコインを発行することができます。ご存知の通り、USDTやUSDCなどは準備金の運用利益をユーザに還元していませんが、Levelはこの点を改善し、ステーブルコイン保有者自身が利息収入を得られる仕組みを提供しています。
lvlUSDは、担保資金となる資産をDeFiレンディングで運用することで利回りを生み出します。
具体的には、預け入れられたUSDC・USDTをAaveなど「ブルーチップ(安全性が高く優良)」DeFiレンディングプロトコルで運用し、得られた利息をステーブルコインホルダーに還元します。
こうしたオンチェーンかつ透明性の高い利回り生成によって、Levelは既存の中央集権的または不透明な運用手法に依存する競合と一線を画しています。
Ethena等のデルタニュートラル型のステーブルコインも担保資金の運用益をユーザーに還元していますが、担保資金の運用の一部をCEX等に入れているため、一部がオフチェーン(不透明)になりますが、Levelは全てがフルオンチェーンで預け入れ・運用・利回りの還元を実現します。
◼️2種類のトークンと利回り
LevelはUSDCまたはUSDTを預け入れるとミントされるlvlUSDと、lvlUSDをステーキングすることで獲得できるslvlUSDの2種類のトークンが存在します。
lvlUSD自体は常に$1の価値を保つよう設計されているため、利息は直接このトークンの価値に反映されません。その代わり、LevelはERC-4626準拠のステーキングコントラクトを用意し、lvlUSDをステーキングしたユーザにのみ利息を分配します。
slvlUSDはプロトコルの金庫(Vault)内のシェアを表すトークンであり、運用収益が分配されるにつれてその価値が徐々に増加する仕組みです。言い換えれば、slvlUSDは時間とともに1枚あたりの対応するlvlUSDの量が増えていく利息付与トークンです。
すべての準備金(USDC/USDT)は利回り生成に使われていますが、利息を受け取れるのはステーク参加者(slvlUSD保有者)のみであるため、slvlUSDの実質利回りは元のレンディング利率を上回ることになります。(ステークされているlvlUSDの総量が少ないほど一人あたりの利回りは高くなり、ステーク量が増えれば利回りは平準化します。)
現時点の数値は以下の通りです。
lvlUSD MarketCap:$184.61M
Users:16,409
slvlUSD MarketCap:$82.43M
APY:9.45%
Duneで9日前の数値反映なので上記と少しずれていますが、およそ40%近くのlvlUSDがステーキングされているということですね。
⚙️具体的な仕組み
仕組み自体はそこまで複雑ではありません。
ユーザはパーミッションレスにUSDCまたはUSDTをプロトコルにデポジットすることでlvlUSDをミントできます(その他のトークンで提供した場合は自動でUSDC/USDTにスワップされてミント)。
そこで獲得したlvlUSDをそのままステーキングに回すことができます。
現在、準備金は主にAaveで運用されていますが、先月のv2アップデートでMorphoなど他のプロトコルにも分散されるようになりました。
lvlUSDもslvlUSDもどちらもトークンとしてDEXで売買することが可能ですが、slvlUSDをアンステークしてlvlUSDへ変換する際には7日間のクールダウン期間が設けられています。ユーザがアンステークを要求すると即時にslvlUSDがバーンされ、7日後に元本+利息相当のlvlUSDを受け取れる仕組みです。
例えば、Aave等では高い資金利用率のもとで流動性が減少すると利率が急騰し借り手の返済を促す仕組みですが、同様にslvlUSDの引出要求にも時間的猶予を持たせることで、流動性逼迫時でも安全に担保を回収できるようにしています。
その他の特典として、現在はXPと呼ばれるポイントプログラムが実施されています。
XPはトークンではなくオフチェーンのポイントですが、lvlUSDの預け入れ・ステーキングや提携プロトコルの利用、コミュニティ貢献(紹介プログラムやアンバサダー活動)によって蓄積され、将来的なリワード(トークン配布)に影響すると期待されています。
なお、現時点でトークンの詳細は公開されていません。
👤運営会社と規制配慮
Levelはニューヨークを拠点とするブロックチェーン開発・リサーチ企業Peregrine Exploration社によって開発・運営されています。共同創業者はケディアン・サン(Kedian Sun)氏とデービッド・リー(David Lee)氏の二人で、サン氏がCOO的役割、リー氏がCEOを務めています。
Kedian Sun氏はウォートンスクールを卒業後、フィンテック企業Brexでオペレーションマネージャーを務め、投資銀行Lazardでの勤務経験もあるビジネスバックグラウンドの持ち主です。一方、David Lee氏はコロンビア大学でコンピュータサイエンスの学士を取得後、Flexport社やUber社でソフトウェアエンジニアとして10年のキャリアを積んだエンジニアです。
資金調達はこれまでに2回行っており、Dragonfly、Polychain、Robot Venturesなどの著名VCに加え、Balaji Srinivasan氏(著名投資家、元Coinbase CTO)、Sam Kazemian氏(Frax創業者)、Albert Chon氏(Injective開発者)、Sidney Powell氏(Maple Finance創業者)など、クリプト業界の著名人がエンジェル投資家として参加しています。
今後は資金運用先の拡大に加えて、「lvlUSDのユーティリティをステーキング以外にも広げる」計画も掲げています。
既にPendleやMorphoでの活用が始まっていますが、将来的にはより多くのDeFiプロトコルでlvlUSDが使えるようにすることが考えられます。また、LayerZeroとも連携しており、マルチチェーンでの展開も視野に入れていると考えられます。
この他にも大きな特徴として、アメリカユーザーの利用を禁止している点が挙げられます。
また、利用規約にも米国など一部地域のユーザを対象外とする文言が含まれている可能性があります。これは、米国証券法上の規制を意識した対応と考えられます。一般に「利回りを支払う」金融商品は証券に該当する恐れがあり、米国では明確な登録なしに提供すると違法となるケースがあります。Levelはプロトコル自体は分散的であっても、運営企業Peregrine Explorationが米国拠点であるため、当局の目を意識して自主的にUSユーザを排除しているものと思われます。
今後規制がしっかりと整備されればアメリカ向けにも解放され、TVLが大きく向上するかもしれません。
💬トークンの2層構造は1層目のユーティリティが全て
最後は総括と考察です。
以前から気になっていたLevelについて改めてリサーチしてみるとその思想と新興ステーブルコインの難しさが理解できました。
ちなみにDefillamaによればLevelはステーブルコインの中で31位で、盛り上がり始めているとはいえ、まだまだ有名どころとは桁が違います。
僕自身が感じたLevelの価値の根源は2つあります。
1つは「フルオンチェーンでの運用」だという点。これは既存ステーブルコインではできない点ですが、正直利回りを期待するオンチェーンユーザーにとってはこの思想だけでは響かないと思います。
とはいえ、フルオンチェーンなので全てをスマートコントラクトで規定し、自動化できる可能性はあります。よって、完全分散型利回り付きステーブルコインを作り出すことができる可能性はあります。なので、個人的にはその方向性にポジションを置いてPRするとかなり面白そうだなと思ったりもしました。
そして、2つ目は「lvlUSD保有者ではなくslvlUSD保有者に利回りを還元するので、預け入れ資産以上の利回りになる点」です。例えば、自分でUSDCをAaveに入れるよりもslvlUSDを保有した方が良いわけです。
ただし、これが成り立つのはlvlUSD保有者が一定程度いる場合のみです。そして、lvlUSD保有者が一定程度存在し得る理由(ステーキングせずにわざわざlvlUSDのままで保有する理由)は、エアドロップのためのポイント獲得、またはlvlUSD自体がDeFiで普通に使いやすいの2点です。
前者はわかりやすいですが、エアドロ前の期間しか使えないので永続的ではありません。なので、lvlUSDをあらゆるDeFiで利用できるようにするしかありませんが、そうなるとUSDC/USDTの方がすでに浸透しているので使い勝手が良いことになります。
このジレンマこそが新興ステーブルコインの難しさですね。特に2層構造にしており、一層目がステーブルコインで二層目が担保資金の運用益を渡すLevelのようなスキームの場合はエアドロ後にユーザーを定着させる術がなく、結果的に利回りも魅力的にならずに永続しません。
Levelがこの先、これをどのように成立させていくのか、そのアップデートが非常に楽しみです。個人的にはエアドロを餌にTVLを集めまくり、その時点での運用益は全てをユーザーに還元せずプロトコルに溜め、TGE後はそれまでに溜めたTVLを複利で回すことで利回りを確保する、みたいな形式はあり得るのかなと思ったりしてます。
また何か大きなアップデートがあれば記事にします!
以上、「Level」のリサーチでした!
🔗参考/画像引用先:HP / DOC / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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