【Trips】IPをブロックチェーンで管理、金融商品化することで収益化 / 未来のYouTube収益の一部を販売 / Avalanche Evergreen サブネットを活用
未来のIP管理と収益化を実現する!?
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Trips」についてリサーチしました。
«目次»
1、Trips とは?
- 機能
- 使い方
2、変遷と展望:プレシード資金で250万ドルを調達、クリエイターエコノミーの未来に向けてIPの金融商品化を実現!
3、考察:IPへの投資は普及するのか
Trips とは?
「Trips」は、クリエイターのIPをブロックチェーン上で管理、収益化できるプロトコルです。IPはクリエイターにとって大事な資産でありながら、デジタル化が進んだことでコピーが容易になりました。TripsはクリエイターのIPの権利をブロックチェーン上に刻むことで所有権を管理し、その所有権の一部を売却することで投資を募ることも可能になります。
◼️機能
利用は非常に簡単で、まず自身の持つIPをブロックチェーン上にミントします。
ミントするIPは「TCI(Tokenized Copyright Interest)」と呼ばれ、以下の情報がブロックチェーン上に刻まれます。
発行日
コンテンツID
コンテンツタイプ
出版国
TCIは所有権の証明として機能するデジタルフットプリントであり、コンテンツの所有権がクリエイターにあることを示すものです。よって、TCI発行したからといって、いかなる制御や権利も放棄することはありません。
その後、「収益化を有効にする」設定を施すと、TCIの情報がTripsを介して機関投資家に伝えられます。その後、投資家はそのデータを元にクリエイターのIPの一部の購入オファーを出すことができます。これはTCIを分割したフラクショナル TCI (fTCI)と呼ばれます。
IPの一部を売却するとは、著作権の売却であり、将来的な収益の分配権利の売却となります。クリエイティブに関するコントロールは保持したままです。また、コンテンツに関連するすべてのクリエイティブおよびビジネス上の決定は、クリエイターの単独かつ絶対的な裁量に委ねられます。
◼️使い方
現時点においてTripsは”YouTube”にのみ対応しています。アカウント登録はGoogleログインで誰でも可能で、その後にYouTubeチャンネルとの連携が求められます。
現在は収益化しているチャンネルだけ連携が可能で、各動画を選択してTCIを発行します。そして、TCIを元に著作権を投資家に販売することで、動画から得られる収益の一部を投資家と分配します。Tripsで著作権を販売する前にTripsの開発するデジタル著作権マネージャー (DRM) と連携する必要があり、投資家との契約後はそのシステムによって自動的に収益が分配されます。
クリエイターは著作権を販売することで資金調達ができ、今後の活動への資本として活用することができ、投資家は気になるクリエイターと契約を交わし収益の一部を受け取ることができます。
尚、この契約は法的拘束力のある契約であり、クリエイターと投資家がその都度契約を結びます。(この辺りの詳細はあまり書かれていませんが、この契約自体もSTとなり売買できるのかもしれません)
変遷と展望:プレシード資金で250万ドルを調達、クリエイターエコノミーの未来に向けてIPの金融商品化を実現!
Tripsはニューヨークを拠点とするスタートアップで、2023年11月にAvalanche Ecosystem FundであるBlizzardとともに、Shima Capital、Animal Capital、Blackwood Ventures、Serafund、Calligraphy Digitalが主導するプレシード資金で250万ドルを調達しました。資金調達と同時にプロダクトのベータ版もリリースされました。
調達先からもわかる通り、TripsはAvalancheを利用しています。具体的にはAvalanche Evergreen サブネットを活用しています。
Avalancheは高いセキュリティとスケーラビリティを誇るL1ブロックチェーンであり、Avalanche上に作成される独自のブロックチェーンを「サブネット」と呼びます。その中でも、金融機関向けサブネットがEvergreenです。
「次世代の金融サービスを強化する」ことを目標に掲げ、金融機関向けに設計されています。エンタープライズが利用することを想定しているので、高速なトランザクションと高いセキュリティを実装できます。
TripsはこのAvalanche Evergreen サブネットで構築されています。よって、Tripsが目指すのはIPの金融商品化です。説明文の中にも「IP(著作権)を金融商品化することで新しい収益源を確保する」と書かれており、販売先も機関投資家となっています。
この辺りの収益分配権はSTに該当する可能性が高く、法的にグレーで運営しようとしているプロジェクトも存在します。ですが、Tripsは最初から金融商品として取り扱うことで機関投資家向けの商品としてのIP展開を考えています。
STに該当するのか、この辺りの詳細の説明はありませんが、投資家はフォームから申し込むようなフローをひいているので、現時点では審査の上で個別案内をしているように見受けられます。
そうなると国境を跨いだ販売や二次流通は難しいかもしれませんが、これまでにないクリエイターの株式投資みたいなことが法的拘束力のある状態で実現するので、投資家は新しい投資先を発見することができます。
Tripsは「5 年後には 10 億人がクリエイターであり、クリエイター エコノミー全体とソーシャル コマース市場全体はそれぞれ 5,000 億ドルと 2 兆 9,000 億ドルになると予測」されていることを前提に、その時代における新しいIP管理と収益化の手段を10億人に提供することを掲げています。
考察:IPへの投資は普及するのか
最後は考察です。
このニュースレターでは何度も書いているかもしれませんが、やはりブロックチェーンと金融は非常に相性が良いと考えています。RWAのブームもそうですが、あらゆる資産をブロックチェーンに載せることで、流動性の向上、取引の高速化、小口化の実現、DeFiへの接続など、多くのメリットがあります。
その中でIPの権利など、これまでになかった形での投資が実現すると考えています。これらの大部分はSTに該当すると思うので一般ユーザーが気軽に発行することはできないと思いますが、STがもう少し普及するとだいぶ面白いユースケースが生まれる予感はしています。
今回のTripsもYouTube収益の一部を販売できるので、例えば登録者数が1万人くらいの頃に収益の10%を100人の投資家に(1人当たり0.1%)それぞれ10万円で販売したとすると、それだけで1,000万円の資金調達になります。
そのYouTuberが登録者数100万人を超えて、月の収益が1,000万円になったとすると、投資家は1,000万円の0.1%なので月1万円が獲得できます。月1万円だけを聞くと少なく感じますが、元手が10万円なので、お手軽な投資としては非常に良さそうですね。もっとリターンが欲しければ何口も購入すれば良いだけなので。
個人的にはここら辺の可能性は非常に感じていて、Stripe収益を自動分配できるサービスが出ないかな〜と思っています。このニュースレターはSubstackで運営しており、Substackの有料購読やStripeの機能使ってるので、そのサービスができればニュースレターの収益の一部を受け取る権利を販売できます。
コンテンツクリエイターの多くは株式会社と異なり、株式による初期の資金調達ができないので、積み上げで売り上げを上げていくしかありません。でも、この仕組みが実装されると最初に資金調達してその資金を使いながらコンテンツを作っていくことができます。
例えば、YouTuberはその資金で動画制作に集中できるし、僕みたいなニュースレター運営者もコンテンツ制作に時間とお金をかけることができます。
非常に面白いですし、画期的な仕組みだと思うので、法律面も整備されて、早く普及すれば良いなと思っています!
以上、本日は「Trips」のリサーチでした!
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