【Quack AI】DAOでの提案・投票・実行を代替するAIガバナンスレイヤー / 投票も委託しAIエージェントが代行 / 投票率の低さや意思決定の遅さを解決 / @QuackAI_AI
AIが自治する時代へ
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Quack AI」についてリサーチしました。
🤖Quack AIとは?
🚩変遷と展望
💬AIによる自治の可能性
🧵TL;DR
Quack AIは、DAOのガバナンスをAIエージェントが提案評価・投票・実行まで自動化するプロトコル。
オンチェーンとオフチェーンのデータを統合し、NLPや感情分析で偏りの少ない意思決定を支援。
元はDuckChain上で展開され成功を収め、現在は複数チェーン対応の独立プロジェクトとして発展中。
今後はAIQトークン発行や自己学習AI導入を通じて、web3全体の「AIガバナンスOS」を目指す。
🤖Quack AIとは?
「Quack AI」は、ブロックチェーンにおけるDAOのガバナンスをAIで自動化することを目指すプロジェクトです。
従来のDAOガバナンスは、低い投票参加率や意思決定の遅さ、一部の大口保有者による支配のリスクといった問題を抱えていました。現在多くのDAOでは提案ごとの手動投票やフォーラムでの人力調整が必要で、決定までに数週間かかることも稀ではありません。また投票に参加するのは全体の一部(しばしば10%未満)に留まり、大多数のメンバーは意思決定に関与できていないのが現状です。
「Quack AI」はこうした課題を解決するために、「AIガバナンスレイヤー」として設計されています。
では、具体的な仕組みを見ていきます。
「Quack AI」は提案から決定、実行までの全てをAIを用いてサポートします。これらのAIエージェントは過去のガバナンスデータで機械学習によるトレーニングが施されており、時間とともに判断精度を改善できるよう設計されています。
さらに自然言語処理(NLP)と感情分析のレイヤーも統合されており、コミュニティのディスカッション内容やSNS上の反応、投票履歴などオフチェーンの声をリアルタイムに解析して提案の重要度や賛否傾向を判断します。このようにオンチェーンの客観データとオフチェーンのコミュニティ感情という複数のデータソースを組み合わせ、AIが偏りの少ない判断材料を得る仕組みです。
◼️提案フェーズ
提案の生成・受付段階では、コミュニティメンバーやプロジェクトチームから提案が提出されると、AIエージェントがそれを一次評価します。AIは過去の提案内容との重複を検知して無意味な重複提案を除外したり、明らかに悪意のある提案(スパムやプロトコルを危険にさらすもの)をフィルタリングします。
提案内容はNLPによって解析され、関連する履歴データ(例えば類似提案の結果やプロジェクトの財務状況など)と照合されます。これにより、提案の質や影響度がAIによってスコアリングされ、コミュニティに提示される前に優先度順にランク付けされます。
◼️投票と意思決定フェーズ
次に投票と意思決定の段階では、各提案に対して設定された投票期間中、従来型のガバナンスならトークン保有者がそれぞれ投票を行いますが、Quack AIではユーザーは自ら投票する代わりにAIエージェントに投票を委任することが可能です。
ユーザーはあらかじめ自分の投票ポリシーや支持傾向をAIに設定(またはAI側が提案内容に応じて最適判断)し、投票権をAIエージェントに託します。AIエージェントはユーザーの利益に沿うかたちで、自動的かつ即座に投票を行います。
例えば「一定期間内に主要メンバーがロックした提案のみ賛成する」「トークン価値を希薄化しそうな提案には反対する」といったルールをAIに覚えさせておけば、該当する提案に対してAIが自動投票してくれる仕組みです。
れにより、従来はアクティブな参加者が少なく定足数不足に陥りがちだった問題を解消し、多くのメンバーが忙しくてもAI経由で常時投票が行われるためガバナンスが停滞しないメリットがあります。実際、AIエージェントを通じた代表投票を採用することで、従来数週間かかっていた提案承認プロセスがほぼ瞬時に短縮されるケースも報告されています。
◼️可決・否決・実行フェーズ
投票期間終了後、可決・否決の判定も自動で行われ、可決基準(過半数賛成や定足数充足など)を満たした提案は直ちに実行フェーズへ移ります。
Quack AIではここでもAIが介在し、スマートコントラクトを通じてリアルタイム実行がなされます。人手によるマルチシグ署名の確認や運営チームの裁定を待つ必要はなく、ブロックチェーン上で自動執行されるため遅延や介入の余地がありません。
例えば、資金のトレジャリー(財務管理)に関する提案であれば、可決後にAIがその提案内容通りにトレジャリーから資金を割り当て、関係するスマートコントラクトに反映させるところまで一貫して処理します。
ただし、全てをAI任せにして人間が関与できないというわけではありません。
Quack AIは「AIガイド+人間の操縦」というガバナンス哲学を掲げており、重要な判断には人間のチェックや介入余地が設けられています。ユーザーはAIエージェントに投票委任していても、いつでも手動で介入し上書きする権限を持っています。
また、提案内容によっては自動実行の前に人間の承認フローを組み込むこともできます。これは、AIの判断が何らかの事情でコミュニティの総意とずれるリスクを避けるための安全策です。
さらにQuack AIでは、Vitalik Buterin氏が提唱した概念を応用した「蒸留された人間の判断 (Distilled Human Judgment)」という仕組みを採用しています。具体的には、ジェネシスメンバー(後述)が分散型の陪審団となり、提案や資金配分に関する質疑に回答したデータをAIに学習させることで、AIの判断基準に人間の知見や価値観を反映させています。これによりAIエージェントは単なるブラックボックスではなく、「人間の意図を反映した意思決定執行者」として機能するよう調整されています。
🚩変遷と展望
Quack AIは、もともとTelegramユーザーをweb3に誘導することを目指して構築されたDuckChain(TONベースのEVMレイヤー2)上で誕生したAIプロトコルです。
DuckChainエコシステムにおけるガバナンスの効率化と参加率向上を狙い、AIによる自動投票や意思決定支援を導入したのが最初の実装です。
この段階では、DuckChainチームと密に連携し、Duckトークンの収益シェアやガス手数料分配など、独自トークンエコノミーにAI投票を組み込むことで、従来のDAOでは難しかったスピーディーかつ偏りの少ない意思決定の仕組みを実証しました。
2025年前半には2万人以上のジェネシスメンバーが参加し、AIによる投票代行や報酬配分の仕組みが成功裡に運用され、年間数百万ドル規模のオンチェーン収益が創出されるなど、実効性の高さが証明されました。
この成果をもとに、Quack AIはDuckChainから独立したプロジェクトとしての性格を強め、「AIがガバナンスを代行・最適化するクロスチェーンプロトコル」としてマルチチェーン展開を進めています。
現在、Ethereum・BNB Chain・Arbitrum・zkLink・Merlin・Metis・Solana・TONなど複数チェーンへの統合を果たし、30を超えるDAOやプロトコルがQuack AIを導入しています。
2025年7月にはAnimoca Brands、Kenetic Capital、Skyland Ventures、071Labs、Scaling Labs、CARV Labs、Merlin Chainなどが参加するシードラウンドで$3.6Mの資金調達を果たしました。
今後、Quack AIは単なるガバナンスツールを超えて、web3における“AIガバナンスOS”としての地位確立を目指しています。
2025年後半には、以下のような機能強化と展開が予定されています。
AIによる提案自動生成・リスク評価・実行判断の完全自動化
$AIQトークンのTGE(トークン生成イベント)とDAO化
Snapshotや他ツールとの互換性拡大によるエコシステム吸収
自己学習型AIモデルによる継続的最適化
外部DAO・開発者向けのAPIモジュール公開
非クリプト圏(NPO・企業など)への拡張可能性
将来的には、AIが分散型組織の「執行役員」として機能し、人間は「方針決定や価値判断」に集中するという協調型ガバナンスモデルを完成させることを目標に掲げています。
💬AIによる自治の可能性
最後は総括と考察です。
とても面白いプロジェクトですね。DAOによる投票率の低さは問題としてかなり大きく、ガバナンストークンを発行しホルダーが多くいたとしても実質的に投票をする人が少ないので乗っ取りが容易になってしまいます。それを無くすために定足数を多くすると投票数の問題で何も決まらないDAOになります。
そうなると結局は参加者を増やすしかないのですが、インセンティブがない中で積極的にDAOに参加して投票までする人は多くないことが立証されました。今クリプトに触っている人でさえ参加しないので、今後よりマスに広がっていくとさらに投票数や率は下がっていきそうです。
その解決策としてAIエージェントによる投票の分析と自動投票と実行はかなり納得感があり面白そうです。
特に自身の好みを学習させたAIエージェントが自動投票する試みは非常に斬新で新しいです。一見すると怖そうには思いますが、人間による安全装置が設けられているのと、思ったより自分の好みを学習してよしなに投票してくれることは可能なような気もします。
これが加速するとDAOがAIに運営されることによって資金運用と使い道を決めるようになり、人間は最終的に間違っているのかどうかを判断する存在になっていきます。
これはDAOだけの話ではなくて、今後のあらゆる場所でのAI自治の先端を走っていそうで、プロジェクト自体もそこで起こっている内容自体もとても興味深く、追いかけていきたいと思います。
以上、「Quack AI」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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