【NounsDAOフォーク問題】概要と背景、本当の目的と展望を考察 / NounsDAOはDAOの最前線を走り続ける?
現在、NounsDAOの第一回のフォークが決定し、クリプト界隈で大きな話題となっています。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「NounsDAOのフォーク問題」についてリサーチしました。
«目次»
1、NounsDAOのフォーク問題
- NounsDAOとは?
- Fork(フォーク)とは?
- Nouns DAO フォークが可決
2、NounsDAOのフォークとは?
- フォークによる懸念
3、考察①:NounsDAOのフォークの本当の理由と展望は?
4、考察②:NounsDAOを見れば人間の進化の過程がわかる
NounsDAOのフォーク問題
現在、NounsDAOの第一回のフォークが決定し、クリプト界隈で大きな話題となっています。この記事では、そもそもフォークとは何か、一体何が起こったのか、この決定が持つ意味についてを解説していきます。
■NounsDAOとは?
知っている方も多いと思いますが、NFTプロジェクトやDAOにおける最大の成功例として知られるプロジェクトがNounsDAOです。
毎日1体が自動生成され、自動でオークションにかけられ、その資金が全てNounsDAOのトレジャリーに保存されます。トレジャリーの資金はNounsDAOメンバーの投票によって付与され、NounsIPの認知拡大やコミュニティの発展のために利用されます。
■Fork(フォーク)とは?
そんなNounsDAOの新提案において「Fork機能の実装」が可決され、NounsDAOがフォークできるようになりました。
フォークとは分岐という意味であり、主に暗号資産において利用される単語です。ある一定の時点を持って暗号資産が分岐することを意味します。
例えば、ビットコインは現在のビットコインとビットコインキャッシュにフォークしており、イーサリアムも現在のイーサリアムとイーサリアムクラシックにフォークしています。
厳密に言えば、フォークにもソフトフォークとハードフォークの2種類がありますが、ここでは完全に新通貨として分岐するハードフォークのことをフォークと呼んでいます。
ではなぜフォークが起こるのでしょうか。
端的に言えば「方針の違い」です。良くも悪くもweb3のプロトコルは合意性で意思決定がされるので、方向性の違いで揉めることがあります。Aが良い人とBが良い人がいた時に、どちらへいくのかは投票で決定します。
しかし、その場合は常に少数派の意見が採用されないことになりますし、投票比率が49:51だった場合はほぼ半分は納得しないままアップデートが進むことになります。
であれば、お互いが納得いくように、もはや暗号資産自体を分岐させてお互いが好きなアップデートをしていきましょうという動きがフォークです。
これは滅多にありませんが、たまに暗号資産業界で見られる動きでしたが、今回は初めてNFTを基盤とするDAOでフォークの動きが起こりました。
■Nouns DAO フォークが可決
NounsDAOは全てが提案と投票で決まると書きましたが、その「提案354」で「Nouns Forkを含むV3アップグレード」の提案がされました。
細かく言えば、この提案にはフォークの他にも提案の編集、署名による提案、反対のみの期間追加、投票遅延後の投票スナップショットなど細かいアップグレードもありましたが、メインは「フォーク機能の追加」でした。
上の画像を見てもらったらわかると思いますが、この提案は賛成多数ですがキャンセルされています。実はNounsDAOは完全に分散化で回っていますが、コミュニティの健全性を保つためにまだファウンダーの影響力は残っています。ファウンダーだけは提案を否決できる権利を持っており、この提案はファウンダー等によって否決されました。
しかし、その後の提案356にて再度同じ提案がなされ、「Will Not Cancel」という”今度はキャンセルしないでね”という文言が追加されました。そして、この提案が賛成多数ということで可決されました。
2度目の提案はなぜファウンダーたちがキャンセルしないのかという疑問ですが、ファウンダーたちはキャンセルの権限を持っていますが、やたらにそれを行使すると中央集権的なプロジェクトだと思われてしまうので、それを危惧したのではないかと言われています。
この提案によってNouns DAO Forkの実装が決まりました。
NounsDAOのフォークとは?
では、NounsDAOのフォークがどんな内容かも解説します。
こちらも細かい部分は抜きにして、ざっくりこのようになります。
Nounホルダー20%の可決によってDAOをフォークできる
NounsDAOのトレジャリーからフォークするNouns分のETHも移動
フォークしたDAOには”Vanilla ragequit”が実装され、いつでもNFTをバーンしてETHを受け取ることでDAOから抜けることができる
DAOへ提案して20%以上の賛同が得られればフォークが決定し、そこから1週間の移行期間が設けられます。その間にフォークするDAOへ移行する人はNounsを預け入れ、フォークを待ちます。
そして、論点となっており大切なことは下の2つで、NounsDAO本体のトレジャリーから資金が移動すること、そして、フォークされたDAOにはNFTとETHを交換してDAOを抜ける機能が実装されることです。
今回のNounsDAOのフォーク機能の表向きな目的としては「少数派の保護」であり、常に少数の意見を持っているホルダーを保護することにあります。DAOなので多様な意見を元に決定されていくべきですが、その性質上、決定は多数決になるので、意見が通らないメンバーが一定数存在します。
であれば、いつでもフォークできるようにして、多様な意見が反映されるようにすることで少数派を保護しようという名目になっています。
だからこそ、フォークされたDAOには”Vanilla ragequit”が実装され、NFTをETHと交換できるようになります。これはフォークされたDAOでも同様に少数派が弾圧される恐れがあるので、その場合は自らの意思でDAOを抜ける(ETHに換金)ことをできるようにします。
現状、Noun一体につき35ETHほどの価値があるので、フォークに参加して、フォークされたDAOから抜ける場合はNFTを引き換えに約35ETHを受け取ることができるようになります。
■フォークによる懸念
このNFTをETHに交換できる仕組みの実装がNounsDAOに新しい懸念を生み出しています。
この辺りはXやブログ等で考察されている方の情報も参考にしていますので、確定情報ではありませんが、今回のフォーク提案自体がこの”Vanilla ragequit”の実装にあるのではないかと言われています。
フォークすることで本家のトレジャリーからの資金を獲得することが可能で、保有するNFTを手放すことでそれをETHに換金することもできます。
もちろん、普通にNFTを売却すればそれに近い金額を手にすることは可能ですが、マーケットの金額とフォークしたDAOで獲得できる金額に差分があれば、その差額で儲けることができます。
例えば、マーケットで30ETHほどで売買されている中で、今回のフォークされたDAOでは一体35ETHほどで交換できるので、大量にNounsを購入してフォークDAOで売却すると差額で儲けることができます。
そして、最大の懸念はこのように意図的にNounsDAOのトレジャリーから資金を抜き出して”利確する”ことが可能になってしまった点にあります。
もちろんルール違反をしているわけではなく、ルールに則っているわけですが、悪意を持った攻撃が簡単にできるようになってしまいました。しかも、20%の賛成でそれが可能になるので、NounsDAOへの攻撃が容易になってしまいます。
例えば、今回のフォークに揺れる中でマーケットのフロア価格が下落すると、今回の売却益を元手にまたマーケットでNounsを大量購入して、フォークの提案をして、利確して、、という繰り返しによって本体のトレジャリーから資金がなくなっていくことも予想されます。
考察①:NounsDAOのフォークの本当の理由と展望は?
NounsDAOは現状フォーク機能の実装は終わり、フォーク中です。
2023年9月11日時点でNoun841が販売される段階(=合計841体のNFTが存在)で、フォークに賛成しているNounsは298体です。つまり、約35%のNounsホルダーがフォークDAOへ移行することを表明しています。
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