【Jarsy】トークン化された未上場株に投資することを可能にするプラットフォーム / 10ドルから、SpaceX、Anthropic、Stripe等の未上場の株式に投資 / @JarsyInc
トレンドの1つですね。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Jarsy」についてリサーチしました。
🟪Jarsyとは?
⚙️変遷と透明性と規制対応
💬未上場株のセカンダリーマーケット市場は非常に大きい
🧵TL;DR
Jarsyは未上場株を1株=1トークンとしてArbitrum上でトークン化し、誰でも$10から投資できるプラットフォーム。
株式はSPV(特別目的会社)が保有し、トークンはオンチェーンで管理、配当もスマートコントラクトで分配される。
利用にはKYCが必要で、米国では適格投資家に限定、規制対応はグレーな側面も残るが国際展開を目指している。
将来的にはDeFiとの統合で、未上場株を担保に資金を借り入れるなど新たな運用戦略が可能になると期待されている。
🟪Jarsyとは?
「Jarsy」は、トークン化された未上場株に投資することを可能にするプラットフォームです。従来、これら未上場株への投資は限られたVCや投資家に限定されていましたが、「Jarsy」を利用するとユーザーはわずか10ドルから、SpaceX、Anthropic、Stripe等の未上場の株式に投資することが可能です。
使い方は簡単です。まず、メールアドレスまたはGoogleログインでウォレットを作成します。ウォレット基盤はPrivyを利用しています。その後、KYCを行います。氏名・住所・生年月日等の情報提出に加え、本人確認書類のアップロードが必要で、さらに登録後に投資を行う際にも各取引で制限地域チェックなどが行われます。
その後は資金を入金します。入金はUSDCからも可能ですが、米ドル(USD)や他の法定通貨の入金にも対応しています。その後は希望する銘柄を購入します。
購入後は以下のような画面で自身のポートフォリオを確認できます。
料金体系は株式購入時に6%の手数料と売却時に利益が出た場合のみ5%の手数料が課せられます。
⚙️変遷と透明性と規制対応
Jarsyは、2024年設立の米国スタートアップ企業で、本社所在地はカリフォルニア州パロアルトです。共同創業者兼CEOはHan Qin(韓欽)氏で、COOのYiying Hu氏、CTOのChunyang Shen氏といった経営陣はいずれもUberやSquare、Facebookなど大手テック企業出身のベテランです。
2024年中頃にプロダクトのベータ版をローンチし、2025年6月にはBreyer Capitalを筆頭に500万ドルのプレシード資金調達を実施してステルスモードから正式にサービスを立ち上げました。
◼️透明性
Jarsyのサービスは、オフチェーンの実世界資産(株式)とオンチェーンのトークンを結びつけるハイブリッド構造です。
実株の保有・管理や投資家登録情報はオフチェーンで適切に行い、一方でトークン発行・残高管理・取引履歴はオンチェーンに記録するという棲み分けになっています。
具体的には、Jarsyは提携する証券会社や仲介業者を通じて未上場企業株式や公開株式を取得し、それらをデラウェア州に設立した独立の有限責任会社(LLC)というSPV(特別目的事業体)名義で保有します。
各投資対象(企業)ごとに専用のSPVが存在し、そのSPVが対象株式を託管・保有する形です。例えばSpaceX株用に「SpaceX専用SPV」を設立し、そのSPVがSpaceXの株式を保有、対応するJSPAXトークンを発行するという流れです。このSPV持株証明やブローカー残高報告書などはJarsyのTransparencyページで公開され、誰でも裏付けを検証できます。
チェーンはArbitrumを利用しており、各投資対象ごとにERC-20規格のトークンが発行され(例: SpaceX株の「JSPAX」、Tesla株の「JTSLA」など)、1トークンが実株1株に対応する仕組みです。
SPVで保有した株式数と同数のトークンがArbitrum上でミントされると、ユーザの購入申込に応じてJarsyがユーザのウォレットへトークンを転送します。オフチェーンの資産保有証明(株式の名義や数量)はJarsyによって維持され、オンチェーンのトークン供給量と常に一致するようミント/バーンが行われます。
また、株式の売買益だけでなく、配当にも対応しています。
配当金などのオフチェーン発生イベントについては、スマートコントラクトとオラクル等を活用してオンチェーン上で自動分配される仕組みが整備されています。例えばTesla株から配当金が支払われた場合、JarsyはそれをUSDCに換えてスマートコントラクトに送り、トークン保有量に応じて自動的に各保有者へUSDC配当する、という動作が想定されています。
◼️規制対応
Jarsyは「規制ファースト (regulatory-first)」を掲げ、サービス開始当初から米国を含む各国の証券規制に配慮した運営を行っていますが、現時点で全てがクリアになっているのかは不透明な部分があります(少なくともリサーチした範囲では)。
米国において未上場株式のトークン化は証券に該当する可能性が高いため、SEC管轄下での提供方法が課題となります。Jarsyは現状、自社を証券ブローカー・ディーラーとして登録せずにサービスを提供しており、サイト上でも「Jarsyはブローカー・ディーラーや投資顧問ではなく、本ポータル上の情報は売買の誘因ではない」と明記することで、SEC規制のグレーゾーンを歩んでいる状況です。
具体的には、米国投資家に対しては原則として適格投資家のみを対象にしていると推測されます。実際、2024年時点のJarsy公式ブログでも「Jarsyの使いやすいプラットフォームは適格投資家向けである」との記載があり、一般の米国小口投資家には直接提供していないことが示唆されています。
また、Jarsyは米国OFAC(外国資産管理室)の制裁リスト掲載国・個人を「Excluded Jurisdiction(除外管轄)」と定義し、これらに該当する利用者を一切受け付けない方針です。例えば北朝鮮やイランなどはもちろんサービス対象外ですし、さらに各ユーザの居住国で暗号資産・トークン証券の所持が違法となる場合も、ユーザ側の責任で利用を控えるよう求めています。
基本的に米国以外の居住者で、自国法で明確に禁止されていない限り利用可能と考えられますが、「居住国の法律で禁止・制限されていないことをユーザ自身が保証する」旨が利用規約に記載されており、法令順守の責任を利用者側にも負わせる形です。
なので、この辺りは利用するにあたり各国の規制を慎重に調査する必要があります。
💬未上場株のセカンダリーマーケット市場は非常に大きい
最後は総括を考察です。
直近は株式のトークン化がトレンドの1つなので、この記事でもその1つであり、未上場株式に特化しているプロジェクトについて調査しました。
この辺りは当然ながら規制の範囲になりますが、規制に準拠した形で進めることができれば非常に大きな市場規模が見込めますし、DeFi(オンチェーン)市場の拡張性も望めます。
個人的にはトークン化することで24時間365日の利用や低手数料での売買、小口投資の実現というメリットは第一段階で、その次のDeFiとの統合に大きな価値があると考えています。
つい先日、同じように株式のトークン化を行うxStocksがKaminoと連携しました。これにより、トークン化された株式を担保にして資金の借り入れが可能になりました。
2025年7月14日、Solana上で最大規模(TVL 約23億ドル)を誇る融資プロトコル Kamino Lend は、スイスの Backed Finance が発行する xStocks(実株と1:1ペッグされたトークン化株式)を新たに担保として受け入れると発表しました。これにより、ユーザーは Apple(AAPL)や Tesla(TSLA)など60銘柄以上の株式/ETFトークンをロックして、ステーブルコインを借入できるようになります。
一般的に未上場株はIPOまでは休眠した資産としての価値しかなく、もしIPOできなかった場合はそれまでに回収の機会は一度もありません。ただし、未上場株がトークン化され、DeFiでレンディングができるようになるとIPO前も資産運用の対象になります。
例えば、Stripe株を1,000万円分購入して保有していてもIPOまでは何もなりません(当然セカンダリーの売却の道はありますが)。ただ、この1,000万円分の株式をDeFiの担保資産として、例えば500万円分のステーブルコインを借り入れします。そのステーブルコインを運用することで追加利回りが得られます。
株式のトークン化なので、そこまで大きなボラティリティがないとすると、安全な範囲で借り入れして運用するという選択肢はVC等でも大きな選択肢の1つになるかもしれません。また、これは批判もありそうですが、創業者またはチームが超安全な担保比率で自社株を担保に資金を借り入れして運用しておくことはIPO前の事業戦略の1つにもなる可能性があります。
このように、まず第一段階の株式のトークン化があり、その次にDeFiと統合されることで新しい金融商品や運用戦略が実現するようになるはずなので、そこまで見据えると非常に楽しみに思えてきます。
とはいえ、規制面の問題は依然としてあるので、早く日本からでも投資できるようになると良いなと思います。
以上、「Jarsy」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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