【InfoFiの崩壊と新展開】X API制限による既存モデルの崩壊にどのように立ち向かっているのか
「誰でも無料参加」はスパムに弱く、今後は“参加者にリスク”か“参加者制限”の2路線が現実的
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「InfoFiの崩壊と新展開」と題して、KaitoとCookieの現在について解説します。
X API制限によるInfoFi崩壊
Kaitoの対応
Cookieの対応
パーミッションレスの2つの道
2026/1/15にXがInfoFi系アプリのAPIアクセスを禁止し、スパム増加を理由にKaito/Cookieなどの中核機能が停止。
KaitoはYaps終了→Kaito Studioへピボット(認定クリエイター×ブランドのクローズド型、マルチSNS・金融/AI領域へ拡大)し、さらにPolymarketとAttention Marketsを開始。
CookieはSnaps停止後もデータ基盤を維持し、Cookie ProとChanceで予測市場へ展開;総括として「誰でも無料参加」はスパムに弱く、今後は“参加者にリスク”か“参加者制限”の2路線が現実的。
X API制限によるInfoFi崩壊
2026年1月15日、突如X社の製品責任者Nikita Bier氏が「投稿に報酬を与えるアプリ(いわゆるInfoFi)を全面的に禁止し、関連アプリのAPIアクセスを即時停止する」と発表しました。
Bier氏は「こうした仕組みがAI生成の無意味な投稿(俗に“AI slop”と呼ばれるもの)やリプライスパムの氾濫を招き、プラットフォームのユーザー体験を損ねている」とその理由を説明しています。
実際、前述の通りInfoFi各サービスによる過剰な投稿インセンティブがTwitter上のノイズ増大を招いていたため、X社は抜本策として開発者APIの利用停止という強硬手段に踏み切った形です。
この決定により、KaitoやCookieなどのInfoFi関連プロダクトは投稿データ取得や自動投稿が不可能となり、中核機能が事実上停止される事態に直面しました。
Kaitoの対応
Bier氏の発表からわずか1時間後、Kaito公式(Yu Hu氏)はX上で「Yaps」の提供終了を表明しました。併せて、X上で展開していたインセンティブ付きのリーダーボードを閉鎖し、当面この機能による報酬付与を停止することを明らかにしています。
この発表直後、KAITOトークン価格は急落し、一時前日比17%安の$0.57まで下落しました。
また、発表に先立つ1月中旬には一部大口のKAITOトークンステーカーが異常なアンステーキング(通常の20〜30倍となる100万枚超)を行っていたことが確認され、X社と一部関係者によるインサイダー疑惑がコミュニティで取り沙汰されました。Yu Hu氏は内部者による不正は否定しましたが、不信感を招く事態になりました。
◼️ここまでの変遷
今後の動きの前に、改めてここまでの変遷を簡単に振り返ります。
Kaitoは2022年に元CitadelのクオンツであるYu Hu氏によって創業されました。情報収集とAI分析を組み合わせた暗号資産情報プラットフォームとして出発し、2023年にはシードラウンドで$5.3M、シリーズAで$5.5Mを調達して累計$10.8Mの資金を獲得しています。出資者にはDragonfly Capital、Sequoia China、Spartan Group、Miranaなど主要VCが名を連ねており、情報そのものを資産化するという「InfoFi」の可能性に大きな期待が集まっていました。
Kaitoは当初、暗号資産分野の情報検索エンジンやマーケットデータ分析ツール(Kaito Pro)を開発する一方で、ユーザー参加型の情報発信プラットフォーム「Yaps」を立ち上げました。
YapsではユーザーがX上で暗号資産プロジェクトに関する投稿・分析を行い、その内容の「質」や「影響度」に応じてポイントやKAITOトークンで報酬を得られる仕組みを提供しました。
KaitoのAIアルゴリズムが投稿の内容やエンゲージメントを評価し、公開リーダーボードで上位に入ったユーザーにトークンを分配する形で「アテンションの金融化」を実現しました。
このモデルにより、暗号資産プロジェクトは広告代理店に予算を払う代わりに、コミュニティへの直接報酬を行うことが可能となり、ユーザーは有益な情報発信をすることで収入を得られる新しい仕組みを目指していました。
この仕組みは人気を博し、2024年から2025年にかけて、KaitoのYapsコミュニティは急成長しました。
公開情報によれば、2025年末時点で月間アクティブ「Yapper」数は約20万人に達し、パートナーとなった複数のプロジェクト(EigenLayer、Berachain、Story Protocolなど)のキャンペーンを通じ累計約$1.16億相当の報酬がクリエイターに分配されています。
KAITOトークンの時価総額は2025年2月に一時$2Bに達し、市場からもInfoFiモデルのポテンシャルが評価されていました。
しかしこの急成長の裏で、「とにかく報酬を稼ぐための低品質投稿」の増加やボットによるスパム問題という負の側面も徐々に顕在化していきます。
2025年後半には、報酬目当ての投稿増加に伴いX上でのスパム的な返信・低品質な情報が深刻化しました。
2026年1月9日には暗号資産分析企業CryptoQuantのJiho氏が「ボットが24時間で775万件もの暗号関連投稿を行った」と報告しており、これは通常時比1224%もの激増でした。このような事態に、Kaitoチームもスパム軽減に向けた手を打ち始めます。
Yu Hu氏によれば、参加ユーザーの審査強化、報酬対象を上位○%に絞るリーダーボード閾値の引き上げ、ソーシャル・オンチェーンデータによるフィルタリング、報酬メカニズムの微調整など様々な改善策を試みたものの、根本的な解決には至りませんでした。
こうした状況の中で上述したX API制限に至ります。
Kaitoは声明の中で、事前にX社と協議を行っていたことを明かしています。Yu Hu氏によれば、スパム問題への対応策を模索する中でX社とも直接対話し、「完全に誰でも参加できる無許可型の分配システムはもはや現実的でなく、高品質のブランドや真剣なクリエイター、そしてプラットフォームX自体のニーズにも合致しない」との認識で一致したといいます。
つまり、Kaito側もこのままのInfoFiモデルには限界があることを悟り、X側との調整を経て次の一手に移る決意を固めていたと言えます。実際Yu Hu氏は、「発表まで数ヶ月間この件に備えて比較的静かに開発を進めていた」と述べており、迅速なYaps終了発表は拙速な場当たり対応ではなく予期された事態への計画的対応だったことがわかります。
◼️新展開
API利用停止の報を受けてYaps終了の報告と同時に、Kaitoは新戦略「Kaito Studio」への転換を宣言しました。
Kaito Studioでは、ブランド企業(プロジェクト)側が一定の基準を満たすクリエイターを選抜し、そのクリエイターが担う情報発信キャンペーンに対して報酬や協業機会を提供するモデルへ移行します。
これまでのように不特定多数が自由に投稿して競争する形から、基準を設けた認定クリエイターとブランドをマッチングさせる、よりクローズドで質重視のマーケティング支援事業へ舵を切るという判断です。
また、プラットフォームもXだけでなくYouTubeやTikTok、Instagramといった他の主要SNSにも活動範囲を広げ、領域も暗号資産領域に限らず、金融やAIなど隣接・関連する分野にも拡大することも発表しました。
Yu Hu氏も2026年は「Kaitoが主要な活動の場としてCT(暗号資産クラスタ)を超え、暗号資産そのものもメイン領域ではなくなる年になるだろう」と述べており、Kaitoは暗号コミュニティ内のニッチサービスから脱却し、一般の企業マーケティングや金融情報分野にも跨るプラットフォームを目指しています。
現在はウェイティングリストが公開中で、間も無く正式に公開されるようです。
◼️予測市場にも進出
さらに、2026年2月10日、KaitoはPolymarketとの提携を発表しました。この協業により両社は「Attention Markets」と呼ばれる新たな予測市場カテゴリーを開始します。
「Attention Markets」は従来の二者択一型の予測市場を拡張し、インターネット上の注目度(マインドシェア)や感情(センチメント)を数値化して取引対象にする取り組みです。
KaitoはXやTikTok、Instagram、YouTubeといった複数のソーシャルプラットフォームからデータを収集・集約し、話題の対象がどれだけ注目を集めているか(マインドシェア)や感情のポジティブ/ネガティブ傾向を測定する技術を提供します。
このデータをPolymarket上の新市場の決着指標として活用することで、たとえば「来月、Anthropicの注目度はOpenAIを上回るか?」や「今月、イーロン・マスクに対する世論は好転するか?」といったユニークな市場を創出できるのが特徴です。
実際、「Anthropic対OpenAIの人気度」などの市場が例示されており、この提携によりそうした文化的・世論的な話題を対象にした市場の開設が可能になります。
Polymarket側はこのソーシャルデータ駆動型市場を2026年3月に数十件立ち上げ、年末までに数千件規模へ拡大する計画を示しています。初期はAI業界の話題(例えば前述のAnthropic vs OpenAIなど)が中心となり、その後エンタメや世界的ニュースなど様々な領域へ広げるとされています。
Kaitoはこの新分野を支援するために1,050万ドルの資金調達を行い評価額8,700万ドルに達したとも伝えられており、この領域への期待値も感じられます。
Cookieの対応
Kaitoの場合と同様、2026年1月15日のX社の発表はCookie DAOにも直撃しました。
CookieのSnapsプラットフォームはX上でのデータ取得・投稿が不能となり、事実上サービス継続不可能な状態に陥りました。当時Cookieのコミュニティは「Cookie3 Analytics」と称するインフルエンサー分析サービスやコミュニティ機能をX上で展開しており、数万人規模のユーザーが日々活動していましたが、その基盤が一夜にして失われる形となりました。
これを受けて2026年1月15日~16日にかけ、Cookie DAOは「Snapsプラットフォームおよび全てのクリエイター向け活動の停止」を公式に発表しました。
「Cookieデータレイヤーとプロダクトを守るための苦渋かつ突然の決断だった」が、「現状を踏まえ、Snapsのようなクリエイター活動が今後いかなる形でも存続可能かについてはX社からの確認・ガイダンスを待つ」とも述べており、将来的にX側の方針次第では何らかの形で復活させたい意向もうかがえます。
Cookieチームは「自分たちの活動は常にX社のルール・ポリシーに適合していると信じていた」と悔やみつつも、現状ではInfoFiモデル自体が大きな転換期を迎えたことは認識しているようです。
ただし、Snapsは停止されたものの、Cookie DAOには他にもサービスがありました。
Cookie.fun(分析プラットフォーム)やCookie Data API、さらに「Cookie3 Analytics」やインフルエンサーのKOLインテリジェンス提供機能については、「今回の変更の影響を受けず引き続き稼働する」ことが案内されています。
つまり、報酬付き投稿キャンペーン部分のみ閉鎖し、データ収集・分析基盤そのものは存続させる判断がなされたわけです。
これはCookieが一貫して重視してきた「データレイヤーの完全性維持」に沿った対応であり、API停止で外部からのデータ取得が困難になっても、既存のデータストックや独自分析機能を活かして事業の柱を別に立て直す余地を残した形です。
◼️新展開
Snaps停止とほぼ同時期に、Cookie DAOは新プロダクト「Cookie Pro」の存在を明らかにしました。
発表によれば、Cookieチームは「過去6ヶ月にわたり、Cookie Proというリアルタイム市場インテリジェンスツールを開発してきた」と述べており、その正式ローンチが2026年第1四半期(Q1)に予定されているとのことです。
Cookie Proは暗号資産業界向けのリアルタイム市場分析ツールで、特にインフレーション(マクロ経済指標)データなど投資判断に重要な情報を提供することを特徴としています。
具体的な機能詳細は明らかにされていませんが、文脈からするとオンチェーンデータやSNSデータ、経済指標などを総合してトレーダーや投資家に向けた分析ダッシュボードやアラートを提供するサービスと予測されています。
なので、従来はプロジェクトから預かった広告予算をコミュニティに配る仲介役でしたが、Cookie Proでは付加価値のあるデータや分析を直接ユーザー(企業や投資家)に提供し、その対価を得るB2B/B2Cサービスとなる可能性があります。
Cookieチーム自身「我々は依然データドリブン企業であり続ける」と強調しており、Snaps停止後はデータ解析事業に完全に軸足を移すのかもしれません。
◼️予測市場にも進出
Kaitoと同様にCookieも予測市場への進出を果たしています。
具体的には予測市場アグリゲーターを標榜する「Chance」と呼ばれるプロジェジェクトを支援しています。
ChanceはPolymarket、Kalshi、Opinionなどの予測市場プラットフォームに対して1つのアプリからアクセスできる予測市場アグリゲーターです。
このプラットフォームにCookie APIが統合されており、各イベントに対する重要なリアルタイムのポストを連携し、特定の市場を動かす可能性のあるニュースが起こった際にはユーザーにアラートを送ります。
つまり、Chanceは情報収集をしながらあらゆる予測市場に投資ができる単一ターミナルというわけです。すでにPolymarketの週次ボリュームの0.5%を処理しており、急成長しています。
パーミッションレスの2つの道
最後は総括と考察です。
今回のInfoFiの崩壊と新展開はかなり面白い事例だと感じます。
まず、クリプトのプロジェクトが中央集権的なプラットフォームに依存していたこと自体に矛盾を感じます。しかし、これはサービスの性質上、ユーザー数の多いSNSを採用せざるを得なかったことから、思想と実態の乖離を感じさせる出来事でもありました。
ただ、今回のX側の判断は正直妥当であったと思います。SNSの反応をすべて見たわけではありませんが、今回の判断を切り取って「いきなりサービスが利用できなくなる。中央集権的プラットフォームは危険だ。」といった趣旨の発言はほとんど見かけません。
なぜなら、InfoFiがXの空間をスパムまみれにしてしまっていたことは自明であり、有名人のリプライに謎のスパムが並ぶなど、クリプト民もうんざりしていた部分があったからです。
個人的にはX側も金融系のサービスを導入していくので、競合のように見えるサービスが邪魔だったこともあると思いますが、何よりもタイムラインの汚染の原因になっているとして、排除した判断は適切だったと思います。
これによって、これまでのInfoFiのモデルは崩壊し、KaitoもCookieも新展開に移行しました。そして、共通する部分はありつつも、別の道も模索しています。
共通部分は「予測市場」への進出です。SNS上のアテンションを可視化するという技術を予測市場のイベントに適用し、情報提供またはイベント自体の決着に利用するという形です。これは急成長する予測市場に賭ける判断でもありますが、元々領域としてかなり近いところにいたので、この展開は理解できます。
別の道では、Kaitoは一般的なマーケティング仲介ツールを検討しており、Cookieはおそらく投資家向けの情報分析ツールを検討しています。Cookieの方の新サービスはKaitoが祖業としてやっていたKaito Proにかなり発想が近いのかなとも思っていますが、続報を待ちたいと思います。
さて、これらの変遷を経て、個人的にパーミッションレスの参加には2つの道しか存在しないのではないかと感じました。
1つ目が「参加者にリスクを負わせる」形です。予測市場はまさにこれで、ブロックチェーンにおけるバリデーターもそうですね。誰でも参加できるけど、自分の資金を使いリスクを取り、参加させることで一定の参加者制限と不正防止を行っています。
2つ目が「参加者自体を制限する」形です。これをパーミッションレスと呼ぶのか不明ですが、参加応募自体は誰でも可能ですが実際に利用できる人は一部の人に制限します。Kaito Studioはこの形を目指していますし、一般的なインフルエンサーマーケティングのマッチングもこれです。当初はこの審査プロセス自体に組織の意思が入ってくると思いますが、このプロセスの透明性を高めることで一定のパーミッションレスっぽい形にはなると思います。
InfoFiの崩壊で個人的に感じたことは、単一プラットフォームに乗っかる危うさではなく、「無料で誰でも参加でき、良い行動をすればリターンが返ってくる」というある種性善説に基づいたプラットフォームがワークしないという事実です。
同時期に起こったAIの台頭も大きかったと思いますが、無料で誰でも参加できるという性質はスパム攻撃を許してしまい、プラットフォーム側も善良なユーザーも得をしないという事態に陥ります。
だからこそ、参加者にリスクを負わせるか、参加者自体を制限する形のパーミッションレス性しか現在は実現しないのではないかと思います。なので、InfoFiの構想自体が悪かったというよりも、スパムを助長する構造自体に無理があったという学びの方が適切のように思います。
とはいえ、これは現時点の状況なので今後InfoFiプロジェクトがどうなっていくのかは追いかけていきたいと思います!
以上、「InfoFiの崩壊と新展開」レポートでした!
参考リンク: Kaito HP X / Cookie HP X
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