おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Azuki最新レポート」と題して、Azukiの誕生からこれまでの変遷を振り返ります。
🟥Azukiの概要と変遷
🖼️直近リリースされたAnime.comとStudio Azukiを深掘り
💬現実世界に展開されるweb3発ブランド
🧵TL;DR
Azukiは2022年に登場し、PFP NFTとして大成功を収め、web3発のアニメIPへと発展してきた。
Elementals騒動などを経てブランド価値が揺らいだが、アニメ制作・専用チェーン・トークンを通じて再構築を図っている。
Anime.comやStudio Azukiを設立し、Web2層にも届く“ファン参加型アニメブランド”として再定義中。
NFTやトークンはファンクラブ的な機能を果たしつつあり、web3を意識しないUXでマス層取り込みを狙っている。
🟥Azukiの概要と変遷
まずはAzukiの前提知識からおさらいします。
Azukiは2022年1月に登場したアニメ風デジタルコレクション(NFT)で、1万体のPFP NFTからなるGenesisコレクションは発売開始4分で完売し、約2,900万ドルの売上を記録しました。以降Azukiは累計取引高11.5億ドルを超え、NFT界でトップクラスの成功を収めたプロジェクトの一つとなっています。
運営元のChiru Labs(ロサンゼルス拠点)は「web3アニメ企業」を標榜しており、ブロックチェーン技術とコミュニティ主導の創作を通じて「分散型のアニメブランド」を構築することを目指しています。
実際、Azukiコミュニティ(通称「The Garden」)は立ち上げ以来100以上のサブコミュニティを生み出し、数千点のファンアートやグッズ制作、世界各地でのイベント開催など精力的に活動してきました。
以下に、Azukiプロジェクトの過去3年間における主な出来事とマイルストーンを時系列でまとめます。
2022年1月 – Azuki Genesisコレクション発売。 8,700体が一般販売され4分で完売(残りはホワイトリスト枠)し、約$29Mの収益を記録。Azukiは発売直後からNFT取引量トップクラスとなり、わずか数ヶ月で累計取引高10億ドルを突破する快挙を達成しました。
2022年4月 – 「Something Official」エアドロップ実施。 Azuki保有者に謎のボックスNFTが配布され、数週間後にBEANZという新キャラクターNFT(計19,950体)として開封される。可愛いビーン(豆)の精霊的キャラ設定が話題となり、2次市場で高額取引が相次ぐ(2週間で$52Mの売上)。BEANZはAzukiホルダー以外も参加できるコミュニティ拡大策として機能。
2022年5月 – 創設者による過去プロジェクト放棄の告白(炎上)。 Azuki共同創業者のZagabondが、自身が過去に関与した3つのNFTプロジェクトを放棄していたと明かしコミュニティが動揺。Azukiのフロア価格は発表直前の約19 ETHから一時10 ETH以下に急落しました。ZagabondはTwitterスペース上で謝罪し、以降プロジェクトに専念することを表明。コミュニティ内では批判と擁護が入り混じりました。
2022年10月 – Physical Backed Token (PBT)と黄金のスケートボード発表。 現実の物品とNFTをペアにする新規格PBTをChiru Labsが開発し公開。PBTは**「スキャンして自分のNFTとして認証」**できる技術で、初の実証としてAzuki世界観に因んだ純金メッキ製「黄金のスケートボード」NFT(9点)をオークション販売し、最高落札額は約$400k(約260ETH相当)に達しました。
2023年1月 – 仮想都市「Hilumia(ヒルミア)」公開。 Azukiローンチ1周年企画として、公式サイト上に架空の街ヒルミアのインタラクティブマップが登場。これはAzukiメタバースの序章と位置付けられ、鍛冶屋やアーケード、道場など10のロケーションが描かれ将来の展開を示唆する内容でした。コミュニティはEaster Egg(隠し要素)探しで盛り上がり、Azukiの物語性や将来計画への期待を高めました。
2023年4月 – LINE FRIENDSのIP企業IPX社と提携発表。 Chiru Labsは韓国発の人気キャラクター「LINE FRIENDS」を展開するIPX社とパートナーシップ契約を締結。このニュースによりAzuki及びBEANZの取引量は直後に41%急増、フロア価格も15%上昇し約32,000ドルに達する好影響が見られました。提携第1弾としてBEANZとLINE FRIENDSの人気キャラ「BROWN」のコラボ商品(冬季限定グッズコレクション)を発売し、2024年1月には3種類のコラボ公式マーチャンダイズがリリースされています。
2023年6月 – 新コレクション「Azuki Elementals」リリース(20,000体)。 Azukiホルダー向けに10,000体がエアドロ、残り10,000体をDutchオークション販売する形式で展開。15分で完売し約$38M(約50億円)の売上を記録。しかし、同日公開されたElementalsのイラストが既存Azukiと酷似していたためコミュニティで批判が噴出。これによりAzuki Genesisの市場価値が急落(フロア価格は約9.3 ETHまで下落)し、大量売却も発生。チームは「期待に応えられずマーケットを混乱させた」と謝罪声明を出し、Elementalsのアート改善など今後の方針を説明しました。
2023年7~9月 – アニメ制作プロジェクト始動の布石。 Elementals騒動後、Azukiはアニメ分野への本格進出を打ち出しました。2023年夏には『コードギアス』で有名なアニメ監督谷口悟朗氏および日本の大手広告・アニメ制作会社電通とのパートナーシップを発表し、Azuki原作のアンソロジー形式による短編アニメシリーズ企画を始動。3つの独立したストーリーをそれぞれ異なる監督・キャラデザで制作する構想で、谷口氏やAzuki共同創作者のArnold Tsangらは「web3を活用した新しい物語体験を提供し、アニメ業界にも貢献できる可能性がある」とコメントしました。
2024年3月 – 独自ブロックチェーン「AnimeChain」構想と提携発表。 Azuki(Animecoin財団)は、イーサリアムL2のArbitrum技術を用いたアニメ特化ブロックチェーン「AnimeChain」を構築する計画を明らかにし、Arbitrumを公式パートナーに選定したと発表。
2024年9月 – 高額ドメイン「Anime.com」を取得・新プロジェクト予告。 2024年9月13日、Azukiの運営会社Chiru Labsはアニメ専門プラットフォーム構築のため「Anime.com」ドメインを取得したと発表。(※取得額は非公開ながら数百万ドル規模と噂)。同日公開のティーザーサイトでAnime.comのメール待ちリスト登録が開始され、参加者には限定NFTステッカーが無料配布されるキャンペーンも実施。
2025年1月 – コミュニティトークン「$ANIME」発表と配布開始。 2025年1月、Animecoin財団がAzukiと協力して独自トークン$ANIMEをイーサリアム及びArbitrum上で発行すると発表。発行総数は100億枚で、その約37.5%(37.5億枚)がAzukiコミュニティ(Azuki/Beanz/Elementals保有者)にエアドロップされる計画です。残りはコミュニティ主導の基金(AnimeDAOによる運用予定)や提携プロジェクトに割り当てられます
2025年1月 – Anime.comベータ版ローンチとアニメ作品予告。 $ANIME発表と前後して、ファンコミュニティプラットフォーム「Anime.com」がβ版として一般公開されました。ユーザーはメールアドレスで登録し、プロフィール作成(アバター設定)やAzuki初のアニメ作品「Enter The Garden: Fractured Reflections」の予告編視聴および視聴パーティ参加予約が可能になりました。さらに限定デジタルコレクティブル(ステッカーや追加アバターパーツ)をブラインドボックス形式で購入できる機能も提供され、ファンはコレクション要素とカスタマイズを楽しめます。2025年2月には同プラットフォーム上でAzukiアニメ第1話のオンライン同時視聴イベントが開催され、ライブチャットにはAzuki製作陣(プロデューサーやアートディレクター)も参加してファンと直接交流しました。
2025年7月 – 「Studio Azuki」設立とアニメ制作加速。 2025年7月1日、Azukiチームは公式ブログでアニメ制作スタジオ「Studio Azuki」の設立を発表しました。このスタジオは日本の漫画・アニメ企業COMISMA社および分散型アニメスタジオXenotoon社とのジョイントベンチャーで、世界に向けてアニメを開発・制作・配信することを目的としています。
以上が簡単な変遷となります。NFT発のIPから途中でアニメに舵を切り、専用チェーン、トークン、プラットフォーム、制作スタジオと連続的にリリースしています。
🖼️直近リリースされたAnime.comとStudio Azukiを深掘り
では、ここ数ヶ月以内にリリースされた大きな動きであるAnime.comとStudio Azukiについてより詳細に説明します。
◼️Anime.comの立ち上げ背景とサービス内容
Anime.comはAzukiが手掛けるアニメファン向けのコミュニティ・プラットフォームです。前述の通り、2024年9月に高額ドメイン「anime.com」を取得したことが公表され、数カ月の開発期間を経て2025年1月下旬にβ版が正式にローンチしました。
Anime.comを立ち上げた背景には、AzukiブランドのWeb2層への拡大とコミュニティ主導のIP展開という2つの狙いがあります。AzukiはNFTプロジェクト発ではありますが、伝統的なアニメファン1億人以上の市場にもリーチしブランドを浸透させたい考えです。そのため、誰でもアクセスできる「Anime.com」という間口の広いプラットフォームを用意し、Web2のアニメファンをweb3の世界に段階的に誘導する戦略を取っています。
ユーザー登録に暗号ウォレットは不要でメールアドレスで簡単に始められる仕様となっており、まずは従来のアニメファンコミュニティに近い体験を提供しています。
提供される主な機能・サービスは以下の通りです。
プロフィール機能とアバター作成: ユーザーは自分の分身となるアバターを作成し、プロフィールページで他のファンと交流できます。アバター用の髪型・衣装など各種トレイト(属性)は順次追加予定で、コレクション要素があります。
Azukiアニメの視聴体験: Azuki初のアニメシリーズ「Enter The Garden」のトレーラー映像が公開されており、エピソード配信時にはAnime.com上で同期視聴(Watch Party)を開催します。視聴中はファン同士や制作陣とリアルタイムでチャットでき、コメントを交わしながら盛り上がれるインタラクティブ視聴体験です。
デジタルコレクティブルとゲーミフィケーション: プラットフォーム内で購入できる「ブラインドボックス」から、限定版のデジタルステッカーやアバター用アイテムを入手できます。例えばアニメ作品「Fractured Reflections」にちなんだステッカーセットなどが販売されており、ファンはお気に入り作品のデジタルグッズを収集・自慢できます。将来的にこれらコレクティブルはユーザー間取引や他サービス連携も可能になる構想です(現状テスト段階)。
技術的には、Anime.comは前述のAnimeChain上で構築されており、配布されるNFTステッカーや将来のトークン機能もAnimeChain上で動作します。
但し、現時点の機能はデジタルコレクティブ機能系は表にはなく、アニメ系のキュレーションサイトのような形になっています。(プレスリリースには上記の機能があったので、初期はついていた、または今後つく予定だと思われます)
◼️Studio Azukiの目的と展開
Studio Azukiは上述の通り2025年7月に発足したAzukiのアニメ制作スタジオです。共同設立パートナーは、日本のIP・漫画企業であるCOMISMA(自社で漫画アプリ運営やオリジナル漫画IP開発、傘下にハイエンドのアニメ制作スタジオを保有)と、ロサンゼルス拠点のXenotoon(クリエイターとファンのための分散型アニメスタジオ。web3やAI・XR技術を駆使しアニメの資金調達・制作・流通の民主化を掲げるスタートアップ)です。
Studio Azukiの具体的な目的は、AzukiをはじめとするオリジナルIPのアニメ展開をグローバルに推進することにあります。
Azukiチーム自ら「アニメ業界とweb3文化の架け橋となり、ファンが物語作りに参加できる新しい形のアニメ体験を創出したい」と述べており、単に映像作品を作るだけでなくコミュニティ参加型のマルチメディア展開を重視しています。例えば、NFTやトークンを活用して視聴者が物語の展開に意見を反映できたり、クリエイターへの支援や利益配分が行える仕組みを模索しています。
💬現実世界に展開されるweb3発ブランド
最後は総括と考察です。
ここまで、Azukiの概要、変遷、直近の動きについて振り返っていきました。
元々web3発のIPとしてリリースされ、グッズ展開なども模索されていましたが、現在は完全にアニメにコミットしています。NFTやトークンはその参加証として機能し、独自チェーンとプラットフォームの運営を行っています。
他のプロジェクトを見てもそうですが、やはりNFT単体での運営は難しく、NFTはあくまでコミュニティの入り口であり、初期の資金調達で、そこからプロジェクトが運営されていく形が主流になっています。Pudgy Penguinesはおもちゃを展開し、BAYCはメタバースゲームを作っています。
Azuki発のアニメが現実世界でもヒットを飛ばすと、また新しい層がweb3に入ってくる可能性はありそうですが、そもそもweb3がどうとか、そういう体験も無くなっていくのかもしれません。
Azukiが出すアニメやアニメスタジオのファンコミュニティのようにNFTやトークンが機能して、Web2にしか触れていない人もメールアドレスからウォレットを作成し、クレジットカードでNFTやトークンを売買すると、あまりブロックチェーンを意識せず他のファンクラブと近い体験になります。
NFTやトークンの場合は月額での支払いではなく、初期の購入、そしてプロジェクトが有名になるに連れて価格が上がる可能性もあるので、ファンクラブ以上の体験を作り出すことができます。逆に、価格が下がったとしても元々お金を支払ってファンクラブに参加しているという前提なので、そこまで気になりません。
とはいえ実情は現時点では投資目的の人が多いですが、もっとアニメ等のコンテンツの方が有名になっていくと、この割合が変わっていくのかもしれません。
エンタメやゲームからweb3がマスに広がっていく可能性は十分に考えられるので、かつてのブルーチップNFTの現在の動きも注意深く改めて見守っていきたいと思いました。
以上、「Azuki最新レポート」でした!
🔗参考リンク:HP / X
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