おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Apyx」についてリサーチしました。
Apyxとは?
詳細の仕組み
変遷と展望
DAT3.0の時代が到来
TL;DR
Apyxは、DAT企業の優先株(配当を生む実在資産)を裏付けにした、世界初の「配当担保型ステーブルコイン」プロトコル。
apxUSD(ドル連動の基軸)と、apxUSDをロックして配当収益を受け取るapyUSD(利回り型)を中心に、二桁利回り・超過担保・高い透明性を実現する。
DFDV(NASDAQ上場)支援のもと、監査/アテステーションで信頼性を担保しつつ、将来はAPYXガバナンスやSolana展開、Pipsでコミュニティ拡大を狙う。
Apyxとは?
「Apyx」は、世界初の「配当担保型ステーブルコイン」プロトコルです。
デジタル資産トレジャリー(DAT)企業が発行する優先株式(配当を生む実在資産)を裏付けとして、高利回りのドル連動トークンを提供することを目的としています。
従来のステーブルコイン(例:USDTやUSDC)が担保の透明性や利回り付与に課題を抱える中、Apyxは「二桁%の利回り」「公開企業による裏付け」「高度な透明性」を実現し、インフレによる購買力低下を解決する新しいステーブルコインの形を目指しています。
まずは特徴を列挙します。
◼️二桁利回りの提供
ApyxではapyUSD(後述)という利回り付き資産を通じ、単なるドル価値の維持に留まらず年率10%以上の利息をユーザーにもたらします。従来のステーブルコインが保有するだけでは利息が付かずインフレで実質価値が目減りするのに対し、Apyxでは配当収入をオンチェーン上で還元することで「安定性」と「資産の増殖」を両立させています。
◼️実在資産による裏付け
Apyxの基軸ステーブルコインapxUSDは、デジタル資産トレジャリー企業の公開市場で取引される優先株式を中心とした実資産でオーバーコラテライズ(超過担保)されています。これら優先株は定期的な現金配当を生み出す「デジタル・クレジット」と位置付けられ、伝統的市場の収益源がステーブルコインの価値の裏付けとなっている点が大きな特徴です。
◼️高度な透明性
担保資産は株式市場で価格が公開されており、Apyxは毎日のNAVの更新やリアルタイムの担保内訳公開など、透明性を徹底しています。さらに各月ごとに第三者のカストディアン(資産保管機関)から預託資産の存在と評価額に関するアテステーション(証明書)を取得・公開し、裏付け資産の検証可能性を担保します。
◼️上場企業による支援とガバナンス
Apyxは、NASDAQ上場企業であるDeFi Development Corp. (DFDV)(ソラナに特化した最初のデジタル資産トレジャリー企業)のチームから支援を受けています。
DFDVはソラナ(SOL)を蓄積・運用する戦略で2025年4月に上場した企業であり、規制遵守や伝統金融との連携に強みを持つバックグラウンドをApyxにもたらしています。創設メンバーは伝統金融(資本市場・デリバティブ・リスク管理)と暗号資産の両分野で数十年の経験を持ち、これまでにもDAT関連製品を立ち上げスケールさせた実績があります。
なお、ApyxにはAPYXというガバナンストークンが用意されており、将来的にプロトコルの開発方針やトレジャリー運用をトークン保有者が決議できるようになる計画です(現時点では発行準備段階)。
詳細の仕組み
続いて、より詳細の仕組みを解説していきます。
◼️トークンエコノミクス
Apyxエコシステムの主なトークンは3種類あります(ステーブルコイン2種+ガバナンストークン1種)。それぞれの役割と経済モデルは以下の通りです。
apxUSD
米ドルと価値が連動するステーブルコインです。法定通貨や暗号資産ではなく、DAT企業の優先株式+米国債+オンチェーン担保(他のステーブルコイン)によって裏付けられている点が特徴です。
常に1 ドル相当の価値を目指して設計されており、プロトコルの主要な流動性レイヤー(基軸通貨)として機能します。
apxUSD自体の保有者には利息は直接支払われません。その代わり、apxUSDはDeFiやCeFiにおける決済・流動性供給手段として幅広く利用されることを想定しており、市場における安定した流動性供給と価格ペッグ維持に注力した設計です。
発行量はプロトコルへの担保投入量に応じて変動し、常に超過担保比率を保つよう管理されます(発行上限は担保価値の一定割合まで)。
apyUSD
apxUSDをロックすることで発行される利息付与型のステーブルコインです。
技術的にはERC-4626規格に準拠したVaultシェアであり、ユーザーがapxUSDを預け入れると対応するapyUSDトークンが発行されます。apyUSD保有者には、裏付け資産から生じる配当収益が継続的に分配されます。
具体的には、DAT優先株式の配当金(例:STRCの年率約11%、SATAの初期利率12.5%といった月次配当)がオフチェーンで現金として受け取られると、それをプロトコルがオンチェーンのapxUSDに換えてapyUSDの金庫に収益として供給します。この収益によりapyUSDの価値が時間とともに増加する仕組みです。
ユーザーはapyUSDを保有しているだけで利息が自動複利的に蓄積されるため、定期的な利息請求などは不要です。なおapyUSDをアンロック(元のapxUSDへの引き出し)する際は、元本のapxUSDにロック期間中に増加した分の価値を上乗せして受け取ることができます。
引き出し要求後は30日間のクールダウン期間が設けられており、期間終了後に初めてapxUSDが受け取り可能になります。
APYXトークン
将来導入予定のプロトコル・ガバナンストークンです。APYX保有者は将来的に投票を通じてApyxプロトコルの手数料パラメータ変更や担保ポートフォリオ運用方針、資金の使途などに参加できる見込みです。
2026年現在、APYXトークン自体は未だ市場流通しておらず、Apyxチームはローンチ後の適切なタイミングでコミュニティに配布・発行するとしています。
トークンエコノミクスの詳細は公式には未発表ですが、VCを排除したフェアな分配を理念として掲げています。
Apyx Pips(ポイント)
APYXトークンが公式に流通する前段階のエコシステム参加ポイント制度です。Pipと呼ばれるポイントは、ユーザーのプロトコル参加度合いを示す指標で、Apyxエコシステム内の様々なアクション(アプリ上での資産保有・ロック、流動性提供、他プロトコルでのトークン取引など)に応じて付与されます。
2026年2月26日のパブリックローンチと同時に「Season 1」としてポイントキャンペーンが開始されており、シーズン期間中に獲得した累積ポイントが将来のAPYXトークン分配や特典に反映される可能性があります(公式には「ポイントはエコシステム参加度を示すものであり、短期的なエアドロップ狙いではなく長期参加者を報いる目的」と説明されています)。
Season 1は「開始後12週間経過」もしくは「apxUSD供給量が10億ドルに到達」のいずれか早い方で終了すると定められており、終了後の次フェーズ(Season 2以降)で新たな報酬設計やAPYXトークンの本格ローンチが行われる可能性があります。
◼️技術的な仕組み
Apyxプロトコルは、オンチェーンのスマートコントラクトによるステーブルコイン発行・管理メカニズムと、オフチェーンの資産運用・配当受領プロセスを組み合わせたハイブリッド構造を持ちます。
以下、その全体像です。
Apyxは前述の通り、公開市場で取引される優先株式や米国債等のオフチェーン資産を担保としてapxUSDを発行します。
プロトコル運営側(Apyx Treasury)はナスダック等の取引市場でこれら優先株や債券を購入し、第三者のプライムブローカレッジ(証券会社)口座で保管します。取得した優先株式はSTRC(年利調整型のBTC担保優先株)など複数銘柄に分散投資されており、ポートフォリオ全体で10%超の配当利回りを実現する一方で、一部は現金および短期国債で保持して価格変動リスクの低減バッファとしています。
apxUSD発行時には常に担保価値が発行額を上回るよう発行上限(オーバーコラテラル率)が設定されており、仮に担保資産価格が下落した場合でも一定範囲までapxUSDの完全償還が可能なよう設計されています。
また、プロトコルが保有するDAT優先株の配当金は月次で現金受領されます。Apyxではこれを全額apxUSDに換えてapyUSD(利回り金庫)に送金します。
スマートコントラクト上ではYieldDistributorと呼ばれる専用モジュールがこの収益を受け取り、LinearVestV0というコントラクトに預け入れます。LinearVestV0は線形ベスティングの仕組みを実装しており、受け取った収益を一定の期間(例:30日間)かけて徐々にapyUSD保有者に割り当てる役割を果たします。
つまり一括配当ではなく毎秒刻みのストリーミング配当となるため、一時的な利回り変動が平滑化され、プロトコルへの新規参加・退出による既存利用者への影響を緩和できます。
各月の配当総額に基づき「翌月に分配すべきドル建て利回り総額」が設定され、その枠内でapyUSD保有者全体に収益が配られます。新たにapyUSDをロックしたユーザーは即座に翌配当の受取対象に加わる一方、アンロック要求中のapyUSDは配当対象から除外されるため、残存ホルダーには相対的に高い%利回りが行き渡る仕組みです。
このような動的分配により、極端な資本流出入時でもプロトコル安定性が保たれる設計になっています。
◼️対応チェーン
Apyxプロトコルの初期リリースはEthereumメインネット上で行われました(2026年2月)。apxUSDおよびapyUSDはいずれもERC-20トークン(apyUSDはERC-4626 Vaultトークン)としてEthereum上に展開され、UniswapやCurveといった既存DeFiとの高い親和性を持ちます。
今後の計画として、Solanaブロックチェーンへの対応が公式に予告されており、Ethereum版ローンチ直後からSolana版の開発が進められています。
変遷と展望
Apyxは少数精鋭のチームによって開発・運営されています。 LinkedInの企業ページによれば従業員数は2~10名規模で、2026年に創業したスタートアップです。
Apyxは2026年初頭に2回の資金調達を実施していますが、上述した通りVCからの調達を避けているため、いずれも戦略的な連携が主たる目的であったことが想像されています。
シードラウンド(Seed Round)
2026年1月に実施。調達後評価額は7000万ドル(約95億円)で、調達額の詳細は非公表ですが、シードラウンドと次の戦略ラウンドを合わせた総調達額が300万ドルであるため、シードではその一部が調達されたとみられます。
参加した投資家の詳細は明らかにされていませんが、社内関係者やエンジェル投資家、一部戦略的パートナーが中心だった可能性があります。
戦略ラウンド(Strategic Funding Round)
2026年2月下旬に実施。シードからわずか1ヶ月余りで評価額を3億ドル(約410億円)に引き上げての資金調達となりました。
Apyxチームは「VCが初期トークン保有量を占めると、ロック解除後の売却圧力でコミュニティ参加者が不利益を被る」との反省から敢えてVC不参加とし「戦略的出資者のみ」でラウンドを完了させました。
戦略ラウンドには数社の戦略投資家が参加しましたが、そのうち公表されているのはDeFi Development Corp. (DFDV)です。DFDVはNASDAQ上場企業として初めてApyxに出資した機関投資家であり、2026年2月26日に戦略出資を公式発表しています。
DFDVは自社がまさにSolana中心のDATであることから、Apyxの理念(DATの配当収益をオンチェーン利回りに活用する構想)に強く共感しての出資であると述べています。
また、日本からもアライドアーキテクツがシードラウンドへの参加を発表していました。
調達した資金は主にプロトコル開発の加速とローンチ準備に充てられました。Apyxチームは戦略ラウンド完了時、「資金調達フェーズは終了し、開発フェーズに本格移行した」と述べ、直後の2026年2月末にプロトコルを予定通りEthereumメインネットで公開しています。
今後追加での資金調達は「ローンチ前に行う計画はない」と公式ブログでも表明されており、まずはローンチしたプロダクトの成長に注力する方針です。将来的にさらなる拡大局面(例えば他チェーン展開や更なる担保購入など資本が必要な段階)で資金需要が生じれば、追加の戦略投資やコミュニティセール等が検討される可能性もありますが、現時点では自己資本と運用益で賄える範囲で事業を進めています。
DAT3.0の時代が到来
最後は総括と考察です。
とても面白いプロジェクトですね。DATは昨年にバブルが起こり、DAT企業の乱立と暗号資産全体の市況悪化により一旦のバブルは終了しました。その最中でBTC以外のETHやSOL等のDATも生まれ、単なる保有以上にステーキング収益も確保できるとして、DAT2.0が叫ばれていました。
ただ、個人的にはDATの本質はやはり暗号資産の保有にあると考えています。保有するETHをステーキングして年間3~4%で運用できたとしても、価格自体の値動きに比べれば些細なものです。
なので、いかに暗号資産を保有できるか、言い換えれば資金調達できるかという話になってきます。
そこで最近のDATで出てきているのが永久優先株という概念です。詳細の仕組みはここでは書きませんが、ざっくり言えば株式であるが配当を支払う、そして満期がないというものです。まあ、社債みたいなものですね。当然、有価証券に該当するので株式市場で販売されています。
DAT企業はこれを発行することで資金調達します。その資金で暗号資産を買います。上がったバリュエーションでさらに資金調達して暗号資産を買います。この過程で過去に発行した永久優先株やそれ以外の負債の配当や金利の支払いを行います。
なので、この過程で暗号資産の価格が低迷する時期が長いと支払いサイクルに問題が生じる危険性があります。
今回リサーチしたApyxはこのDATの永久優先株(またはそれに該当するもの)を購入して、それを担保にしたステーブルコインを発行するプロジェクトです。実は最近こういったプロジェクトは少しずつ出てきています。
危険性もあるので最初は担保資金の一部で購入するだけですが、ゆくゆくはその比率を上げていく設計です。ステーブルコインとして安全に使えるのかというと、まだ検証は必要だと思いますが、その利回り自体はかなり高めなので、まずは運用先の1つとしては良いかもしれません。
また、こういった動きはDAT企業の中で出てくると思っており、次のDATの争いはいかに自社の金融商品の販売先があるのかという戦いになっていくと思います。
以上、「Apyx」のリサーチでした!
参考リンク:HP / DOC / X
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