【AllScale】ステーブルコインを活用したフィンテックプラットフォーム / 請求書発行・グローバル給与・ソーシャルコマースを一体提供 / @allscaleio
ステーブルコインベースの支払いはインフラになる
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「AllScale」についてリサーチしました。
AllScaleとは?
変遷と展望
ステーブルコインベースの支払いはインフラになる
TL;DR
中小企業向けに、ステーブルコインを使った請求書発行・グローバル給与・ソーシャルコマースを一体提供し、法定通貨⇔ステーブルコインのオン/オフランプも備えた「オールインワン決済・金融プラットフォーム」。
Passkeyとアカウントアブストラクションを用いたノンカストディアルウォレットで、シードフレーズ不要&ガス代を意識させないUXを実現し、ユーザーはブロックチェーンの複雑さなしに利用できる。
TikTok/Capital One/暗号取引所出身の創業者チームが、HashMatrixでのステーブルコインMVP運用から着想を得て2025年に創業し、プレシードで約150万ドルを調達、現在β版として本格ローンチ準備中。
AllScaleとは?
「AllScale」は、中小企業(SMB)向けにステーブルコインを活用した金融ソリューションを提供するフィンテックプラットフォームです。
具体的には、請求書発行(Invoicing)、グローバル給与支払い(Payroll)、ソーシャルコマース(AllScale Pay)といったプロダクトを一体化した「オールインワン」のサービスを展開しています。
以下、それぞれの機能・特徴を整理します。
◼️請求書発行(Invoice)
クライアントに対しリンク一つで請求書を送付し、支払方法を問わずステーブルコインで即時受け取りができるサービスです。
クライアントはクレジットカード・銀行振込・暗号資産ウォレットなど好みの方法で支払い可能で、受領側は自動でUSDTやUSDCなどのステーブルコインによる即時決済を得ることができます。
このサービスではシードフレーズ不要のパスキー認証とガス代負担ゼロの仕組み(EIP-7702に準拠)を採用しており、ユーザーや顧客がブロックチェーン特有の手数料やウォレット設定を意識せず利用できる点が特徴です。
◼️グローバル給与支払い(Payroll)
世界中の従業員や契約者に対し、即時かつ低コストで給与を支払えるクラウド型HR・給与管理プラットフォームです。
AllScaleはこのプラットフォーム上で採用管理からペイロール処理、請求書発行、コンプライアンス管理までを一元化しており、企業はこれ一つでグローバル人材の雇用と報酬支払いが完結できます。
主な特徴として、従業員への支払い通貨を法定通貨とステーブルコインから自由に組み合わせ選択でき、為替変動や送金手数料の削減が可能です。
将来的には、従業員向けの「ウォレット+口座+カード」機能も提供予定で、受け取ったステーブルコインを安全なウォレットで保管しつつ、必要に応じて法定通貨に両替したりステーブルコイン連動のデビットカードで直接支出したりできるようにする計画です。
この仕組みにより、インフレ率の高い地域の従業員でも購買力を維持できる(USD等価のステーブルコインで支給)、銀行口座を持たない人材にも支払い可能、国際送金の遅延や高コストを解消、従業員にとっては資産運用・貯蓄の自由度向上といった効果が得られるとされています。
◼️ソーシャルコマース機能(AllScale Pay)
クリエイターやフリーランサーが自身のSNSプロフィール等に決済用のバイオリンク(支払いリンク付きページ)を設置し、フォロワーやクライアントから直接ステーブルコインで支払いを受け取れるサービスです。
ユーザーはAllScale上で自分のサービスや製品を掲載したカスタマイズ可能なプロフィールページを作成でき、そこに注文フォームを設置することで、閲覧者は希望の内容で支払いリクエストを送信できます。支払リンクを経由して送られたリクエストは自動的に請求書に変換され、オーナー(クリエイター)はそれを承認するだけで即座に支払いを受けることができます。
これにより、例えばコンテンツクリエイターがグローバルなファンからチップやサービス代金を受け取る、オンラインコミュニティで直接デジタル商品の販売を行うといったことが遅延なく即時決済で可能になります。
この機能はこれからリリース予定ですが、ロードマップ上には評価レビュー機能やサービスのバンドル販売、リアルタイムのチャット機能なども追加予定で、クリエイターエコノミーを支えるプラットフォームとして発展させる計画です。
◼️グローバル決済インフラ(Global Settlement)
上記3つが主要サービスですが、それを裏支えする法定通貨とステーブルコイン間のオン/オフランプおよび国際決済ネットワークも整えてあります。
ユーザー企業が現地通貨で入金すると、AllScale側でKYC/KYB(本人確認・事業者確認)後に資金をステーブルコインへ変換(オンランプ)し、必要に応じオフランプ処理で受取企業の法定通貨に戻すという一連のOTCプロセスを取ります。
この仕組みにより、通常の銀行経由では約2週間かかるクロスボーダー決済をT+1日程度に短縮し、為替損失・手数料等も従来最大15%のコストが約3%に抑えられるとされています。また決済は24時間365日利用可能で、銀行の営業時間に制約されません。
処理完了後の資金は、ユーザーの指定した銀行口座またはブロックチェーンウォレットのいずれにも引き出し可能で、次回以降の円滑な利用のためにその情報を安全に保存しておくこともできます。
◼️ノンカストディアルウォレット
AllScaleは「ノンカストディアル」であることを強調しており、ユーザーの秘密鍵や資産を預からないアーキテクチャを採用しています。
その中核となるのがPasskey技術とアカウントアブストラクションです。ユーザーはPasskeyによる生体認証やデバイス認証でログインし、バックエンドでは署名鍵(秘密鍵)が安全に管理されます。
さらにAllScaleは、EIP-7702に代表されるEthereumの最新技術を活用し、ガス代のユーザー負担を隠しています。EIP-7702はアカウントアブストラクションの一種で、EOAでもスマートコントラクトのような柔軟な振る舞い(トランザクションの一括実行やガス代スポンサーなど)を可能にする規格です。
AllScaleはこの仕組みによって取引時のガス代をユーザーに意識させず(場合によってはAllScale側が代替負担)、クライアントには「ブロックチェーン手数料ゼロ」で動いているように見せています。
公式Xでも「パスキーベースのウォレットでシードフレーズもガス代も無し。EIP-7702によるガス抽象化のおかげでユーザーはブロックチェーン手数料を全く意識しなくて済む」とアピールしています。
変遷と展望
AllScaleを運営するのはAllScale Inc.で、2025年2月に設立されたスタートアップ企業です。法人形態は米国デラウェア州登記のC-Corpで、法規制面・資金調達面に対応しつつ、主要な事業拠点と開発チームは香港に置かれています。
創業チームは3名の共同創業者からなります。
Shawn Pang(共同創業者 兼 CEO)
カナダ在住の連続起業家で、TikTokカナダおよびCapital Oneで決済領域のプロダクトマネージャーを歴任した経歴を持ちます。また過去にはKrakenやBlockでコンプライアンス関連の業務にも関わったとされ、金融・暗号・テック業界で幅広い経験を積んでいます。Pang氏はWestern大学でコンピュータサイエンスとビジネスを学んだ後、複数のアプリを学生時代から開発し、卒業後は大企業の不正決済対策PMとして従事しました。しかし「スタートアップの最前線に居続けたい」という思いから社外での事業も同時に進め、HashMatrixというスタートアップスタジオ/代理店を共同設立して成長させています。AllScaleの着想は、そのHashMatrixで海外支払いの問題に直面したことがきっかけで、自らMVPを開発し事業化に踏み切った形です。Ruoyang Wang(共同創業者兼プロダクト担当)
詳細な経歴は公開情報が少ないものの、報道によればOKXや他の暗号・フィンテック企業でプロダクトに携わっていた経験を持つようです。KrakenやBlockでの勤務歴があるとも示唆されており、Pang氏とともに暗号業界と決済業界双方の知見を持ち合わせた人物です。Jun Li(共同創業者兼リーガル・コンプライアンス担当)
ニューヨーク州の弁護士資格を持ち、Krakenおよびブロックチェーンメディア「The Block」で法務・コンプライアンス関連の職務に就いていたとされています。法律と暗号の両分野に精通したLi氏が加わることで、AllScaleは各国規制への対応や社内コンプライアンス体制の整備を強化しています。
Pang氏がAllScaleを起業した動機は、自らの事業運営を通じて痛感した国際送金の課題を解決することでした。彼のマーケティング会社HashMatrixでは、グローバルにフリーランサーやパートナー企業と取引していましたが、新興国の相手先への支払いで従来の銀行送金が滞ったり口座凍結される問題が頻発しました。
そこで代替手段としてステーブルコインを用いたところ、「一度使うと今後も常にステーブルコインで支払って欲しい」と依頼されるほど好評で、AllScaleの構想を思いつきました。
プロダクト開発はまずMVPの段階からスタートしました。Pang氏はAllScale創業前、自身のHashMatrix事業内でスプレッドシートを用いた簡易的なステーブルコイン支払いシステムを試作しています。
このMVPでは、HashMatrixが抱える世界各国のフリーランサーやパートナー企業への報酬支払いをステーブルコインで行えるようにし、手動処理ながら運用しました。
その結果、月間で約50万ドル相当の取引額を処理するまでに至り、確かな需要を実証しました。初期ユーザーとなったのはHashMatrixと親交の深い協力企業群で、彼らからは「従来の銀行送金より圧倒的に早く低コスト」「一度使うともう法定通貨送金には戻れない」といった熱心なフィードバックが寄せられました。
ユーザーからの声で特に大きかったのは、「技術的な煩雑さを隠しつつ、規制遵守とセキュリティを担保してほしい」という点です。ステーブルコイン決済そのものの利便性は高く評価された一方、ウォレットアドレス管理やガス代の支払い、各国の規制対応などは中小企業にとって大きな負担となり得ます。
そこでAllScaleチームは、KYCやKYB、KYTといったコンプライアンス機能をバックグラウンドで自動処理し、ユーザーにはシンプルなUIだけを提供する方向性を明確にしました。
その後AllScaleの設立に至り、創業後まもなく資金調達を実施し、2025年6月末にプレシードラウンドで約150万ドルの資金を確保しました。
リード投資家はシリコンバレーのDraper Dragonで、暗号資産金融大手のAmber Group、取引所KuCoinのベンチャー部門であるKuCoin Venturesがこれに加わりました。他にもOak Grove VenturesやY2Z Ventures、香港政府系インキュベータのCyberportからの出資、さらにはBitget幹部のGracy Chen氏をはじめとするエンジェル投資家グループからの出資が公開されています。
なお、AllScaleはこの資金調達に前後してBinance Labs発のグローバルインキュベーションプログラム(現・YZi Labs主催「EASY Residency」)にもエントリーし、著名メンター陣から事業指導を受けています。
サービスは2025年現在β版となっており、セキュリティ強化やライセンス面の最終調整が行われています。今後本格的なサービスローンチが迫っており、期待されています。
ステーブルコインベースの支払いはインフラになる
最後は総括と考察です。
AllScaleのようなプロジェクトはここ1年で大きく飛躍している印象があります。それはやはりステーブルコインの飛躍と共に注目を集めており、中でもStripeがBridgeを買収したこともその熱狂に拍車をかけました。
Stripe以降も多くの事業者がステーブルコイン系のインフラを買収しており、この領域の注目度の高さが見て取れます。
この領域が注目を集めるのはシンプルにこれからの支払いインフラがステーブルコインに移行していくと考えられるからです。特に従業員やサプライチェーンがグローバルに散らばっている会社にとって国際送金は日常的に行われている業務です。この支払い手数料が安くなり、支払い先の相手にも喜ばれるのであれば変えない理由がありません。
唯一の懸念はセキュリティや法務面だと思いますが、そこも現地法に準拠したコンプライアンスを備えているのであれば、特段問題なく利用できます。あとは先行して色々な企業が利用を始めていけば、ドミノ式に多くの会社が普通に利用する世界になっていくと思います。
僕の規模であったとしても、海外事業者とやり取りする際はステーブルコイン一択です。早くて安くて受け取った後にそのままDeFiで運用しておけるので、めちゃくちゃ便利です。
日本国内だとオン/オフランプの手続きが煩雑すぎてまだ流行イメージはわかないのですけど、振り込みが法定通貨で受け取りがステーブルコインにできたり、ステーブルコインと法定通貨をワンタップで移動できるようになると、より普通にステーブルコイン振り込み、決済、保有が増えていくと思います。
今後、ステーブルコインは暗号資産のトレーディングに利用されるだけでなく、日常的な支払いや保有に利用されるようになっていくと感じており、その時に出てくるプレイヤーにも注目していきたいと思います。
AllScaleも今触ってもアカウント作成はできたので、今後の機能拡充も楽しみにしつつ、少し触って使ってみたいと思います。
以上、「AllScale」のリサーチでした!
参考リンク:HP / DOC / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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