【Aktionariat】未公開企業の株式をトークン化するプラットフォーム / プライベートエクイティのトークン化はIPOに頼らないExitを実現し株式市場を変えるのか!?
RWA市場の1つ"プライベートエクイティ"の代表的なプロジェクトです。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Aktionariat」についてリサーチしました。
«目次»
1、Aktionariat とは?
- プロダクト
- 使い方(企業側)
- 使い方(投資家側)
2、考察①:Aktionariatが切り開くプライベートエクイティ市場の拡大
3、考察②:RWAトークン化の市場拡大と法規制
Aktionariat とは?
「Aktionariat」はIPO前の未公開企業の株式をトークン化する仕組みを提供するプラットフォームです。
通常、企業の株式はIPO(上場)しなければ一般投資家が売買できません。最近では株式投資型クラウドファンディングのような仕組みも生まれましたが、それも一般投資家が投資には参加できますが、購入した株式を自由に好きなタイミングで売買できるものではありません。
Aktionariatは未公開企業の株式をトークン化するため、投資家は好きな企業の株式を購入し、自由に売買することが可能となります。これは実質的にIPOと同じことが実現されています。
尚、この仕組みはスイスの法律に準拠しているためスイス企業に対しての提供となっています。スイスの2021年2月1日以降に制定されたDLT(分散型台帳技術)法は、ブロックチェーン上で表現される台帳ベースの証券の導入を可能にします。
すでに41企業が利用し、20,000人以上の投資家が31ミリオンの資金を投入しています。
■プロダクト
Brokerbot
トークンを売買できるページを企業のウェブサイトに埋め込みができます。Portfolio App.
従来の株式とトークン化された株式のポジションを一元管理するためのアプリです。Brokerbotと統合されており、アプリ内でシームレスにトークン(株式)の売買が可能です。Corporate Dashboard
企業が通常の株式とトークン化された株式に関連するすべての側面を管理することができます。株主、売買状況、コミュニケーションなどをここから行うことができます。Investor Relations Page
上場企業のIRページのイメージで、トークン発行企業のHP上に投資家向けページを設置する必要がありますが、それを簡単に作ることができます。デザインや項目のテンプレートの提供だけでなく、KPI達成率や価格推移などの情報がリアルタイムで更新されます。Investor Hardware Wallet
投資家向けのハードウェアウォレットです。投資家が購入した株式をオフラインで安全に保管することができます。また、NFCタグがついており、指定のお店で暗号資産決済に利用することもできます。これらの情報はポートフォリオアプリと連動しており、資産状況はアプリで確認できます。
■使い方(企業側)
企業側は4ステップで株式をトークン化できます。
簡単に言えば、発行する株式数や価格等を決め、法律面を確認し、実際にトークン化して、公開するという4ステップです。Aktionariatを使えばこれをシステム面もソフト面(戦略策定やリーガルチェックなど)もフルサポートしてくれるというわけです。
利用にはお金が発生し、利用時と年間の利用費がかかります。トークン化するには「Tokenization Package」が必要で、セットアップフィーが7,100CHF、メンテナンスフィーが年間2,500CHFかかります。CHFはスイスフランを指し、執筆時点では1CHF=約164円なので、7,100CHF=約116万4,400円、2,500CHF=約41万円となります。
尚、これらのトークンはイーサリアムもしくはOptimisimチェーン上に発行されます。
■使い方(投資家側)
投資家は購入したい株式を吟味して購入するだけですが、購入方法は暗号資産での購入か銀行振込を選ぶことができます。暗号資産の購入はイーサリアムかスイスフランにペッグされたステーブルコインCryptofrancs (XCHF)を利用することができます。
購入する際は自身が保有するウォレットをコネクトすることも、ブラウザ上で新規ウォレットを作成することも可能です。
また、購入には名前と住所を登録する必要がありますが、氏名、住所、Eメールアドレスなどの個人情報は公表されません。株式トークンの保有者のイーサリアムアドレスはイーサリアム・ブロックチェーンに保存され、誰でも閲覧することができますが、ブロックチェーンに保存されていない個人データへのリンクはありません。
考察①:Aktionariatが切り開くプライベートエクイティ市場の拡大
さて、ここからはAktionariatの展望について考察していきます。
Aktionariatはビジョンとして以下のことを掲げています。
現在、株式市場で公開されているスイス企業は、500,000社を超えるスイス企業のうちわずか230社にすぎません。私たちには、この状況を変え、さらに数千ものスイス企業に流動的な市場を創出し、眠っている数十億の経済価値を掘り起こすための法的、技術的、経済的なアイデアがあります。企業は資本へのアクセスが向上し、投資家はより幅広い投資対象から利益を得ることができます。短期的な投機で知られる今日の暗号資産とは異なり、私たちは長期的な価値投資を可能にする基礎技術を活用し、ローカルで持続可能、透明性のある分散型金融の文化を構築したいと考えています。
上場前の企業への株式投資はプライベートエクイティと呼ばれており、これまではVCを中心とした投資家が企業へ出資してリターンを得る市場でした。
ここのプライベートエクイティ市場にトークン化が用いられると、非公開企業に誰でも投資できるようになります。これは企業側の資金調達の選択肢が増えると同時に、投資家側のポートフォリオ構築にも役立ちます。
そして、これは上場とほとんど同じことができるので、企業側は出資を貰った後のゴールが上場だけでなく、株式をトークン化して売りに出す”トークン化”をゴールにすることも可能になります。よって、上場しないままの事業運営など、多様な事業モデルの実現に貢献する可能性があります。
また、Aktionariatは2023年9月7日に投稿したブログの中で、デジタル投票と総会のソリューション提供を予告しています。これは2023年1月1日に改正されたスイスの法律に準拠したものだと言い、デジタル上で投票や総会ができるようになります。
つまり、DAOにおけるトークンホルダーの投票と同じようなことが、株式のトークンホルダーでもできるようになるということです。これによって”株主総会”が非上場企業でもシームレスにできるようになります。
正直、懸念もあります。
それはこれまで上場企業は一定の審査を超えた企業しか上場できず、非上場企業は目利き力を持つ投資家しか出資ができない状況でした。よって、一般投資家は審査通過した企業しか投資できない代わりに一定の保護がされていた状況でした。しかし、非上場企業でも株式のトークン化ができるようになると、詐欺的な企業に引っかかる一般投資家が増える可能性があります。
もちろんこれはAktionariat側も織り込み済みで、一定の審査を経た上での掲載となっていますが、非上場企業で且つスタートアップとなれば一体どうなるのかわかりません。ただ、この事態は想定されやすいこと、そして会社の株式なので誰かが匿名で発行できるFTやNFTとは異なります。会社自体が公的な身分証明を国に提出して設立できるものなので、悪意を持った詐欺を働いた時に一発で身バレします。よって、ICOバブルが横行するようなことにはならないと思っています。
しかし、悪意がなかったとしても、非上場企業が生き残る確率は高くないので、必死に経営を続けていてもリターンが返ってこないことの方が多いです。ここら辺の擦り合わせを投資家とし続けることをしなければ、株主が増えたことで対応に追われ、本業に集中できないという本末転倒な事態に陥る可能性もあります。
この辺りの懸念はありますが、個人的にはやはり非常に可能性を感じる領域だと感じますので、引き続き注目していきたいと思います!
考察②:RWAトークン化の市場拡大と法規制
ここからはAktionariatのプロジェクトを少し抽象化して感じた学びを書いていきます。
Aktionariatのプロジェクトを知ったのは以前リサーチした「RWAトークン化の解説レポート」です。TVLが高いプロジェクトとして出てきたので簡易リサーチして、興味を持っていました。
RWAは非常に高い可能性を持っていることは間違いありません。それはすでに資産として価値があるものにさらに流動性と小口化を提供うし、グローバルでシームレスな取引を実現するからです。
すでに価値があるものをさらに便利にするので、そりゃ価値が生まれます。
ですが、課題も存在します。
これもレポート中に言及しましたが、数ある課題の中でも個人的に最も感じているのは「国家間の規制の違い」です。
例えば、今回Aktionariatをリサーチしたので、スイス企業の株式を購入する術を見つけました。購入はETHでできますし、ウォレットはMetaMaskをコネクトすればできるので、普通にいつもNFTを購入するノリでスイス企業の株式トークンを購入できます。
ただ、「これ購入して大丈夫?」という疑問が浮かびます。
これはAktionariatだけでなく、色々なプロジェクトをリサーチしている時にも思います。特に現実世界の金融系が絡んだプロジェクトに関しては、日本から利用するのは少し怖くて手が出ません。法務面もよくわかりませんし、税務の計上もよくわかりません。
一番恐れているのは、今特に何も言われなくても後から規制が決まった時に訴求して違反していることを指摘される場合です。僕みたいな小規模の一個人にまで目が届かないとは思いますが、目が届かないからと言って違反して良い理由にはなり得ませんし、ウォレットの履歴は残ってしまうのでいつか必ずバレます。
この辺りの規制問題はもう少し時間がかかりそうです。スイスみたいにセキュリティトークンを推進する法律がかなり進んでいる国もあれば、遅々として進まない国もありますので。
個人的な予想としては、多分Aktionariatを日本人が安全に利用するようになるには、やはり日本法人がAktionariatのトークンを扱うようになった後だと思っています。Aktionariat JAPANになるのか、日本法人と提携して販売代理店のような形になるのか、日本の法律に準拠した形で利用するというイメージです。
そしておそらく、世の中のRWAトークンの多くのグローバル展開はこのようになっていくのではないかと予想しています。現地法人を建てるか、提携して、展開してもらうというイメージです。
トークンの良いところは提携がしやすいところなので、トークンはメインサービスで発行されているけど、表面の販売箇所だけは現地法人が賄っていて、手数料も現地法人に落ちます。NFTアグリゲーターですね。よって、少し先の未来で、RWAトークンアグリゲーターが流行ると予想しています。そしてこれは法務面や金融面にも強く、web3にも明るくないといけないので、最強チームを組成してガンガン提携をしていけば競合優位性も高くかなり強いビジネスモデルが出来上がるようにも思います。
RWAトークン化市場は現在プラットフォーマーだけが生まれている状況なので、ツルハシとなるような会社もそろそろ生まれ始めて影響力を増してくるはずです。その辺りも積極的に調査していきたいと思います!
以上、Aktionariatのリサーチでした。記事が面白いと思った方はいいねやコメント、SNSでのシェアにご協力いただけると幸いです。
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