【zERC20】ERC-20標準を拡張したプライバシー特化のトークン規格 / ゼロ知識証明とプルーフ・オブ・バーンにより送金者と受取人の関係を秘匿 / @zERC20io
プライバシーはAIとステーブルコインに並ぶ2026年のトレンドの1つ
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「zERC20」についてリサーチしました。
zERC20とは?
変遷と展望
プライバシーはAIとステーブルコインに並ぶ2026年のトレンドの1つ
TL;DR
zERC20は、既存のERC-20トークンをラップして匿名化するプライバシー特化の拡張規格で、ゼロ知識証明とプルーフ・オブ・バーンにより送金者と受取人の関係を秘匿する。
通常のウォレット操作のまま利用でき、マルチチェーン対応や動的手数料モデルによって流動性を自律的に調整しながら匿名送金を実現する。
INTMAXチームが開発し2026年にメインネット公開、今後はPermit対応やZK強化、決済プロダクト展開を通じて実用的なオンチェーン・プライバシー基盤を目指している。
zERC20とは?
「zERC20」は、ERC-20標準を拡張したプライバシー特化のトークン規格であり、既存のERC-20トークンをラップして匿名化する技術基盤です。
ブロックチェーン上の取引は透明性が高く、一度公開されると誰にでも見えてしまうという課題があります。例えば給与や家賃の支払いが全世界に筒抜けになれば、企業戦略の漏洩や個人間の不当な要求につながりかねません。
従来、この問題に対してはTornado Cashのようなミキシングサービスが使われてきましたが、特定のコントラクトへの入出金が公開されるため利用が監視されやすく、規制当局から禁止措置を受けるリスクがありました。
こうした背景から、既存のユーザー体験を変えずに高いプライバシーを実現することを目的として開発されたのがzERC20プロジェクトです。
zERC20はEthereum改善提案のEIP-7503「ゼロ知識ワームホール (zk-Wormhole)」のコンセプトを実装し、誰でも普段のウォレット操作だけで資産を匿名送金できる仕組みを提供しています。ブロックチェーンにおける透明性の弊害を軽減しつつ、検証可能性という利点は損なわないことを特徴としています。
◼️仕組み
zERC20におけるトランザクションはゼロ知識証明(ZKP)を活用した「プルーフ・オブ・バーン」メカニズムを利用しており、その仕組みは以下のようになっています。
ユーザーA(送金者)は受取人Bの公開アドレスと秘密値から計算された「バーンアドレス」にトークンを送付します。バーンアドレスとは秘密鍵を持たない乱数アドレスであり、ここに送られたトークンは一旦動かせなくなります。
その後、B(受取人)は自分だけが知る秘密値をゼロ知識証明で証明することで、同額のzERC20トークンを自分の新しいアドレスにミントします。
この結果、オンチェーン上には通常のERC-20送金と区別が付かない形で記録されるため、第三者にはA→B間の関連性が見えません。
この方式では、取引のリンクが一切公開されない匿名性と既存インフラとの互換性を両立しています。
また、ERC-20標準を拡張した規格であるため、イーサリアムやBNB、Arbitrum、Baseといった複数のレイヤー1・レイヤー2チェーンに対応しており、標準的なウォレット(MetaMask等)や既存のDeFiプロトコルとシームレスに連携できるのが特徴です。ユーザーは特別なアプリケーションを用意する必要がなく、従来通りのERC-20トークン送金操作を行うだけで送信元と受信先の関係を秘匿できるよう設計されています
さらにzERC20は、LayerZeroの技術を用いることでマルチチェーン間のプライベート転送も実現しています。例えばArbitrum上で発行した匿名資産をBase上で引き出すといったクロスチェーンの匿名送金がデフォルトで可能であり、将来的には非EVM系チェーンへの拡張も予定されています。
◼️使い方
後ほどの変遷で解説しますが、まだメインネットでリリースされたばかりですので、利用ユースケースは限定的です。開発者が自社サービスに埋め込むこともできますが、専用アプリから体験がいち早くできるようになっています。
基本的には元のアセットをラップすることでzAssetに変換します。このzAssetで送付することで先ほどの仕組みのようにプルーフ・オブ・バーンの送金メカニズムが発生します。
また、Wrap/Unwrapの際の手数料モデルが組み込まれており、特定チェーンの流動性が不足した場合には手数料によるアンラップ抑制や報酬付与によるラップ奨励が行われます。
具体的には、各チェーンごとに目標流動性が設定され、実際の流動性がそれを下回る場合にはそのチェーンでのアンラップに手数料が課され、逆に不足チェーンでのラップには報酬が支払われます。
例えば「Ethereum上のUSDCプールが不足している場合、Ethereum上でzUSDCを元のUSDCにアンラップする際に手数料が取られ(流出抑制)、逆にEthereum上でUSDCをzUSDCにラップ入金するユーザーには報酬が支払われる(流入促進)」といった具合です。手数料収入は各チェーン間で共有され、将来の報酬支払いに充てられます。なお、
あるチェーンでアンラップ手数料が高騰した場合、LayerZero/Stargateブリッジを用いて別チェーン経由でアンラップする機能も提供されます。これによりユーザーは最も有利な経路で元資産を引き出せるようになっており、システム全体として流動性バランスが自己調整される仕組みになっています。
変遷と展望
zERC20は日本発のブロックチェーンプロジェクトINTMAXの開発チーム(Ryodan Systems AG社)によって提案・実装されました。
INTMAXはステートレス型のEthereumレイヤー2(zkRollup+Plasmaハイブリッド)を開発するスタートアップであり、CEOを務める日置レオナ氏を中心にエンジニアや研究者から成るチームです。
zERC20自体は2025年末にテストネット版の初公開が行われ、ArbitrumやBase上でUSDCなどのプライバシー転送がお披露目されました。
そして、2026年2月にEthereum、BNB、Base、Arbitrumチェーンでメインネットでの公開がスタートしました。
今後の動きに関してもいくつかのロードマップを掲げています。
2026年4月
ERC-20 Permit(オンチェーン署名による承認機能)の実装予定。これによりデジタル署名を用いた許可型転送が可能になり、ユーザビリティが向上すると期待されています。2026年5月
Ethereum Foundation開発の新ZKライブラリ「Sonobe」への対応(有効化)。最新のゼロ知識証明技術を取り入れることで、更なるパフォーマンス改善や機能拡充を図ります。2026年第2四半期
スマートコントラクト統合と決済プロダクト「Payless」の一般公開。スマートコントラクト統合とは、zERC20トークンを他のコントラクト(DeFiアプリ等)で直接扱えるようにすることで、匿名決済の応用範囲を広げるものです。またPaylessはzERC20を活用した決済ターミナル(支払い受け入れシステム)とみられ、ガス代や手間を意識せずに暗号資産決済できるソリューションとして開発が進められています。
また、将来的には非EVMチェーンでの導入も検討されており、zERC20 は、標準の ERC-20トークンと同じ使いやすさで、誰もが自然にプライバシーを活用できる未来の実現を目指しています。
プライバシーはAIとステーブルコインに並ぶ2026年のトレンドの1つ
最後は総括と考察です。
昨年末に2026年の展望についての記事を書きましたが、多くのVCやインフルエンサーがプライバシーの重要性について触れていました。また実際に昨年末からプライバシー領域のトークン価格の向上や資金調達が進んでいました。
ステーブルコインが最もわかりやすい例だと思いますが、日常生活や企業活動において利用が進んでいくと、透明性がありすぎることが問題になります。個人や企業ウォレットがバレてしまうと資産状況や資金移動の状況がわかってしまいます。
現状、この解決策はプライベートチェーンを使うか、CEXをうまく活用してトランザクションを切ることが挙げられますが、これはオンチェーンの思想と相反するものがあります。
また、ステルスアドレスのような形で受け取りの度に新規アドレスを作成する形も検討されていますが、ウォレットが乱立してしまいます。ウォレットの乱立は税務系のツールとシームレスに連携できるとあまり問題ではないのですが、例えば法人利用などで厳密に全てを管理しなければいけないときに、管理が煩雑になりえます。
なので、この辺りの最適な解決策はまだ模索している段階だと思いますが、zERC20は既存のERC-20標準を拡張した形での実装なのでとても面白いです。他のプライバシー系トークンはプロトコルレベルであったりチェーンレベルの話が多く、ややUXに欠けるところがありました。チェーンレベルで対応しているとそのチェーンに資金を移さないといけないので面倒です。
これはx402が出てきたときにも感じましたが、やはりすでに存在しているサービスの対応の手間がほぼない形で実装できる新規格でないと広げることが相当難しいです。クリプトの初期フェーズであればユーザー側がその都度対応してくれたと思いますが、すでにある程度のエコシステムが出来上がってきた現在ではユーザーを動かすにはハードルが高く、既存エコシステムとの連携をいち早く考えた方が合理的になってきていると感じます。
その意味で、zERC20のアプローチは理にかなっており、今後の発展がとても楽しみです。自分でも色々触ってみようと思います。
以上、「zERC20」のリサーチでした!
参考リンク:HP / X / DOC / zERC20 : Cross-Chain Private ERC-20 Based on ZK Proof-of-Burn
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