【W3.io】ブロックチェーンとAI・オフチェーン計算リソースをシームレスにつなぐ分散型プラットフォーム / @w3arew3
分散型Zapierのようなワークフローで、スマートコントラクトに知能を与える
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「W3.io」をリサーチしました。
🧠W3.ioとは?
⚙️技術スタック
🚩変遷と展望
💬ビジネス基盤としてのブロックチェーンの可能性
🧵TL;DR
W3.ioは、AIや分散サービスを統合してスマートに動作するWeb3オーケストレーションレイヤーを提供する分散型プラットフォーム。
レシピと呼ばれる自動実行フローで複雑なロジックをノーコードで構築・実行可能にし、ブロックチェーンに推論能力と自律性を与える。
クロスチェーン、暗号検証、60以上の分散サービス統合などに対応し、ビジネスやAIエージェントでの活用が進行中。
ZapierのようなUXでWeb3自動化を実現し、2025年後半から本格展開・独自トークン発行も予定されている。
🧠W3.ioとは?
「W3.io」は、ブロックチェーンとAI・オフチェーン計算リソースをシームレスにつなぐ分散型プラットフォームを提供するスタートアップです。
現在のブロックチェーンには知能の問題があり、それが業界全体の足かせとなっています。トランザクションは硬直的で、スマートコントラクトはあまりにも基本的すぎ、web3には複雑なロジックを自律的に推論、検証、実行する能力が欠けています。
要は、ブロックチェーンは予め決められた内容をトラストレスに実行することに長けていますが、状況に応じて”推論”して実行することが困難という意味です。オラクルによってオフチェーン情報を受け取ったとしても、それもまたオフチェーン情報をトリガーにしたトランザクションやスマートコントラクトが実行されるのみです。
「W3.io」は、「世界初のプログラマブル・インテリジェンス層」を掲げ、ブロックチェーンに自律的な知能を持たせることで、スマートコントラクトの限界を超えた高度なロジックの実行や検証を可能にすることを目指しています。
これは単なるブロックチェーンのインフラ層ではなく、「Prodigy Network」と呼ばれる高度なオーケストレーション層によって構築されています。
W3.io上では、様々な分散サービス(データ、AI、ストレージ等)を組み合わせた業務フローを「レシピ (Recipe)」として定義し、それを自律的かつ検証可能に実行することで、複雑なビジネスロジックをブロックチェーン上で実現します。
以下に主なサービス内容と特徴をまとめます。
プラットフォーム機能
ドラッグ&ドロップ型のUIやCLI/APIを提供し、ユーザーがノーコードまたはプログラムで自由に「レシピ」(自動化ワークフロー)を作成できるようにしています。
各レシピは特定のトリガー(例: ブロックチェーン上の取引イベント、一定時間の経過、外部API呼び出しなど)によって開始し、その後複数のステップからなるワークフロー(条件分岐やループを含む)を実行します。
レシピ内の各ステップでは予め用意された「インディグリディエント (Ingredient)」と呼ばれる機能部品(AI推論、データ照合、トランザクション実行など)を呼び出し、ステップ間でデータを受け渡しながら進行します。
スマートな自律動作
最大の特徴は、ブロックチェーン上のアプリケーションに高度な自律性と知能を持たせられる点です。
通常のスマートコントラクトは決められた条件反射的な処理しかできませんが、W3.ioではAIモデルによる判断ロジックや複雑な条件分岐を組み込んだ「スマートなスマートコントラクト」を実現できます。
たとえばレシピ内で機械学習モデルにオフチェーンで推論させ、その結果に応じて異なるブロックチェーン取引を実行するといったAI駆動の契約が可能です。
また外部のリアルタイムデータやイベントに反応してチェーン上の動作をトリガーするイベントドリブンな自動実行もサポートされ、ブロックチェーンが現実世界の変化に自主的に対応できるようになります。
クロスチェーン対応
レシピは複数のブロックチェーンをまたいで動作できるよう設計されています。
レシピの各ステップで必要に応じ、Ethereum、Avalanche、Polygonなどユーザーが選択したチェーン上でスマートコントラクトを実行したり、異なるチェーン間でデータや資産を橋渡しする処理を自動的に行います。
検証可能なワークフロー
実行される一連の処理(レシピ)は、暗号学的な検証可能性を備えています。
レシピ内の各ステップ結果にはハッシュ値が記録され、全体の実行ログはマークルツリーに集約して任意のブロックチェーン上にルートハッシュを書き込む仕組みです。
これにより、オフチェーン部分を含めたエンドツーエンドの実行証跡が不変な形で保存され、後から第三者が検証できます。
統合エコシステムの利便性
60以上の分散型サービスを一つのプラットフォームで統合利用できる点も大きな特徴です。
開発者はW3.ioのAPIを1つ組み込むだけで、データストレージからAIモデル、ID認証、クロスチェーン通信まで必要な機能をワンストップで利用可能になります。
用途特化ソリューション
構築されたレシピは、さらに発展させて「ソリューション」と呼ばれる完成形のアプリケーションにすることも可能です。
ソリューションとは、レシピによるバックエンド処理に加えて、フロントエンド(例:Webポータルやモバイルアプリ)や既存業務システムとの連携部分まで含めたエンドユーザー向けの製品を指します。
W3.ioはこのソリューションを第三者が自社ブランドで販売できるホワイトラベル提供も視野に入れており、エコシステム参加者が既存のソリューションを再販・カスタマイズしたり、新たなソリューションを開発してマーケットプレイスで提供する仕組みを構築しようとしています。
以上のように、W3.ioは「web3版のクラウド統合プラットフォーム」とも言える幅広いサービスを提供しており、ブロックチェーン活用に必要な機能群をオールインワンで使いやすくした点が特徴です。
非中央集権版のZapierやAWSクラウドのような位置づけで、ブロックチェーンをより賢く実用的にするためのインフラストラクチャを提供しています。
⚙️技術スタック
W3.ioは独自のブロックチェーン(L1)ではなく、特殊な分散型ノードネットワークによって動作します。
このネットワークのノードは「Knights(騎士)」と呼ばれ、レシピに従って各種サービス間の調整役(オーケストレーター)を担います。
全体は大きく三層構造になっています。
オフチェーン計算レイヤー(様々な分散サービス群)
Knightsノードレイヤー(中間調整層)
接続されるブロックチェーン群(オンチェーン実行層)
Knightsネットワークはトリガー検出から各ステップ処理まで一連のワークフローを能動的に進行させます。ノード間ではコンセンサスアルゴリズムにより処理内容の正当性が相互検証され、結果は逐次ログにハッシュ記録されます。
最終的に各レシピ実行ごとにマークルルートが計算され、ユーザー指定のブロックチェーン(例:Ethereumメインネットなど)に書き込まれて不変化されるため、ブロックチェーン本体を使って結果の改ざん防止と証明を行う仕組みです。
◼️Knights
Knightsノードは誰でも参加可能な形で設計されており、性能や用途に応じて3つのタイプが存在します。
1つ目は「ハイアベイラビリティ(高可用性)ノード」で、TEE(ハードウェアセキュリティ環境)やGPU・高性能CPUを搭載した堅牢なノードです。
2つ目は「通常ノード」で、デスクトップPC程度のスペックで安定稼働するノードです。
3つ目は「コミュニティノード」と呼ばれ、断続的な接続しかできないラップトップやスマホ等も含め、余剰リソースを活用して参加できる軽量ノードです。
いずれのノードも統一されたコアコードを実行し、役割に応じてレシピ内の特定ステップを担当しますが、すべてネットワーク全体のコンセンサスピアとして動作し検証に参加します。
ただし、現在テストネット段階で、上記3種類ではなく、Knightsとして参加するプログラム「Knights Program」を1種類で展開しています。特徴的なのは、専門ハードウェア不要で月額定額料金によりノードをレンタル運用できる点です。
具体的にはテストネット期間中、1ノードあたり月額$25で仮想バリデータをレンタルしネットワークに参加できます。この料金を支払えばクラウド上に自動デプロイされたKnightsノードが提供され、ユーザー自身は難しい技術設定なしにノードオペレーターとして貢献できます。
参加者はノード稼働の対価としてネットワーク内トークンでの報酬(テストネット期間中はテスト報酬)を毎月受け取ることができ、将来的にメインネット移行後はUSDCでの収益も得られる予定です。
ノード運営者は一人で複数ノードを稼働することも可能で、テスト期間中は$25という低コストで参加できる早期アクセス枠としてこのプログラムが提供されています。参加希望者はDiscordのコミュニティに参加してウェイトリストに登録する形で募集しています。
🚩変遷と展望
「W3.io」は2025年に設立されたスタートアップで、アメリカコロラド州デンバーを拠点としています。
CEOを務めるのはPorter Stowell氏で、Filecoin Foundationでコミュニティ責任者を歴任するなどweb3分野で8年以上の経験を持つ人物です。他にもIBM BlockchainやCoinbase出身者がコアメンバーに名を連ね、マーケティング責任者(CMO)にはChad Itskowitz氏(Warner Bros.出身)、CTOにはAudie Sheridan氏(Schneider Electric等でインフラ構築経験)など、いずれも豊富な経歴を持つメンバーで構成されています。
2025年現在は先ほども書いた通りテストネット段階で、主にパートナー企業との共同プロジェクトという形で幾つかの実証実験が進んでいます。いくつか代表的なケースをご紹介します。
◼️Creatorland社(クリエイターエコノミー)
インフルエンサーとブランド案件をマッチングするプラットフォームCreatorlandは、W3.ioと提携してAI駆動のオートメーションレイヤーを開発しています。クリエイターが受け取る多数のコラボ依頼メールをAIが自動で分類・優先順位付けし、条件交渉や契約提案まで支援する「トリアージレイヤー」をW3.io上に構築している段階です。
これによりクリエイターは毎週何時間も行っていた案件管理作業を大幅に削減でき、より質の高い高収入の案件に集中できるようになります。
CreatorlandのBrian Freeman CEOは「トップクリエイターの案件受発注プロセスは根本的に非効率で一方的だったが、W3と協力してAI駆動のレイヤーを構築できることに非常に期待している」とコメントしています。
◼️Space and Time社(分散型データウェアハウス)
分散型データベース/ウェアハウスを提供するSpace and Timeは、W3.ioネットワークの初期コアパートナーの一つです。
Space and TimeのCEO Nate Holiday氏は「W3.ioが業界内の共同構築・共同マーケティング・共同販売を容易にすることで、より多くのプロジェクトが我々の技術を実ソリューションに統合できるようになる」と述べています。
実際、W3.io上で構築されるソリューション(レシピ)にSpace and Timeの高速データ処理やZK証明付き分析機能が組み込まれることで、従来個別契約や複雑な統合が必要だったデータ活用部分が使い勝手良く提供できています。
◼️金融領域ユースケース
金融・DeFiの高度なユースケース実現にも取り組んでいます。
例えば、マルチパーティ間の資産リバランス(複数機関が関与するポートフォリオ調整)を自動化するレシピの例では、以下のようなワークフローが実証されています。
Trigger: 市場コンディションの変化を検知(例:価格急変動)
Step 1: 身元・資格確認 – Privado ID 等で各参加者の許可条件を検証
Step 2: コンプライアンス確認 – Cube3 等で取引が規制順守かチェック
Step 3: ポートフォリオ解析 – Space and Time で各資産の適正配分を計算
Step 4: 取引オーダー生成 – Yelay(取引アルゴリズム)で最適な発注案を作成
Step 5: クロスチェーン実行 – LayerZero ブリッジで必要なチェーン上に注文を分散発注
Result: 全行程の検証ログをオンチェーン記録し、関係者間で結果を共有
この例では、ID認証や規制チェックからクロスチェーンでの自動売買まで、人手を介さず安全に実行できることが示されています。
他にもグローバル少額決済(送金を自動検証し分配するフロー)や、ローンとエスクロー(借入契約の自動執行・担保管理)、証券のトークン化(株式等のチェーン上発行と権利管理)など、高度金融ソリューションへの応用が念頭に置かれており、W3.ioはこれらをプラグ&プレイ型のビジネス向けアプリとして提供できるよう取り組んでいます。
◼️その他の分野
上記以外にも、サプライチェーン管理(リアルタイムIoTデータをブロックチェーンで追跡)、ゲーム領域(オンチェーンAIを用いたNPCや報酬分配)、ヘルスケア(機密データの安全な共有と自動決済)など、多様な業種・シナリオでW3.ioの活用可能性が検討されています。
W3.io自体は業界共通のプラットフォームを目指しているため、特定のエンドユーザー企業名はまだ限定的ですが、上記のようなパートナー企業との実証を通じて様々なユースケースが開拓されている段階です。
◼️資金調達を実施
これらの実績もあり、2025年7月にはシードラウンドで700万ドルの調達を発表しました。このラウンドはBlockchange Venturesが主導し、Framework Ventures、Arrington Capital、その他のトップVCや著名なエンジェル投資家が参加しました。
リード投資家であるBlockchange VenturesのMatt Immerso氏は「ブロックチェーンはビジネス活用の段階に入ろうとしているが、現在はインフラ整備に過剰な労力が割かれイノベーションが阻害されている。W3.ioのプログラマブルな自動化レイヤーは、“ブロックチェーンを構築する段階から活用する段階”への移行を大いに加速しうる」と評価しています。
今後、2025年後半から2026年前半にかけて順次サービスの一般提供が始まると見られます。メインネット稼働後には、独自トークンの発行も予定されており、エコシステム参加者に対するインセンティブ設計やガバナンスに用いられる見込みです。
💬ビジネス基盤としてのブロックチェーンの可能性
最後は総括と考察です。
少しサービスの全体像がわかりづらかったかもしれませんが、要はZapierのような連続したタスク処理をブロックチェーン基盤で実現できるプラットフォームということです。
僕自身、Zapierを利用しているのですが、何らかのトリガーを元にアクションを連続的に設定できるのでとても便利です。この基盤がブロックチェーンになることで、さらにトラストレスで検証可能な形で連続したトリガーが実行できます。
個人的には、まずAIエージェント系に取り入れられ始めると感じます。
AIエージェント間の交渉や支払い、何らかのオフチェーン情報に対するアクションを全て設定しておくことができます。また、そのプロセスの中に推論を入れれることにも価値があり、単なるトリガー実行であったスマートコントラクトに知能を組み込むことができます。
当然、推論を挟んだ自動化が行われることにはリスクもあります。なぜならスマートコントラクトで予期せぬ内容が刻まれる可能性があるからです。
ChatGPTでもAIの推論で変な答えが返ってくることがあるかと思いますが、それがそのままスマートコントラクトに刻まれると不都合が起こる場合もあります。なので、この辺はバランスを見ながらになると思いますが、とはいえ推論を埋め込めることに価値はあると思います。
上述した通り、僕は以前からZapierを使っていますが、Zapierのプロセスの中に推論を組み込めるようになった瞬間に使い勝手が格段に上がりました。
これらが進むと、ビジネスの基盤としてブロックチェーンが採用され始める未来が近くなっていくかもしれません!
以上、「W3.io」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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