【Donut】暗号資産関連機能とAIエージェント機能がネイティブに統合された次世代ブラウザ / Hongshan(元Sequoia China)やHackVC等が出資しプレシードで$7M調達 / @DonutBrowser
次世代ブラウザなるか。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Donut」についてリサーチしました。
🍩Donutとは?
🚩変遷と展望
💬ハードを握ることの重要性
🧵TL;DR
Donutは暗号資産関連機能とAIエージェントをネイティブ統合した次世代ブラウザで、閲覧ではなく「行動(アクション)」を起点としたブラウジング体験を提供する。
組み込みウォレットとDEXにより、Web上で見た情報をもとにブラウザ内だけで即座にトークンの送受信・スワップやDeFi運用が可能で、複数のタブや外部アプリを行き来する必要がない。
暗号資産・ブロックチェーンに特化訓練されたAIモデルと複数の自律エージェントが連携し、マーケットデータの監視や最適な取引タイミングで資金移動などを自動実行してユーザーの負担を軽減する。
セキュリティ面では署名処理を隔離した安全な実行環境を採用し、AIによるリスク検知・警告システムで取引安全度を評価。開発元はDonut Labs(CEO:Chris Zhu氏、CTO:Tim Fan氏)で、2025年5月に700万ドルのプレシード資金調達を完了しており、現在はWaitingリスト公開中。
🍩Donutとは?
「Donut」は、暗号資産関連機能とAIエージェント機能がネイティブに統合された次世代ブラウザです。
最大の特徴は、従来のブラウザが閲覧(読み取り)中心であったのに対し、「行動(アクション)を起点」としたブラウジング体験を提供する点です。
(まだ具体的なプロダクトもデモ動画も公開されていないので、発信されている内容による説明となります)ブラウザ自体がユーザーやAIエージェントの「コントロールセンター」となり、閲覧中の画面から直接暗号資産の取引実行やトークンのスワップ、DeFiによる利回り獲得、ベッティングなどがワンストップで行えます。
例えば、あるトークンの情報をWeb上で読んでいる最中に、そのトークンを即座に購入・交換したり、流動性プールに預け入れて利息を得るといった操作までブラウザ内で完結できる設計です。このためユーザーは複数のタブやウォレットアプリを行き来する必要がなく、リアルタイムに「ターミナル(端末)」を操作するかのようなスピード感で取引や操作が可能だとされています。
◼️組込みウォレットとDEX
こうした機能を実現するため、Donutブラウザには暗号資産ウォレットとDEXが標準搭載されています。
ウォレットやネットワーク接続、DEX機能がブラウザに深く組み込まれた統合インターフェースになっており、Webページで見た情報から直接トークンの送受信・交換を実行するといった「コンテンツ閲覧」と「金融取引」のシームレスな融合を実現します。
ブラウザ内蔵ウォレットによりMetaMask等の外部拡張機能なしでブロックチェーンに接続でき、各種ブロックチェーンネットワークにもネイティブ対応するとされています。また、ブラウザ自体がユーザーの操作や閲覧ページの内容を解析し、その場で必要なスマートコントラクト操作を自動的に生成・実行するAIアルゴリズムを備えている点も特徴です。DonutのAIは閲覧中のページ文脈やユーザー意図を理解し、ユーザーの代わりにブロックチェーン上での操作を自律遂行できるとのことです。
さらにDonutは暗号資産・ブロックチェーン分野に特化して訓練されたAIモデルを搭載している点も特徴の1つです。一般的なChatGPTのような汎用モデルではなく、スマートコントラクトやトークン市場のコンテクストを理解するドメイン特化モデルであるため、例えば取引所の板情報やDeFiプロトコルの画面をAIが即座に読み取り、最適な判断を下すことが期待されています。
このAIエンジンと連携する形で、Donutには複数の自律エージェントが内部で動作します。例えば、あるエージェントがマーケットデータを監視し、別のエージェントが利回りプールに最適なタイミングで資金を移動するといった協調動作も可能になります。この「エージェントの群れ」による処理によって、人間では捉えきれない高速な市場変化にも遅れず対応し、ユーザーの意思決定や操作の負担を肩代わりすることが可能になるとのことです。
◼️セキュリティとプライバシー保護
また、Donutが重視している領域のひとつにセキュリティとプライバシー保護があります。
暗号資産を直接扱うブラウザである以上、ユーザーの秘密鍵や資産を守るための設計が不可欠です。Donutではトランザクション署名用の環境をアーキテクチャ的に分離することで、安全性を高めていると説明されています。
ブラウザ上でスマートコントラクトへのアクセスや資産移動を行う際、署名処理は外部から隔離された安全な実行環境で行われ、悪意あるWebページやスクリプトが直接鍵情報にアクセスできないよう工夫されています。これは、ハードウェアウォレットやブラウザ拡張型ウォレットが採用する「sandbox(サンドボックス)機構」に近い発想で、ウォレット機能がブラウザに統合されているからこそ可能な深い防御策と言えます。
さらにDonutブラウザでは、AIを用いたリスク検知・警告システムが搭載されます。
具体的には、スマートコントラクトの呼び出し時に発生する難解なcall dataやトランザクション内容をAIが解析し、人間が読める平易な言葉に翻訳してユーザーに提示してくれます。加えて、その取引が安全かどうかを評価する「安全度グレード」もAIが付与してくれるとのことです。
まだ画面がないのでイメージつきづらいかもしれませんが、Braveのような暗号資産ネイティブのブラウザにAIエージェント機能もつけているというイメージでしょうか。
現在はWaitingリスト公開中ですので、興味がある人は登録しておいても良いかもしれません。
🚩変遷と展望
Donutを開発・提供するのは本社をアメリカ・ニューヨークにおくDonut Labsというスタートアップ企業です。
共同創業者でCEOを務めるのはChris Zhu氏で、彼は暗号資産・ブロックチェーン業界で豊富な経験を持っています。Zhu氏は以前にMirror WorldというSolanaブロックチェーン上のスマートコントラクトゲームプロトコルを共同創業しており、Meta(社でAIに関するプロジェクトにも関わっていた経歴があります。
CTO的な立場・Chief ScientistとしてはTim Fan氏が参加しています。Fan氏はカーネギーメロン大学(CMU)やMeta AIで研究者として従事したAIエキスパートで、DonutではAIモデル開発やエージェントのアルゴリズム設計を主導しています。Fan氏は「将来的には暗号資産の取引実行の大半は人ではなくエージェントが担うようになる。我々はその未来を実現するためのツールとインフラを作っている」と述べており、技術的視点からDonutのビジョンを示しています。
Donut Labsは、「従来のブラウザは暗号資産やAIエージェントを前提に作られていない」としており、ブラウザのフロントエンドそのものを一から見直していると述べています。
エージェントコンピューティングや組み込み型金融、自律的市場参加といった新興トレンドの交点に自社を位置づけており、Webブラウザという日常ツールを通じてブロックチェーン世界への参入ハードルを下げつつ、その上で高度な金融取引を可能にするプラットフォームを目指しています。
前述の通り、まだWaitingリスト公開中で具体的なプロダクトは何も公開していませんが、2025年5月にはプレシードラウンドで$7Mの調達を実施しました。
リード投資家はHongshan(元Sequoia China)やBITKRAFT Ventures、HackVCといった暗号資産・ゲーム分野に強いVCで、他にもSky9 Capital、Matrix Partners、Makers Fund、Altos Ventures、Orthogonal、Vessel、SonicSVMなど複数のVCが参加しました。
今後、具体的なプロダクトの公開が待たれます。
💬ハードを握ることの重要性
最後は総括と考察です。
まだ具体的なプロダクト像が公開されていないので、少しイメージしづらかったかもしれませんが、非常にユニークな取り組みだと感じました。現時点ではChromeなどの既存ブラウザに暗号資産とAIは拡張機能的に追加していますが、それらを備えたブラウザはユーザー体験がまるで異なる可能性があります。
参考になるのはBraveやArcでしょうか。Braveはご存知の通り暗号資産にネイティブで対応したブラウザで、ArcはAIにネイティブに対応したブラウザです。
Arcは昨年非常に話題となりましたが、昨年末に開発終了となり、チームは改めて別ブラウザのDiaに注力しています。こちらもAIネイティブブラウザでコンセプトは変わりません。
このように新しい機能を持つブラウザは特にテクノロジー好きのニッチな需要には答えますが、どうしてもマスが移行するパワーが足りない部分があります。今後リリースされるDonutがどうなるのかはとても楽しみですね。
また、ブラウザをハードと位置付けて良いのかは悩みますが、スマホやブラウザなどのハードを暗号資産ネイティブのプロジェクトが担うことができれば、完全にマスアダプションは達成されると感じます。例えば、Solanaはスマホに注力していますし、Suiはゲーム機を出します。
次はブラウザ競争になるかもしれません。特にSolanaあたりはDePINも多く出ているので、暗号資産ネイティブのブラウザを作り、そこで独自トークンやSBTも付与し、マーケティングに利用する取り組みをすると意外に流行るかもしれません。
ただ、究極的にはやはりユーザー体験がどれだけ変化があるのか、です。ブラウザの移行は劇的にユーザー体験に変化がないとなかなか難しいので、リリースされるのを楽しみに待ちたいと思います!
以上、「Donut」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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