【Rumpel】オフチェーンのポイントをトークン化し売買可能にするプロトコル / ポイントをオラクルで認識し1対1となるpTokenを発行 / EigenLayerの経営陣3名が出資 / @RumpelLabs
エアドロップのポイントに流動性を提供します。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Rumpel」についてリサーチしました。
💧Rumpelとは?
👀各ステークホルダーのメリット
🚩設立からの変遷
💬ポイントプログラムの功罪
🧵TL;DR
ポイントをトークン化・取引可能に:RumpelはオフチェーンのロイヤリティポイントをERC-20トークン(pToken)として発行し、Uniswap v3等で二次市場取引を可能にすることで「ポイントを即座に利益化」できる仕組みを提供。
専用ウォレット+オラクル連携:Safe/Gnosis Safeベースのマルチシグ「Rumpel Wallet」にポイントが蓄積され、オラクルが定期的に残高を検証・更新、ユーザーがpTokenをミント/バーンして報酬トークンと交換可能。
多様な利害関係者へのメリット:ポイント保有者はリスク軽減しながら換金可能、投資家はエアドロップ権利へ賭けられ、プロジェクト側はマーケティング効果&実需価格の把握、LPは手数料収入やインセンティブ獲得が可能。
競合との差別化:追加担保不要かつ元本拘束ナシでポイントだけを自由に売買できる点や、将来報酬を100%享受できる設計で、Whales & BubblyやPendle系プロトコルの制約を克服。
💧Rumpelとは?
「Rumpel」は、オフチェーンのロイヤリティポイント(エアドロップポイント)をトークン化し、流動性と価格発見の場を提供するDeFiプロトコルです。
ユーザーが各種プロジェクトで獲得したポイントを、Rumpel Walletと呼ばれる専用ウォレット経由でERC20トークン(ポイントトークン / pToken)に変換し、二次市場で売買できるようにします。
これによりポイント保有者はポイントを即座に価値に変換でき(Turn Points into Profit)、トレーダーやエアドロップ狙いのユーザーは将来の報酬に投機的にアクセスでき、プロジェクト側はポイントの実質的な価値指標を得てユーザーエンゲージメントを高めることができます。
主なコンポーネントと仕組みは以下の通りです。
Rumpel Point Token(pToken)
ユーザーの獲得したオフチェーンポイントを1:1(場合によっては1:1000単位)で表現するERC20トークンです。各ポイントプログラムごとに対応するpTokenが発行され、ユーザーは自身のポイント残高に応じてこれをミント(発行)できます。
pTokenはUniswap v3上のプールで売買可能であり、市場で自由に取引・投機の対象とすることができます。将来的に元のプロジェクトがトークンエアドロップを実施した際には、pToken保有者はそのpTokenをRumpel経由でバーンし、対応するエアドロップ報酬トークンと引き換える(償還する)ことが可能です。
Rumpel Wallet
ユーザーごとに発行されるマルチシグ対応ウォレットです(内部ではSafe/Gnosis Safeを利用)。ユーザーはこのウォレットに紐付いたアドレスで対象プロジェクトのポイントプログラムに参加します。獲得したポイントは直接このウォレット上に蓄積され、Rumpelのオラクルによって検証・記録されます。
Rumpel WalletにはセキュリティとしてRumpel GuardとRumpel Moduleが組み込まれています。
Rumpel Guardはウォレットにおける関数呼び出しの許可リストを管理し、ユーザーが既にトークン化して売却したポイントに対応する報酬を不正に請求したり、許可されていないコントラクト呼び出しを行ったりすることを防ぎます。
Rumpel Moduleは管理者権限でユーザーに代わって特定の操作を実行するためのモジュールで、具体的には「プロジェクトがエアドロップを開始した際にユーザーのウォレットから報酬トークンをまとめて請求・回収し、Vaultに転送する」役割を担います。これにより、エアドロップ開始時にpTokenの裏付け資産である報酬トークンが確実にVaultにプールされ、pToken保有者による償還が滞りなく行えるようになります。
Rumpel Oracle
Rumpelにおけるオフチェーンポイント残高を検証・通知する仕組みです。各提携プロジェクトのポイントAPIやオンチェーンデータをオラクルクライアントが確認し、各ユーザーのRumpelウォレットが保有する最新ポイント残高を把握します。
オラクルは約3~5日ごとにポイント残高に基づいたpTokenの新規発行許可量をEthereumメインネット上のVaultコントラクトにプッシュします。この更新は常に数日分の遅延を設けて行われ、万一誤ったデータが報告された場合でも即時に悪影響が出ないようにしています。
Rumpel Vault
Ethereum上のスマートコントラクトで、pTokenのミントおよびバーンを一括管理します。上述のオラクルから定期的に送信される各ユーザーのpToken発行許可データを保持し、ユーザーからのミント要求に応じて対応するpTokenを発行します。
逆に、プロジェクトがエアドロップをアナウンスした際にはオラクルがVaultに対して償還処理モードに入るためのデータを提供し、Rumpel Moduleが各ウォレットからすべての報酬トークンを回収してVaultにプールします。その後、pToken保有者はVaultコントラクトを通じて自分のpTokenをバーンし、Vault内に保管された対応するエアドロップ報酬トークンを受け取ることができます。
以上のコンポーネントが連携することで、ユーザーはポイントを安全にトークン化・取引し、エアドロップ開始時にはスムーズに報酬へ変換できるよう設計されています。
例えば、このような体験が実現します。
ユーザーAliceがEthenaプロジェクトでUSDeというステーブルコインをステーキングして5日間で100ポイントを獲得
オラクルがその100ポイントを検証し、Aliceは対応する100枚のEthena pTokenをミントできる
彼女はそれを市場で売却したり保持したりできる
後日Ethenaがトークンをエアドロップした際には、Rumpelが自動でエアドロップされたトークンをVaultに集める
Aliceは自分のpTokenを償還してそのトークンを受け取れる
このようにRumpelはスマートコントラクトとオフチェーンオラクルを組み合わせ、ポイント→トークン→報酬トークンへの変換を一貫して管理する仕組みを提供しています。
以下、pToken発行の全体像となります。
👀各ステークホルダーのメリット
では、このRumpelの提供価値はどこにあるのでしょうか。
各ステークホルダーのメリットを整理してみます。
ポイント保有者(売り手)
web3プロジェクトのロイヤリティポイントを獲得したユーザーは、Rumpelを使うことで将来のエアドロップを待たずに即座にポイントを換金することができます。
具体的には、自分のRumpel Walletでポイントを稼いだ後、対応するpTokenをミントしてマーケットで売却し、USDCなどの実需資産に変えることができます。これにより「貯めたポイントをすぐ利益に変える」ことが可能となり、エアドロップが実施されるか不確実な状況でのリスクを軽減できます。
ポイント購入者(投資家・エアドロップハンター)
将来有望なプロジェクトのエアドロップに賭けたいユーザーは、Rumpel上でそのプロジェクトのポイントに裏付けられたpTokenを購入することで間接的に参加できます。
通常、エアドロップ狙いには対象プロジェクトでのタスク完了や資金提供が必要ですが、Rumpelではポイントそのものを購入できるため「自分で活動せずにエアドロップ権利を獲得する」ことができます。
これは「後から来てポイントプログラムに参加できなかったユーザー」が追いつく手段として機能し、また元本をリスクに晒さず(単に購入するだけで)報酬獲得に賭けられる柔軟性を提供します。
2025年5月にはAuto-Sell(自動売却)機能も導入されました。Auto-Sellはユーザーがポイント売却を自動化するサービスで、スマートコントラクトがユーザーに代わって定期的(週次)にpTokenをミントしUSDCにスワップ、得たUSDCをユーザーの外部アカウントに送金します。
プロジェクト開発者(ポイント発行者)
Rumpelはポイントを発行するプロジェクト側にもメリットを提供します。
まず、ポイントがトークン化され市場で売買されることで投機的な盛り上がりが生まれ、コミュニティのマーケティング効果が拡大します。ユーザーはポイント価格の推移に関するコンテンツを発信したり議論したりするようになり、結果としてプロジェクトの露出が増える効果があります。
さらに、ポイントに実需の市場価格が付くことで、プロジェクト側は自らのインセンティブ施策の価値を測定しやすくなります。ユーザーのリスク許容度に応じて、リスク回避的なユーザーはポイントを売却し、プロジェクト信奉者は買い増す、といった選別が起こるため、ポイントプログラム全体として効率的にユーザーベースを拡大できます。
最後に、他プロジェクトも乱立する中でポイントに実質利回り(implied yield)が発生することは差別化要因となります。多くのDeFiプロジェクトがポイント制度を導入していますがユーザー側が疲弊しつつある中、Rumpelによってポイントに金銭的価値と利回りが見える化することで、自プロジェクトの魅力度を高められます。
流動性プロバイダー(LP)
Rumpel上で発行・取引されるポイントトークンは基本的にUniswap v3のプールで売買されます。したがって、第三者のユーザーがそのプールに資金を提供しマーケットメイクすることも可能です。
例えばpTokenとUSDCのプールに資金を入れれば、取引手数料収入や場合によってはRumpelのインセンティブが得られます。
このように各ステークホルダーそれぞれにメリットが存在します。
ただし、受け取ったポイントの将来の報酬を取引可能にするプロジェクトはいくつか存在します。競合プロジェクトとも比較してみます。
競合との違い
Whales & Bubblyとの比較:Whales & Bubblyはポイント取引の初期例として知られますが、売り手(ポイント所有者)がポイントを売却する際に追加の担保を差し入れる必要があり、買い手側も将来得られる報酬に上限が設定されていました。これに対しRumpelでは売り手に追加担保や元本ロックは不要で、自分が稼いだポイントのみを即トークン化して売却できます。また買い手も将来のエアドロップを100%享受可能です。
Pendle・Spectra・Hourglass(固定利率系プロトコル)との比較:これらのプロトコルは将来のイールド(利回り)をトークン化して売買する仕組みで、一見Rumpelと似ています。しかし、これらは主に預け入れ資産の利息部分を分離して取引するものであり、「ポイント」という形で報酬を付与するweb3プロジェクトには直接適用するものではありません。また、Pendle等の方式ではイールドトークン(YT)を買った人がその後に得たポイントを再び売ることはできず、ポイント売却の自由度が低いです。Rumpelは元本拘束なしでポイントだけを切り離せすことができ、売買も自由に行うことができます。
こうした特徴により、Rumpelは既存プロトコルの欠点を克服し、よりオープンで取引しやすいポイントマーケットを提供しています。
ただし、既存プロトコルと直接競合するだけではなく、例えばPendle上にRumpelのpTokenを原資産とする利回りトークン市場ができるなど、連携関係にもあります。
🚩設立からの変遷
ファウンダーはKenton Prescott氏とJosh Levine氏です。両名はRumpel以前はSense Protocol(Sense Finance)というプロジェクトを共同で立ち上げていました。
Sense Protocolは2021~2023年にかけて運営された固定利率レンディング・イールドトレーディングのプラットフォームで、MarkerDAOの債券のような固定利回り商品を扱っていたプロジェクトです。しかしビジョンの転換により2023年に活動を終了し、その技術や知見がRumpelへと発展的に引き継がれました。
Sense Protocol終了後に開発が始まり、Rumpelは2024年9月13日にEthereumメインネットで正式リリースされました。
ローンチ直後から複数のポイント市場を開設し、約2か月でTVLを$7.5Mまで伸ばすなど順調な滑り出しを見せました。その後、11月中旬にFluidプロトコルとの連携によるループ戦略(資産を繰り返し担保に入れてポイントを稼ぐ高利回り戦略)が紹介されると、更に預かり資産が急増し、一時はTVLが$50Mを超える水準に達しました。
pToken発行の連携プロジェクトも増加しつつあります。
Dragonfly Capital、Variant Fund、Robot Venturesといった著名VCからも資金調達を実施しています。加えて、特徴的なのはEigenLayerの経営陣3名(COO、エンジニアリングディレクター、リサーチディレクター)が個人としてRumpelに出資・支援しています。
💬ポイントプログラムの功罪
最後は総括と考察です。
Rumpelは単にポイントを売買できるようにするだけでなく、そもそもの適切なポイントプログラムについてかなり本気で考えている印象を受けました。
「Pointenomics 101: Mastering the New Language of Crypto Incentives」
リリース前の2024年7月に書かれたこの記事はとてもおすすめで、これまでのポイントプログラムの概要や類型、メリットと課題について細かく言及されています。
Rumpelはプロトコル側が対応してくれることで扱える資産が拡大していくので、実は最もリーチすべきターゲットはプロトコル側です。だからこそ、ポジショニングとしてポイントプログラムを熟知している事業者として発信しているのだと考えました。
ポイントプログラムはユーザーを誘引しますが、最近はあまりにも多いポイントプログラムにユーザーが飽き飽きしている部分もあります。そして、ポイント配布の妥当性、還元率によってはエンゲージメントが逆に離れてしまう可能性もあります。
この辺りをRumpelを利用するとユーザーに対する選択肢を増やすことができます。
ただ、この辺は難しいですね。リアルタイムでポイントの価格が出てしまうと将来が読めてしまうので期待値による誘因が減ってしまうかもしれません。期待値だけの誘引は長続きしませんが、TGE前のプロダクトの構築および検証フェーズで判断され続けるのはプロダクトに対して厳しい目で見られる可能性もあります。
最近はあらゆるものはあまりにも流動性が高すぎるとボラティリティが激しくなると思っているので、ポイントのトークン化に関しても同様の課題や流動性を出したことでプロダクトの成長を支えるというポイントプログラム自体の存在意義が危ぶまれるような可能性もあると思いました。
とはいえ、中長期的にはブロックチェーンであらゆるものに流動性が生まれ、ユーザー側に選択肢ができていくことは間違いないと思うので、その時代の中でさらに色々な施策を考える必要がありそうです。(そのうち、ポイント自体もFTになり、ポイントもステーキングすると溜まり方にブーストがかかる、みたいな構造にもなりそうですね)
以上、「Rumpel」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
«関連 / おすすめリサーチ»

【Axiom】YCを卒業しわずか4ヶ月で1億ドルの収益を達成したオールインワンDeFiプラットフォーム / 成長をリワードプログラム / プロトコル化するプロダクト / @AxiomExchange
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
About us:🇯🇵🇺🇸🇰🇷🇨🇳🇪🇸の5ヶ国語で展開されるweb3ニュースレターの日本語版。「1日5分でweb3をより深く学ぶ」をコンセプトに、web3の注目トレンドやプロジェクトの解説、最新ニュース紹介などのリサーチ記事を毎日配信しています。
Author:mitsui @web3リサーチャー
「web3 Research」を運営し、web3リサーチャーとして活動。
Contact:法人向けのリサーチコンテンツの納品や共同制作、リサーチ力を武器にしたweb3コンサルティングや研修なども受付中です。詳しくは以下の窓口よりお気軽にお問い合わせください。(📩 X / HP)
→お問い合わせ先はこちら