【Reflect】誰もが利息付きステーブルコインを作れるSVM上のSoftware-as-a-Stablecoinプロトコル / a16zも支援 / @reflectmoney
誰もがステーブルコインを作る社会へ
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Reflect」についてリサーチしました。
🟩Reflectとは?
👀ユースケースと利回り配布ロジック
💬誰もがステーブルコインを作る社会へ
🧵TL;DR
ReflectはSolana上で動作する「Software-as-a-Stablecoin」プロトコルで、誰でも許可なく利息付きステーブルコインを発行できる仕組みを提供します。
コア要素は①資産をオンチェーンでトークン化する機能、②デルタニュートラルやクロスマージンなどのDeFi戦略で利回りを生む仕組み、③損失時に自動で補填する「Verifiable Insurance」保険機構です。
主要なステーブルコインとしてSOL戦略のUSDRやUSDC戦略のUSDXが計画され、利回りは価格上昇型または現金配当型の「Liquid Bond」トークン(sUSDR/sUSDX)で配布されます。
2025年Q3にオープンベータが予定され、a16z Cryptoのアクセラレータ参加実績から出資が推測されます。
🟩Reflectとは?
「Reflect」(Reflect Money)は、「Software-as-a-Stablecoin」を標榜するSolana(SVM)上の新しいステーブルコイン基盤プロトコルです。
誰でも簡単に許可なくステーブルコインが発行できるプロトコルを目指しており、中でも利息付きのステーブルコイン発行にフォーカスしています。中央管理者や従来型の金融仲介者を介さず、全てがDeFiスマートコントラクト上で預け入れ、ステーブルコイン発行、預かり資産運用、利息付与が全て完結する仕組みを構築しています。
Reflectの基盤は大きく三つの要素で構成されています。
トークン化(Tokenisation)
ユーザーの預けた資産や金融商品の価値をオンチェーン上のトークンで表現する仕組みです。Reflectでは、ユーザーがプロトコルに預けた担保資産(例:SOLやUSDCなど)はスマートコントラクトによってステーブルコインとしてトークン化されます。
リキッドステーキングトークンがステーブルコインとなっているイメージです。
DeFi戦略
Reflectでは各種のDeFi戦略を裏付けとして、それぞれに対応するステーブルコインを発行します。発行の際、ユーザーはまず特定の戦略に対応する資産をプロトコルに預託します。
プロトコルは預かった担保資産を用いて所定の運用戦略(デルタニュートラル戦略など)を自動実行し、そのポジションで裏付けられたステーブルコインを新規発行します。この発行はパーミッションレスに誰でも実行でき、預け入れや償還にも原則制限やKYC等はありません。
各ステーブルコインの価値は対応する戦略ポジションによって裏付けられ安定化されており、発行後は通常のUSDステーブルコインのように自由に送金・取引に利用できます。
また、この戦略は、スマートコントラクトによって自律的かつプログラム可能に実行・管理されます。これにより透明性が高く、戦略のロジックや実行状況は誰でも検証可能となっています。
保険機構(Verifiable Insurance)
ステーブルコインにとって最もリスクは価値のデペッグです。担保資金を運用しているため、この乖離が起こってしまってはステーブルコインとして成立しません。
そこでReflectは各ステーブルコイン(戦略)ごとに専用の保険メカニズムを備えてます。これは「Verifiable Insurance(検証可能な保険)」と呼ばれ、スマートコントラクトによる自動化と暗号学的証明を組み合わせた新しい保険モデルとなっています。
基本的な仕組みとして、各ステーブルコインの裏付けとなる戦略ポジションに万が一の損失や不足が生じた場合、自動的に保険金支払い(保管資産の補填)が行われるよう設計されています。
具体的には、プロトコルが管理するオンチェーンの保険プログラムがあり、そこに予め保険用の資金がプールされています。この保険プログラムは常に戦略ポジションの健全性を監視しており、証明可能なアテステーション(検証情報)に基づいて損失が確認されると、スマートコントラクトの合意により即座に支払いが実行されます。
この一連の仕組みをゼロ知識証明やリステーキング技術を活用して実行します。
ゼロ知識証明により、戦略ポジションに関する重要な状態(例えば損失額や特定の破綻イベントの発生など)をプライバシーを漏らさずに暗号学的に証明し、それをもとに保険支払い判定が行われます。
リステーキングに関しては、Reflectではネットワークのバリデータが自分のステーキング資産を担保に保険サービスを提供します。
具体的には、複数のバリデータ(またはステーカー)が自らのステーキング資産をReflectの保険プールにコミットし、もしReflectの戦略に損失が出た際にはそのステークをスラッシュ(一部没収)する代わりに、普段は各戦略が生み出す収益の一部をリワードとして受け取る、といった仕組みです。ステーカーにとってはリスクを取る代わりに利回り収入が得られ、ユーザーにとっては万一の際に備えた強固なセーフティネットが提供されることになります。
これらを踏まえ、Reflectプロトコルにおける保険は、主に以下の二段構えで運用される予定です。
ハードキャッシュ保険基金:プロトコル自体が蓄積する現金(例: USDC)の保険ファンドです。各戦略からの収益の一部や初期準備金などで構成され、軽微な損失や変動であればまずこの基金から穴埋めされます。
リステーク型バリデータサービス:上記のように、外部のネットワーク参加者(バリデータ/ステーカー)が自分のステーク資産を担保に提供する保険です。プロトコル単独の基金ではカバーしきれない大きな損失が発生した場合、これらステーカーの担保がスラッシュされ、その資金が補填に充てられます。
この二層の保険により、Reflectはユーザーに対して高いレベルの資産保全と安心感を提供しようとしています。
👀ユースケースと利回り配布ロジック
「Reflect」は現時点でまだアプリケーションは公開されておらず、その構想だけが発表されている状態です。ロードマップは不明ですが、ドキュメントを見る限り、いずれは誰でも戦略を作成しステーブルコインを発行できるようになるようです。
一方で初期は「Reflect」が手掛けるいくつかの戦略のもとでステーブルコインが発行されていくようです。
例えばReflectが提供予定のステーブルコインには、SOLのデルタニュートラル戦略で運用されるUSDRや、USDCを用いたクロスマージン戦略のUSDXがあります。
デルタニュートラル戦略はEthenaのUSDe等と同じく、SOLの現物とショートの双方の戦略によって価格を維持する方法です。
USDCを用いたクロスマージン戦略とは、ユーザーがUSDCなどの安定した資産を預け入れると、プロトコルはまずそれを現物(USDC)のまま保持します。同時に、同額のポジションをある先物市場で買いと売りの両建てで開きます(例えば同じ銘柄を同じ価格でロング・ショート両方建てる)。
こうすることで、価格変動および通常のファンディング支払いの影響を排除しつつ、市場に対してクロスマージンの流動性(現金)を提供する形になります。
具体的には、先物取引所においてトレーダー達がレバレッジ取引を行う際には、ロング志向のトレーダーは仮想通貨を借りて買い建てし、ショート志向のトレーダーはステーブルコインを借りて売り建てします。Reflectのポジションは両建てであるため常に中立ですが、その裏で現金(ステーブルコイン)をショート側に貸し出す役割を果たします。言い換えれば、マーケット全体で見ればReflectは安定資金の貸し手となり、レバレッジ需要が高まるほどその貸出金利収入が増える構造です。
以上二つがReflectプロジェクトで計画されている主要な戦略ですが、将来的には他の戦略も導入される可能性があります。ドキュメントでは例としてRWA運用戦略にも言及されており、例えば国債ポートフォリオを組成してその利息をステーブルコインでトークン化するような、低リスク低リターンの戦略も考えられます。
また、これらの利回り配分にも2つの方法が存在します。
一つは価格の価値上昇型で、もう一つは現金配当型です。前者はLSTやLPシェアと同じような形で価格自体にリベースしていく形で、後者は普通に数量が増えていく形です。
ただし、ステーブルコインで価値上昇型の場合は不自然なので、利息付与型ステーブルコインは、sUSDRやsUSDXといった「Liquid Bond(流動性債券)」と呼ばれる形が想定されています。ユーザーは任意のタイミングでこれらのトークンをアンラップし、貯まった利息分の価値を含む現金を受け取ることができます。
なお、ステーブルコインのミントやバーンには手数料は発生しません。
この辺りのどこまでステーブルコインに拘っているのかはわかりません。単にYield Aggregatorの債券トークンをステーブルっぽくしてるだけの形なのか、完全にステーブルコインに拘っているのかはリリースされた後にわかります。
オープンベータは2025年Q3に予定されており、現在は招待コードの受付が始まっています。
また、現時点で発表されている資金調達情報はありませんでしたが、a16z cryptoのアクセラレータープログラムのCSXへ参加していることが明言されているので、a16z cryptoは出資していると考えられます。
💬誰もがステーブルコインを作る社会へ
最後は総括と考察です。
「Software-as-a-Stablecoin」のコンセプトが出てきましたね。LSTを誰でも作れるようにしたSanctumの登場を思い起こさせますね。
ステーブルコインの普及が進み、多くのプロジェクトが出てくる中で、トレンドとしては担保資金の利回り還元があり、その運用戦略で各社が差別化を図っている状況でした。
その中でそれらのプロジェクトを誰でも作れてしまうプロトコルとして「Reflect」が出てきました。とはいえ、全く新しい概念というよりも、LSTやYield Aggregatorで行われていたようなことをステーブルコインの形に落とし込んだというイメージです。
運用戦略の預け入れ証明をステーブルコインにすることに何の意味があるのか、単純にVault預け入れ証明トークンじゃダメなのか、疑問に思う方も多いと思いますが、ここは実は大きな違いがあるのではないかというのが僕の意見です。
BlackRockのBUIDLが大きな影響力を持っていますが、あれも米国債への投資証明をステーブルコインの形で発行しています。当然、BlackRockのブランド力や既存顧客が成長を牽引していることもあるかと思いますが、ステーブルコインの形にしたことも非常に大きかったのではないかと思います。
ステーブルコインにすることで「計算がしやすく」「DeFiに組み込みやすい」という利点があります。自信が保有する運用戦略からの利回り想定、投資時の計算が簡単で、他のDeFiプロトコルが収益を運用する際の手段としてわかりやすいです。
なので、意外にあらゆる戦略の証明トークンを全てステーブルコインにしていくという形はワークするのではないかと考えています。
あとはステーブルコインが乱立した際のDeFi内でのユーティリティや流動性ですが、ここは自社エコシステム内だけで利用されることを想定しているケースが1つと、もう1つはこの辺も抽象化されていくのではないかと考えています。
今週、ParadigmがOrbitalというステーブルコインが乱立する時代の新しい流動性(AMM)の在り方を提案していました。
これが採用されるのかはわかりませんが、現在のDeFiのようにUSDCやUSDTは扱ってるけど新興ステーブルコインは扱っていない。なので、結局ステーブルコインのユーティリティがなくて利用できない、みたいなことは徐々に抽象化されていき、どんなステーブルコインでもどのDeFiでも利用できる、みたいな世界観になっていくのではないかと思います。
そうなると、ピュアに運用戦略だけ発明できると自身が考えたステーブルコインが大きくグロースしていくことができるかもしれません。また、個人だけでなく企業やインフルエンサーがそれぞれ自身のステーブルコインを作り時代になるかもしれません。楽しみですね。
以上、「Reflect」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / DOC / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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