【Resolv】現物とショート先物永久取引でヘッジする真のデルタ中立(TDN)ステーブルコイン / ETH預け入れで1対1でステーブルコインを発行 / @ResolvLabs
ステーブルコイン3.0の時代が到来しています。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Resolv」についてリサーチしました。
🔵Resolvとは?
🤑デルタ中立戦略の利回りと安全性
💧ポイントプログラムを開催中
💬ステーブルコイン3.0の時代が到来している
🔵Resolvとは?
「Resolv」は、真のデルタ中立(TDN)ステーブルコインです。
この説明だけではわかりづらいと思うので、まずは既存のステーブルコイン市場が抱える問題から説明します。
まず、既存のステーブルコインにおいて最も有名なのは法定通貨担保型のUSDCやUSDTですね。これらは非常に便利ではありますが、担保資産の保管は中央集権的な機関で行われていることが多いです。
実際に、シリコンバレー銀行が破綻した際、USDCの準備金の8%にあたる33億ドルが未処理のまま滞留していたことが発表され、USDCは一時デペッグし、価格が大きく乖離しました。その後、補填をすることで価格は戻りましたが、このようなリスクは引き続き存在しています。
一方の暗号資産担保型はどうでしょうか。これは暗号資産にボラティリティがあるが故に仕方のないことではありますが、基本的に過剰担保型(例えば150%担保)となっており、資本効率を悪くします。
「Resolv」はこれらの問題を解決する新しいステーブルコインです。
ユーザーはETHを預け入れることで預け入れ金額と1対1でステーブルコインUSRをミントすることができます。
暗号資産の預入のため、その全てがオンチェーンで管理でき、尚且つ1対1の交換なので資本効率も悪くなりません。
ただし、暗号資産は価格ボラティリティが高いのですぐに担保比率が変化する可能性があります。これをどのように解決しているのでしょうか。
「Resolv」は主に2つの方法を取っています。
①デルタ中立戦略
デルタ中立戦略とは、既存の金融業界でも利用される言葉で、市場の上下動に対して中立的なポジションを取る投資戦略です。「Resolv」は現物のETHを保有しながらも、その価格下落に備えてショート(売り)の永久先物契約を行うことでリスクをヘッジしています。
この仕組みにより、ETH価格が上昇した際は現物から利益を教授し、下落した際はショート永久先物契約で利益を享受します。この結果、安定を保つことができます。
詳しいアーキテクチャは以下です。
ユーザーが預け入れた資産はまずトレジャリーに入れられます。
そこから85%がETHステーキングに入れられ
5%が流動性プールの予備として
10%が主にCEXのショート永久先物取引に利用されます
ただし、この仕組みだけでは欠陥があります。それは過剰損失時の保証です。加えて、ショート永久先物取引はBinance等のCEXで行われていることが多いので、例えばBinanceが破産した際に資金回収ができなくなり、シリコンバレー銀行におけるUSDCと同じような現象が起こります。
これを回避するためにUSRの過剰担保の保険レイヤーとして$RLPを発行しています。
②過剰担保の保険レイヤー
$RLPも同様にユーザーがResolvトレジャリーに資金を預け入れることで獲得できます。$RLPはステーブルコインではなく、価格が変動します。
$RLPは主にUSRのリスクを許容する立ち位置で、高利回りを提供する代わりにリスクが存在する投資商品のような位置付けです。
先ほど、預け入れられたETHはステーキングやショート永久先物取引で利用されると話しましたが、ここでの運用益がユーザーにも分配されます。分配対象はstUSR(USRのステーキングトークン)もしくは$RLP保有者です。USRを保有しているだけでは運用益の分配は得られません。
そして、RLP保有者は損失時のリスクも許容しているため、stUSR保有者よりも高い利回りを獲得します。
発生した利益は 3 つの部分に分割され、それぞれ24時間ごとに分配されます。
基本報酬(70%):ステークされた USR (stUSR) およびRLPの保有者へ
リスクプレミアム(30%):RLP 専用へ
プロトコル料金(0% ※現時点):プロトコルの財務へ
尚、stUSRは価値が一定なので数量が増加し、RLPは価格にリベースされる形で報酬が分配されます。
具体例を見ていきます。プロトコルに100,000ドルが預けられ、そのうち70,000ドルが USRに、30,000ドルがRLPに預けられたとします。70,000ドルのUSRの中で20,000ドルがステーキングされstUSRが発行されたとします。
①20,000ドルの利益を達成
基本報酬(70%)
全体で20,000×70%=14,000ドル
TVLの比率(今回の場合、stUSR20,000ドルとRLP30,00ドルなので2:3)に応じて分配
stUSR分配:14,000×40%=5,600
RLP分配:14,000×60%=8,400
リスクプレミアム(30%)
20,000×30%=6,000ドルがRLP保有者へ
合計
stUSR分配:5,600ドル
RLP分配:8,400ドル+6,000ドル=14,400ドル
②20,000ドルの損失
損失の全額がRLPに割り当てられ、その価値は20,000ドル減少。
stUSRへの配布は行われません。
🤑デルタ中立戦略の利回りと安全性
このようにRLPは高利回りもあれば、損失もあるというわけです。ただし、これまでの運用実績においてデルタ中立戦略は安定した利回りを出しています。
Resolvチームも主要なL1ブロックチェーンのトークンで2023年に検証してみたところ、TRX以外のトークンが10%近い利回りを出しました。
また、採用に至ったETHでも2 年間のバックテストされたパフォーマンスでは、約 7.50%APYが得られたとのことです。
ここから、stUSRとRLPは以下のような利回りを想定しているとのことです。
stUSR : 年利5~6%
RLP : 年利 20~30%。
では現時点の利回りを見てみます。
stUSR:24.40%
RLP:43.76%
となっており、かなり高い利回りです。特にstUSRはドルにペッグされたステーブルコインでありながら20%以上の高利回りを実現しています。
担保プールのTVLは以下の通りで、それぞれのアセット分配も以下の通りです。
この戦略によって、USRは1対1で発行されながらも、RLPが過剰担保の保険レイヤーとして機能することでほとんどの資産がオンチェーンで管理されながら、資本効率の良いステーブルコインを誕生させることに成功しました。
大きなリスクはまずCEXの破産ですが、先物ポジションの証拠金は、取引所外の第三者保管機関によって保管されます。また、いくつかの取引所に分散することでリスクを分散します。
加えて、RLPが急激に引き出されると過剰担保の保険レイヤーがなくなります。その場合に備えて、USRの担保率が110%を下回る場合はRLPの引き出しができなくなります。
また、これだけ高利回りの場合はRLPの保有者が少なくなると分配金が増えるので論理的にはより多くの人がRLPを求めて参加し、需給が自動調整されます。
💧ポイントプログラムを開催中
Resolvは独自トークンであるRSLVの発行を予定しています。詳細がまだ公開されていませんが、ガバナンストークンとなり、収益分配率や資産の運用方法などに関する決定権として機能します。
そして、それに先立ちポイントプログラムを実施中です。
友達紹介、USRやstUSRやRLPの保有、流動性の提供などを通してポイントを獲得できます。
また、Resolv Clubというロイヤリティの仕組みも発表されていました。
これはコミュニティに参加してチャットに反応したり、AMAしたり、グループイベントに参加したりなどの貢献やKOLの人はSNSで呟くことでグラントが得られるとのことです。こちらも詳細は後日発表のようです。
💬ステーブルコイン3.0の時代が到来している
最後は考察です。
個人的にこのような通貨を設計するプロジェクトは非常に興味深く見ています。以前リサーチしたフラットコインの構想でもそうでしたが、大枠としてはリスク資産と安定資産を分岐(トランシェ)して、2つのトークンと2つのステークホルダーを集めることで安定化を図ることが主流のようです。
そして、それぞれに利回りを提供することでインセンティブによって需給が自動で調整されるようなエコノミクスを構築しています。
当然、ステーブルコインなので基本的には1度のミスも許されません。過去にも革新的だと言われたステーブルコインがデペッグして崩壊することがありました。なので、こういった仕組みも今後継続的に追いかけていく必要があると思いますが、それでも面白い取り組みだと感じています。
今回のUSRのようなオンチェーンだけど過剰担保ではないステーブルコイン3.0のようなプロジェクトが最近増えています。この流れはEthenaのUSDeが成功しつつあることがきっかけであるように感じているのと、過去ほどは暗号資産のボラティリティが低下しつつあることも関係があるように感じます。そして、オンチェーンでの運用先も増えたことも関係があるはずです。
このように土壌が整ってきたことでほぼフルオンチェーンで透明性のある資産管理をしながら、1対1でステーブルコインが発行できる仕組みが整ってきました。現状はまだUSDC/USDTが圧倒的なシェアを誇っていますが、数年後にはこのシェアがどのようになっているのかはわかりません。
ただ、今後社会に普及していく際には一般層も利用していくので、USDCやUSDTのように資本力がありブランド力もあるステーブルコインの方が普及しそうだなとも感じており、ここら辺のマスアダプション時においてweb3の思想がどこまで反映されていくのかは疑問に思っているところではあります。
個人的にはこのようなプログラマブルマネーの領域はまさにブロックチェーンの本域であり、社会を変革するものだと考えていますが、仕組みが複雑でもあるので、本当に主流の通貨になるのはかなり時間がかかると考えています。今後数年間は思想が好きな人もしくは高利回り資産として一部の人に利用され続け、そこで安定するのかが実験され、どこかでその考えが普及していくという順番だと思っています。
自分でも少し触ってみようかと思います!
以上、「Resolv」のリサーチでした。
🔗参考/画像引用先:HP / DOC / BLOG / X
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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