【CreatorFi】クリエイターの将来収益(広告・ロイヤリティ等)を担保にUSDCを前払いで受け取れる融資プラットフォーム / 著作権を奪わずに資金アクセスを提供 / @insomnia_labs
クリエイターエコノミー時代の金融インフラとなるか
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「CreatorFi」についてリサーチしました。
CreatorFiとは?
変遷と展望
クリエイターエコノミーの金融基盤
TL;DR
CreatorFiは、クリエイターの将来収益(広告・ロイヤリティ等)を担保にUSDCを前払いで受け取れる融資プラットフォームで、著作権を奪わずに資金アクセスを提供する点が特徴。
AIで収益データを分析し最適な融資額を算出し、YouTube等の収益から自動で返済される仕組みで、Avalanche/Aptos上で債権をトークン化し透明な担保管理を行う。
Insomnia Labsが開発し主要チェーンや投資家から評価されており、RWA化と二次市場形成による大規模拡大が期待される、クリエイター経済向け金融インフラとして位置づけられる。
CreatorFiとは?
「CreatorFi」は、デジタルクリエイター向けのステーブルコイン融資プラットフォームです。
YouTuberやTikToker、音楽アーティスト、Robloxやフォートナイト等のゲーム開発者などのクリエイターが将来のデジタル収益(広告収入やロイヤリティ等)を担保に資金を借りることが可能になります。
従来、銀行はこうしたデジタルな権利収入を与信対象とせず、レコード会社等も前払いの見返りに著作権の80%を要求するなど不利な条件が多く、クリエイターは十分な資金調達手段を持ちませんでした。
CreatorFiはこの課題を解決し、コンテンツの将来収益を即時の資本に変換することでクリエイターを支援します。
クリエイターは以下のようなメリットを享受できます。
迅速な資金調達:銀行融資ではなく、自身の未来の収益を元に即座に資金(前払い)を受け取れるため、新企画の立ち上げや制作規模拡大のためのキャッシュフローを確保できる。
グローバルかつ公平な融資:融資と返済はステーブルコインUSDCや法定通貨で行われ、為替手数料も最小化。伝統的金融から排除されがちなクリエイターにも低コストで世界中からの資金アクセスを提供。
権利保護:前払いを受けても著作権やチャンネル等の所有権は奪われません。CreatorFiは返済完了まで収益権を一時的に留保するだけで、クリエイターは作品のコントロールを失わない仕組みです。これは「所有権ではなくインセンティブを共有」するモデルとされ、伝統的なレーベル契約より遥かにクリエイターフレンドリーです。
クリエイター支援と収益化モデルの拡充:CreatorFiは単なる融資に留まらず、クリエイターの事業成長を総合支援するプラットフォームを目指しています。具体的には、融資を受けたクリエイターに対してブランドタイアップやライセンシングの機会を提供するネットワークを構築しています。
こうした特徴により、CreatorFiは「クリエイター経済の成長を金融面から支える」サービスとして位置付けられています。市場規模も大きく、クリエイターエコノミーは2034年に約1.49兆ドル規模に達すると予測される中、従来は資金調達手段が乏しかったクリエイター層に透明で効率的な金融アクセスを提供する意義は大きいと評価されています。
◼️機能と特徴
上記メリットを支える機能と特徴は以下の通りです。
ステーブルコイン融資プラットフォーム
将来収益担保型の融資サービスです。クリエイターが将来得る広告収入や版権収入を担保にUSDCステーブルコイン建てのローンを受け取り、収益発生時にUSDCで返済します。
AIによるリスク評価と与信
クリエイターの収益データを収集・解析し、機械学習モデルでチャンネルの視聴データや楽曲の再生回数、ゲーム内課金額などのパターンを分析します。
これに基づきリスク調整済みの融資オファー(限度額や金利)を瞬時に算出します。例えば「過去のYouTube月収から算出した上限額〇〇ドルを年率○%で前払い」等のオファーが提示されるなど、ジャンル別に最適化されています
リアルタイムの収益徴収と自動返済
CreatorFiの融資モデルは売掛金(将来債権)に基づくファクタリングのように機能します。クリエイターが前払いを受け取った後、そのクリエイターのコンテンツプラットフォーム(YouTubeや音楽配信サービス等)から生じる収益はプラットフォームレベルでCreatorFi側に直接リダイレクトされ、リアルタイムでローン返済に充当されます。
例えば、提携先のYouTubeマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるYoolaはクリエイターのYouTube収益を一旦受け取り、CreatorFiへの返済分を差し引いた上で残額をクリエイターに渡すフローを構築しています。
これにより貸し手側(資金提供者)にとっては確実かつ即時に回収が行われるためリスクが低減され、クリエイター側も煩雑な返済手続きを意識することなく収益の一部で自動返済が進みます。
資産のトークン化とオンチェーン担保
CreatorFiは当初Avalancheチェーン上に構築されており、クリエイターの将来収益権をオンチェーン上の「クレジット資産」として表現・管理しています。
例えば、YoolaのYouTubeクリエイター向けに500万ドル規模の債券プログラムを組成し、Kamui Financeなど機関投資家がそれを引き受ける形で資金を提供しました。この債券や貸付債権はブロックチェーン上でトークン化されており、取引や検証が可能な透明性の高い担保となっています。
2025年11月からは高速L1であるAptosチェーンにも対応し、Aptos上でもクリエイター収益担保の記録(Proof of Credit)を残すことで、マルチチェーンでのDeFi的信用供与を拡大しています。
このオンチェーン化により資金の流れは監査しやすくなり、将来的には流動性供給者がセカンダリ市場で債権トークンを取引することも見据えています(現時点では規制投資家向けのプライベート取引に留まります)。
以上のように、CreatorFiはブロックチェーン技術を下支えに「クリエイティブ領域の金融インフラ」として多角的な機能を提供しています。
クリエイターのコンテンツ収益をデジタル資産化して融資するという意味で広義のRWAのトークン化プロジェクトと位置付けられます。
変遷と展望
CreatorFiは、米ニューヨーク拠点のブロックチェーン企業Insomnia Labsによって開発・運営されています。
Insomnia Labsは2020年代前半から活動しているスタートアップで、当初は大企業向けにNFTやトークン化ソリューションを提供してきました。
その実績として、Coca-ColaやL’OréalといったグローバルブランドのNFTキャンペーン、Under Armourのデジタルグッズ展開、国際クリケット評議会(ICC)のブロックチェーン活用などが挙げられます。
こうした経験から得たトークン化技術やデータ解析ノウハウを、クリエイター経済に応用したのがCreatorFiです。
創業メンバーにはInsomnia LabsのCEOであるBilly Huang氏と、チーフビジネスオフィサー(CBO)のJack Cameron氏がいます。Huang氏はInsomnia Labsの共同創設者で、クリエイター経済の可能性に着目し「クリエイターこそ次世代のグローバルブランドを築いている。彼らに相応しい金融ソリューションを提供したい」との信念を語っています。
CreatorFiは2025年7月にまずはAvalanche上でローンチされ、その直後の11月にAptosでもローンチされました。
7月にCreatorFiをローンチする際にはKamui Financeらから$1,200万のクレジットライン提供を受け、これによりYouTubeネットワークYoolaとの提携プログラム($500万規模のクリエイターローン枠)が開始され、同年内に複数のYouTuberがこの枠を利用しています。また音楽分野では、著名アーティストの印税処理を支援する米Record社がCreatorFiを採用し、自社クライアントにフェアな資金提供を実施しています。
11月のAptos対応時にはAptos Foundation・Aptos Labsから$200万の戦略的資金調達も同時に発表しました。
Aptos FoundationやAva Labs(Avalanche)幹部は、いずれもサービスを高く評価するコメントを出しています。
Aptos側は「伝統的融資に取り残された巨大市場(クリエイター経済)に実需のソリューションを提供する、まさに我々が求めるリアルワールドユースケースだ」と述べ、Avalanche側のモーガン・クルペツキー氏は「CreatorFiによってクリエイティビティがそのまま資本価値になる時代が始まった」と賞賛しています。
また、初期から資金提供するKamui Financeのハディ・カバラン氏も「ネットワーク内のすべての参加者(クリエイター・プラットフォーム・金融者)が勝者となるバリューチェーンをブロックチェーンで実現している」とコメントし、RWA投資先として期待を示しました。
まだローンチされた間もないですが、利用するクリエイターの成長率も増加するなど実績も出ており、今後も益々広がっていくことが期待されています。
クリエイターエコノミーの金融基盤
最後は総括と考察です。
とても面白い領域でのサービスだと感じます。ブロックチェーンは金融の民主化を推進しますが、その恩恵先として真っ先に挙げられるのは銀行口座を持たない途上国の人々です。これらの人々はブロックチェーンによってスマホ1つでウォレットを持つことができ、資産の保有・運用・送金が可能になります。また、自国通貨ではなくドル経済にアクセスできることもメリットです。
しかし、往々にしてこの層は潜在的な市場規模は大きいですが、直近の市場規模はそこまで多くありません。理由は経済規模がまだ小さいからです。なので、利用ユーザー数は増えますが、取引手数料が主たる収益源となる場合の規模感は大きくなりづらいです。
一方でCreatorFiが見据えるターゲットは、伝統的な金融機関からは相手にされないが、経済規模が大きい領域です。新興のデジタルクリエイターは大きな売り上げを上げる一方で、その不安定さと市場の新しさから金融にアクセスできません。
そこにブロックチェーンを持ち込み、AIで与信判断して貸し付けるというソリューションはかなり大きな市場規模になりそうな気がします。そして、個人的にCreatorFiのビジネス的な優位性は事務所と連携しているところです。
やはり最大のリスクは貸し倒れです。クリエイター収入が不安定であることは事実なので、事務所と連携することでクリエイターに渡す前に返済を受けることに成功しています。このモデルであれば、少なくとも収入があるのに返済が滞ることはなくなりますし、そもそもの提出されたデータが異なるということもなくなります。
そして、今後の展望として考えられるのはやはり貸し出した後の債権のトークン化とその売買マーケットプレイスです。ここまでの設計を考えているはずで、これがワークし始めると資金効率が良くなるので競合に負けないスピードでの拡大が可能になります。
以前のFigureのリサーチでも思いましたが、まず狙うのは既存金融の対象外なのに市場規模が大きい、且つAIとブロックチェーンで圧倒的に効率化できる領域です。そこを攻めて実績を作り、裏側で債権をトークン化して機関投資家に販売します。そうなると資金効率が良くなるので続々と債権化が可能になり、成長曲線が加速します。
また、トークン化した債権を担保にした借入ができる仕組みも構築すると、自社も機関投資家もさらなる運用が可能になるので、経済規模がまた上がります。
実行は難しいかもしれませんが、ある程度王道の進め方はすでに先行企業によって見えてきています。CreatorFiはまだ入り口ですが、おそらくこういった進め方をしていくのではないかと予想しています。今後が楽しみです。
以上、「CreatorFi」のリサーチでした!
参考リンク:HP / X
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