【Aria Protocol】Story上で音楽などのIP収益権を小口トークン(IPRWA)化し、誰でも取引・保有できるようにするプロトコル / @Aria_Protocol
第一弾はジャスティンビーバー、BTS、ブラックピンク等の楽曲をトークン化
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Aria Protocol」についてリサーチしました。
🎧Aria Protocolとは?
🚩変遷と展望
💬クリプトの価値は民主化にある
🧵TL;DR
Aria Protocolは、Story上で音楽などのIP収益権を小口トークン(IPRWA)化し、誰でも取引・保有できるようにしてIP市場の流動性不足と参入障壁を解消することを狙う。
$APLは最初の音楽IPポートフォリオ・トークンで、USDC調達→IP購入→$APL配布→ステーキングで$stAPL受領→ロイヤリティ由来のBuybackで$APLを積み増し(実質リベース)する仕組み。
権利はロイヤリティ関連のみで所有権は付与されず、米・英などは利用不可、米税30%源泉やKYC要求の可能性など規制・税務制約と高リスク(無担保・流動性不確実)を伴う。
🎧Aria Protocolとは?
「Aria Protocol」は、Story上に構築された音楽著作権などの現実世界のIPから生じる収益権を担保にしたIPRWA(Intellectual Property Real-World Asset)トークンを発行し、ブロックチェーン上で取引・保有できるようするプロトコルです。
最初に注力しているユースケースは音楽IPのトークン化です。
従来、ヒット曲の著作権やロイヤリティ収入への投資は一部の富裕層や音楽業界の内部関係者に限られ、一般ファンや個人投資家は参加できませんでした。またIP資産は非流動的で、権利売買には煩雑な法的手続きが必要でした。AriaはこうしたIP市場の流動性不足・参入障壁を解決することを目的としています。
Ariaによって、音楽のストリーミング収入やライセンス収入を生む権利を小口のトークンに変換し、ファンがそれを購入・保有することで、楽曲ヒットによる収益の一部を享受できるようになります。
現時点で、$APLという音楽著作権(IP)に裏付けされたトークンがリリースされているので、これを例にとって詳細を説明していきます。
◼️$APL(Aria Premiere Launch)
$APLはAriaが最初にローンチした音楽IP権利ポートフォリオで、約1,094.7万ドル相当のトークンが発行されました。
細かい資金の流れは以下のようになっていますが、ざっくりとそのフローを整理します。
Ariaがファンドを発表
興味を持つユーザーはUSDCをデポジットする
目標金額に達するとユーザーから預かったUSDCで実際のIPを購入
そのIPに裏付けされたIPRWAトークンが発行(ユーザーの預け入れ量に応じて配布)
そのトークンをステーキングすることでロイヤリティ収入を確保
「Aria Premiere Launch($APL)」では、StakeStone社と提携してそのLiquidityPadプラットフォーム上で実施しました。StakeStoneはDeFiの流動性提供プラットフォームで、Ariaはこれを活用して$1,095万を調達・ロックしIP購入資金に充てました。
$APLは著名な音楽47曲を購入したIRPWAトークンです。
そのリストは公開されていますが、ジャスティンビーバー、BTC、ブラックピンク等の世界的なアーティストの楽曲が並びます。
$APL保有者は自らの$APLをステーキングすることで$stAPLを受け取り、IPロイヤリティ収入の配当を受けられます。厳密に言えば、配分方法は直接渡すのではなくてロイヤリティ収益を用いて市場から$APLをバイバックし、$stAPL保有者向けのステーキングコントラクト(Vault)に流す形になります。これによって$stAPLをアンロックした際に獲得できる$APL総量が増えるので、ユーザーから見れば$stAPLの価値がリベースされていくイメージです。(後述しますが、おそらく規制を考えてこの方法を取っているのだと考えられます。)
現在は6.5%~10.41%程度のAPYとなっています。
このようにユーザーが資金を預け、それによってオフチェーン上でAriaがIPを購入し、それを裏付けにし、ロイヤリティ収入を分配するIPRWAトークンを発行するプロトコルがAriaです。
どうしてもオフチェーンでの処理は挟みますが、IP権利のトークン化に際してオフチェーンの法的契約や証明書とブロックチェーン上のトークンを対応付ける仕組みが取られており、透明性を保つ工夫がされています。
また、現在はロイヤリティ収入が分配されるだけですが、将来的には「プログラム可能なIP」として、スマートコントラクトがリミックスや二次創作の許諾条件を管理し、収益を原権利者・トークン保有者に自動分配することを目指しています。
スマートコントラクトによる自動ライセンス許諾を用いることで、権利者の許可の下、人気楽曲のリミックス版やスピンオフ作品をファンや他のクリエイターが制作しやすくし、そこから生まれる収益も原権利者・トークン保有者・二次創作者で公平にシェアする、といった参加型のIP経済を目指しています。
🚩変遷と展望
Aria Protocolの開発・運営はAria Protocol Labs Inc.という法人によって行われています。本社所在地は米国デラウェア州ウィルミントンとなっており、法的には米国法人として設立されています。
加えてエコシステムの長期的発展を担う非営利団体Aria Foundationも設立されており、こちらはケイマン諸島に拠点を置きます。Aria Foundationは開発者助成金やコミュニティ主導の施策、流動性プログラムやパートナーシップ推進などを管轄する組織で、将来的な分散型ガバナンスの中核になると見られます。
「音楽業界のベテラン」によって創設されたとされていますが、具体的なメンバーについては詳細な公開がなされていません。プロジェクト創設者(CEO相当)はコミュニティ上でRWAkefeller.ipというハンドルネームを用いており、本名は不明ですが「RWAのロックフェラー」をもじった匿名創業者として注目されています。
一方、共同創業者でありChief IP Officer(最高IP責任者)を務めるのがDavid Kostiner氏です。彼はサンフランシスコに拠点を置くエンターテインメント・知的財産専門の法律事務所Counsel LLPのマネージングパートナーでもあり、音楽著作権ビジネスに豊富な知見と人脈を持つ人物です。
◼️資金調達
2025年9月には、Polychain CapitalやNeoclassic、Story Protocol Foundationなどが参加するシード+戦略ラウンドで合計1,500万ドルを調達しました。
また、SVインベストメント、KBインベストメント、ハナ金融グループといった韓国の著名投資家から総額5,070万ドルの支援を確保したとも報じられており、これらはK-POP分野のIP取得を睨んだ資金と考えられます。
実際、韓国のコンテンツ投資企業であるContents Technologies社と提携し、同社が保有する大規模なK-POP楽曲カタログ(韓国のグローバル音楽配信市場の半数以上を占める規模)をトークン化する「Aria PRIME」プロジェクトを開始しています。
◼️独自トークン
Aria Protocol独自のネイティブトークンとして$ARIAの発行が計画されています。2025年9月時点ではまだ詳細は明らかになっていませんが、将来的にプロトコルのガバナンストークン兼ユーティリティトークンとなる見通しです。
現時点で「Aria Points」と呼ばれる独自のポイントプログラムを導入しており、ユーザーはプラットフォームの利用や貢献度に応じてポイントを獲得できます。このAria Pointsは将来的に$ARIAトークンと交換可能とされており、事実上トークン発売前のロイヤリティプログラムとして機能しています。
例えば、2025年2月に実施されたAria Premiere Launchでは、参加ユーザーに対しStakeStoneやStory Protocolからの報酬とともにAria Pointsが付与されました。
◼️今後
公開されているロードマップはありませんが、まずIP資産の拡充について、2025年中に「追加のIPローンチを複数計画している」と述べており、音楽以外の分野(アート、映画/テレビ)への展開を進める予定です。
音楽分野でも先ほど説明したK-POPの大規模カタログをトークン化するAria PRIMEが始動したばかりで、これを他の地域・ジャンル(米国の往年のヒット曲や映画サントラ等)にも広げる可能性があります。
技術面では「Programmable IP」の実現がキーワードになっています。具体的には、現在の基盤作り(IP権利をオンチェーン化し収益分配する仕組み)に続き、2025年以降はスマートコントラクトによるIPライセンス・リミックス許諾プラットフォームを構築する計画です。これが実現すれば、例えばAria上のトークン保有者限定で楽曲のリミックス制作コンペを開き、自動的に原権利者とリミキサーに収益配分するといった新しい参加型エコシステムが可能になります。
💬クリプトの価値は民主化にある
最後は総括を考察です。
仕組み自体はとてもわかりやすいですが、かなり画期的なプロトコルだと思います。IPをトークン化するStoryを象徴するプロトコルだと思いますし、何よりも世界トップクラスのアセットを仕入れることができている点がすごいです。
しかも、KYC無しで参加できます。ただ、世界的なアセットを取り扱っていることもあり規制には十分に注意しているようで、以下の国のユーザーはアクセスができないと書かれています。
Belarus
Cuba
Iran
North Korea
Russia
Syria
Ukraine
United Kingdom
United States
また、きちんと$APLに対しての開示情報が記載されています。
超ざっくりまとめると以下のようになっています。
$APLは音楽IPカタログの収益に紐づくトークンで、Vault保有量に応じてで請求可能。総供給は10,947,535で固定。
所有権は一切付与されず、ロイヤルティ関連の権利のみ。ステーキングでLST($stAPL)を受け取り、Buybackで増える$APLを請求できる設計。
米国証券法等に非登録(Reg S前提)で、米・英など複数国は利用不可。税務では米国源泉30%自動控除、状況によりKYC提出要求あり。高リスクかつ無担保・劣後。
で、少し長くなりますがここはかなり勉強になりそうなので、主要ポイントに絞ってもう少し補足します。
1) Claim
対象:StakeStone VaultのVault Token保有者。
供給:$APL総供給は10,947,535で固定(2025-05-16 12:00 ET時点のVault保有量に基づく配分)。
期間:2025-06-25 18:00 ET 〜 2025-12-25 18:00 ET(会社裁量で変更・終了可)。
支払い:追加代金は不要(ガス代のみ)。
重要:会社はいつでも本Claimや条項(含むStaking/Buyback)を変更可能。
2) 権利内容
カタログの所有権は一切付与されない。
APL Catalog(48曲の一部権利等)は会社が排他的に所有。
保有者に与えられるのはロイヤルティに関する一定の権利のみ。
収益源:ストリーミング、ライセンス、パブリック・パフォーマンス等を想定(発生保証なし)。
3) ステーキング
コントラクト:0x73d600Db8E7bea28a99AED83c2B62a7Ea35ac477。
仕組み:$APLをステークすると$stAPL(LST)を1:1(開始時点)で受領。
Buybackで追加ステークされる$APLが増えると、交換比率(Exchange Rate)が変動。
アンステーク時に、その時点の比率に基づき蓄積した$APLを受領。
アンステーク時にKYC等の本人確認資料の提出を要求され得る(会社裁量)。
4) Buyback Program
会社は受領したロイヤルティ(税引後・費用差引後)で市場から$APLを買い戻し、そのPurchased Tokensをステーキング契約へ投入し、LST保有者が請求可能に。
成功・流動性の保証なし/いつでも中止可。将来の管理手数料導入の可能性あり。
5) 流動性・取引
会社は$APLやLSTの流動性プールを作り、継続的に流動性提供・売買を行う計画(自社MMが入る)。→専用の会社もBIVに設立されています。
6) 税務・KYC 等
Buybackに関連して米IRSへ30%自動源泉徴収(Tax Withholding)。
保有者は自己の税務申告・還付請求を自ら対応。
技術的リスクは自己責任(“as is”)。非対応ウォレットへの送付等も自己責任。
会社はKYC提出を要求できる(特にアンステーク時など、規制・税務・コンプラの必要に応じて)。
7) 優先順位・リスク
$APLに基づく会社の義務は一般無担保債務で、担保付債務・優先債権等が優先。
破綻時は元本割れ・全損の可能性。
ボラティリティ・非流動性が高く、公開市場が存在しない/薄い可能性。
規約・プログラムは会社裁量で変更可能。
8) 利用制限国(居住者は不可)
ベラルーシ、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア、シリア、ウクライナ、英国、米国。
米国人(Reg Sの“U.S. Person”)への提供・販売は不可。
諸外国の証券規制に関しても未登録のまま適用除外(Reg S等)を活用。
詳細は元リンクをご覧ください。
ただ、うまく規制を回避して提供しているように思います。当然、開示情報を見ると会社側の裁量で変更できる部分も多く、一部トラストフルな仕組みでもありますが、現状の法律を考えるとこれは仕方ない部分も多いと思います。
そして、こういった仕組みが日本でも始まるとかなり面白そうですね。日本はIP大国ですので、音楽・アニメ・漫画などアセットは無限にあります。これらへ投資できる存在としてKYC無しでアクセスできるのだとしたら、一般ユーザーが新しい収益へアクセスできる機会が広がります。
個人的にはクリプトの大きな価値の1つは民主化にあると思っています。DeFiは特にわかりやすく、そもそもの金融へのアクセスを保証し、これまでクローズドにされていたあらゆる機会へ誰もがどこに住んでいてもアクセスできます。RWAのトークン化はその延長線上にあり、これまでブラックボックスだった投資機会を民主化します。
IP投資もその1つで、例えば映画にしても製作委員会に個人が入ることは不可能でしたが、このプロトコルを使えばそこに個人が参加することもできるかもしれません。
そして、これは単なる投資以上の価値を持つ推し活的な存在になりそうで、非常に大きな可能性も感じます。次のトークン化を楽しみにしています。
以上、「Aria Protocol」のリサーチでした!
🔗参考:HP / DOC / X
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