おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は「ZetaChain」についてリサーチしました。
«目次»
1、ZetaChain とは?
- ブロックチェーン業界の相互運用性の現状
- ZetaChainの概要
- 技術的背景
- 展望
2、オムニチェーンがデフォルトになるか
ZetaChain とは?
ZetaChainは、すべてのブロックチェーンでの相互運用を可能にするdappsを簡単に構築できるL1ブロックチェーンです。世界初で唯一のチェーンとなっています。
■ブロックチェーン業界の相互運用性の現状
現在、web3の世界では100以上のパブリックブロックチェーンが存在しており、それぞれのブロックチェーンが分断(サイロ化)しています。イーサリアム上に構築されたDappsとSolana上で構築されたdappsでは相互運用性がありません。
これに対応するために「クロスチェーン」や「マルチチェーン」対応が取られることが増えてきました。(網羅性や細かい技術的な定義を抜きにして)代表的な例としては、ブリッジ系かCosmosはPolkadotのようなBlockchain間を繋ぐ(Blockchain to Blockchain)ブロックチェーンがソリューションとして挙げられます。
しかし、ブリッジ系のプロダクトにはセキュリティ上大きな課題があります。
ブリッジを簡単に解説すると、例えばETHチェーンから1ETHをBNBチェーンに移行したいとします。その時、ETHチェーン側に1ETHをロックし、BNBチェーン側で1WETHが貰える仕組みです。イメージは換金所でしょうか。資産をチェーン間で移動させているのではなく、お互いのチェーン上に資産を予め保有しておき、送金先の資産と対応する分の資産と受取先で渡すという仕組みです。
この仕組み上、どうしても一定の資産を保有し続ける必要があり、そこが狙われ、ハッキング被害にあっているブリッジ系のプロジェクトは多数存在します。
もう一方のCosmosなどはIBCプロジェクトとして、Cosmos上に多数のブロックチェーンを展開することで相互運用性を確保しようとしていますが、これはあくまでCosmos上に展開されたチェーンのみとなります。
これらを解決するためのプロトコルでLayerZero等も生まれていますが、それにも対応できるチェーンに制限があります。
つまり、真の意味ですべてのチェーンに安心したセキュリティで、分散型の運営で対応できるソリューションはまだ生まれていません。
(※ZetaChainのWPやHPの表現を参考にして書いているので、ここで表現されているプロジェクトからの反論や現時点で新しく生まれたプロジェクトもあるかもしれませんので、その前提でご覧ください。)
■ZetaChainの概要
ZetaChainはすべてのチェーンとの相互運用性を持つ”オムニチェーン”を実現するブロックチェーンです。ZetaChain上でdappsを構築すればすべてのチェーンに互換性を持つオムニdapps(odapps)となります。
また、ビットコインやドージコインなどのスマートコントラクト機能を持たないチェーンとの連携も可能で、ZetaChain側からの操作によって、ビットコインなどにスマートコントラクト機能を持たせる実装も可能になります。
開発者が余計な開発をせずにオムニチェーン対応できることもメリットですが、最大のメリットはユーザー側にあります。ユーザーはすべての資産が単一のチェーンにあるかのような体験をすることができます。
例えば、以下のようなことが可能になります。
オムニチェーンDAOツール
クロスチェーンAMM DEX
オムニチェーン NFT
クロスチェーンの貸出と借入
オムニチェーン ID
■技術的背景
その技術的背景も少しだけ解説します。(詳細はWPをご覧ください)
ZetaChainはCosmos SDKで構築され、コンセンサスエンジンにはTendermintを採用するL1ブロックチェーンです。コンセンサスアルゴリズムはPoSです。
ZetaCore・ZetaVM・ZetaClientという3層構造になっており、ZetaClientの中にはObserverとTSS Signerという機能が存在します。Observerは、外部チェーンのトランザクションなどを監視する役割を担い、TSS Signerは外部チェーンのトランザクションに安全に署名をする役割を担います。外部チェーンのトランザクションへの署名は、閾値署名スキーム(TSS)とマルチパーティ計算(MPC)を利用します。
また、ZetaChainではodappsを実現するために、「オムニチェーンスマートコントラクト」と「オムニチェーンメッセージパッシング」という2つの実装が可能です。
オムニチェーンスマートコントラクトはZetaChain上のスマートコントラクトを通じて外部チェーンを操作できる仕組みで、オムニチェーンメッセージパッシングは、チェーン間で確実かつ安全にメッセージ(データや値)を渡すことができる仕組みです。
これらの実現のために、ZetaChainにはZRC-20という規格が存在し、ETHもBTCもすべてのコインがZetaChain上ではZRC-20で扱われます。これによって、開発者はZetaChain上でZRC-20に対応したスマートコントラクトを構築することで、すべてのチェーンに対応するスマートコントラクトの稼働が可能になります。
さらに、トークン間のブリッジも安心して行うことが可能です。ZetaChainはネイティブトークン「$ZETA」を発行しています。このトークンがガス代やバリデーター報酬などにも活用されますが、トークンのブリッジにも活用されます。
ZetaChainのブリッジは、ラッピングすることなくトークンの移動が可能になります。トークン移動の際に、ラップするべき資産をバーンさせ、送金先のチェーン上にバーンさせた資産に対応するトークンを新しく生成します。
これによって資産を保有し続けることがなくなるので、ハッキングリスクが大きく減少します。また、スムーズで安全なトークンの移動を可能にします。
■展望
ZetaChainは現在、テストネット上で稼働しています。
その注目度は非常に高く、2022年でテストネットユーザー数が74万人越え、トランザクションは3,500万回実行されました。また、Twitterのフォロワー数も60万人を超え、そのコミュニティの熱量は非常に高いです。
まだ、メインネットの公開日は明かしていませんが、とても注目されているプロジェクトです。
オムニチェーンがデフォルトになるか
ここからはリサーチした感想を書きます。
最近のdappsはマルチチェーン対応がマストになってきました。1つのチェーンだけでは汎用性が低く、ユーザビリティも良くありません。しかし、まだまだマルチチェーン対応は個別開発を入れる時間やセキュリティコストもかかるので、主要チェーンが少しずつ追加されていくレベルでした。
しかし、このZetaChainを利用すればそれが一つの開発で実現します。IOSとAndroidアプリの開発を同時にできるFlutterというプログラミング言語があるのですが、それみたいです。
web3の世界は徐々に技術革新からユーザビリティの向上の世界へと足を踏み入れ始めており、革新的な技術をいかに使いやすく安全に提供するかというフェーズに入ってきています。
結局、最適なユーザービリティを提供した瞬間に技術は爆発的に普及します。iPhoneやChatGPTを見てわかる通り、誰でもスムーズに使えるプロダクトまで落とし込むことが必須です。
ZetaChainを見ていると、ブロックチェーン間の相互運用性のなさを解決する大きな一手となりそうです。この先メインネットがローンチされ、影響力を増してくると、さらに追随するプロジェクトも生まれそうなので、1,2年後のdappsはオムニチェーンが当たり前になっているかもしれません。
とてもワクワクするプロジェクトでした。
リサーチ内容が面白いと思った方や勉強になったと思った方はぜひいいねやコメント、SNSでのシェアにご協力いただけると幸いです。ご覧いただき、ありがとうございました!
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