【Walrus】Sui開発会社が作る次世代型の分散型ストレージ / @WalrusProtocol

Suiが力を入れる新時代の分散型ストレージプロジェクトです。

おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。

本日はくりぷとくりぷとさんによる寄稿記事です。前回のSui完全レビューに続き、Suiエコシステムにおける最新注目プロジェクト「Walrus」の解説です。

前提：なぜ新しい分散型ストレージが必要なのか？
1.概要
2.Walusの主要技術
3.WalrusとSuiの統合
4.トークノミクス
5.まとめ

前提：なぜ新しい分散型ストレージが必要なのか？

デジタル時代において、データは新たな石油とも呼ばれ、その価値と利用の仕方が未来を形作っています。しかし、現在のインターネット環境下では、データの所有と管理に多くの課題が存在します。データは中央集権的なサーバーに保管され、個々のユーザーが真の意味でのコントロールを持つことはほとんどありません。これにより、プライバシーの侵害やデータの改ざん、アクセスの制限といった問題が生じています。

分散型ストレージ技術は、この問題に対する一つの解決策を提供します。しかし、既存の分散型ストレージソリューション、例えばIPFS（InterPlanetary File System）では、保存されるデータが複数のノードに分散され、アクセスするたびにネットワーク全体からデータを検索する必要があります。分散されたノードからデータを探すため、大容量ファイルや頻繁にアクセスされるデータに対しては処理が複雑になり、パフォーマンスが低下します。また、IPFSでは一度保存されたデータが保持されるかどうかはノード側の管理に依存するため、ノードを維持しないと、データが失われます。それを防ぐためにFilecoinの仕組みが導入されているわけですが、ノードオペレーターにとってインセンティブが魅力的でなくなってしまうと、冗長性の点でリスクが高い仕組みなのです。

こうした背景から、新しいタイプの分散型ストレージシステム「Walrus」の必要性が浮かび上がります。Walrusはこれらの問題を解決するために設計され、より高速で効率的なデータ管理を可能にします。この記事では、この新しい分散型ストレージシステムについて詳しく解説します。

1.概要

次世代型の分散型ストレージソリューション

Walrusは、Sui開発企業であるMysten Labsが開発したデータのセキュリティとアクセシビリティを向上させるために特別に設計された次世代型の分散型ストレージソリューションです。この技術は、中央集権的なストレージシステムの持つ脆弱性を排除し、ユーザーに真のデータ主権を提供します。

Walrusの基本的な強みとしては、Sui同様に高速処理とスケーラビリティの高さが挙げられます。並列処理と分散インデックスの採用により、ネットワーク内でのデータの保存、インデックスやキャッシュ機能を並列的に処理し、高いスケーラビリティを実現しています。

革新的な「Red Stuff」エンコーディングシステム

Walrusの核となる技術は「Red Stuff」と呼ばれるエンコーディングシステムです。このシステムは、データを効率的に小さな断片に分割し、ネットワーク上の複数のノードに分散させます。たとえデータの一部が失われたとしても、残りの断片から迅速に元のデータを復元する能力を持っています。

IPFSでは、データが保持される期間は人間のノード管理に依存しており、それが果たされないと保存されたデータが失われる可能性がある一方で、Walrusでは、このRed Stuffの仕組みにより、データが自動で冗長化されていると言えます。

また、この仕組みは冗長性を高めるだけでなく、同時に複数のノードからデータを取得できるため、データのアクセス速度の向上にも寄与しています。

Suiブロックチェーンとの統合

さらに、WalrusはSuiブロックチェーン技術と密接に統合されています。この統合により、データは単なる静的情報ではなく、プログラム可能な資産として機能します。開発者は、データを直接操作し、条件に基づいて自動的にアクションをトリガーする新しいタイプのデジタルサービスやアプリケーションを創出することが可能です。この革新は、データ管理の柔軟性を大幅に拡大し、分散型アプリケーションの開発を加速します。

2.Walusの主要技術

Walrusは、分散型ストレージアーキテクチャと、データ整合性とアクセスの効率を最大化するために設計された革新的なエンコーディングシステムで注目を集めています。このセクションでは、Walrusの技術的な構造とその機能的な要素について掘り下げます。