おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
毎週土日の昼には基礎単語解説記事をお届けします。各記事をサクッと読めるような文量にして、改めて振り返れる、また勉強できるような記事を目指していきます。
本日は「Verification」です。
ぜひ最後までご覧ください!
導入
私たちは日常的に、銀行残高や取引履歴、決済完了の表示を「正しいもの」として受け入れています。スマートフォンの画面に表示される数字を見て、支払いが完了したと安心し、通帳に記載された金額を自分の資産だと信じています。しかしそれは、本当に正しいのでしょうか。
web3が掲げる「Trustless(信頼不要)」という思想は、人を信じなくなることではありません。それは、誰もが自分で確かめられる状態、つまり検証可能性を、社会の前提に据え直す試みです。
私たちがこれまで「信頼」という名のもとに委ねてきた判断を、誰もが確認できる透明な仕組みに置き換える。それがweb3における検証の本質です。
私たちは普段、何を「信じて」いるのか
銀行のATMで残高を確認するとき、私たちはその数字が正しいと信じています。オンラインショッピングで決済ボタンを押したとき、「支払いが完了しました」という画面を見て安心します。なぜでしょうか。それは、銀行や決済会社という組織を信頼しているからです。
この信頼は、何によって成り立っているのでしょうか。それは、組織のブランド、長年の実績、法的な規制、そして何か問題が起きたときの補償制度です。つまり、私たち利用者は、自分で取引内容を一つひとつ確認する手間を省略し、その代わりに組織を信じるというコストカットの判断をしていると言えます。
信頼とは本質的に、確認コストを省略する仕組みです。
毎回すべてを自分で検証していたら、日常生活は回りません。だから私たちは、信頼できる主体に判断を委ね、効率を優先してきました。しかしこの構造には、決定的な弱点があります。それは、信頼する相手が間違えたとき、あるいは悪意を持ったとき、私たちには確かめる手段がないということです。
銀行の残高表示が間違っていたら、私たちはそれを証明できるでしょうか。決済会社が不正に資金を操作していたら、それを発見できるでしょうか。多くの場合、答えは「いいえ」です。なぜなら、データそのものは組織の内部にあり、私たちには見えないからです。
Web2における「正しさ」の決まり方
Web2の世界、つまり現代のインターネットサービスの多くは、中央集権的なシステムで動いています。データは企業のサーバーに保管され、そのデータの正しさは企業が保証します。Google、Amazon、Meta、銀行、決済会社、これらの企業は、巨大なデータセンターを持ち、そこにすべての情報を集約しています。
この構造において、「正しさ」は管理者が決めます。銀行があなたの口座残高は10万円だと言えば、それが10万円です。Amazonがあなたの注文履歴にこの商品が含まれていると言えば、それが事実です。利用者であるあなたには、その判断を覆す手段がありません。
もちろん、問題が起きたときには救済措置があります。間違った請求があれば問い合わせができますし、不正があれば法的な対処も可能です。しかしそれは、あくまで事後の対応です。そして何より、問題が起きたこと自体を証明する責任は、多くの場合、利用者側にあります。
この構造が機能してきたのは、企業が信頼に値すると多くの人が判断してきたからです。しかし、データ漏洩、不正アクセス、企業の倒産、システムトラブル。信頼が揺らぐ出来事は、決して珍しくありません。そして一度信頼が崩れたとき、その被害は甚大です。なぜなら、私たちはすべてを委ねてしまっているからです。
web3が問い直した前提
web3は「管理者が正しいとは限らないのではないか」という問いを投げかけています。
これは、企業や組織を疑えという話ではありません。どんなに善意の組織であっても、間違いは起こります。システムにはバグがあり、人間にはミスがあり、時には悪意を持った人物が内部に紛れ込むこともあります。問題は、そうした不正や改ざんが起きたときに、それを発見し、証明する手段が利用者側にないことです。
web3の思想は、ここに根本的な転換をもたらしました。それは、「信じる主体」を置かないという選択です。特定の企業やサーバーに正しさの判断を委ねるのではなく、誰もが確認できる公開された記録によって、正しさを判断する。これが、web3における検証可能性の核心です。
ビットコインの誕生は、この思想の具現化でした。中央銀行や金融機関を信じなくても、誰もがブロックチェーン上の記録を確認することで、取引の正当性を検証できる。それは、信頼という曖昧なものではなく、数学的な証明という客観的な基準で、正しさを判断する仕組みでした。
検証できるとは、どういう状態か
では、「検証できる」とは具体的にどういう状態なのでしょうか。web3において、それは三つの要素で成り立っています。
第一に、トランザクション履歴を誰でも確認できることです。ブロックチェーンは、すべての取引記録が時系列順に記録された公開台帳です。あなたの取引も、他人の取引も、すべて同じ台帳に記録され、誰もがその内容を見ることができます。特別な権限は必要ありません。インターネットに接続できる環境があれば、世界中の誰もが、いつでも、すべての記録を確認できます。
第二に、ルールがコードとして公開されていることです。web3のシステム、特にスマートコントラクトは、その動作ルールがプログラムコードとして記述され、公開されています。つまり、「このシステムはどう動くのか」を、誰もが読んで確認できます。これは、銀行の内部システムがどう動いているかを外部の人間が知ることができないのとは、大きく異なります。
第三に、特別な権限を持つ存在がいないことです。Web2のシステムには、必ず管理者がいます。データベースを書き換えられる権限、ユーザーアカウントを停止できる権限、システムの動作を変更できる権限。それらは管理者だけが持っています。しかしweb3では、そうした特権的な存在を排除しようとします。誰もが同じルールに従い、誰も一方的に変更を加えることができない。それが理想的な状態です。
なぜ検証可能性が重要なのか
検証可能性が重要な理由は、不正を「防ぐ」ためではなく、不正が「バレる」状態を作るためです。この区別は重要です。
どんなシステムにも、不正の可能性はあります。完璧なセキュリティは存在しません。しかし、不正がすぐにバレるとわかっていれば、不正を試みる人は減ります。これが、透明性による抑止力です。
ブロックチェーンでは、一度記録された取引を後から書き換えることは、技術的には可能です。しかし、それを実行するには膨大な計算資源が必要であり、そして何より、その改ざんはすぐに他の参加者にバレます。なぜなら、すべての記録が公開されているからです。改ざんのコストとリスクが、改ざんによる利益を大きく上回る。だから、不正は起きにくいのです。
さらに重要なのは、信頼が崩れた瞬間の被害を最小化する設計だということです。
Web2のシステムでは、企業が倒産したり、サービスが終了したりすると、データはすべて失われます。しかしweb3では、データは分散されており、特定の企業に依存していません。サービス提供者がいなくなっても、ブロックチェーン上の記録は残り続けます。
これは、信頼できる主体に依存しないという意味です。信頼は、いつか裏切られる可能性があります。企業は倒産し、システムは故障し、人は間違えます。しかし、検証可能なシステムでは、その被害を局所化できます。一つの失敗が、すべてを失わせることはありません。
検証には必ずコストがかかる
しかし、検証可能性には代償があります。それは、コストです。
ブロックチェーンは、すべての取引記録を全参加者が保持します。つまり、データは何千、何万ものコンピューターに複製されます。これは、中央サーバーひとつにデータを保存するよりも、はるかに多くのストレージを消費します。
また、取引の正当性を検証するためには、計算が必要です。ビットコインのマイニングは、その最たる例です。膨大な電力を使って計算を行い、それによって取引の正当性を保証しています。これは、銀行のサーバーが取引を処理するよりも、はるかに多くのエネルギーを消費します。
さらに、時間もかかります。ブロックチェーンでは、取引が承認されるまでに一定の時間が必要です。ビットコインなら約10分、イーサリアムでも十数秒。クレジットカードの決済が瞬時に完了するのに比べれば、明らかに遅いです。
なぜこれほどコストがかかるのでしょうか。それは、検証可能性を実現するためには、同じ作業を複数の主体が独立して行う必要があるからです。中央サーバーなら一度の処理で済むことを、何千ものノードが繰り返し実行する。これが、分散システムの本質的なコストです。
web3がWeb2よりも速くも安くもならないのは、バグや欠陥ではありません。それは、検証可能性とスケーラビリティの間にある、根本的なトレードオフです。
すべてを中央で管理すれば効率的ですが、検証できません。分散して検証可能にすれば、効率は落ちます。web3は、効率を犠牲にしても検証可能性を優先するという選択をしています。
「信じなくていい」ことの責任
web3は、「信じなくていい」自由を与えました。しかしその自由には、責任が伴います。
銀行に口座を持つということは、銀行にすべてを委ねるということです。パスワードを忘れても、銀行に行けば本人確認をして再発行してもらえます。不正な取引があれば、銀行が補償してくれることもあります。これは、管理者がいることの利点です。
しかしweb3では、自分で秘密鍵を管理しなければなりません。秘密鍵を失えば、資産は永遠に失われます。間違ったアドレスに送金すれば、取り戻すことはできません。スマートコントラクトにバグがあれば、資産を失うこともあります。そして誰も、それを補償してくれません。
これは、厳しい世界です。しかし、これこそが「自分で確かめられる」ということの本質です。誰かに守ってもらうのではなく、自分で確かめ、自分で判断する。その自由と引き換えに、利用者は責任を引き受けなければなりません。
そのためには、理解が必要です。ブロックチェーンとは何か、トランザクションとは何か、スマートコントラクトとは何か。これらを理解しなければ、検証することはできません。web3は、ユーザーに高度な知識を求めます。
まとめ
web3は、人間を信用しない冷たい世界ではありません。それは、誰かを信じなくても成立する構造を用意することで、信頼が裏切られたときの被害を最小化しようとしている試みです。
検証可能性とは、自由と責任を同時に引き受けるための土台です。誰もが自分で確かめられる。誰も特権的な立場を持たない。すべてが透明で、すべてが記録される状態を意味します。
検証できるということは、疑うことではなく、確かめられることです。誰かを盲目的に信じるのではなく、誰もが確かめられる状態を作ることが、web3が目指す「trustless」の真の意味です。
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