おはようございます。
web3 researcherの三井です。
普段は特定のプロジェクトについてリサーチして分析、考察を載せているのですが、週1くらいは、今までリサーチしてきて感じたことを書いてみます。
今日は「DAO」について。
«目次»
1、前提
2、うまくいってるDAOは少ない
3、DAOの失敗理由
4、じゃあどうすればいいのか
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前提
まずは大前提として、僕がどの立場でこの考察をしているのかについての注意書きです。
すでにDAOを成功させた第一人者ではないので、いろいろなDAOを見たり、ニュースを見ながらの考察です。
DAO運営はしていませんが、数百人のコミュニティーの立ち上げ、運営はしてきました。自分で起業家として組織も作ってきました。
少しDAOへの批判的なところもあるかもしれませんが、僕はweb3の思想が大好きだし、その中でも特にDAOの可能性にワクワクしまくってます。自分で今後作っていくための考察記事です。
また、人それぞれDAOの定義や言葉の定義も違うので、誤解を生む表現があるかもしれません。こんな観点もあるんだくらいで読んでもらえればと思います。
うまくいっているDAOは少ない
世界的に見ても、成功しているDAOの例はあまり聞きません。何を持って”成功か”という細かいツッコミはありつつ、やはりDAOも組織である以上、掲げたビジョン達成に向けて進めているのか否か、が成功の基準にはなります。
もちろん、法律的な問題で完全なるDAOが作れないとか、最初は中央集権で今後に向けて分散化している最中とか、そういった現実はあるので、現在うまくいっていないからDAOはダメだと言うつもりはありません。世界中の天才たちがフルコミットしているので、純粋に時間の問題な気もしてます。
その中で、現在成功しているDAOの例として、ビットコインが挙げられます。完全分散化された組織で、止まることなくビジョンに対して動き続けています。すごい。
そんな例もあり、ここ最近は「ビットコインなどインフラレイヤーのDAOはうまくいくけど、サービスなどプロジェクト単位のDAOは成功するのだろうか?」ということが言われています。
実際にDAO化してみたけど、全然うまくいかずにやっぱり中央集権に戻して、一旦はそれで進めていくという海外プロジェクトの例も多数聞きます。
前置きが長くなりましたが、この記事では、そんな事例も参考にしつつ、DAOがうまくいかない理由について考察していきます。
DAOの失敗理由
DAOが成功しない理由を5つ考えてみました。
DAO=コミュニティーだと思っている(=そもそもの認識が違う)
なんでもDAOを作ることが正解だと思っている(=そもそもの認識が違う)
参加者の善意に頼った仕組みでDAOを回そうとしている(=ルール設計を間違っている)
参加者の利益とプロジェクトの利益が合致していない(=ルール設計・初期構想が間違っている)
DAOで議論すべきコンテンツがあまりない(=何をDAOにするかの向き不向きがある)
一つずつ解説していきます。
○DAO=コミュニティーだと思っている
言葉の定義を揃える必要がありますが、DAO=自律分散型”組織”です。なので、コミュニティーではなく組織である認識を持つことが必要です。
DAOは今までの知識が通用しない全く新しい概念ではなく、今までの延長線上の概念です。つまり、組織の原則は当てはまるはずです。
組織というのは特定の目的のために集まった集団です。会社組織であればビジョン達成のための集団です。DAOもそうです。DAOには必ずビジョンが必要です。コミュニティー=DAOだと誤解している人は、集めて交流することが目的になっているので、ビジョンがありません。
ビジョンがないとDAOはうまくいきません。なぜなら、参加者が何を頑張ればいいのかわからないからです。
この失敗例は、そもそもDAOの認識が間違っているパターンです。
○なんでもDAOを作ることが正解だと思っている
繰り返しになりますが、DAOの成功はビジョン達成(近づく)です。もっとシビアに言えば、成し遂げたビジョンがあった時に、中央集権(例えば株式会社)で達成する時間とお金と、DAOで達成する時間とお金、どっちが早かった?となった時にDAOが勝利しなければ本当に成功とは言えません。
例えば、途上国の貧困問題解決のDAOを作ったとします。10年かけて平均所得が100万円向上した時、確かに貧困問題解決には近づいているので成功のように見えます。ただ、それを株式会社で取り組んだときに3年でそこまでいけたとしたら、果たしてこのDAOは意味があったのか?という話になってきます。シビアに、冷静に。
途上国の人からすれば、同じ状態になるのに、10年後と3年後、どっちが良いかと言われたら、確実に3年後です。10年あればもっと大きなビジョンが達成できるはずです。
僕はDAOが好きですし、とりあえずDAO作ってみたいなーと思ってるDAOファンの一人です。ただ、一起業家としてDAOを見た時に、本質的に取り組むべきことはビジョンの達成(課題の解決)であり、DAOはその手段でしかないと思うんです。本当にDAOを使うことで、その課題が解決されるのかを他の選択肢と比べて考えるべきです。
もちろん、分散化とか、透明な意思決定であるとか、そういうDAOにしかない特徴もあります。解決の最中で中央集権では不正があるかもしれないし、従業員への分配も少ないかもしれない。でも、そういう違いも細かく比較しつつ、DAOはあくまで手段であり、解決する課題のターゲットに対してどっちが得なのか、嬉しいのか、という目線は忘れてはいけないと感じています。
○参加者の善意に頼った仕組みでDAOを回そうとしている
ここは個人的にかなり現在のDAOの回し方で違和感として感じることです。DAOと謳って人を集め、ちょっとしたNFTを配布すれば、参加者が動くと思っている人が多いです。
初動で動く人はいるかもしれませんが、しっかりと参加者のインセンティブ設計をしなければ人は動きません。DAO=組織の前提で考えれば、社員に対して「給料0円だけどうちの会社好きなんだよね!頑張ってね!」と言ってるようなものです。
DAOに株式会社の話を持ち込むなよという意見もわかるのですが、ここは株式会社云々ではなく、”人が本能的にどう動くのか”という話なので、ちゃんと学び、設計する必要があります。
善意に頼った施策は絶対にうまくいきません。例えば、国から「節電してください!」と言われても、動く人はごく少数ですよね。でも「節電に協力してくれたらXX円あげます」と言われたら協力する人が増えるはずです。
これと同様で、善意だけでほとんどの人は動きません。しっかりと参加者の合理的な理由を設計してあげることがDAO運営には必須となってきます。
○参加者の利益とプロジェクトの利益が合致していない
上で書いた「善意に頼った仕組みはうまくいかないから参加者の合理を設計した方がよい」がクリアされた後の注意点です。
実はここがDAO成功の大きな鍵になるのではないか?と思っています。
商用利用OKとか、二次創作OKはDAOの物凄く画期的なことで、世界を変えていくだろうなと思っています。勝手に提案して、投票で可決されれば、プロジェクトの予算を使って何かが出来ることも凄まじい仕組みです。
ただ、気をつけなければいけないことは、「参加者の利益とプロジェクトの利益が違うことが往々にして存在する」という点です。
善意に頼ったDAOはうまくいかないから、インセンティブ設計をしっかり行う。参加者それぞれが自分の利益のために動いていたら、結果的にプロジェクトがガンガン進んでいく、DAOの理想系はこれです。(思想に共感してるから参加してるとは思うのですが、わかりやすくするための説明からは省いてます。)
ただ、参加者の合理性だけを設計しているときに陥るのが、参加者は短期的な利益が得られて嬉しいが、プロジェクト全体の利益にあまり繋がっておらず、プロジェクト自体が失速してしまっている、、という現象です。
例えば、株式会社の従業員に対して、うちのブランドのロゴ使って、勝手に何か作って売ってもいいよと言ったとします。そのブランドファンからすれば、新しい商品が出れば買うでしょうし、従業員も利益が得られて嬉しいです。
ただ、これはブランドが長い時間をかけて育んできたブランディングや信用、市場に流通している個数調整(需要と供給の調整による価格)を壊してしまう可能性が大いにあります。なので、従業員のこの行為は、今までブランドの信用残高を切り崩して利益を得ているだけで、ブランド全体の長期的な進行を阻害している行為になります。
DAOでもこれは確実に起こります。それは参加者のせいではなく、初期のルール設定が間違っています。仮に、参加者全員が経営者目線を持ち、自分が短期的に損をしてもプロジェクト全体のことを考える能力と思想を持ち合わせていれば、何もルールを設定しなくても問題ないかもしれません。ただ、そんなことはあり得ません。善意に頼る仕組みと同じですね。
なので、DAOの最初のルール設計で、個人の利益につながる行動が結果的にプロジェクト全体の利益になるような設計をしておく必要があります。逆に、それさえ設計できれば、参加者の利益にもつながり、プロジェクトも進むから、さらに参加者の利益が増える、という好循環になっていきます。
これをしている最大の成功例がビットコインですよね。参加者全員が自分の利益のために動くことが、結果的にビットコインが止まらずに動き続けることに繋がっています。
インフラレイヤー以外のDAOが成功しづらいのは、実はここの設計をきちんと行えていないからなのでは、と思っています。
○DAOで議論すべきコンテンツがあまりない
ここも凄く大切で、そもそもDAOに向いているサービスと向いていないサービスがあるのではないか、という話です。厳密に言えば、どこをDAOにするのかをちゃんと考えた方がいいって話ですね。
DAOを超ざっくり言えば、みんなでお金出し合って、その使い道をみんなで決めるって感じじゃないですか。ただこれ、使い道がそんなにない場合、全然投票盛り上がらないし、頑張りしろがありません。
例えば、僕は少し前に「WebサービスをDAOで運営してみよう!」と思い、構想してみて(完全なDAOではなかったですが)知り合いを集めてテストしてみたことがあります。
結果、全然楽しくなかったんですよね、、。そもそもWebサービスの改善って地味だし、提案→決議→開発→結果、このプロセスがそんなに盛り上がらない、、。
ここはまだ少し言語化しきれていませんが、DAOのプロセスが盛り上がるものか、楽しそうか、この観点は実は大切なのでは?と思っています。楽しくない&進捗がわかりづらいor進捗が地味で楽しみづらいプロジェクトに人は集まってこないです。
じゃあどうすればいいのか
解決策、うまくいくDAOを作るにはこれらの失敗理由を解消する動きをする必要があります。そう考えると、DAOの運営にはかなり幅広い知識や思考が必要となってきます。web3の知識だけでなく、組織論や行動心理学、組織運営論やコミュニティー運営論などなど、です。
とはいえ、まだDAOの概念が生まれて日が浅いので、誰かが完全に成功させて、それが学びとして蓄積されていくのだとは思います。
個人的にもやってみたいDAOの形のイメージはあるので、その初期成功例の一つに自分がなれるように、今後も実践とリサーチをしていきます。
以上、本日はDAOについての考察でした。
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おわり。
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