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「分散型ストレージ」を理解するための『クラウドストレージの歴史と仕組み』【後編】
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「分散型ストレージ」を理解するための『クラウドストレージの歴史と仕組み』【後編】

分散型ストレージの概要と解決する課題を紹介します。

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mitsui
Apr 06, 2025
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「分散型ストレージ」を理解するための『クラウドストレージの歴史と仕組み』【後編】
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こんにちは。
web3リサーチャーのmitsuiです。

本日はweb3の基礎の基礎レポートということで「分散型ストレージ」を理解するための『クラウドストレージの歴史と仕組み』【後編】です。

ぜひ最後までご覧ください!

はじめに
前編の振り返り:クラウドストレージの課題
分散型ストレージとは?
代表的な分散型ストレージの仕組み
分散型ストレージが従来のクラウドストレージ課題をどう解決するのか?
分散型ストレージの代表的なユースケースと事例
分散型ストレージの現在の課題と将来的な展望

はじめに

前編では、クラウドストレージがどのように誕生し、なぜ普及し、そしてどのような課題を抱えているのかを詳しく見てきました。オンプレミスからクラウドへと移行したことで、利便性やスケーラビリティは飛躍的に向上しましたが、同時に中央集権的な管理体制にともなうさまざまなリスク――たとえばシングルポイント障害、検閲リスク、データ所有権の曖昧さ、コストの肥大化、そして各国規制への対応の難しさ――が表面化しつつあります。

【後編】では、そうしたクラウドストレージの限界をどのように克服できるのか、そのヒントとして注目されている「分散型ストレージ」を紹介します。

具体的には、web3の基盤技術のひとつともされる分散型ストレージが、中央集権的な構造とはまったく異なる設計思想でデータを保存・管理し、どのように課題を解決していくのかを掘り下げていきます。

代表的なプロトコルとしてはIPFS(InterPlanetary File System)やFilecoinが有名ですが、近年はWalrusのような新興プロトコルも登場し、ブロックチェーンや暗号資産(トークン)のインセンティブ構造と組み合わせて分散型ストレージをさらに進化させようとする動きが活発化しています。

今回は、これらの仕組みを順を追って解説するとともに、分散型ストレージのユースケースや直面している課題、そして今後の展望についても見ていきましょう。

前編の振り返り:クラウドストレージの課題

まずは手短に、前編で整理したクラウドストレージの課題を振り返ります。

1. 中央集権ゆえのリスク

  • シングルポイント障害
    データが大規模なデータセンターに集中しているため、万一その事業者が障害を起こすと、多くのユーザーが一度に影響を受ける。

  • 検閲リスク
    事業者や政府機関がデータアクセスを制御・ブロックできてしまう。

  • 依存度の高さ
    サービス終了や利用規約の変更など、クラウド事業者の一存でユーザーが不利益を被りやすい。

2. セキュリティ・プライバシー問題

  • データ所有権・管理権限の曖昧さ
    実際のサーバー管理はクラウド事業者に委託する形となり、ユーザーが自分のデータを完全にコントロールできない可能性。

  • 暗号化・バックアップの不透明性
    暗号鍵をどこが管理しているのか、削除やバックアップのタイミングが不透明であることなど。

3. コストの肥大化

  • 従量課金制の落とし穴
    利用が増えれば増えるほどコストが上昇し、大規模システムほど負担が大きくなる。

  • データ転送量の課題
    特にグローバル配信など、トラフィックが膨大になると転送料金が高騰しがち。

4. グローバル規制対応の難しさ

  • データローカライゼーション問題
    各国・地域がデータ保管場所やプライバシー法を独自に定めているため、中央集権型クラウドでの運用は対応が煩雑になりやすい。

これらの課題が積み重なった結果、「中央管理者をもたない分散型インフラこそが、次の時代のデータ管理を担うのではないか」という期待が高まりました。

分散型ストレージとは?

基本コンセプト:中央管理者なしでデータを分散管理

分散型ストレージの最大の特徴は、「データを一箇所のサーバーや事業者に集約せず、世界中の複数ノード(参加者)に分散して保存する」点にあります。

これにより、ある特定のノードがダウンしても他のノードからデータにアクセスできるため、システム全体としての可用性が高まります。また、データがネットワーク全体に散らばっているので、中央当局による検閲やブロックが難しくなるというメリットもあります。

さらに、分散型ストレージでは「ユーザー自身が暗号鍵を管理する」アプローチを採用するケースが多く、これによりデータのプライバシーとセキュリティを高い水準で確保できるようになります。

ハッキングによって一度に大量のデータが流出するリスクも軽減され、個々のノードが持つデータ断片だけでは元の情報を復元できないようになっている設計も一般的です。

ブロックチェーン技術との関係性

分散型ストレージとブロックチェーンの関係性は非常に密接です。

ブロックチェーン自体が「分散型台帳」として、取引履歴や契約情報を改ざんできない形でネットワーク全体で共有する仕組みを提供しています。この技術的基盤を利用して、ストレージの提供者や利用者が正しくデータを保存・取得していることを検証し、さらにトークンをインセンティブとして付与することで、ノードの正直な行動を促すことが可能になります。

  • 分散管理
    ブロックチェーンと同様に、ネットワーク参加者全員がデータの一部を管理する形をとる。

  • 暗号化によるセキュリティ強化
    ブロックチェーンの技術では暗号学的手法が多用されるため、データの真正性や秘匿性を高いレベルで確保できる。

  • トークン報酬
    ストレージを提供するノード(プロバイダー)に対して、ブロックチェーン上のトークンで報酬を与えるモデルが一般的。これによって、ノードは正しくデータを保持し続けるインセンティブを得る。

つまり、ブロックチェーンと分散型ストレージは切っても切れない関係にあり、web3時代の基盤技術として両者はお互いを補完し合いながら進化しています。

代表的な分散型ストレージの仕組み

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