おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
毎週土日の昼には基礎単語解説記事をお届けします。各記事をサクッと読めるような文量にして、改めて振り返れる、また勉強できるような記事を目指していきます。
本日は「State」です。
ぜひ最後までご覧ください!
初めに
ブロックチェーンについて学ぶと、多くの人が「ブロックチェーンは取引の履歴をすべて保存している」と理解しようとします。しかし、これは根本的な誤解です。ブロックチェーンの本質を理解するためには、「履歴」と「状態」の違いを正確に認識する必要があります。
あなたがブロックチェーンに1ETHを送信したとき、ブロックチェーンが保存しているのは「2024 年 12 月 26 日 15 時 30 分に 1 ETH を送信した」という履歴ではなく、「このアドレスの現在の残高は X ETH である」という状態です。この違いは、単なる言葉の問題ではなく、ブロックチェーンのアーキテクチャ、スケーラビリティ、セキュリティに直結する根本的な設計思想の違いなのです。
この記事では、Stateという概念を説明します。
State とは何か、なぜそれが重要なのか、そしてそれがブロックチェーン業界の重要な課題にどのようにつながるのかを、丁寧に説明していきます。
State(状態)という言葉の意味と重要性
State という概念は、コンピュータサイエンスの基本的な用語です。日本語では「状態」と訳されます。State とは「今どうなっているか」を表すもので、過去の出来事を記録するものではなく、現在のスナップショットを保持するものです。
具体的な例を挙げます。ゲームのセーブデータを思い浮かべてください。セーブファイルに保存されるのは、プレイヤーが過去に下したすべての選択肢や、経験した全てのイベントではありません。むしろ、「現在のキャラクターレベルは 25、現在の所持金は 100,000 ゴールド、現在の位置は城内の謁見の間」といった現在の状態です。このデータがあれば、プレイヤーはそこから先のゲームを継続できます。
同様に、銀行口座の残高も State です。口座に記録されるのは入出金の完全な履歴ではなく、「現在の残高」というたった一つの数字です。銀行の経営陣が日々確認するのは、全顧客の過去の取引記録ではなく、リアルタイムの預金総額や貸出総額といった現在の State です。
State の最も重要な特性は、それが履歴そのものではないということです。State は過去を記録するのではなく、現在を表現します。この区別が曖昧だと、ブロックチェーンの本質を根本的に誤解してしまいます。
銀行システムと State のアナロジー
銀行システムにおける State の役割を深く考えると、ブロックチェーンの State がより鮮明に理解できます。
銀行は、毎回顧客が出金を申し出たときに、過去のすべての入出金履歴を再計算して残高を求めているわけではありません。むしろ、各口座には「現在残高」という State が存在し、その値は銀行のデータベースに常に記録されています。



