【海外発行ステーブルコインの国内流通解禁】金融庁が決定し、2023年から施行予定。その変遷と中身を解説!
昨日、12月26日に金融庁から発表され内容によれば、2023年に施行予定の最新の「改正資金決済法」にて、「海外発行のステーブルコインの国内流通」が解禁されます。
おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は昨日話題となったニュース「海外発行ステーブルコインの国内流通解禁」についてリサーチしました。
«目次»
1、海外発行ステーブルコインの国内流通解禁
2、国内ステーブルコイン規制の方針
3、「改正資金決済法」ざっくりまとめ
4、国家の狙いと危惧を考察
海外発行ステーブルコインの国内流通解禁
昨日、12月26日に金融庁から発表され内容によれば、2023年に施行予定の最新の「改正資金決済法」にて、「海外発行のステーブルコインの国内流通」が解禁されます。
但し、それに伴い幾つかの条件が伴います。
国内事業者が発行する時は1対1で裏付けとなる資産を準備。
海外事業者が発行時は国内事業者が裏付けとなる資産を準備。
一度の送金は上限100万円まで。
まだ詳細のガイドラインは発表されておらず、方針発表の昨日より、広く意見を求め、年始に向けて具体的なガイドラインを策定していくようです。
また、実はこのニュースだけを見ても「日本におけるステーブルコインの規制」を理解することはできません。
昨日発表された内容は、海外発行のステーブルコインに対する規制に関するもので、2023年6月に、国内のステーブルコインに関する規制についての方針が決定されていました。
時系列をまとめると、こうなります。
2022年3月:ステーブルコイン規制のための法改正案「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための 資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」が金融庁より発表。(主に国内ステーブルコインに関する規制)
2022年6月:3月に発表した法改正案を基に、金融庁が資金決済法「改正案」提出
2022年12月:6月に提出した「改正案」に追加する形で「海外発行のステーブルコインに関する規制」の方針も発表
2023年(今後):具体的なガイドラインを策定し、最新版「資金決済法」にて施行
では、それぞれの内容に関しても簡単に振り返ってみます。
国内ステーブルコイン規制の方針
2019年、Facebook(現Meta)がリブラ計画を発表し世間をざわつかせました。この出来事は明らかに世界各国のステーブルコインの規制を進める出来事となりました。
実際、国が発表したCBDCの進捗報告資料にも、リブラについての言及があり、2022年3月に発表された国内ステーブルコインに関する規制の法律案「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための 資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」にもリブラの言及がありました。
G20 声明文(抜粋)
我々は、いかなる所謂「グローバル・ステーブ ルコイン」も、関連する全ての法律上、規制上及 び監視上の要件が、適切な設計と適用可能な基準 の遵守を通して十分に対処されるまではサービス を開始するべきでないことを支持する。
(上記資料より引用)
要するに、GAFAを筆頭にした国家を超える数十億人のユーザー数を誇る会社がステーブルコインを発行し、国家の重要な機能である”通貨発行権”を奪われる危険性を認知し、それは絶対に認めない!という方針を発表したわけです。事実、リブラはその後、規模を縮小し、名前も変えましたが、計画は頓挫しました。
そこから具体的に各国で規制の法案の検討が始まりました。日本は世界の中でもかなり進んでおり、2022年3月に方針発表、6月には法案として提出されました。
規制の主な目的は「投資家(利用者)保護」と「マネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化」です。
具体的な規制内容はこちらです。
ステーブルコインの発行・管理をする「発行者」と流通を担う「仲介者」の役割を分ける。
「発行者」は、銀行や資金移動業者、信託会社に限定。
「仲介者」は、新設された「電子決済手段等取引業」への登録制が導入され、モニタリングが強化される。
プリペイドカード等も対象となる、「高額電子移転可能型前払式支払手段」の発行者については、業務実施計画の届出、犯罪収益移転防止法の取引時確認義務等に関する規定が整備され、より厳重にチェックされる。
マネロン対応として、為替取引分析業者を創設。業務運営の質を確保する観点から、同業者には許可制が導入。
今回の改正はあくまで「1対1で資産を担保する電子決済型」に限り、アルゴリズム型のステーブルコインは規制の対象外とする。
公式発表の中から、幾つか関連するページを抜粋します。
○発行者と仲介者の分離、デジタルマネー類似型と暗号資産型の分類
○マネロン対策の強化、為替取引分析業
○高額電子移転可能型前払式支払手段への対応方針
以上、詳しくは元の資料をご覧ください。また、日本円を担保とする「JPYC」が2022年6月のこちらの発表を受けて、JPYCとしての方針を「改正資金決済法と今後の環境を考慮してのJPYCの対応」として公式サイトに発表しているので、そちらご覧いただくと、よりステーブルコインの法改正の内容がわかるかもしれません。
「改正資金決済法」ざっくりまとめ
では、色々と時系列を追いながら、解説付きで書いてきたのでまとめます。2023年に施行予定の「改正資金決済法」では一体何が変わるか、何のための法律か。
■前提
リブラ構想を受けて世界的にステーブルコインに関する議論が深まり、各国の規制に向けての動きが始まった。
日本は世界に先駆けて法案を提出、2023年から施行予定。
ここでいうステーブルコインの規制はJPYC、USDCのような法定通貨に1対1でペッグされたものを指し、大暴落したTerraのようなアルゴリズム型ではない。
■改正案
ステーブルコインの発行・管理をする「発行者」と流通を担う「仲介者」の役割を分ける。
「発行者」は、銀行や資金移動業者、信託会社に限定。
「仲介者」は、新設された「電子決済手段等取引業」への登録制が導入され、モニタリングが強化される。
「高額電子移転可能型前払式支払手段」の発行者の規制強化。
「為替取引分析業者」を創設。認可が降りた業者によるモニタリング強化。
国内事業者がステーブルコインを発行する時は1対1で裏付けとなる資産を準備。
海外事業者がステーブルコインを発行する時は国内事業者が裏付けとなる資産を準備。
一度の送金は上限100万円まで。
こんな感じです。細かい規制内容に関しては公式発表をご覧ください。
国家の狙いと危惧を考察
最後に少しだけ、この規制からわかる「国家(日本)の狙いと危惧」を考えてみます。
まず、一番最悪のケースは「リブラ等のグローバルステーブルコインが一般に普及し、通貨発行と管理が国家のコントロールできなくなる」ことです。これは世界各国の共通認識で規制をかけて一旦は止めました。
次に最悪のケースは「海外の法定通貨担保型のステーブルコインが日本に流通する」ことだと考えます。例えば、ドルにペッグされたステーブルコインを使われると日本円が使われなくなり、通貨発行と管理のコントロールが効かなくなります。また、日本円の価値が下がるので国家としてのパワーも弱くなります。
逆に、アメリカとしてはドルにペッグされたステーブルコインなら世界で流行っても良いと考えていると思います。なぜなら、そのステーブルコインの担保となる資産は国が管理できるし、相対的にドルの価値も向上していくからです。
なので、日本としては「海外発行のステーブルコインは日本事業者が1対1で資産を担保する事」を義務化するわけです。これスキームとしては「1ドル=1USDC」で担保されているものに、さらに「1USDC=130円くらい」を担保に入れる必要があるので、1USDCに対して1ドルと130円が担保に入るという謎の事態になります。
あ、今思いましたが、新しく自分達でお金用意するのだろうか?それとも国内に入った分のUSDCにペッグされたドルをUSDC側から送ってもらう形なのだろうか?後者にしないと無駄なお金増えそうだが、管理が大変そうです。今後の発表待ちですね。
諸々を整理すると、
国家は自国で最も普及する通貨が、自分達で管理できる通貨であって欲しい。
ステーブルコインの波は止められないので、そこに必ず自国通貨を絡ませる形で法規制をかけよう。
だと思います。
表向きは「マネロン対策」や「利用者保護」と謳っており、それも間違いなく嘘ではないと思いますが、一番の目的は「自国で最も利用される通貨のコントロール権を握り続けたい」であると思います。
以下の資料を見てもらってもわかる通り、web3っぽいパーミッションレス型に対して強い反対の気持ちがありそうです。ちゃんと中央で管理できる状態でステーブルコインも普及させたい想いが見えます。
正直、法定通貨担保型のステーブルコインだってパーミッションレスで作れるので、パーミッションレスかパーミッション型かってあまりステーブルコインに関係ない気もしますが、この辺りは個人的に国としての狙いを考察して楽しむことにします。
以上、自分なりに情報を吟味した上でリサーチした上で解説しましたが、どこか間違ってるところあればすみません、、。公式のニュースや参考資料を見ながら正確性を担保していただければと思います。
個人的に、ステーブルコイン関連のニュースは「国家 vs web3」のど真ん中にある話題だと感じているので、その裏側の狙いや展望を予想しながらウォッチしている楽しい話題です。引き続きリサーチしていき、進捗あればまた記事にします!
(※リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。)
以上、面白いなと思った方はSNS等でシェアいただけると非常に励みになります!
ご覧いただきありがとうございました!
mitsui @web3リサーチャー
Twitterでもweb3に関する情報(プロジェクト・ニュース・単語の解説、プロジェクトオーナーへのインタビュー記事、リサーチからの学びや考察記事)を毎日発信中!