おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Splits」についてリサーチしました。
«目次»
1、概要|Splitsとは?
- 仕組み
- 多様な分割方法
2、変遷|Mirrorからインスピレーションを受け、ETH Globalで誕生
3、展望:SDKも開発、Split機能の基盤へ
4、考察:トークンとフィアットが混ざって多様な支払い方法が実現する社会になる!?
概要|Splitsとは?
「Splits」は分割という意味で、事業者のトークン収益を自動で分割して受け取ることができます。「Splits」という機能はOpenSeaやMirror等、サービス内の標準で存在しているDappsもありますが、ここで紹介する「Splits」はそれらの機能を誰でも簡単に構築できるプロトコルとしての「Splits」です。機能としての「Splits」と差別化して「Splits Protocol」や「0xSplits」とも呼ばれます。
◼️仕組み
基本的には以下のように受信した収入を自動で分配できる機能を持ちます。コントラクトは監査済みで、プロトコルはオープンソースで分散化されており、ガス代以外の利用料は発生しません。Ethereum、Polygon、Optimism、Arbitrum等の主要EVMチェーンの全てに対応しています。
資金の流れとしては、Splitsで作成したコントラクトで資金を受け取り、それを予め設定したメンバーに分割します。そして、該当するメンバーが引き出します。
現在利用しているプロジェクトの一覧ページも存在し、該当者はこちらから該当プロジェクトページを探し、ウォレットコネクトを行い、資金を引き出します。
新コントラクトの作成もここから実施できます。
◼️多様な分割方法
それでは、より詳細の機能も見ていきます。
○Split
最も基本的な機能です。事前に設定された割合に従って、受信したすべてのETHおよび ERC20 トークンを受信者に分配します。
○Waterfall
分配が行われる順序を指定できる機能です。借入の返済や投資家へのリターンの返済など、負債商品に利用できます。例えば、NFTプロジェクトに出資してくれた投資家に対して、初期の売上を3ETHまで返済し、それ以降は自社で分配するというコントラクトを展開できます。
○Swapper
すべての受信トークンを 1 つの出力トークンに変換する支払い可能なスマート コントラクトです。オラクルで価格参照を行い受け取ったトークンを自動変換します。
○Vesting
例えば1年後からトークン受け取り開始のように、トークンを受け取る期間を設定できます。コントラクト内のすべてのストリームは権利確定期間を共有しますが、各ストリームは独立して権利確定を開始したり、トークンを解放したりできます。
○Liquid Split
受信権利自体をERC-1155規格のNFTにする機能です。NFTを使用して所有権を譲渡可能になります。
○Diversifier
収入源をさまざまな比率の特定のトークンに自動的に多様化できます。たとえば、収入の 40% をステーブルコインに自動的に交換して税金用に確保したい場合など、源泉徴収に特に役立ちます。
変遷|Mirrorからインスピレーションを受け、ETH Globalで誕生
Splitsは2021年6月18日~7月9日にETH Globalが開催したDeFi hackathonのHackMoney2021にてスタートしました。
そのアイディアはMirrorがSplit機能をリリースしたことにインスピレーションを受けているとして、これをどのプロジェクトでも簡単に利用できるようなプロダクトに落とし込みました。
そして、2022年2月にプロダクトとしてリリースしました。当初はEthereumだけの対応でしたが、すぐにPolygonにも対応し、主要なEVMチェーンには全て対応していきました。
当初は基本的なSplit機能だけでしたが、徐々に上記で紹介したような機能を追加していきました。現在はNouns、Sound、Guild、Airswap等にも利用されており、徐々に利用先を増やしています。
展望:SDKも開発、Split機能の基盤へ
ここまではアプリケーションとして利用できるSplitsを紹介してきましたが、SDKも開発しています。
Reactで実装することが可能で、Splitsコントラクト用に特別に設計されたReactライブラリであるSplitsKitも存在します。SplitsKitを使用すると、カスタム UI を構築しなくても、アプリ内でSplitを簡単に作成して表示できます。
今後もアプリケーションとしてのユーザー向けプロダクトの提供と、SDKとしてSplit機能の提供が予想されます。
MirrorやOpenSeaが採用しているように、Split機能は、オンチェーンでのコラボレーションを成功させるための基本的な構成要素です。
マルチシグウォレット等も存在し、共同所有や共同署名による支払いも可能ですが、より自動化された支払いが必要になることがあります。Split機能を利用すると自動で安全な支払いを実装でき、より実用的な支払いユースケースを確立できます。
考察:トークンとフィアットが混ざって多様な支払い方法が実現する社会になる!?
最後は考察です。
Splitsはシンプルながら、非常に便利なソリューションを提供していると感じました。MirrorやOpenSea等でもSplit機能の存在を知っていましたが、それをより汎用性高くカスタマイズして誰でも実行できるプロトコルの需要は増していきそうです。
というのも、やはりブロックチェーンの最適なユースケースの1つは金融領域です。そして、NFTでもDappsでもDAOでも、どんなプロジェクトを実行するにせよ必ず付きまとうのは”お金”です。
ブロックチェーンはお金の流れの透明性を高める機能は存在しており、マルチシグウォレットなどはそちらの意味合いの機能でした。ですが、これはどちらかと言えば守り系の機能で、より実用的で生産性を上げる機能ではありません。
Split機能は普通に便利です。現在の銀行の機能でも自動振り込みできますし、クレカはもちろん自動引き落とし(支払い)が可能です。ブロックチェーンのSplit機能はこの最先端にあります。
透明性が高いことはもちろん、手数料も安価で、改竄できないような形で永遠に分配し続けます。また、SpitsProtocolは単なる分配だけでなく、負債の返済で利用できるようなWaterfallやVesting、受け取るトークンを選択できるSwapperなど、便利な機能が多く存在します。そして、それらの受け取る権利をNFTにして売買可能な状態にもできます(とはいえ、これ収益の権利をNFTにしているということで、有価証券に該当する?、法務チェックしていないので利用する人は自己責任でお願いします)。
個人的には、この先はステーブルコインが浸透していき、よりトークンでの支払いが加速していくと思っていますが、その前段階でフィアットからトークンへ変換するオンランプ機能が流行し、支払いは法定通貨だけど自動でトークンへ変換されて、変換されたトークンがSplitsで自動分割されて、トークンで受け取る、もしくはオフランプでまた法定通貨で受け取る、みたいなことが実現しそうです。JPYCとSlashの提携はこのような支払いフローを実現しようとしていました。
トークンを挟むメリットですが、間の透明性を担保できること、分割を自動化できること、そして何より国際送金の手数料が激安になること、が挙げられます。
とても楽しみな社会になりそうです!
以上、本日は「Splits」についてリサーチしました!
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