おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は「Soul Wallet」についてリサーチしました。
«目次»
1、Soul Wallet とは?
- 特徴
- スマートコントラクトウォレットとは?
- ファウンダー情報
2、どこに張るか
Soul Wallet とは?
「Soul Wallet」は、ERC-4337を搭載した次世代のスマートコントラクトウォレットです。
現在は開発中(waiting list募集中)ですが、イーサリアムファウンデーションを始め、多くの投資家からシードラウンドで合計300万ドルの資金調達に成功しています。
■特徴
シードフレーズなしのソーシャルリカバリー(ウォレット作成時に信頼できる友人を設定しておくことで、パスワード忘れなどでログイン不可能になった際にその友人に協力してもらうことでアカウントの復旧が可能になる)
トランザクション時の2段階認証
ステーブルコインでのガス代の支払い(例えばEthのガス代をUSDCで支払うことができる)
スポンサーによるガスレス決済(第三者、例えばサービス提供者がガス代の負担が可能)
■スマートコントラクトウォレットとは?
細かい話をすると難しくなるのでざっくりとだけ解説します。
現在のweb3業界で主流となっているのはMetaMaskのようなEOA(外部所有アカウント)と呼ばれるウォレットの種類です。ですが、今後スマートコントラクトウォレットが主流になっていくと言われています。
その理由はEOAはシードフレーズの管理や、ユーザー負担によるガス代の支払いなど、できることが限られており、数十億人がweb3を日常使いするには不便だからです。なので、ウォレット上に直接スマートコントラクトを記録できるウォレットにしていくことで、その辺りの不便さをマルっと解決していきましょう!という動きになっています。
細かい技術的な理解は置いといて、イメージだけでざっくり言うなら、僕はEOA=現金で、スマートコントラクトウォレット=クレカやweb銀行だと思ってます。現金は確かに便利ですけど、毎月のサブスク決済や初月だけ無料などシステムを組んだ取引はできません。また、どんな取引も自分が動かないと自動で引き落としされることはありません。しかし、クレカやweb銀行なら様々な条件の取引が可能になります。
つまり、現在のweb3業界は現金取引しかできない状態で非常に不便なので、クレカ導入しちゃおうぜ!そうすればもっと色んなことができるよね!となっているイメージです。
しかし、このスマートコントラクトウォレットを実現するには、イーサリアム本体のアップデートが必要で、その必要なアップデートがAA(Account Abstraction)という実装です。まだ完全なAAの実装には至っていませんが、少しずつ進んでおり、先日「ERC-4337」という新しい実装がなされ、AAの実現に一歩近づきました。
↓AAやERC-4337の勉強はこちらの記事がおすすめです。
ここまで聞けば、「Soul WalletはERC-4337を搭載した次世代のスマートコントラクトウォレット」と言う意味が少し伝わるのではないでしょうか。つまり、MetaMaskに代わる新しいウォレットを作ろうとしているプロジェクトです。
ちなみに、イーサリアム自体も今後はEOAではなくスマートコントラクトを実現していくと明言していますし、実際にこの分野はすでに競合が多数存在している分野でもあります。
その中でファウンダーは「Argent等の先行ウォレットも幾つかのスマートコントラクトを組み込んでいるが、まだまだ機能が足りていない」と発言し、「MetaMaskの既存ユーザーを引き剥がすのではなく、次の数十億人のためのウォレットにしたい」とも発言していました。
■ファウンダー情報
ファウンダーは元ByteDanceのプロダクトマネージャーであった「Jiajun Zeng 氏」です。
元々TikTokなどの検閲の仕事を行っていた(政府に都合の悪い情報が流れないような情報統制を行なっていた)際、この仕事が社会にとって良くないものだと痛感し、アメリカに逃亡しました。
→その際のインタビュー記事はこちら
そして、ブロックチェーンの分散性や公平性に惹かれ、その領域でプロダクトを作り始めました。別のインタビュー記事よりその思想が表れている言葉を紹介します。
「ビットコインが通貨と国家の分離であると言った場合、イーサリアムはインターネットと国家の分離です。なぜなら、それは、検閲に抵抗しながら、その上でアプリを無許可で実行できるからです。つまり、国家、特に中国は、分散型アプリケーションが気に入らないという理由だけでシャットダウンすることはできません」
(引用:Struck Crypto backs TikTok whistleblower's social recovery tool Soul Wallet)
まだwaiting list募集中のフェーズですが、これからが楽しみです。
どこに張るか
以前もどこかで書いた気もしますが、改めてweb3領域での起業は”どこに張るか”が非常に大切だと思っています。
成功にはタイミングが不可欠であり、早すぎても、遅すぎてもダメです。AAの実現とスマートコントラクトウォレットの本領発揮はいずれ来る未来です。その未来の時間軸と、ウォレット本体を作るのか、その未来が実現した時に必要となるであろうプロダクトを作るのか、どこに力を入れるのか悩みどころですね。
個人的に、もっとも負けない戦い方は「影響力と強固なコミュニティを作っておく」ことかなと思っています。
プロダクトが作れたら一番良いかもしれませんが、プロダクトの世界は競合が多すぎて、半分は博打の世界です。そして、海外プロダクトは資金調達の規模が圧倒的に違うので、本気で戦うなら日本では不可能だと感じています。
ただ、いずれプロダクトが実現した時にいつでもコラボができる状態を作っておくことはできます。それが影響力とコミュニティの力だと思っています。なんなら、良い感じのプロダクトをブルーチップNFTが買収していく未来も起こり得るのではないかとも思っています。
Yuga Labsがスマートコントラクトウォレットの会社を買収して、自社サービスに組み込んで新しい体験を創造していくと、少なくともweb3業界でもっとも影響力のある層にはすぐに広がります。
もちろん、これからのマスアダプションを考えれば、Yuga Labsの影響力は微々たるものになるのかもしれませんが、その業界で影響力を持つ層からプロダクトやサービスが広がっていく事例も多いので、そのトップ層を囲っている力は強いです。
まとめると、来る未来をどのように読み、自分がどこにポジションを取っておくのか、これが今まで以上に求められ始めています。僕個人のポジションの取り方も改めて考え直し、来る未来に向けてコツコツと積み重ねていきます。
引き続き頑張ります!
«参考リンク»
・HP:https://www.soulwallet.io/#
・Twitter:https://twitter.com/soulwallet_eth
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
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