【Setter】web3を活用したコマースアプリ / 事前予約や限定アクセスなどのブランドとユーザーの関係構築にweb3を利用 / Shopifyと連携しWeb2とweb3の橋渡しを行う / a16zが主導し5Mドルを調達
コマース領域におけるweb3利用事例です。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Setter」をリサーチしました。
«目次»
1、概要|Setter とは?
- 機能
- 対応チェーン
2、トケノミクス|$STRトークンとGenesis NFT
3、変遷と展望|a16zから調達、Web2とweb3のコマースの間を埋める
4、考察|EC×web3の親和性と可能性
概要|Setter とは?
「Setter」は、web3を活用したコマースアプリです。スニーカーやストリートウェアなどを販売するプラットフォームにweb3が組み込まれており、事前予約や限定アクセスなどのブランドとユーザーの関係構築にweb3を利用することができます。
■機能
特徴的な機能は「RSVP」ボタンです。RSVPは、フランス語の「Repondez s'il vous plait」の略で、「ご返答お願いいたします」という意味で、出欠確認に使われる単語です。
ブランドは新商品を販売する前のページをSetter上に作成しておき、ユーザーは”RSVP”ボタンを押すことができます。”RSVP”はドロップ予約券のようなもので、リリースへ向けた事前情報へのアクセス、商品への先行アクセスなどが可能になります。
SetterはShopifyとも統合しているため、Setter上でRSVPを保有している人を検知して、トークンゲートで商品を販売したり、商品購入者に別の特典を付与することも可能です。尚、RSVPは購入を保証する予約ではなく、興味を示す証拠となります。
■対応チェーン
チェーンはPolygonを採用しています。まだリリースされたばかりなので全貌はわかりませんが、おそらく”RSVP”に加えて、ブランドとユーザーの関係性を示すロイヤリティNFTが発行されて行くのではないかと考えられます。
尚、アプリをDLするとわかりますが、アプリDL後、ユーザー登録はユーザー名の登録と生体認証のみで実施でき、それと同時にアプリ内にウォレットが自動作成されます。生体認証によるコントラクトウォレットです。
今後、クレカ決済もできるようになると書かれており、ユーザーはブロックチェーンを全く意識することなく、コマースの事前予約、ブランドとの関係性を作るアプリとしてSetterを利用することになります。
トケノミクス|$STRトークンとGenesis NFT
Setterにはネイティブトークンとして「$STR」が存在します。総供給量は100億で、以下のアロケーションで配布されます。
ユーザーが「$STR」を獲得するには、初回登録、友達紹介、RSVPイベントへ参加などがあります。ユーティリティとしてガバナンスへの参加もありますが、主にはアプリ内でも限定特典やキャンペーンに参加するために利用できます。
また、初期の5億トークンを配布するイベントとしてトークンの権利が内包されたNFTの販売が行われました。販売は2024年1月12日に行われ、合計10,000個、4つのレアリティが存在しました。
Yellow Crates (Mythical): 1,000個 / 150,000 $STR
Red Crates (Legendary): 1,500個 / 100,000 $STR
Purple Crates (Rare): 2,500個 / 40,000 $STR
Blue Crates (Uncommon): 5,000個 / 20,000 $STR
Premint勝者の1,000名は無料で確定ミント、Setterユーザーの6,000名は無料で先着ミント、残りの3,000名(個)は50MATICで一般販売されました。
結果として全てミントされ、OpenSeaの世界トレンドランキングで1位を獲得しました。
変遷と展望|a16zから調達、Web2とweb3のコマースの間を埋める
Setterは現在IOSアプリのみをリリースし、ネイティブトークン$STRのTGEもこれから実施される段階です。アイテムとしては、スニーカーやストリートウェアなどの人気カテゴリーから始まり、ファッション、高級品、その他のアイテムまで消費者向けに幅広いアイテムを取り扱っています。
そんなSetterは2023年11月28日、Andreessen Horowitz (a16z)が主導し、Superlayer、Serena Williamsも参画したシードラウンドで5Mドルの資金調達に成功しました。
昨年公開された”2023 Shopify Commerce Trends Report”では、web3がコマースの将来に与える影響を強調しています。レポートによると、調査対象企業の84%が、顧客とのやり取りやブランド エンゲージメントを再構築する上でweb3 テクノロジーの重要性が高まっていることを認識しています。この進化の中心となるのは、顧客ロイヤルティとコミュニティ構築を再定義するウォレットとデジタルトークンの使用です。
Setterはまさにこの新しいコマースの在り方を実現するために設立されました。Shopify等のWeb2のECツールと統合し、そこでは成し得ない顧客との関係性構築をSetterがweb3を活用して行い、Web2とweb3の橋渡しを行います。
具体的な今後のロードマップに掲げられていた内容は以下です。
市場の拡大
モバイルアプリの国際展開
サービス範囲を欧州連合 (EU) およびアジア太平洋 (APAC) 地域に拡大し、当社のサービスを世界中でよりアクセスしやすく
マルチチェーンのサポート
Polygon を超えて追加のブロックチェーン ネットワークを含めて拡張し、プラットフォームの相互運用性とリーチを強化
コマース カテゴリの拡張
サポートされるコマース カテゴリの範囲を拡大し、より幅広いユーザーのニーズや関心に応える
機能拡張
Android リリース
AI を活用した製品発見
高度な AI アルゴリズムを実装して、ユーザーの製品発見エクスペリエンスをパーソナライズおよび強化
追加の暗号通貨ペア、NFT取引、DeFi製品
より多くの暗号通貨ペアを含めるために当社の製品を多様化し、NFT取引を可能にし、DeFi製品をサービスを導入
トークン発行
$STR 報酬トークンの開始
プラットフォームのエンゲージメントと参加に報酬を与えるように設計された $STR トークンの正式な導入
トークンパートナーの統合
さまざまなパートナーと協力して、$STR トークンをより広範なエコシステムに統合し、実用性と受け入れを強化
Setter コミュニティ DAO
Setter コミュニティ用のDAOを確立し、メンバーにガバナンスと意思決定プロセスにおける発言権を付与
考察|EC×web3の親和性と可能性
最後は考察です。
ここ数日、ロイヤリティ系の投稿が続きます。このニュースレターは僕が気になったプロジェクトや領域をリサーチしているので、同じ領域で別のユースケースが続く時があります。最近はロイヤリティ系ですね。
本日リサーチしたSetterも近いユースケースですが、コマースに特化した関係構築にweb3を活用しています。これまでリサーチしたプロジェクトはどちらかといえば、購入後の関係構築が多かったです。もちろんクーポン発行などもありましたが、事前に特にコミットしたユースケースは非常に興味深かったです。
確かに既存のEC市場を考えてみても、抽選販売や事前予約に関しては大きな熱量が生まれていて、そこから顧客との関係が始まっています。そう考えるとここからweb3を活用して、その記録を刻み、関係を強化していくことは理にかなっています。販売前の方がアクティブ率が高いと思います。
そして、当たり前のことですが改めて言語化してみると、ECとweb3のロイヤリティは相性良いですよね。
これまでのユースケースは飲食店などのリアル店舗やイベント、観光地、アパレルなどのフィジカルな世界との接点を記録するものが多かったですが、これはフィジカルからデジタルを繋ぐ必要があり、オペレーションがやや大変ですし、バイラルで広がりづらいです。一方で、ECは購入履歴がわかりますし、購入前にもトークンゲートでアクセス制限ができるので、ロイヤリティプログラムと非常に相性が良いです。
ロイヤリティの肝は”顧客の行動を記録しランク付けして適切なパーソナライズを行う”ことで、顧客の行動を記録することがまず第一歩目です。その中で、イベントや店舗の来訪も行動として大事ですが、最も大切な行動記録はどう考えても”決済記録”です。一番お金を使ってくれてる人がお得意様です。
ECと連携すると(プラットフォーム側の対応が必要になりますが)、決済履歴も含めたロイヤリティプログラムの構築が可能になります。それをweb3で構築するよさは、決済だけじゃなく、イベントや店舗の来訪、アンケートの回答、SNSでの拡散協力など、あらゆるタッチポイントでの行動を全て一元管理できる点です。Shopifyにその機能が全てついていれば良いですが、どうしても限りがありますので、相互運用性のあるブロックチェーンを活用して、トークンやNFTでマルチチャネルのロイヤリティプログラムを実現します。
Visaがロイヤリティプログラムをスタートしましたが、まさにここが狙いだと思います。今回とは別の話ですが、決済レイヤーがweb3を活用したロイヤリティプログラムをスタートする事例がこれから多くなっていくと予想します。
Setterはまだ日本ではあまり利用できませんが、その進捗を楽しみに追いかけたいと思います。
以上、「Setter」のリサーチでした!
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免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
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