おはようございます。
三井滉平です。
今日はクリプトでの資金調達スキームとして注目を集める「SAFT」についてリサーチしました。
«目次»
1、SAFTとは?
2、なぜSAFTが生まれたのか?
3、SAFTの課題は?
4、改善に向けて進んでいる
5、まとめ
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SAFTとは?
「SAFT(サフト)」とは、「Simple Agreement for Future Token」の略で、将来発行されるトークンを割安で購入できる権利と引換に資金を調達する方法です。
web3プロジェクトにおける一般的な資金調達方法となっており、Uniswapや Compoundなど、有名プロジェクトの多くはSAFTで資金を調達しています。日本人としては「Astar Network」がSAFTによる資金調達を行なっています。
SAFTは、シリコンバレーのアクセラレータープログラムYCombinatorが提唱した「SAFE(Simple Agreement for Future Equity)」が元になった考え方です。日本ではJ-KISSが近い仕組みとして既存のエクイティファイナンスにて活用されています。
SAFEやJ-KISSを端的に言えば、一定期間経過後に普通株式へと転換することが可能なオプションが組み込まれた契約です。
主にシード期で使われるこの仕組みは、しっかりしたバリュエーション選定には調査や議論の時間がかかるし、そもそもシード期のバリュエーション選定って難しくね?という背景から作られました。投資家側としては、伸びそうな会社には取り敢えずお金を入れておきたいし、起業家側としても資金は欲しいけど、もう少しビジネスが成長した後のバリュエーションで評価して欲しいという思いがあるので、双方の利害が一致した形となっています。
SAFTはこのトークン版ですので、まだトークン価値が決まってない時(トークンをローンチする前)に資金調達ができ、プロジェクトの開発資金に充てることができるからです。投資家はその将来発行されるトークンを割引価格で購入できる権利を手にします。
なぜSAFTが生まれたのか?
SAFEやJ-KISSも同じような仕組みであれば、SAFTである必要ある?と感じた人もいるかもしれません。トークンである必要はどこにあるのか。そもそもなぜSAFTが生まれたのか?ここについても解説します。
■大前提。web3プロジェクトのゴールは分散化であり、IPOではない!
SAFTが生まれた一番の理由はここにあります。大前提ですが、web3プロジェクトのゴールはDAO化させ、完全に分散化したサービスを作り出すことです。
それがDappsなのかブロックチェーン(インフラ)なのかに関わらず、全てのプロジェクトはDAO化が最終目的です。(そこを掲げていないプロジェクトもあるかもしれませんが、web3という思想の根本は分散化であり、公共財をみんなで作り上げようという思想なので、ここではその前提で話します。)
早い話、DAOがゴールのプロジェクトは株式による資金調達できないんです。
なぜなら、IPOもバイアウトもする気がないから。投資家からすればリターンが返ってこない場所に投資はできないです。
ただ、プロジェクトとして素早く成長させるためには投資家からの資金提供が必須となってきます。
このジレンマを解決した方法が「トークンによる資金調達」です。DAOするためには必ずトークンを発行します。そのトークンを活用して、投票や意思決定が行われていくからです。
そして、そのトークンは売買ができるので価値がつきます。DAO化しても、プロジェクト自体が有名になればなるほどトークンの価値も上がっていきます。この仕組みは株式と非常に似ています。
であれば、”株式ではなくトークン貰えば、投資家としてもリターンがきちんと返ってくるので、出資できるよね!”ということで、トークンによる資金調達が生まれました。
■規制の連続の中で、SAFT誕生!
トークンによる資金調達が生まれた背景は上で書いた通りですが、実はトークンによる資金調達の方法はSAFTだけではありません。
ICO
IDO
IEO
SAFT
これらが有名な方法ですが、その中でも2022年時点において、最も有名で使われている手法が「SAFT」です。
最初にトークンによる資金調達方法として有名となったのが「ICO」でした。イーサリアムもICOで資金を集め開発をスタートしました。そして、2017年頃からその手法が一般化し、非常に多くのプロジェクトがICOで資金調達を行いました。
ただ、資金だけ調達してプロジェクトがスタートしない詐欺プロジェクトが横行したことにより、アメリカの証券取引委員会(SEC)がICOを問題視し、規制の対象とし始めました。
その過程で「そもそもトークンでの資金調達は”証券”に該当し、違法なのでは?」という議論が加熱し、実際に違法判決が出たプロジェクトも生まれ、返金するまでに至りました。
👉証券の定義やより詳しい歴史的な背景を知りたい方はこちらの記事がおすすめ。
こういった背景の中でICOに代わるトークンでの資金調達方法として出てきたのが「SAFT」です。
SAFTは契約書のテンプレートも公開されており、非常に使いやすい仕組みとなっています。
SAFTの課題は?
とはいえ、SAFTにもまだまだ課題が残っています。
■本当に合法なのか?
SAFTは規制が厳しいICOに変わって生まれた手法ですが、SAFTも規制の対象となってきています。そして、違法であると該当し、返金せざるを得なくなったプロジェクトも生まれています。
加えて、国毎に規制や法律が違うので、契約書のテンプレートが公開されているとはいえ、修正が必要となってきます。
この違法か合法かの問題に関しては、かなり入り組んだ話になっており、”証券”を理解しなければならないので、気になった方はぜひ調べてみてください。ここではまだ完全に安心の資金調達方法にはなってない、という所だけ紹介しておきます。
■日本ではできない
日本で SAFT を利用した資金調達が行われた事例はまだありません(見つかりませんでした)。
その理由は、SAFT自体の規制だけでなく、現状の日本の税制にあります。
web3プロジェクトにおいて、トークンは必要不可欠なものですが、日本ではトークンを発行すると時価総額に対して税金が発生します。トークンを売却したときのみならず、保有している分(未実現益)に対してもかかるので、実質的に日本でトークンを発行して売り出すことは難しく、トークンを使った資金調達方法であるSAFT が利用されません。
また日本の投資家は法律でトークンに対しての出資が禁止されており、この辺りの法律改革が進まない限り、日本でのSAFTは現実的な手段とはなり得ません。
改善に向けて進んでいる
まだ課題が多いSAFTですが、世界的に議論も進んでおり、改善に向けて進んではいます。日本でも税制の改革やSAFT以外でのトークン調達の手法の開発が議論されています。
その一つが「Token Warrant(トークンワラント)」という仕組みです。
「Token Warrant(トークンワラント)」とは、「もし発行体が今後トークンを発行したら、投資家はそのトークンをもらえる」という仕組みです。
なので、通常のエクイティファイナンス(SAFEやJ-KISS)とToken Warrant(トークンワラント)をどちらも締結することで、トークンによる資金調達を目指しながらも、逃げ道としてエクイティもできますよ、という新しい形が生まれました。
日本でもそういった取り組みが加速し、契約書のテンプレートも公開されています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000008324.html
その他、より詳しいSAFTの契約書の条文などを理解するにはこちらの記事がおすすめです!
まとめ
整理すると、
SAFTは”将来発行するトークンを割引価格で購入できる権利と引き換えに資金調達する”方法。
web3プロジェクトはDAO化が目的なので、既存のエクイティファイナンスは難しい。
ICOは規制が厳しくなったので、その代わりとしてSAFTが生まれた。
ただ、SAFTもまだ発展途上であり、規制や法律がどのように変化するかを注意して見続ける必要がある。
以上、SAFTについての全体像を改めて整理しました。web3プロジェクトは全体的に法律との調整が必要な業界ですので、改めてこの辺りの知識を勉強し直したいと思いました。
以上、記事が面白いなと思った方はぜひ「アドレス登録」と「SNSでシェア」をしていただけると嬉しいです。引き続きweb3をリサーチしていきます。
おわり。
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