【リキッド・リステーキング(LRT)入門】概要・TVL・LRT及びLRTFiの主要プロトコル・課題・展望を徹底解説
「リキッド・リステーキング市場(LRT)」に関するリサーチレポートです。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「リキッド・リステーキング市場」に関するリサーチレポートです。ここ数日はリステーキング関連のリサーチが続いてますが、本日はその全体像に関して調査しました。
«目次»
1、概要|リキッド・リステーキングとは?
2、事例|LRTとLRTfiのプロトコル紹介
3、課題と展望|半年以内に成否が判断される
4、考察|ETH > LST > LRT市場が連鎖して拡大する
概要|リキッド・リステーキングとは?
「リキッド・リステーキング」は、名称の通り「リキッドステーキング」と「リステーキング」を組み合わせた単語です。
リキッドステーキングは、ステーキングの際に資金がロックされる問題を解決するためにステーキングした金額と同等の預け入れ証明トークンが発行される仕組みです。これによりステーキング利回りを確保しつつ資金のロックから解放されます。
リステーキングは、ETHのセキュリティを他のDappsに拡張、貸し出すことができる仕組みです。ネイティブETHをステーキングしている人、もしくはリキッドステーキングトークンホルダーが再ステークすることでリステーキングプロトコルは稼働します。詳細はリステーキングの仕組みを生み出したEigenLayerのリサーチをご覧ください。
そんなリキッド・リステーキング市場は現在急成長中です。全体のTVLは4Bドルに届こうとしています。
◼️市場規模
4Bドルがどれくらいなのかを知りたい方はこちら。DefiLlamaによるDeFiプロトコル全体のランキングです。これを見るとわかりますが、リステーキングプロトコルのEigenLayerは数でに8.8BドルをTVLに抱え、市場全体で4位の規模にまで成長しています。4BドルというとDeFiプロトコルの中では7位の位置ですね。プロジェクトとカテゴリーなので比較対象は異なりますが、規模感だけ伝わればと思います。
ちなみにリキッド・リステーキングプロトコルで1番のTVLを誇る「ether .fi」はDeFi全体で20位、1.65BドルのTVLを誇ります。この短期間でここまで成長しておりすごいですね。
少し脱線しますが、そもそもリキッドステーキングプロトコルの伸びもすごいです。LidoがDeFiプロトコルの中で1位のTVLですし、上位20位の中にも多数存在します。
各プロトコルのマーケットシェアの変遷はこちらです。1位はether-fiで、続いてここ数週間でPufferのシェアが拡大しています。その次がRenzoと続きます。
ただ、DefiLlama見ると少しTVLランキングが異なるので、duneの方で対応していない、もしくはDefiLlamaに反映されていないデータはありそうです。
とはいえ、この辺りが主要プロトコルであることは間違いありません。直近の伸び率を見るとRenzoの勢いがすごいですね。
事例|LRTとLRTfiのプロトコル紹介
◼️LRTプロトコル
では続いてリキッド・リステーキング市場に存在するプロトコルを紹介します。
現在の有名どころは「Ether .fi」「Renzo」「Kelp DAO」「Swell」「Puffer」「Eigenpie」辺りでしょうか。ただ、市場自体が新しいので次々とプロトコルが誕生していますし、独自のポイントプログラムによってマーケットシェアが塗り替えられることは今後起こり得そうです。
1つずつの詳細は一旦ここでは解説しません。大きな括りでは同じ機能でリキッド・リステーキングができます。ざっと見た感じ、差別化として掲げているのは以下のような観点でした。
リステーキングの戦略ポジション(≒運用効率)
分散性
スラッシュリスクへの対応
ポイント還元方法
機能の本質は同じなので「運用効率」「安全性」で技術的な差別化を図り、「ポイント還元方法」で戦略的な差別化を図っています。
「Ether .fi」のように初期からTVLを獲得しているプロトコルは強いですが、一度ポイントプログラムが終了すると、他のプロトコルからヴァンパイアアタックを掛けられる可能性もあり得そうです。
◼️LRTfiプロトコル
LRTfiとはリキッドリステーキングと関連したDeFiです。要するにリキッドリステーキングトークンの更なる使い道となる運用先になります。
大きく分類すると、LRTfiからスタートしたプロトコルもあれば、PendleのようにLSTfiから拡張してLRTfiの要素も取り入れたプロトコルもあります。
こちらもそれぞれのプロトコル詳細は解説しませんが、既存のDeFiプロトコルで展開されている「スワップ」「流動性プール」「ファーミング」「レンディング」などのLRT版が展開されています。
新トークンが登場するとそれに対応したDeFiプロトコルが誕生するのはお決まりなので、ここはわかりやすいかと思います。
課題と展望|半年以内に成否が判断される
LRT市場全体の課題や展望を改めて整理します。尚、ここでの課題や展望やLRT市場だけでなくリステーキング市場全体を含みます。
◼️課題
集中化のリスク:1つのプロトコルの資金が集中することでセキュリティリスクも増大し、影響力が増し過ぎてしまう。
セキュリティリスク:複数のトークン交換を行うことで信頼すべきプロトコルの数が増えるのでリスクが上がる。
スラッシングリスク:スラッシングとはノード運用者がノードを安定的に稼働させなかったり、悪意がある行為をするとステーキングしているETHが没収される仕組みです。EigenLayerでリステークする際に各AVSやノードがスラッシングを起こすと資金を没収される人間が増えます。
ここに加えて、イーサリアムコミュニティとの整合性もリスクとして挙げられています。それは「イーサリアムのコンセンサス層への過負荷」です。これはVitalikも言及しており、EigenLayerのファウンダーもこのリスクは認めつつ、解決できるようにすることを言及しています。
詳細はややこしくなるのでざっくり解説すると、上述したスラッシングリスクに絡む内容になります。リステーキングはETHステーカー(バリデーター)が新しくAVSへリステークします。例えば、そのAVSが不正を行ったりハッキング被害に遭うと、その資金が没収される可能性があります。
それが続くとどうなるか、本体のETHのステーキング資金が減り、バリデーターが減り、分散性が損なわれるようになります。
ここに関してEigenLayerのファウンダーは、こちらもざっくり解説ですが「リステーキングに関して複雑なことをしない(こねくり回した金融化や実験的なな新技術の導入など)」ことで、セキュリティリスクを上昇させようとしているようです。
※僕なりの解釈での解説ですので詳細は上記のXポストをご覧ください。
◼️展望
さて、このような課題が存在しますが、その市場は依然として急成長し続けています。その理由は端的に「利回りが良いから」に尽きます。加えて「エアドロップの期待」も間違いなく存在します。
EigenLayerも他のLRTプロトコルも、そのほとんどがポイントプログラムを実施しており、数ヶ月以内にネイティブトークンのエアドロップが実施されることでしょう。その期待値からTVLが増大し続けています。
そんなLRT市場が拡大し続けるのか、一旦の結論は2024年中には出ると思います。もっといえば、この半年でそのリスクや可能性の研究がかなり進むはずです。
その理由は、EigenLayerが2024年の第2四半期にメインネットでローンチされる予定だからです。また、EigenDAのようないくつかのAVSもデビューすると予想されています。
メインネットがローンチされ、実際にAVSがEigenLayerの利用をはじめ、どうなるか。現在懸念されているようなスラッシングリスクやハッキングリスクがどの程度発生するのか、もしくは発生しないのか、この辺りが注目になります。
完全に個人の主観ですが、全く問題が発生しないことはないと考えているので、現在想定されている懸念は一通り発生してしまうのではないかと感じます。その規模感に大小はあれど、一定のインシデントが発生しそこに対応して進化していくはずです。
その一連のリリースとインシデントと改善が2024年中には一巡して、その可能性がより解像度高く言及できる状態になるのではと予想されます。
考察|ETH > LST > LRT市場が連鎖して拡大する
最後は考察です。
上記の”展望”でも自身の考えを書きましたが、個人的に2024年はリステーキング及びリキッドリステーキングの年になると考えています。2024年末にweb3市場を振り返った際に主要トピックの1つになるはずです。
その背景にはEigenLayerのメインネットローンチ時期もありますが、純粋に暗号資産業界全体、そしてETH市場が拡大しているという背景もあります。ETHの価格は上がっており、3月のDencunアップデートやETF承認への期待から2024年は更に価格が上昇すると言われています。
BTCの価格上昇を見るとわかりますが、もしETFが承認されるとかなり大きなインパクトがあると考えられます。
当たり前の話ですが、母数の市場以上には成長しません。リステーキング(EigenLayer)の場合、暗号資産 > ETH > リステーキングの構成です。もう少し細かく言えば、リステーキングの中でも伸びてるLRT市場は、その上位に位置するLST市場にも依拠します。
以下はLSTとLRTの違いをまとめた図です。LSTにはすでに40BドルのTVLがあり、LRTの10倍はあります。そして、LST市場も急拡大を続けており、すでにETHステーカーの1つの選択肢として定着しつつあります。
何が言いたいのかというと、「市場の拡大は母数以上に拡大しないので上位市場の状況確認が必要になる」ことと、「市場拡大はイノベーター理論に基づくとすると現状の状況から今後が予測しやすい」ことです。
ややこしい表現ですみません。
個人的な感覚では、以下の認識です。
暗号資産業界は世界人口全体の中でアーリーアダプター層に到達
ETHは暗号資産業界の中ではマジョリティ層まで浸透
LSTはETHコミュニティの中でまだイノベーター層
LRTはLST市場の中でまだイノベーター層
2024年は、
ETFもあり暗号資産業界全体が躍進
LSTがマジョリティ層に(選択肢の1つに定着)到達するかも
と考えています。
全て個人的な感覚の上での仮説なのであくまで考察として受け取っていただきたいですが、このように段階的に考えると、LRT市場はまだ課題はあれど、2024年中に現在の10倍ほど、今のLST市場の40Bドル規模に到達する可能性は十分に考えられると思っています。
課題やリスクはあるので自己責任で投資して欲しいのですが、個人としては非常に好きな領域で、5年後の当たり前のインフラになるような取り組みだと感じました。
まだまだ未成熟な領域なので、定期的に情報を追いかけていきます!
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参考リンク:
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
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