おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
毎週土日の昼には基礎単語解説記事をお届けします。各記事をサクッと読めるような文量にして、改めて振り返れる、また勉強できるような記事を目指していきます。
本日は「Nonce」です。
ぜひ最後までご覧ください!
導入|なぜEthereumでトランザクションが詰まるのか
Ethereumを使っていて、最も困る経験の一つが「トランザクションが通らない」という状況です。ウォレットからトランザクションを送信したのに、何時間も待ってもPendingのままである。あるいは、複数のトランザクションを送ったはずなのに、一部だけが失敗する。こうした現象に遭遇すると、多くの人は「Ethereumのネットワークが混雑している」「Gas Feeが高すぎるのか」と考えます。
しかし、実際の原因は全く異なるところにあります。それがNonce(ノンス)です。
Nonceはウォレット画面に表示されることもなく、意識することもほとんどない概念ですが、Ethereumでトランザクションを送信する際に必ず機能しているシステムです。Nonceはあなたのアカウントの行動を一貫させるための、見えない背骨のような存在です。
Nonceを理解することで、Ethereumの多くの奇妙に見える振る舞いが実は合理的な設計の結果であることが分かります。また、トランザクションが詰まった時の対処法も見えてきます。web3初心者にとって、Nonceは最初に理解すべき概念の一つです。
Nonceとは何か|定義と仕組み
Nonce(Number used Once)とは、あるアドレスから送信されたトランザクションに付与される連番です。最初に理解すべき点は、Nonceは暗号技術とは全く無関係だということです。Nonceは単なる数字の順序です。
具体的に説明します。
あなたのアドレスがEthereum上で初めてトランザクションを送信する場合、そのトランザクションのNonce値は0です。次に送信するトランザクションのNonceは1、その次は2となります。以降、トランザクションを送信するたびに1ずつ増えていきます。このシンプルな仕組みが、Ethereum全体の秩序を保つために極めて重要な役割を果たしています。
重要なのは、Nonceはアカウント単位で管理されるということです。アドレスAのNonceと、アドレスBのNonceは全く独立しています。また、Nonceはトランザクションが成功するかどうかに関わらず、増加します。トランザクションが失敗しても、使用済みのNonceは次のトランザクションで利用できません。
Web2における対応物|身の回りに存在する番号管理
Nonceは実はWeb2の世界にも存在します。むしろ、Web2ではどこにでも存在する概念です。
銀行での振込を考えてみてください。銀行に行って振込を申し込むと、受付番号が発行されます。これはあなたの振込リクエストに付与された連番であり、銀行員はこの番号を使って処理の順序を管理します。
同様に、オンラインショッピングで商品を購入すると、注文IDが発行されます。このIDは、あなたの注文リクエストに付与された一意の識別子です。APIを使用する開発者も、リクエストIDを使って複数のリクエストを管理します。
これらすべてのシステムの目的は共通しています。
それは「同じ操作を二重に処理しない」「処理の順番を正確に保つ」という二つです。銀行の振込で、同じ振込が2回実行されれば大変です。
ECサイトで、同じ注文が複数回処理されても困ります。Web2では、このような番号管理システムを中央の管理者が運営しています。銀行員、ECサイトの管理者、APIサーバーなど、信頼できる中央管理者が番号を付与し、秩序を保つのです。
web3の根本的な違いは、この中央管理者が存在しないという点です。では、誰が番号を付与するのか。その答えが、ユーザー自身による自己申告、すなわちNonceなのです。
なぜブロックチェーンではNonceが必須なのか|中央管理者なき世界の秩序
Ethereumには、従来のシステムにはない大きな特徴があります。
第一に、処理順を決める中央管理者が存在しないということです。銀行には銀行員がいますが、Ethereumには相当する管理者がいません。第二に、同時に多数のノードが検証作業を行うということです。銀行では一つのシステムが処理を行いますが、Ethereumでは世界中の何千ものノードが同じトランザクションを検証します。
この構造では、「どの取引が先か」を誰かが決定する必要があります。管理者がいない状況で、この順序を決めるにはどうすればよいか。その答えが、個々のアカウントが自分の取引に番号を付けることです。つまり、「私の最初の取引はNonce0、次の取引はNonce1です」と本人が宣言するのです。
バリデーターは、トランザクションを受け取る際にそのNonce値を確認します。もし、期待されるNonce値(前回のNonce+1)と一致していれば、そのトランザクションは有効です。
一致していなければ、後で処理する必要があります。このシンプルな仕組みによって、管理者なしで秩序が保たれるのです。Nonceは「トラストレス」の世界における順序の自己申告システムです。
Nonceがなければ何が起きるのか|深刻な問題の連鎖
Nonceが存在しない世界を想像してみてください。どのようなカオスが生じるのかを理解することで、Nonceの重要性が明確になります。
まず、同じトランザクションを何度も送信することが可能になります。あなたが1 ETHを送信するトランザクションを作成したとします。本来は1回だけ実行されるべきです。
しかし、Nonceがなければ、同じトランザクションをネットワークに複数回送信できます。結果として、1 ETHではなく3 ETHが送金されるかもしれません。この二重払い問題(Double Spending)はブロックチェーンの根本的な脅威です。
次に、過去のトランザクションを再度実行する「リプレイ攻撃」が可能になります。攻撃者が過去のトランザクションデータをキャプチャして再送信することで、不正な取引が実行されるのです。
さらに、アカウントの残高の整合性が完全に崩れます。「現在の残高はいくらか」という基本的な情報さえ信頼できなくなるのです。誰が、いつ、どのくらい送金したのかという順序が不明確になるため、最終的な残高を計算することが不可能になります。
これらの問題は、単なるセキュリティの脆弱性ではなく、ブロックチェーンというシステム自体が成立しなくなるという根本的な破壊を意味します。
トランザクションが何度実行されるか分からない、いつ実行されるか分からない、最終的にいくら減るのか分からない。こんなシステムに誰が信頼を置くでしょうか。Nonceは、これらすべての問題を防ぐための最小限の防御線です。
Nonceと他の概念の関係|web3の総合的な理解
Nonceは単独で機能するのではなく、web3の他の重要な概念と密接に関連しています。これらの関係を理解することで、web3全体の仕組みが見えてきます。
トランザクションは、Ethereumブロックチェーン上で実行されるあらゆる操作を表します。送金、スマートコントラクトの実行、トークンの転送など、すべてがトランザクションです。そして、すべてのトランザクションにはNonceというパラメータが含まれています。トランザクションはNonceなしに成立しません。
アカウント単位で考えると、Nonceはアカウント固有の情報です。同じEthereumネットワーク上でも、アドレスAのNonceとアドレスBのNonceは全く独立しています。Nonceを理解することは、アカウント管理の本質を理解することでもあります。
Mempoolは、ブロックに含まれる前のトランザクションが待機する場所です。Nonceの順序が正しくないトランザクションはMempoolで滞留します。例えば、Nonce0が確認されていないのに、Nonce2のトランザクションを送信した場合、Nonce2はMempoolで待ち続けることになります。Nonceの順序が完全でなければ、Mempoolの効率は大きく低下します。
Gas Feeはトランザクション実行に必要な手数料ですが、いくら高いGas Feeを支払ったとしてもNonceの順序を飛ばすことはできません。これは初心者が最もよく誤解する点です。高いGas Feeは優先度を上げますが、正しいNonce値なしには何もできないのです。
つまり、Nonceは「目に見えない形で全体を縛っている制約条件」です。web3の表舞台には登場しませんが、裏側でシステム全体の秩序を支えています。
Nonceが象徴するweb3的価値|ルール自己主導の世界
Nonceは数字に過ぎませんが、web3哲学の本質を象徴しています。それは「誰も管理しない世界で、秩序を保つための最低限のルール」という概念です。
従来の金融システムでは、銀行という中央管理者が「次の番号は何か」を決定していました。銀行の膨大な人員とシステムが、この秩序維持に従事していたのです。
Ethereumではこの役割を、完全に自動化されたコードと数値が担っています。バリデーターは、単にNonce値を確認するだけです。判断や裁量の余地はありません。
この仕組みを理解することで、web3が「自由」という単純な概念ではなく、「ルールを自分で引き受ける世界」であることが非常によくわかります。Ethereumでは、誰も管理者がいない代わりに、すべてのユーザーが秩序維持の責任を負います。
web3の真の価値は、中央管理者からの解放にあります。Nonceはその両面を象徴する、極めて実用的で合理的な仕組みです。
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