【Local web3 Lab.@渋谷】東急不動産HDが主催する渋谷を拠点にしたローカルDAO / 第一弾の"おさかなだお長崎"は日本中から100名以上が参加 / 民間企業主体でローカルDAOを運営する挑戦
今日は「Local web3 Lab.@渋谷」についてのインタビュー記事となります。東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部「kishino」さん、MeTown株式会社代表の「kaz」さん、DAO統合プラットフォームUnyte代表の「Uwaizumi」さんにお話をお伺いしました!
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Local web3 Lab.@渋谷」についてのインタビュー記事となります。
東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部「kishino」さん、MeTown株式会社代表の「kaz」さん、DAO統合プラットフォームUnyte代表の「Uwaizumi」さんにお話をお伺いしました!
«目次»
1、自己紹介とプロジェクトでの役割について教えてください
2、「Local web3 Lab.@渋谷」と「おさかなだお長崎」について教えてください
- 渋谷を拠点にしたのはなぜですか?
- 「おさかなだお長崎」についてもう少し具体的に教えてください
- どのような連携を考えていますか?
3、設立背景や秘話があれば教えてください
- 中でも大変だったことはありますか?
- 募集開始してみての反響はいかがですか?
4、地方創生とweb3の親和性と可能性について教えてください
- DAOでの体験をどのように言語化していますか?
5、今後の展望について教えてください
- 何かお知らせはありますか?
-自己紹介とプロジェクトでの役割について教えてください
kishino:
東急不動産HDのkishinoです。グループDX推進部に所属しており、東急不動産グループのDXに関するあらゆる活動をしています。トップダウンで進めていくのではなく、事業基点でDXを推進するために色々なパートナーと話をしながら進めています。
web3関連では、2022年から弊社で運営している北海道ニセコのスキー場において、朝イチで滑ることができる権利をNFTにして「ニセコパウダートークン」を販売しています。ニセコのスキー場はスイスからも滑りに来る人がいるほどの質の高いパウダースノーが人気で、そのスキー場での体験を更に上げていただくためのニセコパウダートークンが好評です。
ニセコパウダートークンで”NFT”の取り組みはしてきたので、更にweb3の世界に踏み込んで2023年度の活動は”DAO”と思っていました。DAOをどう使うのか悩みましたが、私は元々京都の出身で、九州にも住んでいたことがあり、地方の魅力をもっと発信したりする地方創生に興味がありました。そこで地方創生とDAOを結びつけられたらと思い、今回の取り組みに至りました。
当社で色々な事業や活動をしていて馴染みのある渋谷を起点に、いろんな力を集めながら地方創生に繋げていく実証実験としての取り組みになります。
kaz:
Local web3 Lab.@渋谷の共同発起人でMeTown株式会社代表のkazです。夕張メロンNFTと呼ばれるNFTプロジェクトを運営しています。このプロジェクトは夕張メロンの引換券をNFTとして販売し、夕張メロンのファンの輪を広げるためのコミュニティ構築をしました。
プロジェクトの性質上、夕張だけに閉じているのでweb3の良さを最大限活かせていないという課題を感じていました。その時にお声がけいただき、Local web3 Lab.@渋谷を共同でスタートするプロジェクトを立ち上げることにしました。
1年間、夕張メロンNFTを運営してきた中で課題や知見が溜まってきたので、他の地域でも使えるようなモデルを作り、新しい地方創生の在り方を目指していきます。
Uwaizumi:
UnyteのUwaizumiです。DAO統合プラットフォーム”Unyte”を作っています。今回のLocal web3 Lab.@渋谷ではツールの提供とDAO設計のお手伝いをしています。
-「Local web3 Lab.@渋谷」と「おさかなだお長崎」について教えてください
kishino:
「Local web3 Lab.@渋谷」が基盤となるDAOです。このDAOは渋谷を起点に地方創生にみんなで参加しようという集まりです。ただ、地方といっても”どこの何をする”が決まっていないと参加がしづらいと思ったので、その上に色々なローカルDAOが複数乗っていく形をとりました。
その第一弾が長崎の「おさかなだお長崎」です。100名程度を想定していましたが、ありがたいことに111名からの申し込みがありました。第二弾は夕張メロンNFTと相互連携したり、他の自治体とコラボしてローカルDAOを立ち上げていく予定です。
-渋谷を拠点にしたのはなぜですか?
kishino:
渋谷はスタートアップに従事している人が多い街です。その人たちの中には社会課題の解決に興味がある人が多いですし、渋谷に暮らしているけれど観光以外で地方と繋がりを持ちたいと考えている人も多いのではないかと思いました。
地方の課題は多種多様です。その中には東京からでも遠隔でサポートできることがあると考えています。今回の取り組みはその形を検証する実験の場所でもあります。
-「おさかなだお長崎」についてもう少し具体的に教えてください
kishino:
「おさかなだお長崎」に参加し、テーマへの貢献活動によってトークンが貯まるとリワードが貰える仕組みです。
長崎のお魚についての発信やコミュニティイベントの開催や参加、アイディアの提案などDAOに貢献する取り組みに対してトークンを付与します。トークンはUnyteを活用し換金できないトークンを発行します。換金はできませんが、トークンを貯めることでお魚に関する様々な非金銭的なリワードと交換できます。
今回の取り組みにあたり他の事例も調査して、中にはクローズドチェーンで行っているプロジェクトもありますが、web3の良さを活かすためにはやはりパブリックチェーンで相互運用性を持つ必要があります。第一弾は「おさかなだお長崎」ですが、1年間の中で他のDAOも立ち上げ、相互連携していく予定です。
-どのような連携を考えていますか?
kishino:
リワードを中心とした連携になると考えています。例えば「おさかなだお長崎」で貢献して獲得したトークンは、これまではそのDAOに関するリワード以外に使い道がありませんでした。同様に夕張メロンNFTで貢献してもメロン以外と交換できません。
これが相互に連携するとお互いのリワードにアクセスでき、相対的なトークン価値が上がっていくと考えています。金銭と交換できなくても、リワードの連携で流動性の向上と安定したトークンの価値を担保できるはずです。
-設立背景や秘話があれば教えてください
kishino:
2ヶ月ほどで立ち上げたので大変な中、ご協力が得られてありがたいことでした。構想が決まった中でまずは共同発起人を探し地方創生とweb3の両方の経験があり、地方の魅力を会話できる方が良いなと思い、夕張メロンNFTのプロジェクトをされているMeTownさんとタッグを組もうとお願いしました。
既存の地方創生に特化したDAOは行政や自治体が予算を出して行っている部分が多いですが、今回は民間企業として行います。ただ、今回は儲けるためというよりは、街づくりを一緒にやっていくという意識で運営をしています。
第一弾が長崎になったのは正直偶然でした。長崎のお魚を盛り上げるサービスをやってる方とちょうどイベントで出会ってお声がけして繋がったことがきっかけです。長崎はすでに魚産業を盛り上げるための任意組織があり、そこが協賛に入ってくださいました。「正直全部はわからないけど、とりあえずやってみます」と返答いただき、第一弾の「おさかなだお長崎」が誕生しました。第二弾、第三弾と広げるなかで東急不動産が関わるまちでも出来たら、と考えています。
-中でも大変だったことはありますか?
kishino:
DAOの思想を行動に落とし込む、インストールすることが一番大変でした。仕組みの説明は出来ても実際の行動様式に当て嵌めた説明をすることが社内のメンバーや自分自身も含めて最初は難しかったです。例えば、DAOの中で自社の商品だけをPRしたりすると透明性の高い意思決定とは異なる行動様式なのでそれはDAOっぽくないので難しいです、といった気づきが何度もありました。
-募集開始してみての反響はいかがですか?
kishino:
元々は100名を目指しており、渋谷在住・接点のある方が半分くらい、長崎の地元の方も半分くらいが集まるかなと考えていました。12月13日から1ヶ月ほど募集し、結果的に111名の応募がありました。
web3の知識に関しては7割ほどが知っていて、3割が未経験の方です。ただ、知っていると回答した7割の方でもそこまで深く知っている人は多くありません。居住地は東京が6割ほどで、あとは長崎もいますが、全国からの応募があり、遠隔地でも参加のハードルが下げられたのではと思います。
今は地方から離れているけど貢献してみたいという声が多く、申し込み時のフリー記入欄に意気込みを100文字以上も書いている人が多数いてかなりの熱気を感じました。
kaz:
メンバーが面白いです。海外に住んでいてフルコミットする人もいれば、長崎に住んでいてよくわからないけど地元の長崎を盛り上げたいという方もいます。
2月1日にキックオフイベントを開催し、そこでツールの説明などを行い、本格的にスタートしました。
-地方創生とweb3の親和性と可能性について教えてください
kishino:
地方では人が少ないことでちょっとしたことが大変です。インフラの維持、文化を守ることにも人がいないと大変ですが、素晴らしい資源や文化など恵みがあります。そういった地域の魅力など自分たちのことを知ってもらえる機会が増えることでもまずは貢献が出来ると思いますし、それらを知ってさらに踏み込んで共感したり応援して貰えると関係人口が増えるので、DAOによってそういった活動を喜んでいただける可能性を感じています。
web3を掛け合わせる可能性に関してはまだ未知の部分が多いですが、遠隔地からも参加でき、記憶だけでなく「記録」に残って可視化される、他のDAOとも連携でき、何年経っても掘り起こして使うことができるweb3の性質は親和性が高いのではと考えています。
kaz:
換金できないトークンでやる前提の中で、web3を使う良さは遠隔参加、貢献証明、報酬設計だと考えています。従来のオンラインツールでも一部は実現できましたが、web3を使った方がガバナンスに参加できるなど、参加してる実感が得やすいと考えています。
貢献証明もデジタルアイデンティティとして残りつづけ、貢献に対してトークンを渡してリワードに変換できます。多くの人が参加するほどにトークンの価値が上がり、全員がハッピーになる形を模索して作っていきたいです。
Uwaizumi:
僕が言いたいことがすでに言われちゃいましたね、笑。
加えて言うとすると、儲かるだけだとポイ活など他サービスと競合になってしまいますが、換金できないトークンを利用することで地域に愛着を持ってる人がコミットできるようになると考えています。
kishino:
リワードでいろんな一等賞を作りたいと考えています。お金の基準だと一番お金を持った人が一等賞になりがちだと思いますが、例えば「お魚博士」などお金にはない価値を複数持つことでそれぞれの人がお互い称え合えるようにしたいです。
そうすることで地域の色々な発信が理解が進み、参加する側も自身のスキルに合わせて自由に貢献しやすいです。
-DAOでの体験をどのように言語化していますか?
Uwaizumi:
昔の価値基準の良いところ取りだと考えています。貨幣が生まれる前はそのコミュニティに対して貢献した人にリワードが得られるという価値交換が生まれていました。資本主義が生まれたことで代替されましたが、それをDAOだと再現できるかもしれません。
あとは自分のスキルを使って、自分の行動を認めてもらい報酬を貰う体験によって自己肯定感を得られる体験に繋がります。
kishino:
目を合わせても敵対しない唯一の生物だとどこかの本で読んだことがあり、人と人が関わろうとする社会的な生き物が人間なのかなと思っています。資本主義だけが進みすぎた今のあり方や、スマホで完結して暮らせる状況だと人間の中にいることがわからなくなっている気がします。DAOで貢献することで社会に参加している感覚が得られるのかなと思ってます。
kaz:
自分が夕張メロンNFTを立ち上げた理由を思い出していました。承認欲求と自己肯定感はめちゃくちゃ強くあると思います。例えば自分が北海道出身で夕張が好きであることを証明することは難しいです。
ブロックチェーンを使うと自分が何者であるかを証明しやすくなります。自分のアイデンティティを証明し、今までにない承認欲求の満たし方がDAOだと思います。
また、貢献すればするほど地域のトークンの価値が高まるという仕組みも面白いです。
kishino:
例えば夕張の特産品を作るのでは承認欲求は満たされない?
kaz:
それでも満たされるかもしれません。
Uwaizumi:
ただ、今はそれを実現する枠組みがないので、DAOだと誰もがそこに関われるようになりますね。
kishino:
確かに今まで普通の人が地域に具体的に関わることはハードルが高かったけど、DAOにすることで誰もが参加、提案、貢献できるようになりますね。
今までは提供側と運営側で分断されていたことがフラットになり自由になる、そこがDAOの体験の価値かもしれません。
-今後の展望について教えてください
kishino:
今回の実証実験で地方創生に対してどういう切り口で何をすればうまくいくのかを知りたいと考えています。東急不動産の本業である不動産事業は町を活性化させていく事業なので、そこにうまくweb3の技術を繋げていきたいです。
kaz:
色々な地域の方々にとってローカルDAOという新しい選択肢を提供したいと思っています。現地に行かなくてもオンラインでコラボレーションができるツールが今までは多くありませんでしたが、成功事例を作ることでより多くの地域に提供していきたいです。
Uwaizumi:
2つあります。1つ目はローカルDAOとしての成功事例になることです。これまでも色々ありましたが、市場の影響を受けるモデルが多かったので、儲からなくても活動を続けられる持続可能な形を模索していきたいです。
2つ目はポスト資本主義の実践事例になることです。お金が絡まなくても人が動く事例は、AIが進んだ社会の実践だと思っているのでその足がかりにしていきたいです。
-何かお知らせはありますか?
kishino:
現在、他の自治体も興味を持って下さっており話を進めています。新しく別のDAOを立ち上げる時に募集をかけますので、その際はぜひご応募ください!
-ありがとうございました!
«取材後記 by mitsui»
僕も地域出身で地方創生に非常に興味はあったので、今回の取り組みはすごく興味深いものでした。自分自身、将来的に地元に帰る予定はありませんが、東京からでも地元のために何かしたいという気持ちがあります。おそらく、そういう気持ちを抱える人は多く、その人たちの気持ちを体現する1つのソリューションとして”ローカルDAO”は相性が良く、可能性を感じました。
まさに地方にとって大切な関係人口の増加にも寄与する取り組みで、将来的には海外の人も参加することでオフラインとオンラインが絡み合う新しい形の地方創生に繋がる可能性もあります。自分も1参加者として楽しんでみたいと感じました!
«公式リンク»
HP:https://metown-inc.notion.site/Local-web3-Lab-3f7d85e22cef4c779083c5d51374ceef
MeTown X:https://twitter.com/metown_jp
kazさん X:https://twitter.com/kazupirika
Uwaizumiさん X:https://twitter.com/0xUYZ
«免責事項»
本記事は有料によるPR案件ではありません。筆者はプロジェクトの関係者ではなくリサーチャーとして記事を執筆する第三者となります。よって、NFT購入時及び購入後のトラブルには一切お応えできません。購入される場合はご自身でよく調査された上で自己責任で購入お願いします。
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著者:mitsui @web3リサーチャー
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