【Inversion】企業買収とブロックチェーン導入による収益改善を行う新興PFファンド / Avalancheで独自L1も構築 / オンチェーン版バークシャーを目指す / @inversion_cap
企業買収後にブロックチェーンを導入し経営改革を目指します。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Inversion」についてリサーチしました。
🏢Inversionとは?
🚩変遷と展望
💬とても面白い試み
🧵TL;DR
Inversionは2024年設立の米国NY拠点の投資会社で、伝統的事業を買収しブロックチェーン導入で変革するPE型モデルを掲げています。
注力領域は通信や金融サービスなど非効率が大きい基幹産業で、送金時間短縮や通信コスト削減など既に効果が実証されています。
2025年9月にDragonflyらから2,650万ドルを調達、買収先選定を進めつつAvalanche上で自社チェーン「Inversion Chain」を開発中です。
目標はオンチェーン版バークシャーとなり、買収企業群を統合しエコシステム収益・チェーン経済圏の拡大をフライホイールで実現する構想です。
🏢Inversionとは?
Inversionは、ブロックチェーン技術を駆使して伝統的な事業の変革を目指す新興の投資会社です。
PEファンド×ブロックチェーン導入のイメージで、投資スタイルの最大の特徴は、伝統的企業の買収(M&A)を通じたブロックチェーン導入という点です。
一般的なVCが新興スタートアップへの少額出資を行うのに対し、Inversionはプライベートエクイティ(PE)型のアプローチで既存事業を丸ごと取得し、経営権を掌握した上でブロックチェーン技術を組み込むというトップダウン型の戦略を採っています。
具体的に注力する投資対象領域は、通信(テレコム)や金融サービスなどの「伝統的だが利益率の低い基幹産業」です。これらの業界はレガシーインフラによる非効率を抱えており、ブロックチェーン導入によるコスト削減や業務効率化の余地が大きいとされています。
実際、金融取引ではブロックチェーン決済により従来の送金より決済時間が約60%短縮されうることや、通信分野ではHeliumネットワークで無線データコストが最大75%削減される事例など、既に一部で効果が実証されています
Inversionはこうした従来型ビジネスの改革余地が大きい領域を中心に、ブロックチェーン統合による価値向上を図る戦略です。
主要ポートフォリオ(投資先)については、現時点(2025年)で具体的な買収案件は公表されていません。Inversionはシード資金調達を終えたばかりの段階で、現在まさに有望な買収ターゲット企業のリサーチと選定を行っている段階です。
上述した通り、まず通信企業や金融サービス企業を最初の買収ターゲットとして検討していることを示唆しており、地域的にはブロックチェーン導入による効率化ニーズが高い新興市場(特にアフリカ等)にも着目していると報じられています。
また、自社開発プロジェクトとして独自ブロックチェーン「Inversion Chain」の構築計画があり、買収企業群はこのチェーン上で相互連携する形でポートフォリオとして位置付けられる見込みです。
◼️Inversion Chain
2025年2月にAvalanche財団から発表された情報によれば、InversionはAvalancheのサブネット技術を用いて自社専用のブロックチェーン基盤を構築する予定であり、これにより買収した企業群を一つの経済圏に統合し支える狙いがあります。

Inversion創業者サントス氏は「我々のチェーンを“オンチェーン版バークシャー(ハザウェイ)”にしたい」と述べており、買収によって得た様々な事業を一つのブロックチェーン上で運営することで規模の経済と相乗効果を追求するビジョンです。
Avalancheを選定した理由については「高性能かつカスタマイズ性に優れ、我々のミッション(暗号の普及促進)に最も合致したエコシステムである」点を挙げています。
このInversion Chainは現在開発中で、具体的な稼働開始時期は未定ながら「可能な限り早期のローンチを目指す」とされています。
🚩変遷と展望
Inversionの設立は2024年で、本社所在地は米国ニューヨークとされています。創業者は暗号資産分野の著名な投資家であるサンティアゴ・ロエル・サントス(Santiago Roel Santos)氏で、ParaFi Capital(DeFi特化型ファンド)元パートナーという経歴を持ちます。
加えて、スザンヌ・ダンハイム(Suzanne Dannheim)氏が共同創業者兼COOとして参画しており、同氏は2025年にゴールドマン・サックスから合流し暗号資産戦略に携わった経歴があります。
こうした創業メンバーの下、Inversionは「リアルGDPをオンチェーン化する」(Real GDP onchain)ことをビジョンに掲げ、ブロックチェーンを企業の“オペレーティングシステム”として活用することで事業を高速かつ効率的に運営することを目指しています。
上述した通り、現時点(2025年)で具体的な買収案件は公表されておらず、有望な買収ターゲット企業のリサーチと選定を行っている段階です。
そのための資金調達は完了しており、2025年9月にシードラウンドで2,650万ドルの資金調達を実施しました。
リード投資家は暗号資産ファンドのDragonfly Capitalで、その他にもHashKey CapitalやVanEck、ParaFi Capital、Wintermuteといったクリプト業界・伝統金融双方の有力投資家が出資に参加しています。
このラウンドによりInversionの評価額は1億ドル規模に達したと報じられており、著名VCや金融機関から「従来ビジネスにブロックチェーンを融合する」という同社のビジョンに対して強い支持が集まった形です。
調達した資金2,650万ドルは主に自社の事業運営基盤の構築(人材採用や技術開発)に充当される計画で、実際の買収原資については別途ファンド(Inversion Capital)を組成し調達していく予定だと伝えられています。
また、今後の具体的アプローチとして、サイトでは以下の3つの柱が示されています。
戦略的買収 (Strategic Acquisitions):ユーザ基盤を持つ既存の有力企業を買収し、ブロックチェーン導入によってコスト構造を改善する。既に顧客ネットワークを持つ企業を傘下に収めることで、一からユーザ獲得するのではなく既成の事業に技術付加して効率化を図る狙いです。
エコシステムの収益化 (Monetize Ecosystems):買収企業の顧客基盤に対してステーブルコイン等のフィンテックサービスを展開し、新たな収益源を創出する。例えば通信会社を買収した場合、その顧客にデジタルウォレットや送金サービスを提供し、暗号資産を裏で活用することで付加価値サービスに転換するイメージです。
経済圏の掌握 (Own the Economy):複数の事業を自社のブロックチェーン(Inversion Chain)上に統合することで、プライベートエクイティ的リターンとオンチェーン経済圏の成長利益を同時に獲得する。自社チェーン上で取引が増えればトークン経済圏の価値も上昇し、それがさらなる投資原資となる好循環を描きます。
上記3本柱はフライホイールとして図示されています。
つまり、(1)買収によるオンチェーン事業の拡大 → (2)投機に依存しない安定的な取引量の増加 → (3)エコシステム価値の向上 → (4)さらなる買収余力の増大 → (5)ブロックチェーン上で事業変革し収益獲得…というサイクルです。このループにより規模拡大と価値創出の両立を目指すことが示唆されています。
💬とても面白い試み
最後は総括と考察です。
PEファンドはビジネス業界全体で伸びている領域です。少額出資ではなく、見込み(資産)はあるが経営的に停滞している会社を買収し、テコ入れをして企業価値を伸ばし、改めて売却して利鞘で稼ぐというビジネスモデルです。
このビジネスモデル自体に賛否はあれど、自ら全て買収し経営にテコ入れし、そこに失敗すれば大損なので単なるコンサルティングよりもコミットメントが高いのは理解できます。ただし、その過程で株価を伸ばすことにコミットしすぎて反発があったり、短期株価だけにフォーカスしてしまう可能性もあることは間違いありません。
まあ、PF自体のビジネスモデルは置いておいて、それをブロックチェーン領域でやるという発想はとても面白いです。しかも、自社ブロックチェーンを構築し、そこに色々な企業を載せていくとなると、これまでのPFではできなかったビジネスモデルが可能になります。
上のフライホイールでも言及されていますが、買収後企業の収益に加えて、自社チェーンのガス代、また自社チェーンのトークンの価格向上によるリターンなど、複利的に事業が成長していきます。チェーンにおけるグラント戦略のさらに上ですよね。グラントどころじゃなく、買収してテコ入れしてしまうという形です。
また、買収資金用のファンドはまた別途構築するということだったので、ここをいずれセキュリティトークンまたはDeFiで投資できるようにすることでグローバルから資金を集める計画もあるかもしれません。
買収用ファンドのトークン化
買収企業の株式のトークン化
これを自社チェーンでやることでチェーンの取引量が上がり、トークン自体の取引手数料とガス代収入が入り、トークン価格も上がります。
特に2つ目の買収企業の株式のトークン化は、自分たちで株式を保有しているわけなので未上場ながら1対1でバックされた状態でトークン化できます。もしかしたらそのトークン化された株式の取引手数料をファンドトークン保有者に分配することもできるかもしれません。新しい配当ですね。
そこまでを考えると、PFにおける新しいビジネスモデルとして非常に新しいです。
というか、VCが自分たちでチェーンまたはマーケットプレイス作って、投資した未上場株式の一部をトークン化して売買する、その取引手数料を自分たちの収入にする、またはスタートアップが自らプレセールで自らの株式を販売し、取引手数料を売り上げにする、こういう形は今後増えていくんじゃないかと思っています。
自分でもトークン発行プロジェクトに携わってみて、トークンの取引手数料収入はかなり大きいことを知りました。そして、この収入はこれまでにないビジネスモデルを生み出す可能性があるので、とても注目しています。ただし、この辺は法規制に左右されるので注意が必要ですが。
まずは「Inversion」の動向を見つつ、自分でも何かできるビジネスモデルがないかを模索していきたいと思います。
以上、「Inversion」のリサーチでした!
🔗参考リンク:HP / X
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