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gasは誰のためにある? ― インセンティブ設計と通貨価値【後編】

ガス代の本質的な価値はどこにあるのでしょうか。

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mitsui
Apr 13, 2025
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gasは誰のためにある? ― インセンティブ設計と通貨価値【後編】
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おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。

今日はweb3の基礎の基礎レポートということで「ガス代」について深掘りします。

📝前編後編を通して学べること

  1. gas代の意味・仕組み・計算方法がわかるようになる:なぜトランザクションを送るたびに手数料がかかるのか、その理屈を理解します。

  2. gas代は誰に支払われ、誰が受け取っているのか?:ネットワークのセキュリティを保つためのインセンティブ構造を把握できます。

  3. gasの視点から、ブロックチェーンの“思想”や“経済デザイン”を読み解く:L2や他チェーン(Solanaなど)の仕組みも比較しながら、gas代が本質的に何を支えているかを学べます。

  4. 通貨価値と“強制需要”の話:租税貨幣論的に、「gas代があるからこそそのトークンに価値が生まれる」という考え方を理解します。

  5. 今後の展望・最適化:L2ソリューションやシャーディングなど、gas代削減やスケーラビリティ向上がなぜ重要なのかを理解します。

それでは、後編始まります。

はじめに:前編のおさらいと本編の狙い
1. gasは誰のためにあるのか? ― ネットワークの安全と公正な利用
2. gasが生む“強制需要”と通貨価値
3. gas最適化の動きとL2ソリューション
4. 他チェーンとの比較:Solana・Avalanche・Polygon など
5. gasという“経済インフラ”が示すweb3の本質
6. まとめ:gasが見せるweb3の“インセンティブ設計”と“通貨価値”
7. 後編まとめ:gasを理解すればweb3の基盤が見えてくる
あとがき


🧵TL;DR

  • gasはネットワークの健全な運営とバリデータへの報酬を支える仕組みであり、公平性やセキュリティを維持するための“利用ルール”として機能している。

  • Ethereumではgas代をETHで支払う必要があるため、通貨に強制需要が生まれ、base feeのバーンによってETHの希少性と価値が裏付けられる構造がある。

  • 高騰しやすいgas代を抑えるために、Optimistic RollupやZK Rollup、シャーディングなどのL2スケーリング手法が急速に普及している。

  • 他チェーン(Solana、Avalanche、Polygon)では異なる設計思想でgasを扱っており、ガス設計の違いがブロックチェーンごとの哲学や強みを明確にしている。


はじめに:前編のおさらいと本編の狙い

前編(「gasってそもそも何? ― 手数料の正体とその意味」)では、

  1. gasの基本的な仕組み

  2. 誰に支払われ、どのように使われるのか

  3. トランザクションの例やgas計算式

  4. なぜgas代が高騰するのか

といった観点から、gasが単なる手数料を超え、分散型ネットワークのセキュリティやインセンティブを支える大きな役割を担っていることを解説しました。

では、「gas代は本質的に“誰のため”にあるのか?」をもう一歩深く掘り下げてみると、そこには通貨価値の裏付けやネットワークを正しく使うための経済設計という視点が浮かび上がってきます。

さらに、それを踏まえて「gasの最適化」や「他チェーンとEthereumの違い」を見ていくと、各ブロックチェーンの思想や技術選択が分かりやすくなるでしょう。

では順に見ていきましょう。


1. gasは誰のためにあるのか? ― ネットワークの安全と公正な利用

1-1. gasが生む「コスト負担」のバランス

前編でも述べたとおり、ブロックチェーンは世界中のノードが分散的に合意形成を行う仕組みです。

  • 「中央サーバーがない」

  • 「全員で同じ台帳を保持し、取引を検証し合う」

この分散度合いが高いほど、ネットワークの検閲耐性や安全性が高まる反面、計算リソースやストレージが多くのノードに分散して負荷がかかるという側面があります。

そこで「誰かが大量のトランザクションを送りつけてきたらどうするのか?」という問題が出てきます。もし利用がすべて無料なら、悪意あるユーザーが際限なくスパム行為(DDoS)を行い、他のユーザーのトランザクションを妨害できてしまうかもしれません。

しかし、1回あたりのトランザクションにコストをかける(=gas代を設定する)ことで、それが強力な抑止力となります。スパム行為をするには大量の費用がかかり、「無料で嫌がらせができる」状態にはならないのです。

また、「計算リソースを多く消費するスマートコントラクトを動かしたいなら、それ相応のコストを支払う」というルールが公平性を保つ仕組みにもなっています。

複雑な処理ほどgasを多く消費するので、わざわざ無駄な計算を行う人が減ります。その意味で、gasはネットワークを“正しく使わせる”ためのゲームルールと言えるでしょう。

1-2. インセンティブ面:バリデータを正しく働かせる

gas代を支払うことで、ブロックを生成・検証するバリデータ(旧マイナー)が報酬を得られるようになっています。

  • EthereumのPoS移行後は、priority fee (tip)がバリデータ報酬の一部

  • base feeはバーンされる仕組み(EIP-1559)

こうしてバリデータは、「正しくネットワーク運営を支えれば報酬を得られる」ことになります。逆に悪意を働けばスラッシュ(担保したETHを没収)されるため、正直に振る舞うことが経済的に得になるわけです。

gasは誰のため?と問えば、①「ネットワークの利用を公正に保つためのしくみ」、②「バリデータに報酬を渡すためのしくみ」という2つの側面があります。さらに、後述の「通貨価値を支える仕組み」という話も関わってきます。


2. gasが生む“強制需要”と通貨価値

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