おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日はweb3の基礎の基礎レポートということで「ガス代」について深掘りします。
📝前編後編を通して学べること
gas代の意味・仕組み・計算方法がわかるようになる:なぜトランザクションを送るたびに手数料がかかるのか、その理屈を理解します。
gas代は誰に支払われ、誰が受け取っているのか?:ネットワークのセキュリティを保つためのインセンティブ構造を把握できます。
gasの視点から、ブロックチェーンの“思想”や“経済デザイン”を読み解く:L2や他チェーン(Solanaなど)の仕組みも比較しながら、gas代が本質的に何を支えているかを学べます。
通貨価値と“強制需要”の話:租税貨幣論的に、「gas代があるからこそそのトークンに価値が生まれる」という考え方を理解します。
今後の展望・最適化:L2ソリューションやシャーディングなど、gas代削減やスケーラビリティ向上がなぜ重要なのかを理解します。
それでは、前編始まります。
はじめに:なぜ私たちは“ガス代”を払わなければならないのか?
1. gasとは何か? 〜「燃料」というメタファー
2. gasの計算式 〜「gas limit × gas price = 手数料」
3. gasは誰が受け取るのか?PoWからPoSへの変遷
4. 実際にかかるgasコスト 〜 事例で見るトランザクションの重さ
5. gas代が高騰する理由 〜 需要と供給のバランス
6. gasは“ただのコスト”ではない 〜 ネットワークのセキュリティを支える燃料
まとめ
🧵TL;DR
Ethereumなどのブロックチェーンでは、分散型ネットワークの維持費が「gas代」という形で可視化され、ユーザー自身が負担する。
これはweb2時代には企業が肩代わりしていたサーバー運営コストを個々に割り当て、スパム防止とノードへの報酬を同時に実現する仕組みでもある。
gas代はトークンに強制需要をもたらし、PoS移行後はバリデータへの報酬やバーンによってトークン価値の裏付けにも寄与している。
今後、L2ソリューションやシャーディングの導入で手数料が下がる見通しだが、gasそのものはネットワークの公正さとセキュリティを支える核心的要素である。
はじめに:なぜ私たちは“ガス代”を払わなければならないのか?
ブロックチェーン、特にEthereumなどのネットワークを使ってトランザクション(送金やNFTのミント、DeFiでの取引など)を実行するとき、「gas代」と呼ばれる手数料を支払う必要があります。これに初めて触れた多くの人が、「どうして送金のたびにこんなに手数料を取られるの?」「SNSに投稿するように無料でできないの?」と疑問を抱きます。
しかし一歩立ち止まって考えてみると、“無料”に見えるweb2(従来のインターネット)のサービスでも、サーバーの維持や開発の人件費、電気代などが必ず発生しています。企業は広告ビジネスや課金モデルによってそれをまかなっているわけです。つまり実際は無料ではなく「見えないかたちで支払っている」状態と言えます。
一方で、Ethereumをはじめとしたパブリックブロックチェーンの仕組みは、誰か特定の企業が提供するサーバーに頼らず、多数のノードがネットワークを支えます。その際に「誰が計算リソースやストレージ、通信コストを負担するのか?」という問題が生じます。ここで登場するのがgas代という概念です。
本連載の前編では、「gasとは何か?」という基礎的な部分を丁寧に見ていきましょう。後編では、「gasは誰のためにあり、どうやって通貨価値を生み出しているのか?」というもう一歩踏み込んだトピックを扱います。
1. gasとは何か? 〜「燃料」というメタファー
1-1. Gas = ネットワークの“燃料”
Ethereumの公式ドキュメントでは、gas(ガス)は「Ethereumネットワーク上で計算やストレージを使用する際のコスト単位」であると説明されています。
ガソリンや電気をイメージするとわかりやすいでしょう。例えば車を動かすにはガソリンが必要で、電気自動車なら充電が必要です。何か“エネルギー”が消費されているからこそ、動作が可能になります。
ブロックチェーンも同様に、ネットワーク上でスマートコントラクトを実行したり、データを追加したりするたびに計算リソースや保存領域が必要です。その利用料を徴収することで、無制限の無駄使いやスパム行為を防ぐと同時に、ノード運営者(バリデータ)へ正当な報酬が行き渡るようになっています。
1-2. なぜ“わざわざ”手数料を細かく取るのか
「従来のウェブサービスではユーザーが無料で使えていたのに、どうして細かい手数料が必要なのか?」と疑問に思うかもしれません。これには大きく2つの理由があります。
分散型ネットワークの特性
ブロックチェーンでは特定の中央サーバーが存在せず、全世界のノードが分散的にトランザクションを検証し、ブロックに書き込んでいます。つまり、各ノードがコンピュータ資源を提供し続けている状態です。もし手数料を無料にしてしまうと、悪意のあるユーザーが大量のトランザクションを送り続け、ネットワークをダウンさせる(DDoS攻撃)リスクが高まります。インセンティブ設計
各ノードが「自発的にネットワークを支える」には、見返り(報酬)が必要です。ビットコインであればマイニング報酬、Ethereumであればgas代やステーキング報酬が、ノードに参加するモチベーションとなります。
こうした構造ゆえに、web2の表面上“無料”とは異なる経済モデルが成り立っているのです。
2. gasの計算式 〜「gas limit × gas price = 手数料」
2-1. 基本的な計算式
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