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【分散化】基礎単語の解説

権力構造の歴史から理解する

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mitsui
Dec 06, 2025
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おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。

毎週土日の昼には基礎単語解説記事をお届けします。各記事をサクッと読めるような文量にして、改めて振り返れる、また勉強できるような記事を目指していきます。

本日は「分散化」です。

ぜひ最後までご覧ください!


はじめに:分散化は”ノード数の話”ではない

web3の世界で「分散化」という言葉がよく使われます。しかし、多くの人がこの概念を誤解しています。分散化とは、単にノード(ネットワークを構成するコンピュータ)が多く存在することではありません。それは本質的には「権力構造の再設計」です。

web3が語る分散化は、権力がどのように配分されるか、誰が意思決定をするのか、その権力がどの程度均等に分散されているのかという問題です。

この概念を正しく理解するには、歴史の文脈から学ぶ必要があります。

権力の集中と分散という課題は、人類の歴史を通じて繰り返されてきました。国家、企業、宗教といった様々な組織が、どのように権力を構造化し、それがいかなる結果をもたらしてきたのか。その歴史的背景を踏まえてこそ、ブロックチェーン技術が何を目指しているのかが見えてきます。

権力とは何か?:国家・企業・宗教に共通する集中構造

権力とは一体何でしょうか。政治学では様々な定義がありますが、実用的には「他者の行動に影響を与え、決定を強制できる能力」です。歴史を見ると、あらゆる組織が特定の形態の権力を独占してきました。

国家は暴力(軍隊と警察)の独占を通じて権力を行使します。国民は国家に従う義務があり、違反すれば強制力が発動されます。この仕組みは秩序をもたらす一方で、権力者の恣意的な判断に全員が依存することになります。

企業も同様です。経営者や株主が資本と情報を独占し、従業員や消費者はその決定に従わざるを得ません。市場競争という制限はありますが、個々の企業の内部では階層的な権力構造が完全に集中しています。

宗教もまた、価値観の独占という形で権力を行使してきました。聖職者が解釈権を持ち、信者はそれに従います。これらの例から見えるのは、あらゆる既存の権力構造が「少数の意思決定者に全体が依存するモデル」であるということです。

中央集権のメリットと、その致命的な限界

中央集権は決してすべてが悪いわけではありません。むしろ多くのメリットがあります。第一に意思決定が早いという点です。複数の意思決定者がいる場合、合意形成に時間がかかりますが、中央集権なら迅速です。第二に秩序が保ちやすいということです。統一された価値観と指示体系があれば、組織の統制は簡単になります。

しかし、これらのメリットには致命的な限界があります。第一に、不正が起こりやすいという点です。権力が集中しているほど、それを悪用する動機と機会が生まれます。歴史は権力者による腐敗と搾取で満ちています。第二に、外部からの監視ができないという問題があります。中央の権力者が何をしているのか、庶民には見えないのです。そしてこれらが招く必然的な結果は、権力の腐敗と衰退です。

人類の歴史は、帝国の勃興と衰退、企業の栄華と衰退の繰り返しです。帝国は腐敗し、クーデターが起こり、新しい権力が生まれます。企業もまた、経営危機やスキャンダルで衰退します。この根本的な問題に、ブロックチェーン技術は新しいアプローチをもたらしました。

ブロックチェーンが登場した必然:信頼を”人”から”コード”へ

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