【Cygnus】複数チェーンの流動性を統合するモジュール式リアルイールドレイヤー / 独自のLVS(Liquidity Validation System)システムを構築 / プレシードで$20M調達 / @CygnusFi
ZK系レイヤー2分野における初期資金調達としても過去最大級の金額を調達。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Cygnus」についてリサーチしました。
🟢Cygnusとは?
⚙️技術的な仕組み
🤖ユースケースと競合比較、簡単な要約
💬オフチェーンでの運用益がオンチェーンに移行する
🟢Cygnusとは?
「Cygnus」は、「モジュール式リアルイールドレイヤー」として開発された新しいDeFiインフラプロジェクトです。EthereumなどのEVM互換チェーンと、Bitcoinのレイヤー2やTONといった非EVM系ブロックチェーンをまたいで収益(イールド)を統合・共有することを目指しています。
詳しくは後述しますが、2025年2月に2,000万ドルのプレシード資金調達を発表しており、この調達額はZK系レイヤー2分野における初期資金調達としても過去最大級であり、Cygnusが提唱する「リアルイールドレイヤー + モジュラーZKロールアップ」という独自アーキテクチャが注目を集めています。
Cygnusは主に以下の点を特徴としています。
マルチチェーン対応のリアルイールドレイヤー
従来のDeFiでは、Ethereum・Polygon・BSC・Solanaなどチェーンごとに流動性が分断されており、資金効率の低下やブリッジのハッキングリスクが大きな課題でした。Cygnusはマルチチェーンでの流動性を一括管理し、利回りを生み出す仕組み(リアルイールド)を提供することで、断片化問題を解消しようと試みています。Omnichain 流動性検証システム(LVS)
Cygnus独自の要となる仕組みが「LVS (Liquidity Validation System)」です。マルチチェーンでステークされた担保資産を検証し、複数ネットワークにおけるオペレーターへのインセンティブ分配やスラッシュ判定を行う総合フレームワークとなっています。ユーザーは資産を預けることでクロスチェーン規模の利回りを得られ、ネットワーク側は安全な検証者(オペレーター)を集められるメリットがあります。RWAとの連携
従来のDeFiはオンチェーンの仮想通貨に限定されがちでしたが、Cygnusは短期米国債(T-Bills)などの現実世界の資産とも連動したステーブルコイン(cgUSD)や、ビットコインにオフチェーン運用利回りを加味するトークン(clBTC)を提供し、安定的な収益源をオンチェーン化しています。ソーシャルアプリやゲーム領域への応用
Ethereum・TONなどEVM/非EVMブロックチェーン間の統合だけでなく、Telegramなど既存SNSとの連携SDKも開発しています。これはweb3を一般ユーザーに普及させる戦略の一環で、いわゆる「ソーシャルファイ」や「GameFi」領域でもCygnusのリアルイールド基盤が活かされています。
◼️創業チームと変遷
CygnusはARKS Labs Foundationの支援を受けて2023年に立ち上げられました。ファウンダー兼CEOはEric Cheung(エリック・チャン)氏で、伝統金融での投資マネジメントやweb3領域のプロジェクト参加など、多面的な経歴を持っています。Cheung氏の過去の活動としては、中国の大手投資会社JD Capitalでの勤務経験、米国ワイオミング州のCityDAOへの参画などが挙げられます。
また、CTOの“Pie”氏(ハンドルネーム)はゼロ知識証明(ZK)や自然言語処理分野での研究開発経験が長く、Cygnusの技術戦略をリードしていると伝えられています。さらにOKX VenturesやOptimism Foundationの関係者、複数のステーキング事業者がアドバイザーとして名を連ねており、DeFiとインフラ開発の双方に強いバックグラウンドを持つチームと評価されています。
以下、これまでの経緯です。
2023年 – プロジェクト始動
「ブロックチェーンの断片化を解消し、オンチェーンとオフチェーンをつなぐリアルイールドハブを作る」というビジョンを掲げ、Cygnusのコア開発が始動しました。当初はBaseチェーンを主要な舞台とし、米国債担保ステーブルコインcgUSDのプロトタイプを開発する段階でした。2023年末~2024年初頭 – cgUSDローンチ・LVSの試験運用
短期米国債を裏付けとした利付ステーブルコインcgUSDをBaseチェーン上でローンチし、複数のDeFiプロトコルと連携を開始。並行して、Ethereum・TON・その他L2を横断するOmnichain Liquidity Validation System(LVS)のテストが行われ、最初のバリデータ登録やクロスチェーン資産移転が実装されました。2024年中盤 – マルチチェーン拡大と連携強化
CygnusはSynFuturesなどのデリバティブプロジェクトと協業し、cgUSDやwcgUSDを証拠金・取引ペアとして活用する市場を開設。さらにHashKeyなどカストディ企業との連携により、ビットコインを運用利回り付きでオンチェーン化するclBTCをリリースし、マルチチェーン対応を加速。
また、Telegram SDKを組み込み、ユーザーがSNS上でステーキングや送金を行えるソーシャルファイ的な機能を試験運用しました。2025年2月 – 大型資金調達発表とLVS本格稼働
OKX Ventures、Mirana Ventures、Optimism Foundationなどが参加した2,000万ドル(約27億円)のプレシード資金調達を実施し、Cygnusの評価が大きく高まりました。LVSは複数のネットワークに対応し、担保資産としてのcgETH・clBTCといったリキッドステーキングトークン、さらに他社LSDを受け入れるなど、流動性供給者に多様な選択肢を提供できる段階に入りつつあります。
⚙️技術的な仕組み
続いて、詳細の仕組みについて解説していきます。
Cygnusの技術スタックはEVM互換と非EVMチェーンを包括的に扱うことを大前提に設計されています。例えばEthereum上のスマートコントラクトだけでなく、TONのスマートコントラクトにも対応し、さらには自社でCygnus Chainと呼ばれるモジュラーL2チェーン(Optimism OP StackやPolygon ZKEVMのzk技術を組み合わせた設計)を運営することで、複数チェーン間のバリデーション情報と資産担保を集約するアーキテクチャを実現しています。